特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その3・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮

2022-10-18 03:04:21 | 日記

さてパズルの回答です。

X軸方向に飛んだ光が戻ってくるのに3.333・・・秒と言うのは正解です。

但しこの数値はX軸方向の腕の長さが0.6倍になった=ローレンツ短縮した、という事が前提の数字です。


それで間違っているのはY軸方向に飛んだ光の戻ってくるまでの時間、2.56125(秒)です。

それで何を間違えているのか、と言いますと「絵の描き方が違う」のです。

『さてY軸方向に飛んだ光の状況を絵にかくとX軸方向に0.8C、でY軸方向の腕の長さがCだから光の光路は直角三角形の斜辺となり、その斜辺の長さをLとすれば

L=sqrt(C^2+(0.8C)^2)

となります。』

↑こんな風に「しらっと書かれる」と「ああそうだね」となりますよね。(ならなかった人は偉い。当方はなりました。)

『X軸方向に0.8Cで進む』、と言うのは前提条件ですから、それはそのままでいいのです。

そして静止系からMM干渉計(マイケルソン・モーレー干渉計)を見た場合は光は斜めに進んでいる事になり、『そこには斜辺の長さLの直角三角形が現れる』というのも正しいのです。

但し、光は斜辺Lに沿って走りますから、光がMM干渉計の原点からY方向に出てY端にある鏡に届いた時に干渉計はX軸方向に0.8L移動している、というのが『X軸方向に0.8Cで進む』、というコトバ=前提の内容になるのです。

従ってそこに現れる直角三角形は底辺が0.8L、斜辺がL、高さがCなのですよ。

そうであればピタゴラスさんがいう様に

L^2=(0.8L)^2+C^2

だから L=1.6666・・・*C  (注1)

従って鏡までは光は1.6666・・・秒でとどく、と。

行って帰って往復で3.3333・・・秒となります。

こうしてめでたく0.8CでX軸方向に移動するMM干渉計の原点からY軸とX軸方向に出た光は同タイムでまた原点に戻ってくる事になります。

・・・と言う様にする為にローレンツさんは「X軸方向の干渉計の腕の長さが0.6倍に縮んだのだよ」と主張したのでした。(注2)

それでようやく「なるほど」と当方は納得したのです。


注1:底辺が0.8LでL=1.6666・・・*C だとすると

0.8L=1.33333・・・*C になり

「X軸方向に0.8Cで移動する、を満足できないのでは?」に対する答えは

「MM干渉計が1.33333・・・*Cの距離を移動するのに必要な時間は静止系で計って1.66666・・・秒。

従って静止系で観測されるMM干渉計のX軸方向移動速度Vは

V=0.8L/1.66666・・・(秒)

=1.33333・・・*C割る1.66666・・・秒

=0.8Cとなる」が回答となります。

ちなみにこの時同様にして干渉計の原点に立つ観測者は静止系がーX方向に0.8Cで移動している事を観測しなくてはなりません。

つまり静止系の観測者は干渉計が+X方向に0.8Cで移動している、と観測し、干渉計に立つ観測者は静止系がーX方向に0.8Cで移動しているとみるのです。

そうしてその事が「相対速度については全ての慣性系が平等である」という事の内容になります。

注2:この時のローレンツ短縮計算は : その2・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮 :を参照願います。



追伸
とはいえ上記の説明の仕方はMM干渉計の実験と解析をそのままは再現していません。

実際の所MM干渉計は地上に据え付けられ、0.8Cで移動する事は出来なかったのです。

逆にMMさん達は「エーテルの風がMM干渉計に吹き付けている」という前提で実験し解析しています。

2つ目に「どのような光源から出た光でもその速度は光速Cである」という前提を説明の中で使っています。

この前提は特殊相対論が提示した以降、認められる様になったものであって、MMさん達が実験した当時は「光は媒質であるエーテルの中を光速Cで伝わる」と言うのが一般的な認識であったと思われます。

そうしてまたローレンツさんもこの認識であったかと思います。(注:ただしこれは個人的な推察であって、史実は違っている可能性があります。)


このあたり、地上に設置されたMM干渉計に対してエーテルの風が吹き付けている時にX軸方向とY軸方向に飛んだ光が戻ってくる時の時間差の計算詳細は

相対論講義録2007年度 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :33P~ 実験装置が静止している立場 : にありますのでそちらでご確認願います。

そうしてこの場合は光はエーテルの風に乗ったり逆らったりしますので光速は一定ではなく変化しますが、その変化した速度で光源から鏡までの距離を割って出す往復時間の計算式を見ると、結果的に形の上では特殊相対論の前提となっている「光速Cは何時も一定である」とした場合の式と同じになっている事が分かります。

それはつまりMM干渉計の実験とローレンツ短縮を加えた結果の解釈だけでは「光速Cは何時も一定である」のか「エーテルが存在して光速はエーテルに対して一定の速度Cで走る」のか見分けがつかない、という事であります。


ちなみにこの講義録の著者はMM干渉計の実験を『「マイケルソン・モーレーの実験は「光の速度は観測者によって変わるはず」ということを確認するための実験であったが、その結果は失敗に終わり、光の速度が変化しないことが確認されてしまったのである。』と述べているが、この認識は違っていると思われます。(注3)

MM干渉計の実験は「エーテルの風を検出する事を目指したもの」であって「光の速度が一定かどうか」については上記のように「何も語ってはいない」のです。

加えてこの件につきましては、ういきの「マイケルソン・モーリーの実験」: https://archive.fo/ENUqB :も参照願います。

注3:同講義録P31 下段に記述有

また英文ういきの別の記事の記述では「MM干渉計の結果は方向によって光速が変わらない事が証明されたのである」となっています。

これは「同じ長さの直交する2本の腕の先につけた鏡に反射して戻ってくる光は何時も同時に原点に返ってきた」という結果の言いかえになっています。

しかしながら「異なる観測者=干渉計の上に立つ者とエーテルの風の上に立つもの」とが「光の速度を測定したら同じ値であった」とはどこにも書いては無いのです。

 

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/eOvGW