「その2・ マイケルソン・モーレーの楕円(MMの楕円)・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=28313 :では最後に以下の様な事を書きました。
『・・・ちなみに2次元のミンコフスキー図式上では光をローレンツ変換した場合の状況を表すことができない模様です。
しかしながら3次元(空間2次元+時間軸)ミンコフスキー図式を使えば表現が可能となりそうです。』
以降のページではこれについて書いていこうと思います。
まあしかし余談ではありますが「ミンコフスキー図」というのはあまり好きではありません。
ういきなどを読んでいるとローレンツ変換あたりでミンコフスキー空間がでてきてローレンツ変換の具体的な形などという所でsinh(Θ)やらcosh(Θ)やらがでてきて、そこでもう頭が受け付けなくなります。(注1)
三角関数はSIN、COSで十分である、と言うのが持論であればsinh(x) : ハイパボリックサイン :などという存在をつかう説明などは当方にいわせれば「道を外れた外道の説明である」となります。
まあしかしながらMMの楕円が「ミンコフスキー図」に現れ、しかもローレンツ変換がらみで出てくるのですから、ここは仕方がありません。
あまり「好き嫌いを言わずに説明する事」と致しましょう。
とはいいましても「sinh(x) : ハイパボリックサイン :などという存在をつかう説明」などは致しません。(と言うよりは、もとよりその様な説明はできないのですから、、、。)
さてミンコフスキー図ではローレンツ変換がどのように表されるのか説明しましょう。
その状況を表したのがこの絵です。: https://archive.ph/ND6P3
それでsinh(Θ)やらcosh(Θ)などと書いてある「禍々しい文字」は無視していただいてかまいません。
X軸は距離でY軸は時間軸(秒)ですが光速CをかけてX軸と揃えてあります。
こうする事で光が走った経路がミンコフスキー図上では45度の直線で示されます。
黒の直交座標が基準慣性系を示すと思っていただいてOKです。
それに対して速度VでXプラス方向に運動している慣性系=MM干渉計が赤字で書かれた「ひし形座標」となります。
この時、ひし形の単位ブロックの面積は元の黒座標にある単位ブロックの面積と同じになるようにします。(注2)
それからこの絵の下の説明書きによればβ≒0.66である、と。
しかしながらグラフから読み取ったβはβ≒0.58です。
β=V/CですのでV≒0.58Cという事になります。
この時赤色のX軸は黒色のX軸に対して角度Θで立ち上がっています。
同様にして赤色のY軸は黒色のY軸から角度Θで離れています。
そうしてtan(Θ)=0.58=βとなっています。
それからこの絵では光が走った軌跡は青色の45度の線で書かれてあります。
この線は黒色座標でも赤色座標でも真ん中を走る様に描かれます。
さてこの絵がどうやってローレンツ変換を表しているのか、説明しましょう。
黒のX座標で7ブロック右へそこから上に9ブロック持ち上げた点を考えます。
この点は7ブロック=7C進むのに9秒必要でした。
つまり速度V1=7/9=0.777・・・Cという事になります。
それでこの点を通る直線を原点から引きますとこれが速度V1の物体が時空を移動した事を表すミンコフスキー図上での表現となります。
次にその点を速度Vで移動しているMM干渉計からみると赤のX軸方向に2ブロック、Y軸方向に6ブロックとなります。
そうであればこれを速度に直しますと速度V2=2/6=0.3333・・・Cとなります。
さて相対論的速度の加法則によれば
V1=(V+V2)/(1+V*V2)
=(0.66+0.3333・・)/(1+0.66*0.333・・)*C≒0.814C と計算されます。
それでミンコフスキー図から読み取ったV1は0.777・・・Cでした。
まああたらずとも遠からず、ミンコフスキー図を使った計算=ミンコフスキー図からの数値読み取りによる計算はこの程度の精度かと思われます。
そうして、そうであれば「ミンコフスキー図を使ったローレンツ変換の表示」と言うものは「ローレンツ変換のミンコフスキー空間での幾何学的な理解の仕方を示している」という事になります。
ちなみにこの図形から明らか様に、黒座標の場合はもちろん、赤座標でも光速は何時もCになる様に描かれています。
その状況はつまり「ミンコフスキー図上での光速一定の原理」を表現している事になります。
それから黒Y座標の5ブロック目を横に見ていく事は、基準座標系では同時刻(原点から5秒経過)のX軸の位置が違う場所を見ている事になります。
しかしその状況を赤Y座標で見ますと始めは3秒で、右に行くにしたがって2秒、1秒となっています。
それはつまり「黒座標では同時に起こったと認識されるイベントが赤座標では同時ではないと認識される」という事を示しています。
これは「同時である事の相対性」として説明されている事柄です。
以上の事についてはミンコフスキー図でローレンツ変換を示す重ね描きを読み取る事でそれなりに理解する事が可能です。
しかしながら「運動すると時間が遅れる」や「ローレンツ短縮」については「ミンコフスキー図上でローレンツ変換を示す図」を見てもその状況は読み取れません。
特に「時間の遅れ」については「ローレンツ変換を示す図」を使いそこから説明したものは見た事がありません。
それでこの事については、MM干渉計のY軸方向の計算、これは光時計といわれているものと同じになるのですが、その計算を見た方が「ローレンツ変換を示す図」をみるよりもよほどよく分かります。(注3)
さてそれで、ローレンツ短縮についても「ローレンツ変換を示す図」からは簡単に読み取る事はできません。
しかしながらそれなりの計算を合わせて行う事で理解する事が可能となる様ですが、その件についてはページを改める事と致します。
注1:「ローレンツ変換の具体的な形」の章 : ういき 特殊相対性理論 : https://archive.ph/8ggjL :を参照願います。
注2:このあたりの条件によってsinh(Θ)やらcosh(Θ)が紛れ込んでくる模様です。
注3:「その3・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=27975 :を参照願います。
基準慣性系ではY端の鏡までは光は1.6666・・・秒で届きますが、MM干渉計上の測定では1秒で届きます。
つまり「MM干渉計上の時間は遅れる」のです。
追伸
以上のような事をまとめますと「ミンコフスキー図上でローレンツ変換を示す図」というのは、黒座標系=基準慣性系で起きているイベントを速度Vで移動する慣性系(赤座標)からみたらどう見えるのか、と言う状況を説明するのには適している図の様です。
しかしその逆に「そのときに黒座標から見た赤座標がどう見えるのか=赤座標の時間の遅れとローレンツ短縮を説明する」のに使う事はなかなか難しい様です。
追伸の2
ミンコフスキー図ではローレンツ不変という事をしばしば言います。
試しに上記のV1=7/9*Cでその量を計算してみます。
黒座標読みでは9^2-7^2=32
赤座標よみでは6^2-2^2=32
どうやら成立している模様です。
ちなみにローレンツ不変とは「黒座標で見ても赤座標で見ても変わらないもの」という事になります。
加えて「ミンコフスキー図上でローレンツ変換を示す図」を使う事で分かる事は、「黒座標系で起こっているイベントを速度Vで移動している赤座標系から見たらどう見えるのか=速度Vでローレンツ変換したらどう見えるのか」の幾何学的な理解=見た目で分かる事、という事になります。
追伸の3
ローレンツ不変について、同上と同じ計算を光について行うと黒座標でも赤座標でもいつもゼロになります。
それで「この事が重要だ」と書かれている記事もありますが、その様にミンコフスキー図を作ったのですから、「どこにも不思議はない、それは当然の事」なのであります。
追伸の4
β≒0.58を使って黒座標よみX,Yを赤座標X,Yにローレンツ変換してみます。
あかX=(7-0.58*9)/sqrt(1-0.58^2)=2.185・・・
あかY=(9-0.58*7)/sqrt(1-0.58^2)=6.064・・・
但しβ=0.58
使った式は「特殊相対論入門 」: http://kurasawa.c.ooco.jp/rel.pdf :の8ページ(2.6)式です。
ローレンツ逆変換はβをーβとする事でよかったのでした。
それを確認してみます。
黒X=(2.185+0.58*6.064)/sqrt(1-0.58^2)=6.999760・・・
黒Y=(6.064+0.58*2.185)/sqrt(1-0.58^2)=8.999695・・・
ハイ、OKでした。
PS:相対論の事など 記事一覧