特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

アインシュタイン パラドックス

2022-07-03 01:19:02 | 日記

「横ドップラー効果の件・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=3885#post_id29310 :で考察した内容を振り返りますと、そこには横ドップラー効果と「時間の遅れはお互い様」という主張の間にある矛盾、パラドックスが見えてきます。

それで以下、その事についてレビューしていきます。

舞台は宇宙空間で、0.8Cの相対速度で接近しつつある2台の宇宙船AとBが主役です。

その2台は一直線上を接近しつつあるのですが3m程の距離をおいてすれ違うコースを取っています。

そうしてお互いに光を出し、それをお互いが観測しあいます。



さて0.8Cの相対速度ですから、アインシュタインによれば「お互いが相手の時計=時間の遅れは0.6であると認識する」と言う事になります。

何となれば sqrt(1-0.8^2)=0.6 であるからですね。

従ってアインシュタインはこう宣言します。

2台の宇宙船がすれ違う時に横ドップラーを観測しあえば、2台ともレッドシフトを観測する事になる。(注1)

アインシュタインにしてみればこの結論は当然であります。

相手の時間は自分の時間よりも遅れている。

そうであれば相手が出した光は振動数が落ちる方向=赤色方向にシフトする、と言う事になりますから。



さてこの状況をもう少し詳しく見ていきましょう。

宇宙船Aが光を出した時と相手の光を分光測定した時の宇宙船Aの時間が進む速さをT(A)とします。

同様にして宇宙船Bが光を出した時と相手の光を分光測定した時の宇宙船Bの時間が進む速さをT(B)とします。

それでアインシュタインによれば

宇宙船Aは T(B)=0.6*T(A) ・・・① と認識し

宇宙船Bは T(A)=0.6*T(B) ・・・② と認識する。(注2)

そうして「それでいいのだ」と言います。

さてそれで①式に②式を代入しますと

T(B)=0.6*T(A)=0.6*(0.6*T(B) )=0.36*T(B)

この式が成立するT(B)の値は

T(B)=0

つまり「宇宙船Bの時間は止まっている」となります。

そうして同様の計算をT(A)について行うなら

T(A)=0

つまり「宇宙船Aの時間も止まっている」となります。



そうでありますからこれは矛盾、パラドックスであります。

アインシュタインの主張「2台の宇宙船がすれ違う時に横ドップラーを観測しあえば、2台ともレッドシフトを観測する事になる。」は「2台の宇宙船の時間を止める事」になり、その結果は「2台の宇宙船はレッドシフトを観測する事はない」という結論に至ります。

なんとなれば「時間が止まっているのであれば、光を出す事も、光を分光測定する事もできないから」であります。



くわえて申し添えるならば、このような事は実際には起こり得ない事になります。

というのも「宇宙船の時間が止まるのはその進行速度が光速Cになった時である」というのが、特殊相対論の結論であるからです。



注1:2台の宇宙船それぞれが光を発光させます。

それで、相手が出した光をそれぞれの宇宙船が受光し光の波長を調べます。(分光測定します。)

注2:T(B)=0.6*T(A) の意味は「宇宙船Bでの時間の進む速さは宇宙船Aでの時間の進む速さの0.6がけになる」つまり「60%にまで進む時間の速さは遅れる」と読みます。



追記 :パラドックスの解き方

簡単です。

実際に横ドップラー効果は実験によって検証されています。

つまり「0.8Cの相対速度で接近しつつある2台の宇宙船AとBがすれ違う時に横ドップラーを観測すれば、一方はレッドシフトを観測し、もう一方はブルーシフトを観測する」というだけの事です。

つまりアインシュタインの「2台の宇宙船がすれ違う時に横ドップラーを観測しあえば、2台ともレッドシフトを観測する事になる。」という主張は成立していない、と言う事になります。

そうして蛇足ながら申し添えますれば、見た目の舞台設定が宇宙船AとBにとっては対称的にみえますが、観測結果が非対称であったとしたならば、見えてはいないのですが舞台設定のどこかで非対称な状況が設定されていた、と言うことになります。


追記の2:アインシュタインの矛盾

アインシュタインは「動くと時間が遅れる」という事の検証の為に「横ドップラー効果が存在する」からそれを実験的に確認すれば「動くと時間が遅れる」という「特殊相対論の予想が実証できる」としました。(注3)

しかしながら同時に「時計が遅れるのはお互い様」という主張もしている事になります。

そうして、上記で見たようにこの二つの主張(=「横ドップラー効果が存在する」と「時計が遅れるのはお互い様」)は両立しないのです。

そうであればこれは「アインシュタイン パラドックス」と言う事ができます。


注3:特殊相対論の歴史 :
https://archive.ph/xhfqD :を参照の事。

3 特殊相対性理論
3.3 時空物理学
3.3.5 時間の遅れと双子のパラドックス
から引用
『アインシュタイン(1907a)は、時間の遅れの直接的な結果として横方向のドップラー効果を検出する方法を提案しました。
実際、その効果は1938年にハーバートE.アイブスとGRスティルウェルによって測定されました(アイブススティルウェル実験)。・・・』


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.ph/J4c1I