蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

“ひとりぼっちの私が市長になった!”―一気に読んだ。感動した!―

2007-03-13 02:44:17 | 読書感想(ぜひ読んで見て下さい!)
3月12日(月) 晴れ。北の寒風、終日強し。

  10日の夜、前項のブログをアップしたら日付が変わって、11日の午前2時ぐらいだったろうか。ほっと一息、ウイスキーのお湯割を飲みながら、手元に置いておいた図書館で昼間借りてきたばかりの“ひとりぼっちの私が市長になった!”を、一寸様子を見る塩梅で開いた。

  読み始めたら、何故?、それからどうしたんだ?…止められなくなった。明け方5時、227ページを読み終えた。ジーンとした感動が胸の底におちた。
  それは、足長おじさん+レミゼレラブル(何故か)を、読んだような感じといえばいいだろうか。

  著者の草間吉夫氏ja.wikipedia.org/wiki/草間吉夫は、茨城県高萩市長だ。41歳、昨年の2月5日、5人の候補者で市長の椅子を争い、現職を大差で破っての初当選という。http://blog.hitachi-net.jp/archives/50173761.htmlblog.hitachi-net.jp/archives/50173761.html - 18k –

  表紙見返しにこうある。
『生後三日で乳児院に預けられ、高校までを児童養護施設で育った青年が、社会の偏見や無知を乗り越えて茨城県高萩市長になるまでの半生を綴った、感動の手記! こんな市長が日本の未来を変える! 講談社』と。

 この評に、偽りはなかった。
感動の要因は、著者の己の内心の求める志に向かってのひたむきな生き方そのものにあることは、勿論だが、著者がこれまで出会った周囲の人々(多くの読者にとっては、無名に均しい人々)の中に、識見のすばらしい人や真に優しい人の存在を知るしることにもあった。

著者の育った児童養護施設「臨海学園」の創立者、遠藤光浄氏(日蓮宗、願成寺住職)。著者の夏休み、新年の里親を引き受けられた元高萩市長鈴木藤太氏。著者を幼時のときから卒園までの18年間父親代わりとなって面倒を見られた指導員の大橋正男氏。同じく指導員で著者の兄貴がわりのような若くして急逝された永井定男氏等々。

こういう方が、日本には、まだまだ無数にいらっしゃるのだろう。だから、中央の舞台の上でスポットライトを浴びた、団十郎気取りのその実、三文役者がフザケタ演技でジタバタしていても、今日も大部分の庶民は安穏に暮らしていけるではないか。

今、中央で活躍され、各種メディアにご登場になる方々は、始めは人の目をはっとさせても、暫くすると、化けの皮がはがれ、お里が知れて、がっかりさせられてしまう人士の何と多いことだろうか。それは、一瞬、陽に映えてたちまち破れ散るゴム風船か紙風船をみるようである。

この書は、ある意味でのサクセスストーリーとして、また一方では、最近はとんとお目にかかることのなくなった、教養小説(ヘルマンヘッセ、ロマンロラン、芹沢光次郎、山本有三の著作等)に再会したような気がした。

その一方で、今まで知ることのなかった、児童養護施設の実態、そこでの生活がどのようなものであり、日常の感情生活のなかにあって、どのような人格形成がされていくのかということが窺い知れた。

また、真の福祉のあり方、その意味することの深さである。著者が受講した現東北福祉大学長の萩野氏は、「いいか、よく聞け。福祉とは人間をどうとらえるかだ。つきつめると、自分自身をどうとらえるかだ」」と説く。

そして、遠藤光浄師もまた、著者が迷って尋ねたとき、同様に語るのである。

『福祉とは最も人間を見つめる位置にある学問と実践の分野、突き詰めると、神に接するものです。人間をきわめ、神に接するところから出発するのが基本です。人間の醜さと欲深さと、こよなく尊い清らかさを垣間見た人々が、福祉を実践すべきだと思います。草間君もこれから人間研究をし、スランプを超え、深く深く福祉の世界を探ってください』と。

ここを読んで、もう数年前か。厚生事務次官の、ゴールデンプラン老人養護施設の汚職事件を思い出した。そして今もこの分野を巡っては、何かと魑魅魍魎の跋扈を聞くのは、どうしたことだろうか。

なお、著者が福祉について、もっと視野を広げるために挑戦し見事入塾した、松下政経塾の中の様子が興味深い。このような教育指導を受けても、卒塾すると結構なバラつきがでるのは、どうしたことだろうか。これほど厳しく鍛えられながら、先の前原前代表のおっちょこちょい振りは、何故なのかと、怪しみ惜しまずにはいられない。

とりとめのない感想文になってしまったが、著者から初めて聞く「スピークアウト(生い立ち告白)」、その勇気ある志で、これからの高萩市がどのように再生されていくのか、興味ふかくみていきたいと思う。そして、そこでどのような福祉行政が展開されていくかを。

ー追記ー
 URLがうまく入らず、リンクできず申し訳ありません。


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5 コメント

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地方自冶の時代に・・・ (容子)
2007-03-15 09:11:15
蛾遊庵徒然草さま

始めまして・・・私は貴方さまの記事を読み、深い感動を覚えました。

それは茨城県高萩市長・草間吉夫氏の生き方をご紹介してくださった事です。
最近私は地方自冶体に関心があり、地域で頑張っている市町村長には中々面白い方が多くいる事を知り、それらの人の奮闘ぶりを聞くと・・・

これから益々地方の市町村長の資質が問われる時代に入った事を痛感します。

経歴のすばらしさより、地域を何とかしなければ・・という情熱があり、収支バランスを意識する人、職員に自分の方針に協力する人を見つけ、共に頑張る核を作れる人・・・を私は注目します。
よろしかったら私のブログも見ていただけると幸いです。
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コメントありがとうございました。 (蛾遊庵徒然草)
2007-03-15 19:45:36
 容子様初めまして。

 >深い感動を覚えました。<とのこと。過分なお言葉をいただき恐縮です。
 
 このような方が、出てこられることはいいことですね。
 しかし41歳。まだお若いです。私は、直ぐ一目惚れするたちで、あとで困ることが度々あります。
 どうか、観衆の期待を裏切ることなく、このまままっすぐにもっともっと輝く星になってもらいたいものと念じます。

 貴ブログ拝見しました。後ほど改めてコメントさせていただきます。
 今後とも宜しくお願いいたします。
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期待します! (さくら)
2007-03-16 22:19:28
ご自身の辛い過去を公表できることはきっと「今」が輝いているからでしょう。
草間氏を市長に選んだ高萩市民もすばらしいですね。

今日堀江モンは実刑判決が出ましたね。

比べることはナンセンスかも知れませんが、まっすぐに生きることが何より大切な気がしました。
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真実一路! (蛾遊庵徒然草)
2007-03-16 23:51:10
さくら様、今晩もコメントありがとうございます。
<ご自身の辛い過去を公表できることはきっと「今」が輝いているからでしょう。
草間氏を市長に選んだ高萩市民もすばらしいですね。>とのこと。
 そのとおりだと思います。
 真実の力ほど、強いものは無いのではないでしょうか。
 今は、あまりにも直ぐばれる嘘を平気で公言してはばからない人が多すぎますね。
 そして、そういう方ほど、一方ではもっともらしいことをおっしゃいますので、この単細胞の山家の隠居など、そのおめでたさ加減で度々教育的指導を戴く仕儀でございます。(笑)

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眠れぬ夜に読む本 (たんぽぽ)
2009-06-20 23:33:45
はじめまして。私もこの本が大好きで、気持ちが不安定の時に読むと心が落ち着いたりします。この本を通して、彼の出会った人たちの素晴らしさを知り心が熱くなります。また、彼の文章力も素晴らしく静かに心に響いてくる気持ちになります。近いうちに高萩の自然を見に訪れたいと思います。
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