蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

―北朝鮮の核実験―生きることに厭きた独裁者の暇つぶし?(その2 裸の王様異聞)

2006-10-14 02:39:02 | 時事所感
10月13日(金) 晴れ。暖。

 昨日、今頃、21世紀のシーラカンスかともいうべき北の独裁者の心中を忖度しながら、眠気誘いに飲んだオンザロックが効きすぎてか、不意に、頭を掠めたのがアンデルセンの童話「裸の王様」である。

 換骨奪胎?私の頭に浮かんだ「裸の王様異聞」は以下のようなものである。

『 ここに、余りにも長く、独裁者として栄耀栄華を尽くし、子供も何人か、大きくして、その子の一人は王子様には程遠く、先祖がえりの麻薬の売人もどき、と思うに付けても、この頃、生きていることにいささか、厭きてきた王様がいました。

 今や、王様は、良い衣装を身に着けて、皆の褒め言葉を聴くことだけが唯一の楽しみでした。そして、ありきたりの衣装では、もう満足できなくなった王様は、お城の門前に大きな高札をたてました。

 “儂は、まだ誰も着たことのない衣装が欲しい。それを持参したものには、大層な褒美をつかわそう”とありました。

 そこへ、他所から、流れ者の詐欺師の仕立て屋の二人組みやってきました。二人はその高札を見、街の住民から王様の噂を聞き、王様の見栄っ張りに目を付け、大儲けを企みました。
 二人は早速、お城へいき、「私どもは、究極の衣装、馬鹿と役立たずの目には見えない衣装をつくる技をもっております。ぜひ一着この究極の衣装を王様にお召し願いたくはるばる遠方より、王様のご高名をお慕いしやってまいりました。」と門番に取次ぎを頼みました。
 これを聞いた門番は、怖い顔をして、二人に言いました。
 「何を申す。この法螺吹き奴、そんな怪しげなものがこの世にあろうか。さっさと消えうせろ!」
 すると二人は、言い返しました。
 「ご門番様、貴方様の一存でそんなことを言っていいのですか?王様は、まだ誰も着たことのない衣装をとお望みでございます。その王様のたってのお望みを、勝手にチャラにしてよろしいのでございますか?もしもこのことが、王様のお耳に入りましたら、あなた様こそそこにそうやって威張ってお立ちになっていられなくなるのではありませんか?」

 これを、聞いた門番は、今度はこっちが青くなって驚いた。
<そうだ、もし、これがお偉方に知れたら、憎いこいつらのいう通りかも知れぬ。これはヤバイな。>そこで、思いなおした、門番が告げました。
 「しょうがない。入れ。その代わり、お前らが言うような衣装ができなくて、後で泣きっ面をしたって儂はしらんからな。」と。
 そんな訳で。第一関門を無事通過した仕立て屋達は、今度は大臣に引き合わされました。

 大臣とも同じ問答を繰り返しました。
 しかし、大臣は、門番と一寸違いました。
 大臣としては、この頃、王様へどんな立派な政(マツリゴト)についての進言をしても、ちっとも関心をしめしてもらえず、王様は生あくびを噛み殺しながら、「よきにせい」と退屈げにお答えになるばかりでした。
 これでは、大臣としてあがったりです。もう、前のように王様から「よくやった」とのお言葉もご褒美ももらえません。

 そんな大臣にとって、この仕立て屋の話は渡りに舟に思えたのでした。
 <そうだ、こいつは面白い。王様は誰もまだみたことのない衣装をお望みだ。うまくすればこの話、王様のお気にめすかもしれない。ここは一丁、のるかそるかでのってみるか?>こう考えた大臣は、恭しく王様の前にいつもにも増して畏まって進み出ました。

「王様、実は先ほど、王様がお命じになった門前の高札をみて、面白い仕立て屋が参りました。この者どもが、申しますにはかくかくしかじかとのことでございます。」
 これを聞いた王様は俄かに生き返ったように、玉座で跳ね上がって、歓喜の声を上げられました。
 「何と、それは真か。面白いではないか。それこそ、余が待ち望んでおったしろものじゃ!直ぐにその者等を此処へ呼べい!」

 王様の前に呼ばれた二人は、神妙に平伏しました。

 そして、二人組みは王様との間で次のような約束をしました。
 
 二人組みは申しました。
 「この衣装をつくるには、ここにつれてまいりました、千匹の女郎蜘蛛。これが吐いた糸をよってつくります。つきましてはこいつらに、毎日、美酒一樽、美味しい肉1キロを賜りたく存じます。なお、世界中で我ら以外の持たぬ特殊技術ゆえ何方にも私どもの仕事振りをお見せする訳にはまいりませぬ。また、何方様かに覗き見などされますと、気が散っていけませぬ。どうかお城の庭にたった一つの小窓の付いた仕事小屋を賜りたく存じます。私どもの三度の食事、それにこいつらの餌はこの小窓からいただくことにいたします。なお、真に申しにくい事ながら、前金千両を戴きたく存じます。これを、叶えていただければ、今からでも直ぐに仕事にかかりたいと存じます。」

 王様はその全てを大臣に用意させました。

 二人は、早速小屋に籠もりました。中からはトンカラリン、コンカラリンと軽やかに糸を紡ぐ音ばかりが漏れ聞こえてくるばかりでした。

 ところがどっこい、小屋の中の二人組み、蜘蛛の餌と言ったのは大嘘で、自分たちでたらふく飲み食いの大饗宴。トンカラリンの仕掛けはと見れば、糸紡ぎの心棒に括りつけた車かごの中にハツカネズミをいれただけ。
 
 たちまち、十日たっても二十日たってもまだできない。
そこで、痺れを切らした王様。大臣に様子を探らせにやる。まだだめだという仕立て屋をやっと宥めて、ひとりだけ中に入れてもらった。
 大臣の前にどうですこのできばえはと広げてみせた。大臣には、何も見えない。すると二人が呵呵大笑。「おい、相棒。この大臣様は何にもみえないんだとよー。」「そうか、ということは、とんだオオバカか役たたずなんだ!王様も、お気の毒なことだ。こんなバカに高禄やって政(マツリゴト)をさせているとは。家来も、町人も気の毒に。ところで相棒、こんなバカ大臣のいる国にこれ以上の長居は無用だな。このへんでさっさととんずらするか」

 これを聞いた大臣はびっくり仰天。二人に今逃げられたりしたら、それに今のセリフを王様の前で言われては、自分の首が飛ぶと恐れ、「いやいや、二人の職人衆よ。儂もこの頃、歳のせいで部屋が変わるとな、一寸目がわるいのじゃよ。うん、今度はよく見える、よく見える。うん!なかなかのできばえじゃ。これで王様も大喜びなさるだろう。早速ご報告しなくては」と。「さすが、ご賢明な名宰相閣下。そうとお話が分かればどうぞ王様に下見にこられるようにお伝え下さい。寸法合わせをしなくては…」

 そこで、大臣が王様をお連れした。中に入った王様。何も見えない。「これ二人、どこにできておる、何もありはしないではないか?」
「これは、これは、王様。何と言うことをおっしゃいます。先ほど、宰相閣下からもよくできたとのお褒めの言葉をいただいたばかり。もしかして王様もお歳のせいで真に申し上げにくい事ながらお目が少しお悪くなったか、それにあれほどご聡明な名君とのお噂を遠くきいてまいりましたのに、真に申し上げにくい事ながら、少々お頭のほうもお弱くなられたのでは、こんな噂が、ご家来衆や町人どもに、少しでも知れたりしたら、また若し隣国のこの国をねらっているとの噂を聞きます、大魔王様の耳にでもはいったならば、いかがでありましょう。直ぐにも攻めてくるのではありませんか。嗚呼、桑原桑原。こんな国にでは、とても落ち着いて仕事などできません。 戴きました金はここにそっくり置いてまいります。その代わり、今日まで私ども二人、苦心してつくりあげましたこの世界にふたつとないみごとな、馬鹿と役立たずには見えない衣装、このまま持って隣の大魔王様のところに持ってまいりたく存じます。それでは王様わたくしどもは、ここでお暇たまわります。」

 すると王様、びっくり仰天、そんな噂が外に出ようものなら、たちまち王国はてんやわんやの大騒ぎ、隣の大魔王がこの時とばかり襲い掛かるは、必定とたちまち計算したあげく、「いやいや、これは 儂が悪かった。何、一寸この部屋が暗いものでな。うんうん、よくよく見ればこれは見事じゃ。なあ、大臣!」「はい、王様これは見事な珍品でございます。先ず世界のどこにもありますまい。」「よし、早速、皆にお披露目としよう」

 そこで、早速、大パレードをすることになった。そのパレード開催の告示にはこうあった。
“この度、我が偉大なる王様は、世界の誰も今だ着た事の無い「バカ者と役立たずの目にはみえない衣装」をおつくりになった。ついては、この結構なお衣装を召された、王様をとくと拝ませるからありがたく思え!
 なお、見えないと称するものは、たちまちに北の鉱山にぶちこむこととする。」

 そして、トランペットの音高らかに静々と王様の行列が城門から。街へとお出ましになった。
 得意満面の王様、みれば下着のままである。続く宰相もしかり。国民はこれを見ても陰ではくすくす笑っても声に出すことは、はばかった。王様のスパイがそこら中を嗅ぎまわっており、もしその耳に入れば、たちまちしょっ引かれて遠くの鉱山へ強制労働にやられて二度と帰れない怖い目にあうからである。

 町中の人々は歓呼の声を上げた。「俺たちの王様は世界一。バカと役立たずには見えないご立派な衣装をお召しになっているんだ!」「俺たちの王様は世界一。バカと役立たずには見えない衣装をお召しになっているんだ!」

 それを視ていた隣国のスパイは跳んで帰って大魔王様に見てきたことを報告した。

 大魔王様が静かに命じた。者ども。ちょいと一足、隣まで、バカ大将の身の程知らずの贅沢で、やせこけ不味くはあるが、どこの誰かの餌食になるぐらいなら、俺様が食ってやろうとぞ!と。
 そんなわけで裸の王様の国は、丸ごとあっというまに大魔王の餌食になったとか。

 その中にあの二人の詐欺師の仕立て屋の姿はどこにもなかったと言う。』