医療マーケティングの片隅から

医療ライター・医療系定性調査インタビューアーとして活動しています。独立30年を機に改題しました。

久しぶりの新交響吹奏楽団

2012年05月26日 | 音楽

昨夜は、以前所属していた新交響吹奏楽団の定期演奏会へ。
以前といっても、わたしが所属していたのは25年前まで。しかも、5年間しか在団しませんでした。

 

ここは金曜夜に演奏会をやるのが定例なので、ご案内をいただいてもなかなか都合が合わず、聴きに来られたのもなんと20年ぶり。
プログラムはオールロシア・東欧もので、このあたりはもともと結構好きなのですが、それにしても、メインがラヴェルの「ボレロ」で、前座がチャイコフスキー「大序曲1812年」と、ダブルA面(古っ)のようなプログラム。
でも、今回いちばん楽しみにしていたのは、じつはボレロでも1812年でもなく、ロシアの作曲家・コジェブニコフの「交響曲第3番“スラヴィヤンスカヤ”」だったのです。

 

この曲は、25年前に、新響ブラスが譜面をソ連から直輸入?し、日本で初演したのです。わたしもそのときのメンバーで、大好きな曲でした。
記憶とは恐ろしいもので、曲が始まると、旋律や展開も結構覚えているものです(ただし、低音系の旋律にかたよりがちw)。
・・・この記憶力を他に活かせれば、もっと違った人生が・・・w

 

「1812年」ではあえて抑制をきかせた演奏でアンサンブルの美しさが引き出されており、「ボレロ」では、それぞれのソリストの腕がめいっぱい披露されました。昔とは、バンドとしての音の出かたも音色も違うような気が。
正直なところ、「スラヴィヤンスカヤ」までは十分手がまわらなかったような印象でしたが(笑)、そのぶん、1812年とボレロはすばらしかった。

 

が、それ以上にうれしかったのは、25年前にいっしょにやっていた仲間達が何人も、ずっとつづけている姿をみられたこと。
体型や風貌はやや変わりつつも(個人差あり・笑)、音楽に向かう姿は当時のままでした。
皆さんお疲れさまー、ずっと行けなかったのに、こりずに案内ハガキをくださって、どうもありがとう♪ (でも、住所はずっとまちがったままですよー、いまのところ届いてるけど~(笑))

 

 


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「伝え上手な患者になる!」

2012年05月18日 | レビュー

山形県米沢市の眼科医、平松類さんの著書、「伝え上手な患者になる!」を読みました。

 

伝え上手な患者になる

 

著者は、「聞き下手」な医師だった自分への反省から、「聞き上手」になるべく努力したところ、「話し下手だった患者さんまで話し上手になってきて、お互いに治療がうまくいくようになった」という経験を持つ医師です。
その経験から、患者が忙しそうな医師に、体調や自分の気持ちを的確に伝えるか、そのコツを述べています。

要点を整理することに役立つ、3つの「気持ち伝達シート」 つき。
このシートは、症状の改善度合いや、治療に対する不安など、医師から見ても的確な診断に役立つだろうと思います。

なぜ、いま、患者の方が「話し上手」にならなければいけないのか。
著者は次のように述べています。

 

「医者は『聞き上手』になろうと努力をしていますが、すべての医者がそうなるのはまだまだ先の話でしょう。となると、あなたが話し上手になることが大切です。」 


いざ、診察室で医師と向き合うと、緊張してしまってうまく話せないのはよくあることだし、ましてやいまは、パソコンのモニタの方を向いている医師が多いので、昔より一層、コミュニケーションのハードルが高くなっています。
取材でお会いしたある看護師さんが、「看護師である私たちでさえ、いざ患者の立場になるとうまく話せなかった」と話してくれたのを思い出します。プロの医療従事者でさえ、そうなんですから。

それに、いくら聞き上手な医師がいたところで、現在の医療制度では、患者一人にさける診療時間には限りがあります。 限られた時間のなかで、臆せずに要点よく自分の意思を伝えることは、患者にとってもメリットが大きいと思います。
著者は 

 

「シートを利用し、話し上手になるだけで、『治らないと思っていた病気が治った』『受けなくていい治療を受けなくてすんだ』ということが起こるのです」

 

 と述べています。なんとまあ、エライことじゃありませんか・・・。

 

「気持ち伝達シート」には、「症状以外に困っていること」という項目があります。


「例えば、症状としては痛いのだけれども、実際は、傷はたいしたことなくて、本当に心配なのが、『自分の父がこんな感じの痛みで心筋梗塞だったことがあるから、心筋梗塞じゃないか不安だ』というのが「症状以外に困っていること』 。

 

がん医療でいえば、経済的な問題などがこの代表的なもの。
300~400万円かかる粒子線治療などは別格としても、新しい分子標的薬なども高額です。
医師にすすめられても、「家族にすまない」という思いから受けるふんぎりがつかず、治療を中断して病院に来なくなってしまう患者さんも少なくない、という話を聞きます。
平松医師は、がん治療の専門家ではないのですが、「経済的な心配を医師に伝えてくれれば、他の代案をすすめることもできるのに」と述べています。

 

これとは逆に、医師が、患者の年齢や経済力を推し量って、勝手に思いこみで治療をすることがある、という指摘もありました。
「この人はお金がないかもしれない」「この人は手術嫌いだろう」「高齢だから手術をしなくてもいいだろう」・・といった思いこみをする場合があるというのです。 やっぱり「人は見た目が9割」なんだな~。
そこで、シートには「多少危険性があり、費用がかかってもいいので積極的な治療法があるでしょうか」という質問もあり(すべての人が利用する項目ではないかもしれませんが) 、こんなエピソードが紹介されていました。

 

私は、 100歳代の方の白内障手術をしたことがあります。その方は非常にしっかりとされていましたが、 100歳を超えるその年齢からして、「もう年齢的に手術はしなくても良いだろう」と考えていました。
しかし、ご本人は本当にしっかりされていて、またメモを書いて、内容を私に伝えてくれます。それは、 「ぜひ手術を受けて、見えるようにしたい」というものでした。手術の結果、見えるようになって喜ばれていました。聞くと、水彩画をなさっているということで作品を拝見させていただきました。非常に力強く、しっかりとした絵画でした。

 

医療のむずかしさは、病気を治すだけでなく、その治療が患者の気持ちや事情に沿うものでなければ、満足度は得られないところにあります。
相互の理解が、満足度の高い治療を受けられるための第一歩。
この本には、医師自身の過去の失敗談が率直に語られています。
眼科医が書いた本だけあって(?)字も大きくて読みやすいです。

巻末のシートはじゃんじゃんコピーして、病院に持っていきましょう。(著者もオッケーされていますので♪)

 

 


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「精神の産業化」の時代

2012年05月10日 | レビュー

GWが終わったいまごろが、5月病が最も出やすい時期。
5月病も、悪化すればそのままうつ病に移行していくことがあるそうです。
 

それにしても、うつ病は、この10年で2倍になり、社会人のかかる病気として、メジャーな存在になりました。診断基準の変化や、景気の悪化の影響はあるにしても、それだけでこの増加を説明するのはちょっと無理があるように思います。「構造不況」ならぬ、労働環境の構造的な問題がからんでいるとしか思えません。
 

最近、梅棹忠夫さんの「情報の文明学」を読んで、目からウロコでした。
この本は、早くも1962年に情報化社会の到来を予言している本として知られており、多くの書評やブログに取り上げられています。(ほぼ日でも紹介されてます

 

主旨としては、この時代にテレビ局が開設され、マスメディア産業が黎明期を迎えているのを目の当たりにして、「農業の時代、工業の時代につづいて、今後は情報産業の時代がくる」と予言しています。わたしの生まれた年に(小声)、こんなことを見通している人がいたとは、驚きです。 

 

で、こんなくだりが。

 

工業の時代が物質およびエネルギーの産業化が進んだ時代であるのに対して、情報産業の時代には、精神の産業化が進行するだろうと言う予察のもとに、これを精神産業の時代とよぶことにしても良い。

 

精神が産業の資源に!
ならば、すりへらし、疲弊し、病む人々が増えるのは、残念ながら当然のながれではないか、と思いました。つまり、特別な人だけがなるわけではなく、だれにでもかかる可能性がある、ということになります。

 

もちろん梅棹氏は、こういう時代の到来を必ずしも手放しで歓迎しているわけではないようです。

 

ただ、それがバラ色の未来につながるかどうかは別問題である。例えば工業時代の前期には、いろんな社会悪が発生している。日本には「女工哀史」の例がある。新しい生産システムに人間が適合できなかったからだ。同じことが21世紀の初期に起こるかもしれない。


たとえばIT関係の仕事なんかはどうでしょう。低賃金の長時間労働に代表される、まさに現代の「女工哀史」といえそうです。さしずめ〝昔は「労咳(=結核)」、いま「うつ病」”というところでしょうか。怒声を受け続けて文字通り神経をすりへらすコールセンターのような仕事も、きっとそう。どちらも、前時代にはなかった職業です。 人間にとっては新しすぎて、われわれのからだがその仕事にまだ適応していないのではないかと。もっと疲弊しないやり方もあるのでしょうが、そうしたシステムが発達するにはもう少しかかるのかもしれない。

 

それにしても、梅棹忠夫さんの先見の明にはおどろかされます。高度成長期前だというのに、早くもいわゆる「パクリ」の問題を論じています。コピー機が大量生産され、安価になったことが、情報化に拍車をかけたが、それに対するいさめとして、つぎのように述べています。


一般に情報機器と称しているものは、自ら情報を生産したしたりはしない。オリジナルな情報の生産は、もともと人間の仕事である。 情報機器は本質的に、それを模倣し記録し、再生する機能を備えていたにすぎない。(中略)情報関連機器の発達をもって、そのまま情報産業の発展と喜ぶわけにはいかない。それは、自ら情報産業の成立の基盤の一角を、ほりくずしているかもしれないのだ。


精神が産業の資源となるこの時代にあっても、その仕事が社会の発展やだれかの幸福になんらか貢献するという本質的な喜びがあれば、精神の消耗度は少なくてすみます。情報産業の発展に役立つと思ってしていた仕事なのに、期せずして「ほりくずし」に貢献してしまうことは、やはり精神が消耗しそう。 まあ、そもそもオリジナルな情報の生産をしつづけることも、結構なストレスをともなうことではあるのですが。

 


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