活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

【6月30日】

2024-06-30 | 電子書籍

八甲田山の雪中行軍大量遭難事故は、「無能な指揮官の命令によって、登山経験のない素人が準備不足のまま知らない山に登山した」ということでした。第5聯隊長津川は第31聯隊福島大尉の雪中行軍計画を知り、自分のメンツ保全から急遽雪中行軍を指示、しかし準備期間は全くなく、現地のことを知る人はなく、地図もなく地理も全く無案内で始めたもので、さらに同行の大隊長の雪山素人ぶりは目に余るものがあります。一方で31聯隊の福島大尉はルート上の村民に饗応を指示、さらに教導も強要します。どの将校もまともな判断をできる人たちではありませんでした。事故後陸軍は大甘の処分を下します。軍隊は一人のミスは上官のミス、その上官のミスとつながるのでどうしても処分が甘くなり、無責任体質となってしまいます。太平洋戦争でもこれが大いに発揮されてしまい、戦略、戦術の不備をきたしました。著者は陸自3佐だった人で、軍隊の内情にも詳しく、また現在の青森第5連隊に勤務していたことで、八甲田の地理にも詳しく、多くの資料から真実を掘り起こしていると言えます。特に聯隊長津川へは厳しいです。新田次郎の小説や映画が真実だと思ったら大間違いで、映画を見たらこの本を読むといいです。

「八甲田山 消された真実」伊藤薫 山と渓谷社

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