まずはういきの「タキオン反電話」 : https://en.wikipedia.org/wiki/Tachyonic_antitelephone :に紹介されている「双方向通信の数値例」を再確認しましょう。
・アリスとボブは宇宙船に乗って0.8Cの相対速度で慣性移動している。
・ある時点で、それらは互いに隣接して通過し(訳注:角度は180度ですれ違う、つまりほぼ一つの直線上)、アリスは通過の位置と時間を座標系(フレーム)内の位置x = 0、時間t = 0に定義し、ボブはそれを位置x ' = 0、時間t ' = 0に定義します。(訳注:すれ違った時に時計をリスタートさせた、つまりここで時刻合わせ完了!)
・アリスのフレームでは、ボブが0.8 cで正のx方向に移動している間、彼女は位置x = 0で静止したままです。
・ ボブのフレームでは、彼は位置x ' = 0で静止したままであり、アリスは0.8cで負のx'方向に移動しています。
・それぞれ一人一人、2.4Cで進むタキオンを使った送受信機を持っている:但し2.4Cは各船に固定された座標系に対する速度。
・アリスは自分の時計がボブの隣を通過してから300日が経過したことを示すと(アリス座標系でt = 300日)、彼女はタキオン送信機を使用してボブにメッセージを送信します。
・アリスの時刻= 450日時点で、彼女はタキオン信号が2.4Cで 150日間飛んで、信号は彼女の座標系でX= 360光日、(X = 2.4C×150日)の位置にある、そしてボブは0.8cで450日間彼女から離れていたので、彼女の座標系でx = 0.8C×450日 = 360光日という位置にいるはずです。
・これは、信号がボブに追いついた瞬間であることを意味します。
・それで、彼女の座標系でボブはアリスのメッセージをx = 360光日、t = 450日で受け取ります。
・時間の遅れの影響により、彼女の座標系では、ボブは彼女よりもゆっくりと時が流れます。
・この場合は時間の遅れは60%なので、ボブの時計は、メッセージを受信したときに0.6×450日 = 270日が経過したことを示しているだけです。つまり、彼の座標系では、x ' = 0、t' = 270日でメッセージを受信します。(訳注:ここで観察者がアリスからボブに変更になります。)
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228694 :で物体の時間 T0 に270、相対速度に毎秒24万キロをセットし、計算ボタンをポチります。
答えは450.6日≒450日。(答えが450日ジャストにならないのは相対論電卓の光速の定義がまじめに毎秒299792キロとしているのに対して、光速を毎秒30万キロと概算している当方との違いであり、その誤差が0.6日発生している事を示しています。)そして270割る450=0.6=60%です。
・ボブはアリスのメッセージを受信すると、すぐに自分のタキオン送信機を使用して、「エビを食べないでください」というメッセージをアリスに送り返します。
・135日後、彼の座標系ではT ' = 270 + 135 = 405日時点で、彼はタキオン信号が2.4Cで、彼から離れてX'のマイナスの方向に 135日間飛んだので、それは今、X ′ = −2.4×135 = −324光日の位置にあり、アリスは0.8 cで− x方向に405日間移動しているため、位置x′ = −0.8c×405日 = −324光日にいます。
・したがって、彼の座標系では、アリスはx ' = −324光日、t'= 405日に応答を受け取ります。
・慣性観測者の時間の遅れは対称的であるため、ボブの座標系では、アリスは同上で計算した様に係数0.6掛けで、彼よりもゆっくりと時間が過ぎます。したがって、アリスの時計は、彼女が彼の返信を受け取ったときには0.6×405日 = 243日が経過したことになります。(訳注:・・・とボブは主張する事になります。)
まあそういう訳で「アリスはすれ違ってから300日目に出した信号の返信を243日目に受けとるのだ」と「信号を出す57日前に受け取るのだ」と「タキオン反電話は主張する:ボブは主張する」のでした。
さてそれで上記の個々の計算には間違いは見当たりません。但し「個々の計算と計算を結び付けているロジック」には任意性が認められます。
つまり「起こっている物理現象は一つ」ではありますが「その物理現象を計算する手順、ストーリーは一つではない」という事になります。
上記「タキオン反電話」の計算手順を1番としましょうか。
それで2番目はもちろん「全てのこの物理現象の、始まりからおわりまで、観察者視点はアリス固定で」というものになります。
状況の前提条件は1番計算と同じです。さて・・・
・アリスは自分の時計がボブの隣を通過してから300日が経過したことを示すと(アリス座標系でt = 300日)、彼女はタキオン送信機を使用してボブにメッセージを送信します。
・アリスの時刻= 450日時点で、彼女はタキオン信号が2.4Cで 150日間飛んで、信号は彼女の座標系でX= 360光日、(X = 2.4C×150日)の位置にある、そしてボブは0.8cで450日間彼女から離れていたので、彼女の座標系でx = 0.8C×450日 = 360光日という位置にいるはずです。
・これは、信号がボブに追いついた瞬間であることを意味します。
・それで、彼女の座標系でボブはアリスのメッセージをx = 360光日、t = 450日で受け取ります。<--ここまでは1番の計算手順と同じです。
・すぐさまボブは「元気だよ!」の返信を出します。
・光とは違いタキオンは船固定の座標系で2.4Cだそうですから、ボブの船が0.8Cでプラス方向に移動中ですので、返信のタキオンスピードは1.6Cと(アリスの座標系では)減速されます。
・距離360光日を速度1.6Cのタキオンが走りますので225日かかります。
・そういうわけでアリスは300+150+225=675日にボブからの返事を受け取ります。
さて3番目は「視点はボブ固定で」と言うものになります。
状況の前提条件は1番計算と同じです。さて・・・
・アリスは自分の時計がボブの隣を通過してから300日が経過したことを示すと(アリス座標系でt = 300日)、彼女はタキオン送信機を使用してボブにメッセージを送信します。
・ボブ視点では「アリスはマイナス方向に0.8Cで飛んでいる」のでした。したがってその時計は60%遅れます。さてそうすると「アリスが300日目」と言っているのはボブ視点では「500日経過」となります。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228694 :で物体の時間 T0 に300、相対速度に毎秒24万キロをセットし、計算ボタンをポチります。
答えは500.6日≒500日。
・500日間、0.8Cで飛びましたから信号発信時のボブとアリスの距離は400光日。2.4C速度のタキオンは上記同様に減速し1.6C。そうなりますとボブ到着までの必要時間は400光日割る1.6C=250日。ボブ座標系では500日+250日=750日目にシグナルを受信します。
・さてボブはすぐさま「元気だぜ!」と返信します。この時ボブとアリスの距離はボブ座標系で750掛ける0.8C(アリスがマイナス方向に0.8Cで走ってます)=600光日。600光日の距離を先をいく0.8Cで走るアリス号を2.4Cのタキオンが追いかけますから、600割る1.6=375日。375日でタキオンはアリスに追いつきます。そうなるとボブ座標系で750+375=1125日目にシグナルが無事にアリス号に届く事になります。
・これをアリスは彼女の座標系で受け取りますから、ボブ座標系よりも時刻が0.6遅れるのでした。従って1125掛ける0.6=675日目にアリスは「元気だぜ!」を受け取ります。(、、、とボブ君は言います。)
・・・ほほう、675日目とな。この数字は2番計算と同じではないですか!!
さて形式的にはもう一つの計算手順があります。なんでそんな計算手順を計算しなくてはいけないのだ、という議論はおいといて、計算してみましょう。
それで4番目は「視点はボブ固定ではじまり、シグナルがボブに届いた所でアリスに変更」と言うものになります。そしてこの計算手順は1番目の計算手順とは対称的、あるいは相対的となります。
状況の前提条件は1番計算と同じです。さて・・・
・アリスは自分の時計がボブの隣を通過してから300日が経過したことを示すと(アリス座標系でt = 300日)、彼女はタキオン送信機を使用してボブにメッセージを送信します。
・ボブ視点では「アリスはマイナス方向に0.8Cで飛んでいる」のでした。したがってその時計は60%遅れます。さてそうすると「アリスが300日目」と言っているのはボブ視点では「500日経過」となります。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228694 :で物体の時間 T0 に300、相対速度に毎秒24万キロをセットし、計算ボタンをポチります。
こたえは500.6日≒500日。
・500日間、0.8Cで飛びましたから信号発信時のボブとアリスの距離は400光日。アリス発の2.4C速度のタキオンは上記同様に減速し1.6C。そうなりますとボブ到着までの必要時間は400光日割る1.6C=250日。従ってボブ座標系では500日+250日=750日目にアリスシグナルを受信します。<--ここまでは3番の計算手順と同じです。
・ここで視点がボブからアリスに観察者が変わります。アリス視点ではボブがプラス方向に0.8Cで飛んでいるのでした。そのボブにシグナルが届いたのが750日目でしたね。飛んでいるボブ君の時計は勿論アリスに対して遅れます。従ってアリス座標系では1250日目にシグナルがボブ君に届き、そうして即時ボブ君は「はいよー!」と返事を送りかえしたことになります。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228694 :で物体の時間 T0 に750、相対速度に毎秒24万キロをセットし、計算ボタンをポチります。
こたえは1251.5日≒1250日。
・アリス座標系ではシグナルがボブに届くまでに1250日必要でした。従ってシグナルが届いた時のアリスとボブの間の距離はアリス座標系では1250日掛ける0.8C=1000光日とアリスは見ます。その距離を速度1.6Cのタキオンがアリスに向かって戻ってきます。1000割る1.6=625日。
・1250日+625日=1875日目にアリスは返信を受け取ります。この計算手順によればアリスが300日目に出したシグナルの返事は1875日目にアリスに受信される事になります。
さて4番目の計算も「個々の計算には間違いはありません」。(、、、と思ってます。)但し計算の手順が1番目の計算とは対称的に、逆になっています。
その結果、1番の計算では243日目に受け取るとされたシグナルは4番の計算では1875日目に受け取る事になりました。
以上の様に4通りの計算手順がまあとりあえずは考えられるものになります。
それで状況をここでもう一度整理します。
決められているのは(あるいは「お題の設定」は)
・互いの相対速度は0.8Cで離れる方向。
・擦れ違い時刻をゼロ点とし、そこからアリスの時計で300日経過後にボブに向かってアリス座標系で2.4C速度のタキオンでシグナルを出す。
・ボブはシグナル受信後即座にボブ座標系で2.4Cでアリスに返信する。(あるいはアリスのタキオンレーダー波を反射する。反射後のレーダー波は反射した船に対して2.4Cでアリスにもどる。)
・さてアリスはこのボブからの返信をアリス座標系で何日に受け取るのでしょうか?
・・・というものでした。
それで計算結果は、 「アリスが300日目に発信したシグナルをアリスは
計算結果 計算の時の視点の移動状況
計算1・・・243日目 アリス視点ー>ボブ視点
計算2・・・675日目 アリス視点で固定
計算3・・・675日目 ボブ視点で固定
計算4・・・1875日目 ボブ視点ー>アリス視点
に受け取る。」と言うものでした。
仮に675日に受け取るのを基準にすれば「1番はそれより前に受け取る計算手順」であり、「4番はそれより後で受け取る計算手順である」と言えそうです。
そうして「タキオン反電話」は1番の計算手順を推し、当方と言えば「素直で見通しの良い2番の手順」を推奨します。
3番目の手順でも2番と同じ結果を与えていますが、これがいつもそうなるのか(そうなりそうだな、という予想はつきますが)よく調べてみないとわかりません。しかしながら「観察主体は計算の途中では切り替えてはいけない」というルールがすでにここで見えてきている様に思われます。
それで4番の手順は確認の為に計算してみた、と言うものであって「推奨する、しない」の対象ではありません。
そうして「何を確認したかったのか」といえば、アリス発のシグナルがボブについた時に、それまでにそれを観察していたのがアリスであったのか、ボブであったのか、そうしてその時点で観察の主体が入れ替わるのですが、その結果はどうなるのか、という事の確認です。
それで、その結果はといえば、アリスからボブに切り替えるとタキオンは過去に飛ぶ様に見える、あるいは計算される。
だがしかし、ボブからアリスに切り替えるとタキオンはずうっと未来に飛んでいく様に計算されると言うものでした。
つまり「タキオンを使うから過去に飛ぶのではない」のであって、「所定の計算手順によって過去に飛ぶ(様にみえる)」という事になります。
さてそれ故に従来言われている様な「タキオン粒子は過去に向かって飛ぶ」などという主張は「成立してはいない」とも言えそうであります。
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