特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その7・ 光速不変を使わないローレンツ変換の導出

2023-02-07 05:52:33 | 日記

参考資料 : http://www2.physics.umd.edu/~yakovenk/teaching/Lorentz.pdf

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ここでいままでやった事を振り返っておきます。

スタートラインはこの式からでした。

(2)式・・・x’ = Ax + Bt,
(3)式・・・t’ = Cx + Dt,

そうして(2)式は参照フレームO'の原点の移動を考えると

x'= A(x − vt)・・・(5)式

となるのでした。(注1)

ここまでは EMAN物理 :ローレンツ変換の求め方 : https://archive.ph/Evswb :ほぼと同じです。

そうしてここからアインシュタイン流の「光速不変を使うやり方=ローレンツ変換のみを目指す方法=特殊解としてのローレンツ変換を求めるもの」とL.A.Parsさんに代表される「一般解としての2つの慣性系の間の変換を求めるやり方」と、二筋に道が分かれます。(注2)

それでこの後はアインシュタイン流は「光速不変」を使って計算は一本道で進んでいく様です。

他方で一般解を求めるやり方では

・運動の相対性
・変換が群をなす

という2つの前提を使います。

それでどーやら「・変換が群をなす」という前提を使うのが「光速不変を使わないやり方のポイント」という事である様です。

他方で「・運動の相対性」については「光速不変を使うやり方」においても明示的、あるいは暗示的に使っている様に見えます。(使っている場合もあります、、、程度か。)



それで「・変換が群をなす」というのは速度V1で一度変換をしてその結果を速度V2でもう一度変換をする。

そうやって得られた結果は速度V3で変換した結果と同一になる、という事を示しています。(注3)

そうであれば 変換(速度V:x ,t )=(x' ,t' )について

変換(速度V3:x ,t )=変換(速度V2 :x' ,t' ) 

=変換(速度V2 :(変換(速度V1:x ,t )))

=(x'' ,t'' ) が成立

従って

変換(速度V3 )=変換(速度V2 (変換(速度V1)))・・・①式

という関係が成立している事になります。

それでこの①式を使う、と言うものです。

ちなみに速度V3はそれぞれの変換様式に従った速度の合成則によって

V3=変換速度合成則(V1,V2)

で求められることになります。

そうであれば「変換が群をなす」ということは「それぞれの変換様式に対応した速度の合成則が存在する」という事と同義となります。



「・運動の相対性」というのはO系から見るとO'系は速度VでプラスX方向に運動しているとなるが、O'系から見ればO系は速度ーVとなり、従ってマイナスX方向に運動している事になる、と言うものです。(注4)

これに関連して変換がらみでは

速度Vで変換してその結果を速度ーVで変換すると元に戻る、という事になります。

つまり

変換(速度ーV(変換(速度V:x ,t ))=(x ,t )

=何も変わらない

=恒等変換になる・・・②式

という事になります。

それで②式を使うのです。



以上の2つの前提を使うと「光速不変を使わなくともローレンツ変換がでてくる」、そうして「ガリレイ変換」と「時空内でのユークリッド変換」という「残りの2つの変換も出てくる」という事になるのでありました。



注1:ここまでの導出については「その2・ ローレンツ変換を調べてみた・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=28739 :および 光速不変を使わないローレンツ変換の導出:を参照願います。

注2:1921年 L.A.Pars, Philos.Mag. 43,249(1921) : https://www-tandfonline-com.translate.goog/doi/abs/10.1080/14786442108633759?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

このあたりの年代を始めとしている様です。詳細については「その3・ローレンツ変換の導出とその歴史的経緯・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29088 :を参照願います。

注3:ビクターさんの資料では明確になっていない事、それは相対速度Vについての定義でした。

そうしてこれはアインシュタインが定義したように「自分が持っている時計と物差しを基準として相手の速度を観測する」と言う事がビクターさんのお話でも前提条件になっているととらえてよさそうです。

ちなみにこの相対速度Vについては特殊相対論が成立している世界ではレーダーによる相手の速度の測定(=光を使った速度の測定)結果と同じものとなります。

特に「・変換が群をなす」の所ででてくるV2についてはV1で移動している観測者が測定対象の2をレーダーで観測した場合に得られる相対速度がV2である事に注意が必要です。

同様にしてV1とV3はもう一人の観測者(=自分は静止していると自認している観測者)がレーダーをつかって測定対象の1の速度(=V1 )と測定対象の2の速度(=V3 )を測定した結果得られた測定値となります。

それでこの件、内容詳細については光速の測定と光速を使った測定:を参照願います。

注4:この「速度Vは相手から見れば速度ーV」という話、ガリレイ変換の世界に住む我々の日常感覚では「自明な事」と思われますが、特殊相対論の内容を知っている状況ではそれほど「自明な事である」とも言い切れません。

何となればあいてはこちらとは違う時間の進み方(=違う時計)、そうして長さの違う物差しを持っている事を知ってしまっているからです。

さてそのような状況で本当に「速度Vは相手から見れば速度ーV」と言い切れるのでしょうか?

このあたり、もう少し調べてみる必要がありそうです。


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.md/KUG9M