道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

バーダー・マインホフ 理想の果てに(シネマライズ・渋谷区宇田川町)

2009年08月06日 | 映画道楽
今日,渋谷のシネマライズで,映画「バーダー・マインホフ 理想の果てに」を見ました。

女性ジャーナリストのウルリケ・マインホフは,イランのパーレビ国王のベルリン訪問に反対するデモ隊の学生が警官に射殺されるという事態に大きな衝撃を受けます(注:映画に言及はありませんが,最近の研究の結果,学生を射殺したこの警官は旧東ドイツの国家保安省シュタージの手先であったという疑惑がもたれています。)。

同じ頃,ベトナム戦争に反対するため,アンドレアス・バーダーとグドルン・エンスリンというカップルは,フランクフルトのデパートに放火し,逮捕され,有罪判決を受けます。その後,バーダーらは上告し,その保釈期間中に海外に潜伏しますが,密かにベルリンに帰国したところを逮捕され,その脱走の手助けをしたマインホフは,バーダーやエンスリンと行動を共にすることとなり,ドイツ赤軍(RAF)を創設します。

当時,ベトナムにおいて跋扈していたアメリカの帝国主義を打倒するという目的自体は,当時の多くの若者の共感を得たのでしょう。

しかし,現実には,バーダー・マインホフのグループは,ヨルダンの砂漠において,イスラエルを敵視するアラブ人から破壊活動の手法を習った上で,ドイツ国内で銀行強盗,新聞社の爆破等の破壊活動を重ねていくことになります。もちろん,アメリカ帝国主義とは何ら関係のない市民も巻き添えにして。
やがてバーダー・マインホフのグループは逮捕されますが,これに続く第2世代のテロリストたちはさらに行動を先鋭化させていきます。在ストックホルムのドイツ大使館の襲撃,ベルリンの高等裁判所長官の暗殺,連邦検事総長の暗殺,実業家シュライヤーの誘拐,ハイジャックなどです。そして,そのことを知ったバーダーやマインホフたちは・・・

2時間30分という長時間の映画ですが、それでも映画のストーリーの展開は早く感じられます。
ドイツ赤軍の10年間の歴史を取り扱っているからです。

日本でも,新左翼の赤軍派グループは銀行強盗をしていますし(松江相互銀行米子支店強奪事件),また浅間山荘事件の前には総括と呼ばれるリンチ事件がありました。

とても重い映画です。
アメリカ帝国主義への反発はともかくとして,バーダー・マインホフのグループが実際に行った破壊活動は何一つ肯定することができません。しかし,どうしてこのように暴走してしまったのでしょうか。映画を見ても,その謎は解けませんでした。