医療マーケティングの片隅から

医療ライター・医療系定性調査インタビューアーとして活動しています。独立30年を機に改題しました。

「精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本」

2010年04月21日 | レビュー
その昔「ルポ・精神病棟」を書いた大熊一夫さんが、自費でイタリアに飛び、イタリア精神保健改革の父・フランコ・バザーリアの遺志をつぐ人々にあい取材したドキュメンタリー。
それなりにボリュームもあるし、テーマの重さもあってある種の読みにくさはあるが、印象的な本だった。

冒頭には日本の精神病院史の汚点が記されている。
患者の人権を無視した、病院都合による暴力的な「管理」。それがWHOの調査で指摘されるという恥辱を経てようやく表沙汰になり、消滅するまでの過程。

かつては同じ状況だったイタリアの都市で、精神障害者を退院させ、地域で社会生活を送れるようにし、結果的に精神病院というものを事実上消滅させたのが、精神科医フランコ・バザーリアだ。

「多くの精神科医が、重い統合失調症の患者を病院に入れて、完治していないといっては入れっぱなしにする。ところが、病院の外で生活するには、何も完治する必要はない。患者は専門家の支援のもとで自分の狂気と共存できるのだ。」
(フランコ・バザーリア)

重要なのは「専門家の支援のもとで」という部分。
単に退院させ地域に戻すだけではだめで、24時間体制で患者が飛びこめる精神保健センターや訪問リハビリ、街ごとにつくられた小さなクリニックなど、精神保健サービスのインフラがあって成立している。
法的にも「180号法」(通称「バザーリア法」)が作られ、統合失調症の患者が社会生活を送れるサポート体制を整えた。
“180号法”第六条 第一項 
「精神病に関する予防、治療、リハビリテーションという措置は、通常、病院以外の居住地区の精神医療拠点機関とその事業によって実施される」

これを実施した街の精神医療にかかる医療費は、入院中心の時代に比べなんと6割だそうだ。
廃止された元・大型精神病院は、改築されて豪華な5つ星ホテルに変わっているところもある。泊らなくてもいいから(高そうなので)行ってみたい。

精神保健サービスの中心が「精神保健センター」だ。
以下、サルデーニャ島の精神保健センターの人のコメントを引用;
「人間は複雑な関係性の中で生きています。だから私たちも利用者の生活上の複雑さに正面から向き合って解決の道を見つけます。
病気の兆候を観察するのではなくて、病気の背後にある人間関係だの、労働環境だの、住環境だのを理解して対処する。それが精神保健センターです。」

精神保健センター自体は日本にもあるのだが、イタリアのそれとどう仕事内容は違うのだろうか。

胸のすくエピソードをひとつ。
いざ地域に戻った患者たちが賃貸住宅を断られ、公営住宅への居住も断られて住む場所を失ったとき、バザーリアの部下たちはゲリラとなり、工事作業員に扮装して公営住宅の空き家を“占拠”し、患者たちを住まわせた。それをまた市民も支持したという。
バザーリアも強い信念とリーダーシップと行動力を併せ持った人のようだが、その部下たちもなかなかやんちゃな精神科医たちなのだ。



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【告知】ブラスの演奏会と沖縄民謡初ライブ

2010年04月05日 | 沖縄民謡・三線
というわけで、5月は本番が続きます。

その1
品川区民吹奏楽団 第2回定期演奏会
5月3日(祝)13時30分開演@大井町「きゅりあん」大ホール


ものすごく久しぶりにブラスバンドで吹きます。
「アルヴァマー序曲」「ホルスト第1組曲」など私にとっては懐メロてんこ盛り。
後半は「トトロメドレー」「時代劇メドレー」「ディズニーメドレー」「サザンオールスターズメドレー(メドレーと言っても3曲しかないのがサザンファンとしてはやや物足りない)」…とメドレーものばっかりなんですが、「サウンド・オブ・ミュージックメドレー」はたぶん高校2年の定期演奏会以来だと思う。わあ、8年ぶりかあ(嘘)。

いつも所属のGrowでは7人くらいいるバスクラ隊の中で、なるべく目立たないようにひっそり吹いていて、難しいパッセージに遭遇すると「指の回るワカモノたちにお任せしま~す」的態度で臨んでいたのだが、このブラスではバスクラはわたし一人。しかも、曲にはやたらにバスクラソロがある。なるほどこれはトラがいないと成り立たない。

一番目立つソロは、時代劇メドレーの「銭型平次」(笑)

品吹は2年前に発足し、皆さんのびのびと楽しそうにやっているのが元気なバンドです。
連休にどこにも行く予定のない方。このコンサートは無料で、チケットもなく自由に入れるとのことなので、お暇でしたら珍しくステージで緊張しているわたくしを冷やかしに来てやってください。


その2
伊集inみやらび 
5月15日(土)19時開演@池袋北口 琉球料理「みやらび」
TEL03-3971-5061
料金:おひとり様5000円(料理付き・飲み放題)
18時よりお食事タイム~19時よりライブ 

なななななんと!!
池袋で昭和28年から営業しているたぶん東京の沖縄料理店のお初、「みやらび」さんからお声をかけていただき、お店主催のイベントで初ライブをさせていただくことになった。
お店の常連、GrowのコンミスTさん夫妻の後押しもあったようで、感謝です。

当然一人じゃ無理(3曲くらいで終了してしまう)なので、道場の兄妹弟子と3人で急きょ「伊集」というユニットをでっち上げた。
さわさきさんの八重山、K原○子さんの宮古島、わたくしの沖縄本島の民謡を聞いていただくことに。
「伊集」というのは、沖縄に5月頃咲く、白くて可憐な花の名です。

どうなることやら…という感じではありますが、せっかくの機会をいただいたのだから、楽しんで唄うので、がんばって聴いてくだサイ!
ご予約は直接お店にお願いします。

というわけで、今月はお花見返上でブラスの練習。
既に2つのお誘いを断ってしまいました。付き合い悪くて、すみませぬ。
GWも休暇返上で三線稽古だなぁこれは…。



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バスクラのリードを買う。

2010年04月02日 | 音楽

写真は、クラリネット吹きならほぼ誰でも知っている、あの「バンドレン」のパリ本店。
モンマルトルの丘、ルピック通り56番地にあることも一部の人はご存じだろう。

先般のパリ行きで、バスクラリネットのリードをここで大量に買って・・・来ようと意気込んで行ったのだが、実際には2箱しか買いませんでした。しょぼん。

なぜかというと、
理由1.現地で買っても全然安くなかった。
パリは元々物価は高いので、買い物メインで行くような場所じゃないとわかってはいたが、それにしても1箱3100円は、国内と比べてどうなんでしょう(→実は国内価格も買うたびに忘れているのだが、何となく高い気がする)。

理由2.バスクラのリードには種類がない
並クラには「ルピック56」だの「白箱」だのがあるのに、そういうのがバスクラには現地にもないのだ。だから購入意欲がかきたてられなかった。どうせ“特殊管”ですよ、ふん。

理由3.時間がなかった
20年前の記憶(→10年ぶりのパリだと思っていたがその記憶自体間違いで、実は20年ぶりだった)と違うあまりにも立派な店構えに、うっかり見落として通り過ぎてしまい、ムーランルージュの赤い風車の前でさすがに気づいて引き返したりしているうちに、セーヌ川ほとりでのランチの約束の時間が迫ってしまい、結局お店に滞在したのは約5分。ゆっくり探す暇もなかった。探したところで2のように種類がないことには変わりないのだけど。

20年も経っていれば、なるほど店も改装するわけだ~。
でも「赤い風車」は誰も手をいれていないらしく、みすぼらしく朽ち果てた板がついてるだけで、ちっとも赤くなかった。モンマルトルの丘の象徴なのに、敢てそのまま保存しているのだろうか。もったいない。

もう一つもったいなかったのは、どうせそこらを歩き回ったのなら、無名時代のピカソとかが生活していた「洗濯船」も見てくればよかった。が、時間がなくこれも断念。

ところで、リードを大量に買おうと思ったのは、4~5月とエキストラで出る演奏会が続くからなのです。エキストラというのは、賛助出演のことですね。そういうとエラそうですが、要はバスクラがいないから出てくれ~~、と断れない義理のある人から頼まれちゃっただけです。
その1つめは4/10、すみだトリフォニーホール大ホールで行われる「ヤマハ アンサンブルフェスティバル2010」(チケットがまもなく完売という噂あり)

5月は10年ぶりくらいのブラスバンド参加と、そして池袋の沖縄料理店での初ライブ!(えっ、って感じですが)とたちの違う本番が二つも!
特に後者は結構びっくりな展開になっています。
詳細は次回。



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