特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その3・ 相対速度は光速を超える事が可能か?

2022-06-04 04:21:59 | 日記

もう一度「相対論電卓の速度合成式がどうやって出てきたのか」を確認します。

【相対論】合成速度の導出 : https://blog.butsuri.org/6639/ :を参照します。

そのページにある「問題設定」に書かれた絵とその説明文のみを参照します。

こちらの方の問題設定に翻訳しますとK0がボブ君、K1がO君、K2がアリスになります。

そうしてボブ君を静止させるためにこの状況にボブ君と同じ方向に同じ速度0.8Cで走る慣性系を立てたのでした。

それはまあ簡単に言いますと「ボブ君視点で状況を見てみた」という事になります。


こうやって「視点の変更をしてはいけない」という話をしました。

従って「相対論電卓では計算できない」みたいな主張をしました。

当初の我々の設定ではO君が静止していてそれに対してアリスとボブが両側から0.8Cで近づいてくる、というものでしたから、、、。

しかしながらこの状況、アリスとボブがO君の所ですれ違った後、今度はお互いに離れていきます。

そうなりますとO君から見てボブ号は左に、アリス号は右に進みます。

そうなった時点でのO君を起点とした速度ベクトルを描きますと、O君からボブ号へ、それからボブ号からアリス号へ速度ベクトルを描く事ができます。

そうしてO君からアリス号へも速度ベクトルが書けて、そこで2つのルートを通った速度ベクトルは合流します。

そうやって描いた絵と「おーにしさんの絵」を比べますと「O君からボブ号へ」がV1、「ボブ号からアリス号へ」がV2に、そうして「O君からアリス号へ」がVに相当する事がわかります。

つまり「相対論的な速度合成則がそのまま使える状況である」という事になるのです。

但し通常はV1+V2=Vの形で使いますので、V1とVが分かっていてV2が不明である、コトバを変えますと「V2が知りたい」と言う場合は「相対論電卓で速度の合成計算の逆計算をする」、つまり「V2にそれなりの数値をいれてVの値がー0.8Cになるような数値をさがす」という事をやればよいのです。

もちろんV1には0.8Cが入ります。

そうやれば「相対論的速度加算の式を使ってボブ君とアリスとの相対速度が求まる」というあります。

つまり「工夫は必要ですが、視点の変更なしで相対論電卓をポチってよい」という事になります。


追記
ちなみにういきの「光速」:https://archive.fo/4LAwL :のページに「接近速度」という章がありそこに上記で議論している状況と全く同じ状況についての説明があります。

『二つの物体が互いに向かい合う方向に運動しており、それぞれある慣性系における速度が0.8cであったとする。このとき、二つの物体は2倍の1.6cの速度で接近していることになる。これを接近速度とよぶ。ただし、接近速度はある系におけるどんな物体の速度も表していないことに注意が必要である。』
・・・
と説明し、要は「2つの物体の相対速度は1.6Cと光速をこえるが、これは速度ではないので光速を超えても問題ない」と主張しています。

しかしながら「この説明は誤り」であって、少なくとも「特殊相対論の流儀では計算可能であり、その数値は光速Cを超える事はない」というのが「この場合のオーソドックスな理解」となっています。

ちなみに「英語版ういき 光速」のページには上記の様な記述はありません。
https://archive.fo/E9pIg


追伸の2
「相対論の速度合成のロジック」ではボブ号からアリス号をみた時、あるいはその逆にアリス号からボブ号をみた時の相対速度は「静止系から観察した場合の相対速度と違う値になる」という事になります。

静止系であるO君からすれば「ボブ号とアリス号との間の相対速度は1.6Cであるはずだ」となるのですが、「相対論的速度の合成則」は「そうはならない」と言います。

まあそれが「現状のオーソドックスな考え方」という事になりますが、当方はその計算方法には疑問をもっています。

http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=26832


追伸の3
「おーにし」さんのブログ :https://blog.butsuri.org/6639/ :を見てもらえば合成式が書いているのですが、一応ここにも書いておきます。

V=(V1+V2)/(1+V1*V2/C^2)

上記本文の議論では、V1とVがO君が静止系から観測している速度でV2が「ボブ号からアリス号へ向かう速度ベクトル」。(「O君からボブ号へ」がV1ベクトル、「O君からアリス号へ」がVベクトル)

もちろんこの計算のベースはO君が立つ静止系であれば、すべての数値はその静止系に換算されていなくてはならない。

そうでなくては上で書いた合成式の意味が無くなる。

そうなるとV2の値はボブ号の時計と物差しで測ったアリス号との相対速度(ボブ~アリス)のO君観測系へ変換した値でなくてはならない。

・・・と言うように議論を進めるならば、V2の値は1.6C以外の値をとるはずがない、という事をベクトル加算式は示しているし、当方もその様に同意するのである。

だがしかし「相対論電卓による計算」によればV2の値は0.9758Cとなる。(相対論的速度の合成則はそのように主張する。)


・・・1.6Cは0.9758Cとはイコールではなく、そうであればここには明らかな矛盾・パラドックスがあります。


追伸の4
一応0.9758Cが相対論的速度の合成則による解である事を相対論電卓で示しておきます。

0.8C=240000km/S<--V1
-0.9758C=-292524.8/s<--V2

https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228695

ポチりますと
加算した速度 v -239,999.88 km/s=-0.8C
を得ます。


追記の補足
>ただし、接近速度はある系におけるどんな物体の速度も表していないことに注意が必要である。

ういきの表現はこうなっているが、「相対論の合成則は独立事象間の速度合成はできない」とするならば、これは妥当であるように思われる。

そうして「ガリレイ変換」においてはそのような縛りは見当たらず、どのような慣性系の間でも相対速度の計算が可能である。

ちなみに独立事象でない系=従属事象である系の代表は「2段ロケット」である。

初段のロケットの速度をV1,その初段ロケットから見た2段目のロケットの速度をV2とした時(もちろんローレンツ変換が必要となる)、地上から観察される2段目のロケットの速度Vを求める式が相対論の速度合成式である。

この場合V2の値はV1の値の従属変数となり(それはつまりV1の値によるローレンツ変換を考量しないとV2の値が決められないという事である)V1の値と独立には決める事ができない。

物理的に因果関係がある場合に限定、といってもよさそうである。

他方で上記のボブとアリスの宇宙船はそれぞれの船の(基準慣性系に対する)速度は独立に決定する事ができる。

従ってこの場合はこの合成則を使って相対速度を求める事はできないのである。

ちなみにこの合成則の例外が光である。

光の速度CはどのようなV1の速度であろうともV2としてはCとなる。(光速は一定である、という実験事実の反映。)

初段ロケットから発射された光は初段ロケットから見ても、地上から見てもCなのである。


どーやらこれがこのパラドックスの解である模様。

ただしこの加法則は0<V1,V2<or=Cである必要がありそう。

V1*V2<0の時は適用外??



蛇足
さて本当に相対論と言うものは手強いものでありますなあ。

しかしながら「双子のパラドックスを解く事」がこれほどの広がりを持つとは、驚きであります。

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/tKnGn