蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

今、この世で一番恐いのは、地震、雷、火事、親父が無くて刑事警察か!

2007-03-21 16:04:11 | 時事所感
 3月21日(水)晴れ。

  過日、大きく報じられた『平成15年の鹿児島県議選に絡む公選法違反(買収)事件で、12人の被告全員が無罪』となった事件捜査。
  今、その捜査の実態が明らかにされるのを聞いて、改めて今時、こんな噂に聞く戦前の悪名高き特高警察もどきの人権無視の取調べが行われていたのかと思うと、背筋の寒くなる思いがした。

  さらに、そこへ持ってきて今度は、富山県警が強姦(ごうかん)、同未遂容疑で02年に逮捕した男性(39)が2年9ヶ月服役仮出所後に、真犯人が名乗り出て、無実と分かった冤罪(えんざい)事件である。

 どうしてこうも杜撰な捜査の結果が、次々と明らかになっていくのだろうか。

 両事件のそれぞれについて、アサスパに出演の元検事経験者で弁護士のコメンテーター氏が、次のようにコメントしていたのが耳に残った。

 『…選挙違反を挙げるというのは難しいんですよ。警察には上の方からノルマみたいなものがおろされてくる。そこで捕まえようとなると、なかなか金の受け渡しなど証拠が掴みにくい。するとどうしても見込み捜査で見当つけて被疑者の自白を得るしかない。そこで無理をしてしまう…』

 また、後者のようなケースについては、
『起訴しようという場合に、検察側は集めた証拠の内から、捜査側の見立てた筋に沿った起訴事実を証明するに足る証拠のみを裁判所に提出すればいいんです。集めた証拠を何が何でも一切合切揃えて出す必要は無い。またその開示義務も無い。
 この場合も、被疑者の足の寸法と現場に残された犯人と思われる足跡の寸法が違っていることが分かっていても、それを証拠として示す必要はないのです。
 だいたいにおいて被疑者に有利になるような証拠は、出さないんですよ。だから弁護士さんは大変ななんですよ。…』と。

 これは驚き桃の木山椒の木である。

 過日、アップした(07'、1.28付け)『「ロシア 新“罪と罰”~追跡 警察と司法の腐敗~」を視る。何と恐ろしい国だ!』、現ロシア、プーチン政権下の暗黒警察行政ではあるまいに、この公明正大な国民が主権者とされているはずの民主主義国家日本で、選挙違反についても、交通警察のネズミ捕り違反切符切り競争(?)なみののノルマが課せられるなんてどういうことだろうか。

 このコメンテータ氏の発言がどこまで、真実であるかは、私がごとき山家の隠居に詮索すべき術もないが、少なくとも公共の電波を使ってお話されていることを、頭におけば全くの虚言であるはずはないだろう。

 とすれば、事は、現行、日本の刑事行政の進め方に構造的な問題点が深く内在していると見るべきではないだろうか。

 また、具体的な問題としては、刑事訴訟手続き、警察官職務執行法等にも多くの問題が潜んでいるのではないだろうか。

 さらに、これ等事件の取り調べに当たった関係者の処分の軽さである。元の県警本部長が口頭での厳重注意処分だと聞く。現場の直接の担当者には何のお咎めなしとか。多くの人の自由と名誉と二度と還ってこない貴重な人生の時間を奪い、運命を狂わせておいて…である。

 これではどんな取調べをしようが手柄たて得ではないか。お手柄たてるためには、人権なんてかまっちゃいられないではないか。

 もっとも、反対に人権侵害したときの罰を、いたづらに重くすれば、誰が無理して真剣な取調べをするものかという風潮も考えられる。
 被疑者の中には、真犯人であっても、通常の取調べでは、梃子でも事実をしゃべらない者も実際は多いことだろう。
 
 結局は、自白にたよるのでは無く、丹念な事実証拠を集め有無を言わせないほかないのではないか。

 要するにどのような取調べが行われているのか、この点が、明らかにされ人権を阻害し、冤罪を生じがちな問題点が改善されない限り、今後も同様の事件は、十分繰り返し起こり得るのではないか。

 少なくとも、さし当たっては、捜査機関が収集した証拠は、裁判官へはもとより、当該被告の弁護士には全面的に開示すべきではないか。それらの捜査資料は、税金を使って集めたものであり、国民共有のものであるばずではないか。

 取調べの状況はすべてビデオ録画して、これも同様に関係者には、開示すべきではないか。

 何故、こんな自明のことがすぐにでも実行に移せないのだろうか。

 また、個々の捜査関係者の資質の面について言うならば、真に民主警察を目指すなら、警察官や司法に携わる人たちへの研修で、過去の冤罪事件について、謙虚に学習させているのだろうか。

 そして、これも高額な歳費や政務調査費、高級宿舎等至れり尽くせりの特権を享受されていて、日頃、人権問題を声高く叫ばれる国民の選良たる野党の先生方は、市民の誰でもが、いつ同様の災難に遭わないとも限らない日常的な足元の人権侵害の陥穽をどうして、もっと問題視し、果敢に取り組もうとなさらないのだろうか。

 さらに、ここでも思うのは、警察行政のお目付け役であるはずの公安委員会の無能無力ぶりである。こんな西部劇に出てくる保安官の胸に輝くスターバッジほどにも役立たずの金食い虫は、トットと一掃すべきではないか。

 それとも真に建前どおりの役割を期待するのであれば、公選制にして、警察官に対して強い監督権を有する専属職員を配し、実効力を持たせるようにすべきではないか。

 戦前、庶民と呼ばれた国民にとって、一番恐い存在は、徴兵制の下で、帝国軍隊ではなかっただろうか。それと治安維持法の下、人権・思想弾圧の権化たる特高警察ではなかったか。警察はそれらの強圧絶対的な存在の陰で、やや市民よりの穏やかな存在であったのではないか。

 それが、現憲法のもと、天皇陛下の赤子、臣民の立場から一躍大出世した主権者になったはずの国民様が、その僕である筈の警察司法官僚の一部の専横に怯えなくてはならないとは、一体、どういうことだろうか。

 国民の多くがこの国家権力の欺瞞性に対して、何故、声を大にして、その下克上ぶりを糾弾しようとしないのだろうか。

 と、思うこの頃、さて皆様はいかがお思いでしょうか。
 
<参照>

■ 鹿児島県議選 元本部長を厳重注意 警察庁長官、ずさん捜査に異例の“処分”3月9日8時0分配信 産経新聞

 あ警察庁の漆間巌長官は8日、当時の同県警本部長、稲葉一次・関東管区警察局総務部長を本庁に呼び、「事件の捜査全般の指揮監督に十分でなかった点がある」などと文書で厳重注意した。鹿児島地検が同日、控訴の断念を正式に発表。警察庁の処分はこれを受けたもの。控訴期限が過ぎた10日午前0時に全員の無罪が確定する。

 文書による長官名の厳重注意は、国家公務員法上の懲戒処分とは異なる業務指導だが、個別の事件の捜査指揮について本部長が受けるのは極めて異例。

 また警察庁は8日、「強圧的な取り調べに迎合し、苦し紛れに虚偽の供述をした可能性がある」と自白の信用性を全面否定した鹿児島地裁判決を踏まえ、緻密(ちみつ)で適正な捜査の徹底を求める緊急通達を全国の警察本部に出した。

 通達では、取り調べ時に(1)容疑者の年齢、性別や境遇、性格に応じて心情を理解しつつ真相を解明する基本姿勢を堅持する(2)供述内容が客観的事実と矛盾しないか、供述の変遷が合理的に説明できるか、慎重に吟味する(3)容疑者の供述のみに頼ることなく、アリバイ捜査などの裏付け捜査を十分に尽くす-などを指示した。

 事件を受け漆間長官は同日の会見で、県警本部長の役割について「全体を見渡し、本当に事件として成り立つかを判断する。早く引くか、進めるか言える資質がなければ本部長としては失格」と述べた。

 注意を受けた稲葉総務部長は「今回の無罪判決を重く受け止めている。」話しているという。

 控訴断念の理由について鹿児島地検の水沼祐治次席は「(認定された)アリバイを覆すのは困難。証拠全体の吟味が不十分だった」とし、「被告や関係者に申し訳なく思っている」と謝罪した。

                  ◇

【用語解説】鹿児島の公選法違反事件

 平成15年4月の鹿児島県議選に立候補して初当選した元県議らが、選挙前の同年2月から3月にかけて支援者宅で会合を開き、11人に現金計191万円を渡して投票を依頼したとして、買収と被買収双方の計13人(公判中に1人死亡)が公選法違反の罪で起訴された事件。元県議ら7人は捜査段階から一貫して否認。自白調書に署名した6人も「無理やり押し付けられた」と公判で否認に転じた。鹿児島地裁は2月23日、被告全員に無罪を言い渡した。

■ 刑期終えた男性の無実判明! 富山県警が大失態 01/19 20:58

 富山県警は19日、同県内で平成14年に発生した強姦(ごうかん)と強姦未遂の2事件の容疑者として逮捕し、懲役3年の実刑判決が確定した男性が無実だったことが分かったと発表した。男性は2年9カ月間服役し、17年1月に仮出所した。
 県警は現場に残っていた足跡が男性のものと一致しないことを認識しながら逮捕していた。
 両事件について県警は19日、新たに強姦と強姦未遂の疑いで、松江市西川津町、無職、大津英一容疑者(51)を逮捕した。
 県警などによると、男性は逮捕前、いったん容疑を否認したが、その後は認めたため逮捕、送検された。公判では起訴事実を一貫して認めていた。富山地検は「県警が作った似顔絵が男性と酷似しており、担当検事が客観的証拠と思ったのだろう」などと説明した。
 大津容疑者は昨年10月、別の強姦未遂事件で富山県警に逮捕され、11月中旬、同署の取り調べ中に平成14年の両事件の犯行を自供した。足跡が一致したことから真犯人と断定された。
 会見した県警の小林勉刑事部長は「裏付け捜査が不十分だった。男性には謝罪が必要だが、所在がつかめない。親族には17日に謝罪した」と話した。男性を担当した山口敏彦弁護士は「(男性は)私にも『自分がやった』と言っていた」などと釈明した。


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2 コメント

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他人事ではない怖さ (さくら)
2007-03-22 21:08:57
「刑期終えた男性の無実判明!」これが何十年前の話ではなく最近のことなのでなおさら恐ろしいですね。

足跡が違うことを知っていながら逮捕とは!

誤認逮捕された男性の父親は刑期中に亡くなったように聞いています。取り返しのつかない事です。

わたしの友達にメモ魔がいます。
日記というより時(間)記。
弱い立場の庶民はそのように「アリバイ」をきっちり記しておいたほうがいいのかも知れません。
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同感です。 (蛾遊庵徒然草)
2007-03-22 23:54:45
 早速にコメントありがとうございます。

 ところで、<誤認逮捕された男性の父親は刑期中に亡くなったように聞いています。取り返しのつかない事です。>とのこと。本当に気の毒ですね。
 しかし、この男性氏も現在行方が分からないとか。
 
 いくら自白を迫られたとは言え、自分がやってもいないことを公判でも「自分がやった」とみとめていたとか。
 随分自分の人生を投げ出しているような気がしますね。

 私も昨日のことは覚えていても、おとといのこととなるともう駄目です。それを突然何日もまえのこととなれば全くお手上げです。
 せめてもはこのブログが証明してくれるでしょうか。(笑)
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