平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

天皇の料理番~「ジュテームって何ですか?」 伏線が回収された愛情溢れるシーン

2015年07月07日 | 職業ドラマ
「ジュテームって何ですか?」
 自分の命が幾ばくもないことを知っている俊子(黒木華)は、ずっと聞きたかったことを尋ねた。
 返答に困る篤蔵(佐藤健)。
 長い間があってこう答える。
「食ういうことじゃ。今日も明日も明後日も、私はあなたより長生きしますって、そういう意味じゃ」

 上手い脚本ですね。
 ここで、篤蔵に「……あ、愛してるってことじゃ」というせりふを照れながら言わせてしまったら、それはフツーの脚本。
 でも、この作品の脚本、森下佳子さんは、そんな安直なせりふを書かなかった。

 篤蔵は、俊子が栄養のあるものをどんどん食べて元気になり、長生きすることを望んでいる。
 相手が自分より長生きすることが愛。
 これ以上の愛情表現があるだろうか。
「愛してる」って直接的な言葉より、ずっと篤蔵の気持ちが伝わってくる。

 俊子が「ジュテームって何だろう?」という疑問をもったのは、確か第4話くらいだったと思うが、その答えを今回まで保留にしてきたのも上手い。
 引っ張って引っ張って、最期の最期にやっと持ってきたかって感じ。
「ジュテーム」って言葉は、ずっと俊子の心に引っかかっていた言葉だったんでしょうね。

 今回は伏線が一気に回収された。
 <鈴><かたつむり><針作業>、そして<ジュテーム>。
 実にきめ細やかで丁寧な脚本だ。行き当たりばったりの大味でない。

 今回、一番グッと来たのは、朝食をつくっている篤蔵を楽しそうに見ている俊子のシーン。
 夫は病気の妻のために懸命に食事をつくり、妻はそんな夫の姿を、微笑ましく見ている。
 愛する夫の姿を目に焼きつけるように。
 せりふがなく、静かだが、実にふたりの気持ちが伝わってくるシーンだ。

 この作品は、まさに手の込んだ、上質な料理ですね。

コメント
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