老朽化したバスルーム。
鎖に繋がれた男たち。
中央に自殺した死体。
ホラー映画は「非日常」。
いきなりこの「非日常」のシーンからドラマはスタートする。
このインパクト!
さらに恐怖は深まる。
殺人鬼ジグソウキラーからのメッセージ。
「家族とおまえが生きのびるためにアダムを殺せ。6時間以内に」
ズボンのポケットや財布などから出て来るキイワードを書いたメモ。
メモをたどっていくと、のこぎりや着信専用の携帯電話などのアイテムが発見される。
そして会話の中で語られる殺人鬼ジグソウキラーによる過去のいまわしい犯行。
その奇怪な姿。
新しいホラーのスタイルだ。
まず「非日常」から始まる。
「13日の金曜日」など通常は日常シーンから「非日常」が訪れるが、この作品は逆。
そして、そこに置かれた「物」が意味を持ち、恐怖のアイテムになってくる。
例えばのこぎり。
これは脱出したければ、自分の足をそれで切断しろという犯人のメッセージ。
怖い。
そして満を持して登場する犯人ジグソウキラー。
過去、ジグソウキラーの起こした事件はどれも悲惨。
アマンダという女性は時間が経つとアゴを引き裂かれ死に至る装置を頭に付けられている。アマンダが助かるためには、目の前にいる男を殺し、胃にある鍵を取り出さなくてはならない。
作品はこれらを回想の映像で見せる。
ここで陰惨なスプラッターシーンを見せ、観客をさらなる恐怖に導くという仕掛けだ。
この様に今までとは違った文体で表現されたこの作品。
さて次なる恐怖は何か?
当事者であるふたり(ドクター・ゴードンとアダム)だ。
作家は彼らに恐怖の叫び声をあげさせなければならない。
しかし「6時間」というタイムリミットがあるため、彼らはそれまで恐怖に取り憑かれない。理性でこの急場を解決しようとする。
ここがこの作品の弱い所。
主人公たちはまだ安全な所にいるから、少し中だるみ。
作家はこの中だるみを埋めるために、監禁されるゴードンの家族の恐怖シーン、ジグソウキラーを追う刑事のひとりが殺されるシーン、ゴードンとアダムの秘密を描いた。
それはそれでシーンとして怖いのだが、やはり主人公たちの危機までに時間があるから恐怖が盛り上がって来ない。
「部屋に誰かいると言って突然襲われる娘」「殺人鬼のアジトでマネキンの赤い布を一枚一枚めくっていく刑事」「アジトに帰ってくる殺人鬼」のひとつひとつは怖いが、それぞれが独立していて積み重ねられた恐怖ではない。
さてこのジグソウキラーという殺人鬼。
犯行の動機は「人が生命を大事にしないこと」。
他人の命を奪って生き延びることで、命の大切さを認識しろというのが彼の主張。
面白い。
人の命を奪う殺人鬼が「命を大事にしよう」と言う。
ギャグと言えばギャグだし、狂気と言えば狂気になる。
そして、ネタバレになるので書かないが、この主張がラストの驚くべき犯人の正体に繋がっている。
★追記
作家は「6時間以内にアダムを殺せ」というプロットだけでは物語を展開できないと思ったのか、「ジグソウキラーを追う刑事」というもうひとつのプロットを置いた。刑事はドクター・ゴードンを犯人だと睨み、カメラマンに彼を追わせる。そしてカメラマンが撮った写真の中に犯人の顔が……。
ひとつのプロットで展開が難しくなった時、別のプロットを置いてみる。
覚えておきたいテクニックだ。
そして、この2プロットが物語を錯綜させ、犯人の正体を驚くべきものにした。
ミステリーには有効な手法であろう。
(「犬神家の一族」なども同じだった。犯人と静馬の2つのプロットが事件を複雑にした)
鎖に繋がれた男たち。
中央に自殺した死体。
ホラー映画は「非日常」。
いきなりこの「非日常」のシーンからドラマはスタートする。
このインパクト!
さらに恐怖は深まる。
殺人鬼ジグソウキラーからのメッセージ。
「家族とおまえが生きのびるためにアダムを殺せ。6時間以内に」
ズボンのポケットや財布などから出て来るキイワードを書いたメモ。
メモをたどっていくと、のこぎりや着信専用の携帯電話などのアイテムが発見される。
そして会話の中で語られる殺人鬼ジグソウキラーによる過去のいまわしい犯行。
その奇怪な姿。
新しいホラーのスタイルだ。
まず「非日常」から始まる。
「13日の金曜日」など通常は日常シーンから「非日常」が訪れるが、この作品は逆。
そして、そこに置かれた「物」が意味を持ち、恐怖のアイテムになってくる。
例えばのこぎり。
これは脱出したければ、自分の足をそれで切断しろという犯人のメッセージ。
怖い。
そして満を持して登場する犯人ジグソウキラー。
過去、ジグソウキラーの起こした事件はどれも悲惨。
アマンダという女性は時間が経つとアゴを引き裂かれ死に至る装置を頭に付けられている。アマンダが助かるためには、目の前にいる男を殺し、胃にある鍵を取り出さなくてはならない。
作品はこれらを回想の映像で見せる。
ここで陰惨なスプラッターシーンを見せ、観客をさらなる恐怖に導くという仕掛けだ。
この様に今までとは違った文体で表現されたこの作品。
さて次なる恐怖は何か?
当事者であるふたり(ドクター・ゴードンとアダム)だ。
作家は彼らに恐怖の叫び声をあげさせなければならない。
しかし「6時間」というタイムリミットがあるため、彼らはそれまで恐怖に取り憑かれない。理性でこの急場を解決しようとする。
ここがこの作品の弱い所。
主人公たちはまだ安全な所にいるから、少し中だるみ。
作家はこの中だるみを埋めるために、監禁されるゴードンの家族の恐怖シーン、ジグソウキラーを追う刑事のひとりが殺されるシーン、ゴードンとアダムの秘密を描いた。
それはそれでシーンとして怖いのだが、やはり主人公たちの危機までに時間があるから恐怖が盛り上がって来ない。
「部屋に誰かいると言って突然襲われる娘」「殺人鬼のアジトでマネキンの赤い布を一枚一枚めくっていく刑事」「アジトに帰ってくる殺人鬼」のひとつひとつは怖いが、それぞれが独立していて積み重ねられた恐怖ではない。
さてこのジグソウキラーという殺人鬼。
犯行の動機は「人が生命を大事にしないこと」。
他人の命を奪って生き延びることで、命の大切さを認識しろというのが彼の主張。
面白い。
人の命を奪う殺人鬼が「命を大事にしよう」と言う。
ギャグと言えばギャグだし、狂気と言えば狂気になる。
そして、ネタバレになるので書かないが、この主張がラストの驚くべき犯人の正体に繋がっている。
★追記
作家は「6時間以内にアダムを殺せ」というプロットだけでは物語を展開できないと思ったのか、「ジグソウキラーを追う刑事」というもうひとつのプロットを置いた。刑事はドクター・ゴードンを犯人だと睨み、カメラマンに彼を追わせる。そしてカメラマンが撮った写真の中に犯人の顔が……。
ひとつのプロットで展開が難しくなった時、別のプロットを置いてみる。
覚えておきたいテクニックだ。
そして、この2プロットが物語を錯綜させ、犯人の正体を驚くべきものにした。
ミステリーには有効な手法であろう。
(「犬神家の一族」なども同じだった。犯人と静馬の2つのプロットが事件を複雑にした)