左からアリスが投げた粘土の球が速度Vで、右からボブが投げた粘土の球が速度ーVでやってきて真ん中でぶつかる。
反発係数がゼロだからぶつかって一つの球になる。(このあたり、ブラックホールの衝突と同じ。)
球の重さは1kgとしときましょう。
いずれにせよぶつかって粘土の球は変形して、その際に熱を持って一つになり(このあたり、地球に落下する隕石の様)そこで静止する。
まあ実際は空中でぶつかって静止して下に落ちる事になるか。
この現象をボブが投げた球と同じ速度で移動する慣性系から見ると、ボブの球は止まって見える。
他方でアリスの球は2Vでこちらに向かってくる様に見える。
従ってその球の運動量は1*2V=2Vである。
衝突後は2つの球は一つになるので質量は2。
それで衝突し静止している合体した球を速度ーVの慣性系から見ているから、球の速度はVに見える。
こうして運動量は2*V=2Vとなり、慣性系を変えても衝突前後での運動量は保存されている事がわかる。
それでアリスの球が2Vと言うのはニュートン力学の立場であって、相対論は例によって向かってくる速度V1については
V1=(V+V)/(1+V^2/C^2)
みたいな事をいう。
ところで速度については光速Cを単位にするので上の式からはCが消えて
V1=2V /(1+V^2)
となる。(当然0=<V,V1=<1とする。)
それに加えて相対論では「動くと重くなる=質量が増える(様に見える)」という。
その割合は1/sqrt(1-V1^2)である。
そうなると向かってくるアリスの球の運動量は
1/sqrt(1-V1^2)*V1
=1/sqrt(1-V1^2)*2V /(1+V^2)
=2V /(1+V^2)/sqrt(1-(2V /(1+V^2))^2)・・・①式
となる。
それで衝突後は合体した球は止まるので、そして速度ーVの慣性系からそれを見ているから、球の速度はVに見える。
速度Vでうごく質量2の球は2/sqrt(1-V^2)と質量がふえる。
そうなるとその球の運動量は、
2/sqrt(1-V^2)*V ・・・②式
となる。
衝突前後で運動量は保存していなくてはいけないので①式と②式はイコールになる必要がある。
②式=①式 としてウルフラム : https://ja.wolframalpha.com/ に入れて整理する。
②式=2V/sqrt(1-V^2)
①式=2V/ABS(1-V^2)
を得る。
0=< V < 1の範囲では
sqrt(1-V^2)> ABS(1-V^2) であり、従って
②式 < ①式 となり
「運動量は保存していない」となってしまう。
さて、実際はそんなことはなく相対論であっても「運動量保存則が成立していなくてはいけない」のである。
それではどうやって「このパラドックスを解くか」という事になる。
答えは「衝突した時に発生した熱エネルギーが質量に化けた」となる。
それでニュートン力学の立場で運動エネルギーを考える。
ぶつかる前はそれぞれ2つの球は1/2*1*V^2=Ekというエネルギーを持っていた。
それがぶつかると静止するので運動エネルギーはゼロになる。
ぶつかる前は 2*1/2*1*V^2=2Ek あったものが消えてしまう。
まあ実際はこの分のエネルギーで粘土の球は変形し発熱するのである。
さてその熱エネルギーが化けた質量をXとする。
そうすると衝突後の運動量は
2V/sqrt(1-V^2)+X*V/sqrt(1-V^2)・・・③式
となり
相対論での運動量保存則は
①式=③式
となる。
整理すると、
①式=2V/ABS(1-V^2)
③式=(2+X)V/sqrt(1-V^2)
従って
X=2/sqrt(1-V^2)-2 ・・・④式
となる。
さてここで衝突前の状況を静止慣性系で見た時の相対論での表記を考える。
そうするとその2つの粘土球の質量は速度Vで動いている事より質量が増加して見えるので
1/sqrt(1-V^2)
と表される事になる。
これが2つあるので
2/sqrt(1-V^2)
もとの質量は2。
従って質量増加分は
2/sqrt(1-V^2)-2 ・・・⑤式
となる。
さて、ほんとうにビックリする結果がここにある。
粘土玉が衝突する前に速度Vで動いている事より質量が増加して見えた分が、衝突する事で静止質量に化けてしまっている!!
そうして相対論は「これでいいのだ」というのである。
ちなみにニュートン力学の立場で考えた、熱に変換された運動エネルギーは
V^2=2Ek
であった。
それで今、C=1であって、そうすると有名な式E=MC^2はE=Mとなる。
従って相対論によれば質量=エネルギーの増加分は
E=X=2/sqrt(1-V^2)-2
であって、なおかつニュートン力学によればその時の運動エネルギーは
E=V^2
この2つの式が速度VがCに比べて十分に低速域にあればイコールになる、という事になる。
実際に以下の文をウルフラム : https://ja.wolframalpha.com/ に入れてグラフをプロットさせてみるとその状況が良く分かる。
2/sqrt(1-V^2)-2ーV^2=0.000000000001 0<V<0.0004 の範囲でプロット
つまり「我々が運動エネルギーだ」と認識していたのは相対論によれば「実は速度が上がる事による質量の増加分であった」という事になるのである。
したがって「エネルギーを入れる事で車の速度を上げる事は、質量が増加するので難しい」のである。(?)
参考資料
相対論講義録2010年度 前野昌弘
http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2010/tokushu.pdf
「 8.7 質量とエネルギーが等価なこと」辺り
反発係数がゼロだからぶつかって一つの球になる。(このあたり、ブラックホールの衝突と同じ。)
球の重さは1kgとしときましょう。
いずれにせよぶつかって粘土の球は変形して、その際に熱を持って一つになり(このあたり、地球に落下する隕石の様)そこで静止する。
まあ実際は空中でぶつかって静止して下に落ちる事になるか。
この現象をボブが投げた球と同じ速度で移動する慣性系から見ると、ボブの球は止まって見える。
他方でアリスの球は2Vでこちらに向かってくる様に見える。
従ってその球の運動量は1*2V=2Vである。
衝突後は2つの球は一つになるので質量は2。
それで衝突し静止している合体した球を速度ーVの慣性系から見ているから、球の速度はVに見える。
こうして運動量は2*V=2Vとなり、慣性系を変えても衝突前後での運動量は保存されている事がわかる。
それでアリスの球が2Vと言うのはニュートン力学の立場であって、相対論は例によって向かってくる速度V1については
V1=(V+V)/(1+V^2/C^2)
みたいな事をいう。
ところで速度については光速Cを単位にするので上の式からはCが消えて
V1=2V /(1+V^2)
となる。(当然0=<V,V1=<1とする。)
それに加えて相対論では「動くと重くなる=質量が増える(様に見える)」という。
その割合は1/sqrt(1-V1^2)である。
そうなると向かってくるアリスの球の運動量は
1/sqrt(1-V1^2)*V1
=1/sqrt(1-V1^2)*2V /(1+V^2)
=2V /(1+V^2)/sqrt(1-(2V /(1+V^2))^2)・・・①式
となる。
それで衝突後は合体した球は止まるので、そして速度ーVの慣性系からそれを見ているから、球の速度はVに見える。
速度Vでうごく質量2の球は2/sqrt(1-V^2)と質量がふえる。
そうなるとその球の運動量は、
2/sqrt(1-V^2)*V ・・・②式
となる。
衝突前後で運動量は保存していなくてはいけないので①式と②式はイコールになる必要がある。
②式=①式 としてウルフラム : https://ja.wolframalpha.com/ に入れて整理する。
②式=2V/sqrt(1-V^2)
①式=2V/ABS(1-V^2)
を得る。
0=< V < 1の範囲では
sqrt(1-V^2)> ABS(1-V^2) であり、従って
②式 < ①式 となり
「運動量は保存していない」となってしまう。
さて、実際はそんなことはなく相対論であっても「運動量保存則が成立していなくてはいけない」のである。
それではどうやって「このパラドックスを解くか」という事になる。
答えは「衝突した時に発生した熱エネルギーが質量に化けた」となる。
それでニュートン力学の立場で運動エネルギーを考える。
ぶつかる前はそれぞれ2つの球は1/2*1*V^2=Ekというエネルギーを持っていた。
それがぶつかると静止するので運動エネルギーはゼロになる。
ぶつかる前は 2*1/2*1*V^2=2Ek あったものが消えてしまう。
まあ実際はこの分のエネルギーで粘土の球は変形し発熱するのである。
さてその熱エネルギーが化けた質量をXとする。
そうすると衝突後の運動量は
2V/sqrt(1-V^2)+X*V/sqrt(1-V^2)・・・③式
となり
相対論での運動量保存則は
①式=③式
となる。
整理すると、
①式=2V/ABS(1-V^2)
③式=(2+X)V/sqrt(1-V^2)
従って
X=2/sqrt(1-V^2)-2 ・・・④式
となる。
さてここで衝突前の状況を静止慣性系で見た時の相対論での表記を考える。
そうするとその2つの粘土球の質量は速度Vで動いている事より質量が増加して見えるので
1/sqrt(1-V^2)
と表される事になる。
これが2つあるので
2/sqrt(1-V^2)
もとの質量は2。
従って質量増加分は
2/sqrt(1-V^2)-2 ・・・⑤式
となる。
さて、ほんとうにビックリする結果がここにある。
粘土玉が衝突する前に速度Vで動いている事より質量が増加して見えた分が、衝突する事で静止質量に化けてしまっている!!
そうして相対論は「これでいいのだ」というのである。
ちなみにニュートン力学の立場で考えた、熱に変換された運動エネルギーは
V^2=2Ek
であった。
それで今、C=1であって、そうすると有名な式E=MC^2はE=Mとなる。
従って相対論によれば質量=エネルギーの増加分は
E=X=2/sqrt(1-V^2)-2
であって、なおかつニュートン力学によればその時の運動エネルギーは
E=V^2
この2つの式が速度VがCに比べて十分に低速域にあればイコールになる、という事になる。
実際に以下の文をウルフラム : https://ja.wolframalpha.com/ に入れてグラフをプロットさせてみるとその状況が良く分かる。
2/sqrt(1-V^2)-2ーV^2=0.000000000001 0<V<0.0004 の範囲でプロット
つまり「我々が運動エネルギーだ」と認識していたのは相対論によれば「実は速度が上がる事による質量の増加分であった」という事になるのである。
したがって「エネルギーを入れる事で車の速度を上げる事は、質量が増加するので難しい」のである。(?)
参考資料
相対論講義録2010年度 前野昌弘
http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2010/tokushu.pdf
「 8.7 質量とエネルギーが等価なこと」辺り