活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

【8月29日】

2006-08-29 | 単行本
 気候変動の文明史の著者は環境気候学という分野を確立した人だそうです。人類1万年の文明の興亡を概観すると全ての文明は気候という環境要因によって左右されていることがわかります。過酷な環境の変化に対応すべく技術改良を重ねた結果現代があるのですが、環境の変化とは温暖化と寒冷化の繰り返しであり対応とはそれに伴う旱魃と洪水への対処ということです。現代はギリシャ文明末期の様相に近いと著者は言います。地球は間違いなく温暖化をめざしており、このまま行くと2050年頃に文明は滅亡するといいます。その最大の原因は水不足です。文明は洪水では滅びませんでしたが旱魃で滅んだそうです。中国を典型的な例が襲っていると思います。黄河に水はなくかつては三国志の舞台にもなった中原平野も砂漠化が進んでいます。
 今年の日本に水不足はありませんでしたが、2千年の歴史をみると大干ばつに襲われて政権が変わったことは何回もあります。しかしそれを乗り越えて(少ないながらも残っている)水と森の日本があるのは壬申の乱に勝った天武天皇のおかげと著者は言います。天武天皇は肉食禁止を言い、この後千年日本人は事実上の肉食をせず、稲作と漁労の食文化で生きてきたことがその理由なのだとか。
 牛や羊を飼い放牧することは森を破壊し砂漠化へと導くのだそうです。もともとそれしかできない土地に住んでいたとすればやむを得ないのでしょうが。
 どうも一神教的考え方、自然とは対決するものという考え方が地球温暖化の元凶ではないかいいます。日本人は地に風に水に火に神を感じあがめ共存してきました。この思想が必要なのではないかといいます。ふむ、日本はやはり神道が一番ふさわしいのかと思ったりしました。

「気候変動の文明史」安田喜憲 NTT出版
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする