蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

NHKスペシャル「日中戦争 なぜ戦争は拡大したのか」を視る。―世論の流れは、慣性の法則?―

2007-02-10 13:33:34 | 日常雑感
2月9日(金)晴れ後曇り、夜雨。暖。

  夜、10時から11時15分、NHK総合でNHKスペシャル再放送「日中戦争 なぜ戦争は拡大したのか」を視た。

  番組内容、詳細は、次のようであった。

『▽兵士達は中国大陸で地獄を見た ▽南京陥落その時何が ▽日本陸軍の誤算とは ▽ヒトラーの武器輸出 ~平成18年度 文化庁芸術祭 テレビ部門大賞~

1937年、盧溝橋事件に始まった日中戦争。なぜ拡大したのか。その背景を示す重要な資料が公開された。中国国民政府を率いた蒋介石の日記である。そこから浮かび上がるのは、日中戦争を世界大戦へと連動させ、日本軍を破るという長期的な構想である。これに対し、日本は当初、不拡大方針を掲げながら、なし崩し的に全面戦争に突入してしまった。中国の真意を読み違えた日本の姿を新資料を基に国際的な視野からとらえ直す。』

■ 見終わっての山家の隠居の独り言

 世論とは、移ろい易くくらげのようなもので、大きな流れができてしまえば、誰かが少々何
かを言ったところで、流れ着くところまで行ってしまわない限り駄目なんだ…。
そこで、死ぬほどの痛い目に遭い、泣きを見ない限り所詮、自ら行く道を間違えたなんて気づきっこないんだ…、という思いが重たく心の底に沈殿した。
 
 関東軍の独走で瞬く間に、中国の混乱をついて、中国東北部を占拠し、傀儡国家満州国をでっちあげ、それに対して、中国国民党政府から抗議を受けると、なーに一発ガーンと喰らわせれば、何ほどのことやあるとばかりに、無謀にも言いがかりをつけて、上海に土足で侵入する。
 そして、狡猾なヒトラードイツの支援をうけた蒋介石国民党軍の思わぬ頑強な抵抗に遭うと、慌てて現地軍からの増派派遣要請が政府に届く。
 これを受けて、米英に戦略物資の供給を仰いでいる日本政府としては、国際関係を懸念しつつも、やむなく、中国との全面戦争になることを回避するため、これ以上は中に攻め込んではいけないという制令線を設けて、10万人の増援を決定する。

 現地軍は、この増援を得て、今度は難なく上海を占領し、その勢いにのって、制令線を越えて南京攻略に向かい、蒋介石政府を追い落とす。

 こうなってみると、現地軍の独走をあれほど危惧していた日本政府はもとより、国民まで官民諸手を上げて拍手喝さいである。
 日本国中が、提灯行列、日の丸振っての万歳の嵐である。事ここに至れば、近衛総理大臣は「中国政府(蒋介石を?)を相手にせず」との大見得をきった。そして泥沼の日中戦争から太平洋戦争へとの破滅への道をひた走り…。
とどのつまりは、我々が今、骨身に沁みて知るとおりである。
(もっとも、昨今は、そんなことがあったなんて忘れてしまいたい、あわよくば無かったことにしてしまいたい輩もちらほらとか…)

 この経過を垣間見ていて、私は、一昨年の小泉郵政解散の際に味わった気分を思いだした。
 あの、解散に至るまでの亀井静香先生を筆頭とする抵抗勢力のうじゃうじゃぐずぐず言ってるさまをみていて、それでも何とか衆院を可決した郵政改革法案が、参院で否決された瞬間、間髪をいれず、国民の真意を聞きたいとして、参院解散を宣した、8月8日だったかの小泉談話を聞いたとき、胸のつかえが下りた気分、一種の爽快感を味わった。
 私は、今まで一度も入れたことのない自民党候補に1票を投じた。

 恐らく、私が戦前の当時の国民の一人であったとすれば、南京入城を果たして、軍服を捨てた中国軍逃亡兵掃討の名目で一般民衆ともども万余の虐殺の事実を知る由もなくて、その一見目覚しい戦果を聞けば、諸手をあげて付和雷同し、万歳を叫んでいただろうことを確信する。

 物体に慣性の法則がある如く、世論なんてものも一度あるムーブベントにのってしまえば、誰が何と言おうとも、行き着くところまで漂い流れ着かない限り方向転換はできないのではないだろうか。

 しかし、そのことに気づいた今、私は可能な限り、いや待てよと、面倒でも頬杖ついて、自分の頭で考えてみたいと思うのだが…。そして、そんな流れにこれはと違和感を覚えたものならば、蟷螂の斧とは知りつつも、天邪鬼の棹をさしてみたいと思うのだが。

 果たして、私の小泉自民党へ投じた1票は、あの万歳を叫んだ私たちの親と同じ愚を演じたこととなるのであろうか。
 それとも、ばら撒き歴代自民党政治との決別、今後の日本の政治改革への方向転換を促す1票となるのであろうか。今のところ見極めがたいところではある。

 ところで、あの戦争で、日本人の死者は約300万人、中国人は1000万人とか。さらに第二次世界大戦としての全世界では、約最大で5000千万人ともいう。
 歴史に「もしも=if」は、無いと言う。
 だが、しかし、もし第一次世界大戦の戦禍の悲惨さを契機にせっかく成った国際連盟。これが、国際的な紛争に対し、火種のうちに強力な強制力をもった調停機関となっていたならば、この死者はなくてすんだだろう。その理想、何ら為すところ無きに等しく人類の悲願は儚く瓦解した。
 そして、現在の国連。こちらも強い強制力や調停能力は、常任理事国の思惑の中で無力に等しい。世界は、いまだ、400年前のわが国の戦国時代さながらの弱肉強食の世界である。
 一体、この先、人類は何億の死者を積み上げれば、戦争をしない智恵をもつことができるのだろうか。

と思うこの頃、さて皆様はいかがお思いでしょうか。




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6 コメント

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Unknown (DH)
2007-02-11 16:57:00
亡き父が真珠湾攻撃成功の一報を聞いた時に思ったことは
「ホンマかいな、アメリカと戦争して大丈夫なんか?」
だったそうです。恐らく同じ思いの人も結構いたのではないだろうかと想像します。

必ずしも全国民的に「やった!」みたいな感じで熱狂的に受け止めたわけではなかったのではないか、とも思ったりします。まあ単なる憶測に過ぎませんが。

戦争と言うものは、たとえ世論が沸騰しなくとも、権力ある者どもがその意志を持っておれば防ぎ難いものなのでしょうか。

折りしも六者協議が開催されていますが、たった北朝鮮一国の核開発問題を解決するだけでも、10年を超える年月が流れ、しかもまだ出口は見えない状況。これから先も嫌と言うほどの紆余曲折、「一歩前進十歩後退」が待ち構えていることでしょう。

いっそ絶望する方がよほど楽ですね(苦笑)。
でも、やはり絶望するわけにはいかない。一縷の望みを捨てないで、しつこく非戦を追求していくしかないのでしょうね。

その意味からも国連の改革は必須であり、やや過激に言えば「建設的解体後の再創設」すらも考慮する必要があると思います。

でも一方では過大な期待は禁物とも考えます。

何ともまとまりのないコメントになってしまい申し訳ありません。
私のアタマではすっきりした答えが出て来ないのが残念です。
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諦めず、言い続けようではありませんか! (蛾遊庵徒然草)
2007-02-11 22:46:43
DH様、コメントありがとうございます。
 <やはり絶望するわけにはいかない。一縷の望みを捨てないで、しつこく非戦を追求していくしかないのでしょうね。>とのこと。
 それしかないと思います。

 人間誰だって意味もなく望みもしないことで、誰かの思惑の巻き添え食って死にたくはないでしょう。

 考えてみれば、まがりなりにも国際連盟、国連ができたことは、それまでの長い人類の戦争の歴史を振り返れば、画期的な出来事だったと思います。
 富士山の三合目か四合目かまでには、登ってきているのではないでしょうか。

 昔は、外国へ行くのにどんな近く同士でも一日以上はかかったでしょう。
 しかし、今や世界中の国へ飛行機では一っ飛びです。ミサイルなんか地球の反対側に達するのに1時間かそこらでしょう。
 こんな時代に国境なんて何の意味があるでしょうか。

 北朝鮮の核兵器問題で、或いはイスラエルとパレシチナの間で、ぐずぐずしている間に、地球温暖化は進み、気候の大変動、旱魃、大洪水等による地球規模での食糧危機が音も無くひたひたと私たちの身にせまってきているのではないでしょうか。

 これらの問題が誰の目にも差し迫ったものとして自覚されるには、まだまだ時間がかかるのでしょう。

 しかし、好むと好まざるに関わらず、これらの人類破滅の危機を前にすれば、やはり嫌でも応でも、一つテーブルにつかざるをえないのではないでしょうか。

 その日が一時も早まるよう、その危機を少しでも感じたものたちで、小さくとも諦めずに、このインターネットとという、かってなかった全地球上の人々と直接交信できる可能性を信じて、地球人としての連帯を呼びかけていこうではありませんか。
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支那事変とは (武悪堂)
2007-02-18 23:02:46
支那事変とは
http://godslounge.seesaa.net/article/22906978.html
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貴ブログ記事拝読いたしました。 (蛾遊庵徒然草)
2007-02-19 01:54:59
 武悪堂様、貴ブログ記事拝読いたしました。
 私の蒙を啓いてやろうとのご親切に感謝いたします。

 ですが、こうした「実はこれこそが真実だった。日本は悪くなかったんだ。やむにやまれずやったことだ。当時の国際間では、先進諸国は大なり小なり自国がいきのこるためにはやっていたことなんだ。それを後講釈で、いわば何方様かがおっしゃっていた事後法で裁くような論議は許せない。」等々。おっしゃる方がいっらしゃることは百も二百も承知しております。

 だが、その当否はどうであれ、過去のことをお互いの好い募っていて、どこに明日がありましょうか。下手すれば新たな憎しみのスパイラルの罠におちこむだけではないでしょうか。
 
 とにかく、わが国のアジアに対する関係については、他人様の庭に土足で踏み込んだ事実は明白であります。
 ならば、その過去の事実については、ごめんなさいと素直に謝り、これからはもうあんな乱暴なことは、金輪際こちらからは仕掛けませんので、仲良くお付き合いをお願いいたします」というのが、まともな人間としての常識的な立ち居ふるまいではないでしょうか。

 左だ、右だと交差点の信号機の議論を身内でいくらやりあっても、これから先を生きていかなければならない私たちを含めての次の世代にとっても、その幸福の増進と平和の確保にどれだけの意味合いがあるのでしょうか。

 せっかくのビジュアルに富んだ貴ブログ、真に僭越ながら、どうかそのご慧眼を歴史の前方に転じられて、その情熱を傾注されることを願ってやみません。
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Unknown (武悪堂)
2007-03-14 00:45:21
日本が悪かったとか悪く無かったとかは個人の解釈なので別にどうだっていいです。
 
日本海海戦でロシアは日本に謝罪しましたか?
元寇で元は日本に謝罪をしましたか?
米国や欧州が世界中の植民地に対して謝罪したことなど聞いたことがありません。韓国や中国がベトナムに謝罪したことも聞いたことが無い。
アメリカはハワイや諸国を併合したままだし中国もウィグル・チベットを併合したまま。

彼らは未来永劫謝れと強要してきますが自ら謝るつもりは毛頭ないようです。
世界中の国を見回してどうやら日本の常識は世界の非常識のようです。
幸福と平和を考える以前に弱肉強食の世界の中でいかに生き残るかという方が現実的のようですね。
因みに過去の歴史問題を一歩的に煽って、政治的ガス抜きに利用しているのは日本ではなく南北朝鮮であり中国です。

単に戦とはそういうものどちらが善悪という勧善懲悪の3文芝居ではありません。歴史は継続性のある物です。歴史を細かく分析しなければ再び同じ間違いを犯すような気がしてなりません。 

NHKが都合良くトリミングして全く事実とかけ離れた的外れな分析をしていることを批判しているだけですよ。

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そうでしょうか? (蛾遊庵徒然草)
2007-03-15 22:54:35

<NHKが都合良くトリミングして全く事実とかけ離れた的外れな分析をしていることを批判しているだけですよ。>とのこと。
 
 そうでしょうか。私には、無学にして、かつ支那事変の時には、生まれてもいませんでしたので、どこが都合よくトリミングされているのか判断できません。
 
 貴方様は、直接見聞されたのでしょうか?

 貴ブログの素晴らしさから見て、とてもそんなお年とはうかがえません。
 とすれば、貴方様がこれこそが真実とお思い込みになることも所詮何方様からの伝聞ではありませんか。

 私は絵を描きますが、現実に目の前にあるものでさえ、見るたびに違って見えます。
 
 確かに、中国や韓国の言いがかりもしつこいと名とは思います。

 しかし、だからと言ってどうするのですか。

 愛国心を燃え滾らせて、アメリカの経済制裁覚悟で核武装してハリネズミか窮鼠になって大猫に噛み付きますか。

 それをもって弱肉強食の世界での現実的な生きかたであるとでもおっしゃりたいのでしょうか。

 中国人だって、日経ビジネスに有益な視点から彼我についてお書きになっていられる宋文州さんのような方もいられます。

 いつまでも日本だ、中国だ、韓国だなんて人間がつくりあげた国境の檻の中で騒ぐのはやめて、お互いに一人一人の人間として、付き合っていくことに力点を置こうではありませんか。
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