平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

西郷どん 第9話 「江戸のヒー様」~文を破ったということは、島津殿の思い、わしの心に留め置いたということよ。

2018年03月05日 | 大河ドラマ・時代劇
 吉之助(鈴木亮平)と徳川斉昭(伊武雅刀)とのやりとりが上手いですね。
 斉彬(渡辺謙)からの書状を破り捨てる斉昭。
 書状の内容が気にくわなかったのかと思いきや、実は書状を隠蔽するためだった。

 いはく
「あの書状に何が書いておったか知っておるか?
 幕府の悪口じゃ。
 メリケンの脅しに屈して和親条約を結んだ幕府の悪口。
 それはつまり、徳川への悪口じゃ。
 文を破ったということは、島津殿の思い、わしの心に留め置いたということよ。
 わしも相当なくせ者じゃが、その方の殿には負けるわ」

 書状には〝幕府の悪口=井伊直弼の悪口〟が書かれていたので、これが露見すれば斉彬の立場が悪くなる。
 斉昭が「書状の内容、承りました」と答えていたら、斉昭の立場もまずくなる。
 だから両者にとって、ここは破り捨てるのが正解。

 破り捨てたことで、斉彬が斉昭の真意を理解するというのも面白い。
 斉彬と斉昭は腹芸で通じ合っている。
 これはまっすぐで単純な吉之助には到底できないこと。

 吉之助は真っ白なんですね。
 薩摩の田舎侍で尊皇攘夷にも染まっていない。
『花燃ゆ』の吉田松陰門下の長州藩士とは全然違う。
 今回は権謀術数の政治の世界を垣間見た感じ。

 紀尾井町で水戸の斉昭の立場を説明したのも上手い。
〝紀州〟〝尾張〟〝井伊〟
 本来なら〝井伊〟の代わりに〝水戸〟が入るべきなのに入っていない。
 これで斉昭の水戸藩が幕府の主流派からはずれていることが明確に分かる。
 心憎い表現だ。
 ………………

 慶喜(松田翔太)の登場のさせ方も上手い。
 品川の宿で女性を侍らせて酒を飲む粋な町人ふうの男ヒー様。
 そのヒー様は慶喜だった。
 こんな形で西郷とのファーストコンタクトを持ってくるとは!
 この時期、西郷はお庭方をやっていて、薩摩藩士は品川でも遊んでいたわけだし、史実のアレンジの仕方としては悪くないと思う。

 慶喜も今作では粋で聡明な人物として描かれるようだ。
 今までだと、頭の切れる秀才だが胆力がない、みたいな描かれ方だったが、果たして今回は?
 鳥羽伏見の戦い以降の慶喜はどう描かれるのだろう?
 西郷とは友情が育まれるのかな?

 斉昭の描写といい、政治要素が上手くブレンドされていて、いい感じだと思います。
 大河ドラマでは、史実とフィクションのせめぎ合いが問題になるが、今回はそのひとつの答え。
 フィクションかくあるべし。


※追記
 江戸弁が早口で聞き取れない、というのは朝ドラの『あさが来た』でも描かれていましたね。


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5 コメント

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新たな舞台 (TEPO)
2018-03-05 13:19:38
「翔ぶがごとく」での政治描写の詳細は大分前なので忘れてしまいましたので比較対象は「篤姫」。
「篤姫」では斉彬・阿部正弘は現実主義の開国派で、「分からず屋の攘夷派」である徳川斉昭はどちらかと言えば「難物」でした。
しかし、一橋慶喜擁立という一点でこの三者は結束するわけなので、斉彬をやや「攘夷寄り」のスタンスに描く方が自然なのでしょうね。
「篤姫」では「難物」斉昭に気に入られる場面が一つの見せ場でしたが。
今回の吉之助とのやりとりを見る限り、斉昭は随分と親切な殿様でしたね。

当のヒー様こと慶喜を演じる松田翔太さんには既視感があります。
巷で「遊び人」を演じる後の最高権力者、すなわち「平清盛」での雅仁親王 → 後白河帝・院と同じパターン。

「こやつは嘘をつけない目をしているから一生貧乏」というコメントは、一目で吉之助の本質を見抜いた慧眼を示すと同時に、一部吉之助のことを買っているようにも見えます。

ところで、ここで第2話で売られていった少女ふき (およし)と再会しました。
ヒー様に身請けされる希望を持っているようですが、もしもそれが成ったならば慶喜の側室。ちょっと調子が良すぎる気もしますが。
「貧乏が嫌い」な彼女も、どこかに吉之助を慕う思いもあるでしょうから、なかなか面白い恋愛模様となるかもしれません。
ふきの同僚には玉(田中道子)というちょっと目立った美女もいて、一度限りの場とは思えません。
諸藩の侍が遊ぶという品川宿の磯田屋は、今後さまざまな政治工作や情報収集の舞台となってゆくのでしょう。

最後に斉彬と吉之助。
斉彬は「相撲の西郷吉之助」として目をとめてはいたものの、「やっせんぼ」の小吉少年と同定したのは今回初めて、という設定でした。
吉之助の斉彬崇拝は今に始まったことではありませんが、斉彬側から見ての絆は今回でいっそう深まったというわけです。
「真っ白な吉之助」を「あの西郷」に作り上げてゆくのは100%斉彬なのでしょうね。
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Unknown (Unknown)
2018-03-05 19:40:34
水戸斉昭は女好きの馬鹿殿様と思ったら、意外とそれなりに考えてますね。
書状の対応でも、憤慨した吉之助を痴れ者と扱わずに幕府の内情や自分と斉彬の立場を教えたりと。
斉昭は吉之助の事を気に入ったんだと思います。
これは吉之助が無骨で真っ白な田舎の若造ですが、逆に主思いの面白い男だと斉昭は思ったんでしょうかね。

松田翔太のヒー様は面白いですね。
奔放で頭の切れ女好きで女に優しい若殿様は松田翔太に似合います。
吉之助の牛にした絵を描いてましたが、あれは男を描くのが嫌なのと。
ふきが吉之助のことを思ってるんじゃないかとムッとしたんだと思います。
おそらくふきはヒー様の愛人になるんでしょうかね。
吉之助と慶喜が面識あるのは、その後の伏線に使ええそうですね。


翔ぶが如くでの西田西郷は和親条約での幕府の対応はごろつき(アメリカ)に短刀を突きつけられて女子(幕府)のようだと斉彬に憤慨して話してました。
しっかりした見識のあり気性の激しい侍でしたよ。
因みに西郷どんで井伊直弼を佐野氏は演じてましたが、実は佐野氏は翔ぶが如くで有村俊斎を演じてましたよ。

そうそう、吉之助が怪我をしたエピソードは眉唾説があります。
実は西郷隆盛は右腕で書いた書があるんですよ。
横堀三助も架空人物説のようです。
また、今回吉之助が任命された御庭方という地位は、隠密が任務で、斉彬の隠密を勤めていた西郷隆盛は
刀が使えないという噂を流すためにでっちあげたんでしょう。
返信する
Unknown (ロギー)
2018-03-05 22:17:11
↑の 19:40にコメントを書いたのは自分です。
ハンドルネームを忘れて申し訳ありません。

そういえば、正助は江戸に向かった吉之助のことを喜んでる反面あせってますね。
おそらくこれが後の対立の伏線ですかね。
返信する
引きずってしまう (コウジ)
2018-03-06 09:18:53
TEPOさん

いつもありがとうございます。

そうなんですよね。
舞台が同じことから、どうしても「篤姫」と比べてしまうんですよね。
「篤姫」では斉彬と斉昭はそんなに仲が良くなかったので、今回の描写は違和感を抱いてしまう。
なので、歴史物で初めて見る作品って大事ですよね。
そこで得た歴史観をどうしても引きずってしまう。

引きずってしまうと言えば、松田翔太さんもそうですよね。
おっしゃるとおり、どうしても「清盛」のごっしーを重ね合わせてしまう。
松田翔太さん、「篤姫」では、14代将軍の家茂を演じておられましたが、今度は15代将軍。
こうなったら、すべての将軍を演じてほしい(笑)

ふき (およし)は慶喜の側室になるんでしょうね。
ブログ「見とり八段」さんが史実では「慶喜の側室に新門辰五郎の娘およしがなる」と書かれていましたが、ふきの源氏名もおよし。
どこかで新門辰五郎と繋がるのでしょうか。

斉彬の「やっせんぼ」の少年認定シーンはよかったですね。
渡辺謙さんの圧倒的な風格!
そして、
>「真っ白な吉之助」を「あの西郷」に作り上げてゆくのは100%斉彬
この主従、いいドラマになりそうです。
返信する
隠密・西郷 (コウジ)
2018-03-06 09:47:34
ロギーさん

いつもありがとうございます。

>斉昭は吉之助の事を気に入ったんだと思います。
なるほど。
それは言えていますよね。
あそこで口答えをした吉之助を斉昭は「面白い」と思った。
斉昭は、斉彬が書状を送るほどの人物で、「わしも相当なくせ者じゃが、その方の殿には負けるわ」と言える人物なので、今作では、それなりの名君という設定なのでしょうね。
となると、井伊直弼はどう描かれるのか?

ヒー様に関しては、
>男を描くのが嫌
>ムッとした
実に人間的ですよね。
そんな慶喜が今作でどんな役割を演じるのか?
単なる〝最後の将軍〟という役まわりだけではない感じ。
斉昭といい、今作は魅力的な人物が多いですよね。

吉之助に関しては、〝和親条約に怒る見識のある気性の激しい侍〟の方が史実に添っている感じがしますね。
あの時代で、政治的に真っ白なはずがない。
それが西郷なら尚更。

本作は〝わかりやすさ〟を柱にしているようですので、真っ白な吉之助を通して、視聴者に歴史を一から説明しているのかもしれません。

西郷の右腕のケガは偽計だった説。
面白いですね。
言われて思い出しましたが、お庭方って〝隠密〟なんですよね。
隠密なら、西郷には写真がなく、人相がよくわからない、ということにも合致する。

正助に関しては、定石どおりの展開ですよね。
大久保はダークサイドに落ちてしまうのでしょうか?
中園ミホ作品では、ドロドロした悪人は出てこないのですが、果たして?
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