特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その4・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮

2022-10-22 04:02:27 | 日記

相対論講義録2007年度 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :の32Pの図は宇宙空間の中に存在しているエーテルに対して地球に据えられたMM干渉計がたとえば地球が太陽の周りを公転する時にエーテルの中を移動している時の状況を表しています。

この時光は静止しているエーテルに対して光速Cで全ての方向に伝わります。

従って講義録にあるように

Y軸方向に進んだ光が戻ってくる時間は

T(Y軸方向)=2*L/sqrt(C^2-V^2)

同様にしてX軸方向では

T(X軸方向)=2CL/(C^2-V^2)

但しLは干渉計の腕の長さです。


それで前のページの計算ではL=CでV=0.8Cでした。

これを代入すると

T(Y軸方向)=3.333・・・(秒)

T(X軸方向)=5.555・・・(秒)

こうしてX軸方向の腕の長さがローレンツ短縮を受けない場合の計算結果が再現されます。(前述:その3参照)


そうであれば常に

T(X軸方向)>T(Y軸方向) となり

太陽慣性系では光は同時に原点には戻っては来れない事になります。


同様にしてP33の図では今度は地球上に立つ観測者から見た時の状況が説明されています。

MM干渉計の原点から出た光はこの場合もエーテルに対して全ての方向に光速Cで伝わります。

しかしMM干渉計からみれば「球面波として伝わる光の輪はエーテルに流されている様に見える事」になります。

特にY軸方向にある鏡に届く光は干渉計の原点から真上の方向(=Y軸方向)に飛んだのでは鏡に到達する事が出来ないので、エーテルの流れに逆らう形で少し前方向に飛ばなくてはなりません。

したがってY軸方向へ飛ぶ光の速度(Y軸方向成分)はその分低くなる、と説明されます。

その結果としてT(Y軸方向)及びT(X軸方向)の計算式は太陽慣性系で出したものと形の上では同じになるのです。


従ってこの場合は、地球の観測者から見ても太陽慣性系の観測者から見ても同じ状況が見える事になります。

つまりローレンツ短縮で地球の観測者から見た時にT(Y軸方向)=T(X軸方向)が成立し、X軸とY軸方向に飛んだ光が同時に原点に戻ってきたならば、太陽慣性系からみても「光は同時に原点に戻ってくる」のです。

そうであれば「エーテルは存在する」+「ローレンツ短縮が起こる」という解釈でMM干渉計の実験結果は完全に説明可能となります。

但しこの場合は光の速度Cはエーテルに対しては一定の速度を保つために、逆にMM干渉計から見た時には「光速は進む方向によって変化する様に見える」のです。

つまり「光速はどの観測者から見ても一定不変のC」にはなってはいない、という事です。

そうして、その事を認めた上で「エーテルは存在する」+「ローレンツ短縮が起こる」という解釈でMM干渉計の実験結果は完全に説明可能となるのです。

そうしてこれがローレンツさんが到達した結論である、と言えます。


しかしながらこの結論はMM干渉計の見かけ上の結論「光は全ての方向に同じ速度で伝わる」とは一致していない様に見えます。(注1)


注1:同じ長さの直交させた腕の先につけた鏡との間を往復する光が何時も同時に原点に戻ってきた、と言うのがMM干渉計の「見た目の結果」でした。

それをそのまま解釈するならば「光は全ての方向に同じ速度て伝わる」となります。

しかしながら「光の媒質はエーテルである論」を支持するならば、「光は全ての方向に同じ速度て伝わる」は否定される事になります。

(エーテルの立場に立てば「光は全ての方向に同じ速度て伝わる」は真ですが、MM干渉計の立場からは上述したように偽となります。但しここでの議論は「ローレンツ変換が成立する、という特殊相対論の主張」はまだ考慮されてはいません。)

ちなみにここでの議論での相対速度はエーテルとMM干渉計の間で定義されています。


追伸
ローレンツさんが提示した「ローレンツ短縮」はアドホックな、場当たり的なものでしたが、それはまた本質を見抜いたものでもありました。

それに対して「地球につねにエーテルが絡みついているので、エーテルは地球に対して静止している=エーテルの風は検出できない」というアドホックな考え方は「何もそこからは生まれてこない」「全く意味のない主張」なのでした。



PS:相対論の事など 記事一覧

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