2025年3月:日経サイエンス記事 P24「小さな怪物 原始ブラックホール」から引用
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小惑星一個分の質量をもつ原子サイズのブラックホールが約10年に1度、内部太陽系を通過しているかもしれない。
ビッグバン直後に形成されたと理論的に考えられているこれらの「原始ブラックホール」は宇宙の物質のほとんどを占めているとされる見えないダークマターを説明できる可能性がある。
そしてそれがらが月や火星のそばをかすめたら検出できるはずである事が新たな研究によって示された。
原始BHは空間が一瞬にして大きく膨張したと考えられる宇宙誕生直後に容易に生じただろう。
膨張の間、空間密度のごく小さな量子揺らぎが大きくなり、いくつかの場所があまりに高密度になったために崩壊し宇宙のあちこちにBHが出来た可能性がある。
原始BHによってダークマターが完全に説明できる、とした場合、一部の理論んいよれば原始BH1個の質量は10^17~10^23グラムになる。(注1)
大型の小惑星一個分の質量で、それが原子サイズに圧縮されているのだ。
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フィジカルレビューDに最近発表された記事によると、原始BHがダークマターであった場合、その一つが約10年に一度、太陽系を勢いよく通過している可能性がある。
そうして、このBHが惑星や大型の衛星のそばを通り過ぎるとその天体を突き動かして軌道からそらし、その変化は現在の測定器で測定できる大きさである。(カリフォルニア大のSarah R. Geller 学部生のTung X. Tran.)
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この論文に刺激されてYu-Dai Tsai は「オシリス・レックスのベンヌの追跡データを調べる事でダークマターの影響を確認できる」とした。
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ダークマターの候補としての原始BHの魅力はますます高まっている。
ダークマターは通常の物質に対する重力効果を通じてしか「見る」事が出来ず、その正体は依然としてつかみどころがなく、多くの有力な理論が棄却されてきた。
この数十年間、ダークマターはいわゆるWIMP(弱く相互作用する重い粒子)の形態をとる可能性が高いとされてきた。
しかしWIMPの検出を目指した高精度実験は(引用注:今の所)すべて空振りに終わり、粒子加速器でもその兆候はとらえられていない。
「数十年にわたって有力候補と考えられてきたWIMPが窮地に追い込まれており、あらゆる可能性がテーブルの上にある」。
「原始BHの人気は非常に高まっている」。
物理学者はまた「ダークマターは重力を介してのみ通常の物質と相互作用する」という可能性を受け入れ始めている。
重力に加え弱い力の相互作用を通じて通常の物質と相互作用するという「WIMP」とは異なり、BHは重力を通じてのみ検出されるだろう。・・・
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注1:10^17グラムが通説ではよく知られた「原始BHの下限の質量」となっているがこの数字のおおもとは「ホーキング放射理論によるBHは最後は蒸発して消え去る」が元になっている。
「上記数字より小さな質量のBHは宇宙誕生で多数発生するものの順次ホーキング放射で質量をへらし、現時点ではすべて消え去ってしまった」という認識が「この業界の常識となっている」のです。
しかしながら当方の見る所「原始BHはプランクスケールに到達した辺りでホーキング放射は実質上とまり、そこで安定している」となります。
従って「ダークマターの正体は原始BHだ」という日経サイエンスの記事の主張は「そこまでは正しい」のですが「ダークマターを構成しているBH一個あたりの質量をまるで間違えている」という事になるのです。
ちなみに当方が主張しているプランクスケールのBHの質量は「一般的なコピー用紙(坪量 64g/m2)を 0.5mm×0.3mm に切ったものの質量くらい」であって、要するに「チリゴミ、ほこりぐらいの重さ」=「0.011ミリグラム程度」なのです。
さて1円玉の重さが1グラムですからほぼその10万分の1の重さのBH、それが驚くべき事にダークマターの正体なのであります。
・・・というような話をしても2025年現在では残念な事に「だれも本気にはしない」のです。
しかしながら「そのような軽いBH」である為に決して地上での観測は成功せず、また「月や火星の搖動を調べる事」でも決して見つかる事は無いのです。
さてそうであれば人類は「最後の最後になってしぶしぶ『ダークマターはプランクスケールの原始BHである』という結論を認めざるを得なくなる」と言うのが当方の読みであります。
つまりはホームズが喝破したように「どれほど可能性が小さくても最後に残ったやつが犯人」なのです。
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