ダークマター、ホーキング放射、ブラックホールなど

ブラックホール、ダークマター、相対論、そうして賢者の石探索中。

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・21・BH(ブラックホール)が質量を減らす方法(2)

2019-04-30 10:57:12 | 日記
さて前回検討したように「どのような質量のBHに対してであれ、ホライズンに向かって自由落下する物質は光速の75%でホライズンに到達する」のであります。
ここで注目すべきは「この話はBHの持つ質量には無関係である」という事です。

太陽質量の10倍程度の質量のBHであれ、1グラム未満のマイクロBHであれ、光速の75%までの加速は同様におきる現象であります。
但し、この2つのBHの重力圏の大きさはBHが持つ質量の大きさに応じてまるで「桁違い」になっています。
そうしてまたこのBHがもつホライズン半径も「桁違い」です。

そうでありますから、大きな質量のBHには宇宙に存在する大抵の物質を飲み込む事、その物質を光速の75%まで加速する事はできますが、他方でマイクロBHはそのような芸当はできません。
せいぜいが「止まっているニュートリノを自由落下させる事が出来る」、まあそのあたりの事しかできません。
そうして我々はまだマイクロBHだと思われるダークマターを補足する事も、いつも光速で走っているニュートリノを止める事も出来てはいません。


さてそのようなマイクロBHではありますが、その生まれは原始BHであろうと、インフレーション直後に誕生したものであろうと推測されています。
「元素合成 ・・・物質の起源について」によれば「インフレーション終了後、宇宙の物質要素はクォークグルーオンプラズマ、と呼ばれる状態で存在していました。」とのこと。<--リンク(Or http://archive.fo/ECZUC
そうして、この「クォークグルーオンプラズマ」と呼ばれる状態が、現在、我々が想定しうる範囲内では「物質がとりうる最も密度が高い状態」の様です。

その状態でのクォークグルーオンプラズマの密度をPρとします。
一方でおなじみのホライズン半径RsはRs=2*G*M/C^2.
ホライズン半径の球の中に質量Mを構成する物質が一様に詰まった、としますとその密度ρは
ρ=3*C^6/(32*Pi*G^3*M^2)

ここでMをビックバン後の宇宙の全質量としますと
仮にPρ>ρになっていたとすると、インフレーション後に「この世にあらわれた宇宙はすぐにBHになる」という事になります。
つまり「宇宙は誕生してはすぐに姿を消した」とそういう事になります。
そうして、実際はそうなってはいないのでありますからPρ<ρであったと、そういう事が分かります。

このままでは宇宙は誕生できましたが、注目している原始BHが生まれてきません。
そこで量子論がらみの「質量密度の揺らぎ」、そうしてまた「空間スケールの揺らぎ」の登場となる訳です。

なるほど大局的にはPρ<ρではありましたが、部分的にはPρ>ρと言う様になっていた所があってもおかしくは無い、そのように主張する訳です。
そうなっていれば、その部分はBHとなる事が出来ます。
こうして質量が1グラム程度のマイクロBHがめでたく誕生する、と言うシナリオが作れます。

「原始ブラックホールと重力波」<--リンク

・・・以上は前回の補足説明で、少し遅くなりましたが今回のテーマについてはこれ以降になります。

前回の計算結果では「質量mの物質がBHに自由落下しその質量を3/2*m分だけ増加させる」というものでした。
これは落下するBHの質量MがM>>mである場合にはほぼ成立しそうですが、M≒mの場合にはどうであるのか、調べてみなくてはいけません。
と言いますのも、mの運動量PがBHに吸収される、そうなりますとmを吸収したあとのBHは運動量Pを受けて動き出す、という事になります。
そうなりますとBHの運動エネルギー分だけBHの質量増加分が削られる、そういう話になりそうです。

以上の話は「ホーキング放射でBHが消えてしまう」と論じておられる方々が見逃している事にも関係しています。
BHを蒸発させることになる、最後にこのBHに飛び込んだ仮想粒子が持っていた運動量はどこに行ったのか、「マイクロBHは蒸発してしまった」と論じておられる方々は運動量保存則を忘れておられる様に見受けられます。

そうでありますからここは前回取り上げた「ホーキングさんが考えたこと・16」での例、プランクスケールに到達したBHが出す事になるホーキング放射の例に戻ってこの事を検討する事としましょう。

さてそれで2.176E-08(Kg)=(0.00000002176Kg)のBHが⊿E=2.196E+08(J)のエネルギーのニュートリノを放出します。
それはつまりこのBHに進行方向は放出されるニュートリノとは正反対ですが、同様のエネルギーをもったニュートリノがBHに飛び込む、という事でもあります。
その結果としてはこのBHは真空との取引により最終的には⊿E=2.196E+08(J)のエネルギーを支払い、放出したニュートリノと反対方向にそのニュートリノが持って行ったのと同じ値の運動量Pを受け取る事になる、そういう話でした。(注1)
このあたりの取引詳細は「ホーキングさんが考えたこと・4」を参照願います。<--リンク

以下は計算になります。
まずは「仮想粒子が対生成した発生点を原点とした座標系で見た時にBHは静止していた」と仮定します。
そしてその時にこのBHが持っていたエネルギーをEとします。
そうして、飛び込んできたニュートリノが持っていた運動量をPとします。
そしてその値は前回計算結果よりP=0.732488でした。
この時にこのBHが満たす式は次のようになります。

(E-⊿E)^2=P^2*C^2+M^2*C^4
この式はBHは⊿Eのエネルギーを支払い、運動量Pを受け取る事を示しています。
ここでMはニュートリノが飛び込んだ後のBHの静止質量を表します。

Eはニュートリノが飛び込む前のBHの質量2.176E-08(Kg)にC^2を掛けて求めます。
E=(2.176E-08)*(2.998*10^8)^2=1955800000(J)

以上を代入して整理すると
M=sqrt(((E-⊿E)^2-P^2*C^2)/C^4)=1.916E-08(Kg)
この結果は「ホーキングさんが考えたこと・16」での計算値1.932E-08(Kg)よりも小さく、その分が実はBHの運動エネルギーとして使われたという事になります。

次にP=M*V/sqrt(1-V^2/C^2)よりニュートリノ吸収により発生したBHの移動速度Vを求めます。
その結果はWolframによれば
V=3.7923E+7=0.126*C
従ってこのBHは光速の13%程度で自分がホーキング放射したニュートリノとは反対方向に走り出す事が分かります。

こうしてBHの質量Mが大きければ、ホーキング放射を出したことによる反作用は考慮せずにBH質量はホーキング放射されたエネルギー分だけ減る、としても間違いはなさそうですが、マイクロBHのレベル、プランクスケールのBHになった場合はそのようには無視できず、反作用によるBHの運動エネルギーの増加分を考慮しないとBHの質量減少分が計算できない、という事が分かります。

さらには、このようにしてホーキング放射を出したことによる反作用を受け取る必要のあるBHがこのホーキング放射プロセスで「蒸発した」とするならば、この相互作用での運動量保存則が満たされる事はない、という事もまた同時にわかるのでありました。

(注1)
このBHはまずは仮想粒子の飛び込みによって⊿Eのエネルギーとホーキング放射したニュートリノと逆方向にPという運動量を受け取ります。
ここで、従来の考え方ではこの受け取ったPの事は忘れてしまい、受け取った⊿EのエネルギーがそのままBHの質量に付与される、としていました。

しかしながら、事実はといえば、運動量Pを同時に受け取ったBHはその方向に運動し始め、その結果は運動エネルギーΔEkを持つことになります。
そうなりますと、⊿EというエネルギーがすべてBHの質量に変わる、ということにはならず、(⊿EーΔEk)というエネルギーがBHの質量に転化・付与される事になります。

その後BHは真空に対して2*⊿Eという支払いをすることになり、従ってBHのエネルギー収支は最終的には⊿E分だけのマイナスとなります。

しかしながらBHの質量は、といいますと仮想粒子の飛込みによって得られた分が(⊿EーΔEk)であり、真空に支払った分がー2*⊿Eですからこの二つを合計した値、ー⊿EーΔEkがBHの質量になった、つまり結果的には(⊿E+ΔEk)というエネルギーが質量から抜けた、という計算になる訳であります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/51ZAJ

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・20・BH(ブラックホール)が質量を減らす方法

2019-04-26 18:49:12 | 日記
ホーキング放射を出す事でBHは出したエネルギーの質量換算分だけの重量を失う、というのはホーキングさんの結論でありました。
そうであればまたしても「何をいまさら」と言われそうであります。
まあそうなんではありますが、出したエネルギーが光かニュートリノか、その違いによって外から観測している人類にはその観測対象が変わってくる事になります。

質量を減らす状況を確認する前に、まずは質量の増やし方を見ていきましょう。
BHの質量を増やす、それはBHに質量を入れてやればそれでOKですね。
しかしながら、この場合、その質量をホライズンのふちまで降りて行って「そっとBHに入れてやる」のかそれとも「BHの重力にまかせて自由落下させるのか」では、その結果は当然異なったものになります。

そっと入れてやれば質量mの分だけBHの質量Mは増加するでありましょう。

さてそれで、「自由落下させた場合」はどうなりますか?
Wikiの「宇宙速度」によればそれは「第二宇宙速度」に相当するスピードでホライズンに突入する、と言う事になります。
そのスピードVはV=sqrt(2*G*M/Rs)=C、つまり「光速になる」というのがニュートンさんの言い分です。<--リンク
(どのような質量のBHであってもそのホライズン半径RsはRs=2*G*M/C^2で計算されます。)
そして、その時にBHが得る運動エネルギーは1/2*m*C^2、これをC^2で割ると換算質量になりますがその値は1/2*m、こうしてBHの質量は静止質量mに運動エネルギー換算質量分を加えた3/2m分だけ増加する事になります。(注1)

しかしながらアインシュタインさんによれば、「それは少し違う」と言う事になります。
BHの重力圏外では質量mのもつエネルギーEは
E=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)ーUp
この位置を基準にしますのでUp=0
ここで運動量PはP=m*V/sqrt(1-V^2/C^2)
V=0ですからP=0
従ってE=m*C^2です。

これが自由落下してホライズン表面Rsに到達します。
その時の速度をVとしますと、エネルギー保存則の成立条件より
E=m*C^2=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)ーUp
がここでも成立している事になります。

Up=G*M*m/Rs=1/2*m*C^2をいれて
3/2*m*C^2=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)
整理すると
sqrt(5/4)*C=V/sqrt(1-V^2/C^2)

Wolframを使いVを求めます。
結果はV=sqrt(5/9)*C=0.745*C
速度は光速の74.5%と言う事になります。

それではこの物質mがこの場所で持つ事になる全エネルギーEはといいますと
E=m*C^2/sqrt(1-V^2/C^2)であり、これを計算すると
E=3/2*m*C^2 となる事が分かります。
こうしてここでもBHの重量増加は3/2*mとなるのでした。

「それではニュートンさんが言った事と同じではないか」と言われそうであります。
しかしながら、BHに突入する速度、ホライズンが感じる速度が違います。
一方は「光速である」と主張し、もう一方は「光速の74.5%である」と主張するのでありました。

さて、この結果を皆様方はどのように判断されるでしょうか?
ちなみに当方の判断は、といえば「アインシュタイン持ち」であります。

(以上の現象をホライズンに立って見ている人はどう見たのでしょうか?
「落ちてくる物質mの全エネルギーは3/2*m*C^2」と見えるはずです。
しかしながら、BHの外から見ている人には「質量mの物質がポテンシャルエネルギーと引き換えに運動エネルギー1/2*m*C^2を得て落ちて行った」と見えるはずであります。
さて、この物質mと同期して落ちて行った観察者にはどう見えたでしょうか?
「BHが加速しながら近寄ってきた。物質mには何の変化も無し。」
その様に見えた事でありましょう。)


次にホーキング放射でホライズン近傍からニュートリノが出てくる事を考えます。
「ホライズン上からはどのような粒子も出てはこれない」という意見があるようですが、それは本当でしょうか?
ちなみにここでは「ホライズンとは単にBHの外側と内側を識別する位置であり、そこにはどのような物理的な存在もない」という立場で考えます。
そして、ホライズンを境界としてその外側、つまりBHの外側では通常の物理座標と物理法則が作用しているものとします。
これはつまり、「BHの内側からは何ものも外には出てはこれない」という意見には同意しますが、「ホライズンはBHの内部ではなく、単に境界を示すものである」と主張するものであります。

さてそれで、上記の計算結果からはニュートンさんに従えば、「光速未満で飛び出したニュートリノはBHに再吸収される」と言う事になります。
他方でアインシュタインに従うならば「光速の74.5%未満ではBHに再吸収される」と言う事であり、いずれの場合も「そのような低レベルエネルギーのニュートリノがホーキング放射されたとしてもBHの質量は減らない」と言う事であります。

それでは以下、具体的に見ていきましょう。
「ホーキングさんが考えたこと・16」によれば、ホライズン近傍からエネルギーを質量換算した値⊿M(Kg)=2.443E-09でニュートリノが飛び出します。
(ここではプランクスケールに到達したBHが出す事になる最初のニュートリノ放出を事例として取り上げています。)

⊿M(Kg)=2.443E-09をエネルギーに戻すと
⊿E=(2.443E-09)*(2.998*10^8)^2(J)=2.196E+08(J)

このエネルギーをニュートリノの運動エネルギーが受け持つ、1/2*m*V^2=⊿Eとするのがニュートンさんのやり方です。
ニュートリノの静止質量は「ホーキングさんが考えたこと・2」から最大でm=1.1*10^ー34(kg)と思われます。

それでV=sqrt(⊿E*2/m)=sqrt(2*(2.196E+08)/(1.1*10^ー34))
V=1.998E+21=6665046667723.04*C
実に光速の6665046667723倍のスピードですから、優にBHの重力圏からは脱出致します。
そしてBH脱出時には光速Cに相当する運動エネルギーが消費されるだけですので残りのエネルギーは1/2*m*(VーC)^2
こうして放射されたニュートリノはほとんどエネルギーを失わずに脱出可能となることがわかります。
(ニュートリノを仮想粒子ーー>実体化させる為のエネルギーEはE=(1.1*10^ー34)*(2.998*10^8)^2=9.887E-18(J).
2.196E+08(J)に対して相当に小さいので、ここでは無視しています。)

一方で相対論によればニュートリノが満足すべき式は
⊿E+m*C^2=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)
となる事になります。
整理して
P=sqrt((⊿E^2+2*⊿E*m*C^2)/C^2)
m*C^2=(1.1*10^ー34)*C^2=9.887E-18(J).

以上より
P=0.732488
P=m*V/sqrt(1-V^2/C^2)よりVを求めます。
Wolframによれば
V≒C

これでもいいのですがβ=V/Cを使って上の式を変形して
P=m*β*C/sqrt(1-β^2)
としてβを求めます。
結果はβ=1でした。
ちなみに手計算では
β=sqrt((2.2211E+25)^2/((2.2211E+25)^2+1))<1で
βは1未満のはずなのですが計算機の桁数が足りない模様です。

まあいずれにせよVはCに相当に近い値であって、「BH脱出条件のVは光速の74.5%以上」という条件はクリア、めでたくBHからは脱出する事になります。
そうして、ニュートリノがBH脱出につかったエネルギーはニュートリノが持つ事になるポテンシャルエネルギーUp相当であって
Up=G*M*m/Rs=1/2*m*C^2であり
従ってBH脱出後のニュートリノが満足すべき式は
⊿E+m*C^2-Up=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)
となり
⊿E+1/2*m*C^2=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)
となります。

ここで⊿E>>m*C^2であって(エネルギーの差は26ケタ!)、この式を解いてもPの値にはほとんど変化は現われません。
したがってBH脱出後もこのニュートリノは光速で飛び続ける、というのが結論となります。
そしてそのニュートリノがもつエネルギーはほぼBHのホライズン近傍で放出されたエネルギー、2.196E+08(J)という値のままであって、これをたったひとつのニュートリノが運ぶ、という事になります。

注1
通常の惑星に隕石が落下する場合は、隕石の自由落下による運動エネルギーは主に温度に変換され、最終的には熱放射(赤外線放射)の形で宇宙に戻る事になります。
従って隕石の直撃をうけた惑星の質量増加分はほぼ隕石のもつ静止質量分と言う事になります。
ここの所が「硬い表面を持つ惑星の場合」とそのような表面を持たないBHとの場合の顕著な相違点となります。

注2
ニュートリノがエネルギーを運び出す役割をしているのは、超新星爆発でも同じです。<--リンク
そうして、そのようなメカニズムがないと「超新星爆発そのものが起こらず」したがって「大質量のBHの誕生もない」と言う事になります。
但しこの記事中に「ニュートリノの速度の話」がでてきていますが、今の所はニュートリノの速度は光速を超えるということは確認されていません。

そうしてカミオカンデの例はこちらです。<--リンク
あるいはこう言う説明、超新星爆発とニュートリノ重力崩壊型超新星爆発の
ニュートリノ加熱メカニズム
もあります。<--リンク
ご参考までに。

注3
以上の結果は
「ホーキングさんが考えたこと・16」の注6の記述を訂正する事になります。

『・・・詳細なお話は後程とさせていただきますが、概算ではホライズン近傍で持っていたエネルギーはかなりの部分、ポテンシャル井戸を登るのに費やされ、残りの8%ほどのエネルギーが観測される事になるもの思われます。』

実際は「ポテンシャルの井戸を登るのにほとんどエネルギーは消費されない」が正解となるようです。

追伸
上記「超新星爆発とニュートリノ」によれば、超新星爆発でニュートリノが持ち出すエネルギー総量は3*10^46(J)程度とか。(SN1987Aの場合)
平均的なニュートリノ一個の持ち出すエネルギーは40Mev=6.4*10^-12(J).
そうなると、一回の爆発で発生するニュートリノの個数は5*10^57個程度。

さてそれで、その当時の地球のニュートリノ観測実力は5*10^57個発生の爆発に対して、カミオカンデ+その他合計で24個。
これがスーパーカミオカンデ完成でSK単体で8000個に増えました。
つまり6*10^53個のニュートリノが発生したとすれば、そのうちの1つは観測にかかる、という実力です。

さて他方でマイクロBHがプラス質量からマイナス質量へジャンプする際に放出するニュートリノ一つ当たりのエネルギーは2.2*10^9(J)程度とみられます。
そうして、地球を中心にしてその周りに地球近傍と同程度の密度で半径20万光年のダークマターの存在を想定し、それがマイクロBHだとした場合の想定される個数は5.2*10^51個程度。
このダークマターが一億年あたり1.07%程度がプラスからマイナスにジャンプしている、と想定されます。
そうすると年に5.6*10^41個の高エネルギーニュートリノが発生している事になります。
(以上の議論詳細につきましては「ホーキングさんが考えたこと・7・9・16」を参照願います。)

従ってこのイベントによる1年あたりの発生エネルギー総量EはE=(2.2*10^9)*(5.6*10^41)=1.2*10^51(J)
ちなみにこれは一回の超新星爆発の4万倍程度に相当します。
そう言う意味では、地球近傍で発生している高エネルギー現象としては、このマイクロBHに起因するものが一番である可能性があります。

さてそれで、そのイベントをスーパーカミオカンデが一年の稼働時間で観測する確率PはP=5.6*10^41/(6*10^53)
P=9.3*10^-13
このままでは人類はこのイベントを観測する事はできそうもありいません。

しかしながら、宇宙の始まりから137億年のニュートリノ発生のイベントによる合計ニュートリノ数を考えますとP=1.3%ほどとなります。
つまり77年に一回ほどはスーパーカミオカンデでこの高エネルギーのニュートリノが観測できる、と言う事になります。

そうして、地球にやってくる高エネルギーニュートリノは我々の銀河の外からも飛来してきている、そのように推定する事は妥当な事であります。
それゆえに、SKでの高エネルギーニュートリノの観測確率はP=1.3%を下限値としてそれよりも増えるであろう事は十分に予想できる事になります。

そう言う訳で、ざっとしたところではありますが、まあ現状ではこの辺りの推定が妥当なところであろうと思われます。
つまり、「なにやらとても高いエネルギーをもったニュートリノが地球にやってきている事をSKで観測できる可能性がある」という事になります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/v1SmY
http://archive.fo/Xd0at


ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・19・BH(ブラックホール)は光を出すのか?(3)

2019-04-21 06:26:37 | 日記
「トポロジカルな弦理論とその応用  大栗さん」によれば「加速器の衝突実験でプランクエネルギーEpを超える辺りからはBHが出来てしまい、衝突の現場がBHに隠れてしまって、観測できなくなる。」との事であります。<--リンク
つまり「あまりに大量のエネルギーが微小な空間に集まるとBHが生成される」そう言っている訳です。

そのことはまた以下の記事でも確認できる事です。
・光と光をぶつけたら <--リンク
(記事にアクセスできない時はこちらからーー>http://archive.fo/yQeGn

この記事の図1のbではよく知られた電子の対生成の状況が書かれています。
但し、通常の対生成はガンマ線と原子核との衝突によるものであって、光が持つ運動量の一部を原子核が受け取る事で光が物質に変わる事が可能になっています。
それに対してbでは両側から同等の光を入れる事で、光の持つ運動量を相殺しています。

光はエネルギーと運動量を持っていますが、あるいは常に「光速で動いている存在」ですが、そのままでは光の持つエネルギーは物質に変わる事は出来ない様です。
それで、光ーー>物質化には光の持つ運動量を引き受ける物質、たとえば原子核が必要になります。
あるいはbの様にして運動量を相殺してあげる事が必要です。
運動量の相殺が可能である、と言う事は光と光の衝突は「非弾性衝突である」という事でもあります。

さて図1のeで光と光の衝突からヒッグス粒子を作っています。
そうしてこの図には載っていませんが、fでは光と光の衝突によってBHが出来る、とその様に大栗さんは言っている訳であります。


さて次に、大栗さんが言う所の「プランクエネルギーを超えたあたりでBHが出来る」という状況を確認しておきましょう。

ベッケンシュタインさんによれば、「BHに入れる光の波長はBHホライズンの直径が上限である」と主張され、当方もそれに同意するものであります。
そしてその条件はホライズン半径Rsの2倍の値が入射光の波長λに等しい、と言うものになります。

ここで高エネルギーをもった2つの光の衝突を考えます。
そしてそれぞれの光はE/2のエネルギーを持つものとします。

この光の衝突でその場所に解放されるエネルギーEは2つの光が持つエネルギーの合計になりますが、それを一つの光子が持った場合に換算して以下、計算をすすめます。

質量MのBHのホライズン半径RsはRs=2*G*M/C^2 でした。
E=(生h)*ν=(生h)*C/λ
そしてこの光の衝突エネルギーの換算質量MはM=E/C^2=(生h)/(λ*C)
(生h)=h*2*Pi

この換算した質量でBHが出来る、と想定します。
その時にできたBHの直径がBHに代わる前のエネルギーを光喚算した場合の光の波長λと同程度である、というのが、このエネルギーがBHになれるかどうかの境界となります。
つまりλ=2*Rsというものがその条件になります。

以上をRs=2*G*M/C^2に代入してRsを求めます。
答えはRs=sqrt(2*Pi)*Lpです。.
ちなみにsqrt(2*Pi)=2.50663・・・≒2.507ですか。

プランク質量MpのBHのホライズン半径はプランク長Lpの2倍でした。
それからしますと、この光によってできたBHの半径は2.507*Lpであり、1.25倍の大きさである事がわかります。
それはまた同時にこのBHの質量をエネルギー換算した値はプランクエネルギーの1.25倍になっている、これが「プランクエネルギーを超えたあたり」と言う内容であります。

ちなみに
λ=2*Rs=2*sqrt(2*Pi)*Lp
ν=C/λ
以上よりこの光の衝突エネルギーの光に換算した場合の振動数νは3.700168・・・・E+42≒3.700E+42となります。
そうしてこの限界エネルギーの値を境目として、このエネルギーを超える衝突エネルギーを作り出せればそこにはBHが誕生する、と言う事になります。

衝突エネルギーが大きくなればそれだけそこから計算される光喚算の波長の長さ(それはまたそこに作られる物質が持つコンプトン波長と同一の長さになるのではありますが:注1)は短くなります。
一方でそこにつくられるであろうBHのホライズンの直径は大きくなる、そういう関係になっているからであります。


ところでこの振動数が上限であって、これを超えますとそこでこの光はBHに変わる為、光の振動数の上限はここだ、という論がありますが、それは正確な表現ではないでしょう。
光がどれだけのエネルギーを持っていたとしても、衝突という現象がなければ光が物質化する事はない、従ってBHが出来る事もないものと思われます。

しかしながら、他方で弦理論の主張によれば「光も弦の振動であって、その弦の長さはLp程度だ」とされています。
そうして上記の限界エネルギーを運ぶ光の波長はLpの5倍程度でありますから、それは弦理論の限界にまでは達していない、と言う事になります。
しかし限界エネルギーの5倍のエネルギーになりますとそれを運ぶ光の波長はLp程度となり弦理論の限界に到達してしまいます。

そして、それ以上のエネルギーを光が運ぶ事があったとしても、その光の大きさはLpを下回る、と言う事は出来ない、というのが、光の場合の大きさに対する弦理論からの制約条件になるものと思われます。
その場合は光のエネルギーを表す式E=(生h)*ν=(生h)*C/λは相変わらず有効でありましょうが、そこに現れるλはもはや光のサイズを表してはいない、という事になります。

以上の様な光が持つ特性によって、つまり光の波長がプランク長Lpに至るまでは光のサイズは光のもつ波長で表されるが、波長がLpを切った場合は光のサイズは波長では表されず、プランク長Lpに固定される、という主張になります。
その為に、光をBHがホーキング放射する場合でもそのBHには準安定となる事が出来、その時の限界BHのホライズン直径はLpとなります。
そして以上の様な状況はBHがニュートリノを放出する場合と同じである、という事になります。

結論
まずは「光のみをホーキング放射する」という前提に立ちますと、前回まで見てきました様にBHの寿命は相当に延びる、と言う事が分かります。

もうひとつは、光の場合も限界BHのホライズン直径がLpであり、そこに至るまでは前回提示した、修正された寿命式に従ってBHは光をホーキング放射しながら「順調に」質量を減らしていきますが、限界BHサイズを超えて小さくなった時点でフェルミオンの場合と同様に光の場合でも「BHは準安定の状況になる」、ということが分かります。

そうして、それ以降はやはりトンネル・ホーキング放射によってマイナス質量のBHへとその姿を変える、そうしてそこで最終的に安定化するであろう、と言う事が想定されます。


注1
:コンプトン波長
Wikiの記事を読んでもあまりピンときません。
しかしながら、たとえばこの記事の中に以下の様な記述がありました。<--リンク
『コンプトン波長は質量をもった粒子の波動関数の波束の広がり、つまり空間的な広がり、あるいは存在領域を与える。・・・』
以上、ご参考までに。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/nTRRw

ダークマターは興味深いですね(2)

2019-04-15 03:04:11 | 日記
・東大など、ホーキング博士の暗黒物質の説を覆した?<--リンク

ホーキングさんが「PBHがダークマターの正体だ」と主張していたとは知りませんでした。

この話の詳細はこちら

・観測成果 ダークマターは原始ブラックホールではなかった!?

しかしながら当方の主張
「PBHがプランクスケールのマイクロBHとなって存在し続けている。
それがダークマターの正体である。
そしてそれはホーキングさんが主張したこと、PBHが蒸発して消え去る、ということは正しくはない」という主張でもあります。

以上の主張は今回のすばるの観測結果を持ってしても棄却できてはいませんね。


以下、すばる観測報告からの要点の引用となります。

月質量程度の原始ブラックホールの場合は、天球上のアンドロメダ銀河の星とブラックホールの位置関係、あるいはブラックホールの速度に従って、星の明るさの時間変化は典型的に 10 分から数時間にかけて起こります。
これは、変光星など明るさが変化する通常の星と比較して、短い時間変動です。
この重力レンズ効果では、星の多重像を分解して観測できず、一つの星が明るさだけ変化するように見える現象なので、重力マイクロレンズ効果とも呼ばれます。
・・・
しかし、重力レンズ効果は非常に稀な現象で、滅多に起こりません。
それでも、アンドロメダ銀河の多数の星を観測し、また地球とアンドロメダ銀河の間の広大な空間には大量のダークマター、つまり多数の原始ブラックホールが存在すれば、重力マイクロレンズが起こる確率は非常に高いはずです。
・・・
その結果、ダークマターが原始ブラックホールである場合は 1,000 個程度の重力レンズ効果を発見できるという予言に対して、たった1個だけの重力マイクロレンズ候補星を見つけました (図3)。
これが本当の原始ブラックホールの重力マイクロレンズ効果であれば大発見となることから、追観測が待たれます。
逆に、たった1個の重力レンズ候補天体しかなかったということは、これが本当の原始ブラックホールであったとしても、原始ブラックホールの総量はダークマターの約 0.1% 程度の質量にしか寄与していないことになります。』

PBHで「月質量程度の原始ブラックホールの場合」を探索しました。
1000個見つかるはずが1つ見つかりました。
したがって、ダークマターの候補としては「月質量程度の原始ブラックホール」というのは不適当ですが、この一つがPBHとすると「大発見」になります。・・・
という主張です。

そうして当方との主張との大きな相違は「探索すべきPBHの質量の大きさ」にあります。
探索すべきは「月質量程度のPBH」ではなく「プランク質量程度のPBH」なのですよ、すばるさん。

PS
・ビッグバン後最初の分子イオン、宇宙空間で検出

参考までに。

PS
・ダークマターは原始ブラックホールではなかった!?<--リンク

以下本文からの引用
『具体的には、太陽質量の10億分の1(月質量の30分の1程度)の軽い原始ブラックホールがダークマターであるシナリオを初めて棄却しました。
一方、今回の観測では、太陽質量の1-10兆分の1程度の原始ブラックホールがダークマターである可能性は棄却できませんでした。』

このようにちゃんと「境界条件」を言わないと誤解をする人がでてきますので、そこのところ、すばるさん、よろしく。


http://archive.fo/TQUp6

M87のBH(ブラックホール)の撮影に成功(世界初)

2019-04-11 15:46:34 | 日記
BHに興味がある人たちにとってはビックニュースであります。

そうして、人間と言うものは本当に「一見無理な様に見える事を可能にしていく生き物」であります。

そうであればダークマターの探索、というものもついには成功する事になるやもしれませんね。

・ブラックホール捉えた世界の望遠鏡 直径は地球サイズ<--リンク

こうやって撮影した、と言う説明。
研究チームが作成した動画あり。

・史上初、ブラックホールの撮影に成功!8つの電波望遠鏡束ねた「イベント・ホライズン・テレスコープ」で画像化<--リンク
国立天文台の記者会見動画付き。

・ブラックホールの撮影に成功 世界初 一般相対性理論を証明<--リンク

簡単にまとめるとこうなる、と言う記事。

いずれにせよ大きければこんなばけものになるBHがプランクスケールになってそのあたりの我々の周りを飛び回っている、などと言う事は、簡単には信じられませんよねえ。

PS
・ブラックホール撮影に貢献、29歳女性科学者に脚光<--リンク
『画像の正確性を確保するため、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターはデータを異なる4チームに渡し、それぞれのチームが独立してバウマン氏のアルゴリズムを使い画像を作成した。
1か月の作業の後、4グループはそれぞれの結果を他グループに発表した。』

こう言う事がやれるパワーと言うのがアメリカのすごい所ですね。

追伸
M87、ウルトラマンの故郷でした。
彼も大変な所に生まれたものですね。

M87銀河、あそこのBHはジェットを出している事で有名でした<--リンク
そう言う訳で、BHの姿もさるものながら「ジェットのかげでも見えないかなあ」とは、たぶん研究者の方々は思っていた事でありましょう。


ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・18・BH(ブラックホール)は光を出すのか?(2)

2019-04-10 05:40:49 | 日記

フェルミオンが放出される粒子である場合は放射スペクトルは黒体放射スペクトルになるであろう、と言う事はホーキングさんが言われる通りでありましょう。
しかしながら、光が放出される、とするとそれはBHがローカットフィルターとなり、ホーキング温度Tで一番多く放射されるはずの振動数νpの14倍以上の振動数でないとBHは吸収せず、したがってホーキング放射も起こらない、と言うのが前回の結論でありました。 

その事は放出される最低のエネルギーレベルが従来想定していた平均のエネルギーレベルの14倍程度になる、ということでもあり、従って対生成するであろう仮想粒子の寿命は14分の1となり、その粒子の飛行継続距離も14分の1程度に落ちるという事になります。
そうなりますと、従来は「多層の粒子放出層モデル」でホライズン半径の2倍程度の放出層の厚さを考慮すればよかろう、としてきましたが、とてもそれほどの層の厚さを想定する事は出来ない、と言う事になります。

飛行距離の議論は「ホーキングさんが考えたこと・15」で行いましたが、それと同じ議論を今度は「光の場合は飛行継続距離が14分の1になる」という条件を入れて再度行う事になります。
「15」での議論は温度Tでの放出数がピークとなる振動数νpを指標とし、その粒子の飛行距離がホライズンまでの距離の何倍になっているかで、黒体放射スペクトルを示す放射粒子について、十分な数の粒子がホライズンに到着できるかどうかを判断していました。

それに対して今回は状況が異なり、BHに吸収されるであろう最低エネルギーの振動数をもつ光が判断基準を与えます。
この光がとにかくBHに到達する事、そのような条件をまずは調べましょう。

それは振動数νpを指標とした場合にその飛行距離がホライズンまでの距離の14倍以上必要である、と言う事になります。
それぐらいホライズンに近い場所からでないと、仮想粒子がホライズンに到達できない、到達する前に仮想粒子は消滅してしまう、と言う事になります。


さてそれで「15」では2つのケースについて考察しました。
飛行コースとしてホライズンに到達可能な円錐の外面に沿って飛ぶ場合(このコースが最悪条件です)、それからその円錐の中心軸近傍を飛行する場合(これは最良条件です)の2つでした。
今回も同様に「15」を参照しながら、この2つのケースで見ていきましょう。

円錐の外面に沿って飛ぶ場合(最悪条件)
比率1.114X^2/sqrt(X^2-1)=14として、Wolfram|Alphaでその根の値を調べます。
「14=1.114X^2/sqrt(X^2-1)の根」と入力して
X=10/557*SQRT(70*(3500-3*SQRT(1326639)))=1.003201を得ます。

仮想粒子(光子)はX=1から1.003201という範囲内の位置での発生のみが許容される事がわかります。

円錐の中心軸近傍を飛行する場合(最良条件)
比率1.114X^2/(X-1)=14として根を求めます。
「14=1.114X^2/(X-1)の根」
X=-10/557*(SQRT(83510)-350)=1.095494

今度はXが1から1.095494という範囲内の位置での発生までが許容され、相当に許容範囲が広がる事が分かります。

さて、こう言う場合はたいてい平均値を使うのが妥当であります。
(今回のここでの議論はその程度の厳密さしか持たず、ある程度の目安を確認するという事であります。)

それで求めるXは
X=(1.003201+1.095494)/2=1.0493475≒1.049
こうしてXの許容範囲が1<X<1.049と決定できました。
フェルミオンの場合は1<x<3を許容していましたので、それに比べると随分と光の場合は仮想粒子の発生可能な許容範囲が狭く、かつホライズンに近い、と言う事が特徴的であります。


次にこの範囲で「ホーキングさんが考えたこと・14」の議論を参照して(1/X^6)(1-sqrt(X^2-1)/X)を積分します。
「(1/X^6)(1-sqrt(X^2-1)/X) 積分範囲1から1.049」を入力し、
答えは0.0341を得ます。
フェルミオンの時は同様に積分した結果、得られた補正数値は0.1018でしたので、光の場合はその値の33.5%、約3分の1になる事がわかりました。


結論
フェルミオン放射に対してホーキング放射が光である場合は、エネルギー増加による仮想粒子の存在時間の短縮、ひいては仮想粒子の飛行距離が短くなるという影響を考慮する必要があり、その結果フェルミオンの場合よりも許容される仮想粒子発生層が薄くなり、その事によって放射効率がフェルミオンに比べて約3分の1になるという事になります。

(ちなみに前回検討したのは、光放射の場合にはBHがローカットフィルターとして働く為に黒体放射スペクトルでの放射が実現できず、その分放射効率が落ちる、と言う話であり、今回のこの話とはまた別の話であります。
つまり、BHがフェルミオンではなく光を放射する、とした場合にはフェルミオンの場合にはなかった、新たに発生する事になる2つの放射効率を阻害する要因が絡んでくるのです。
それはBHが光に対してはローカットフィルターになる、それから光の場合は仮想粒子の飛行距離が落ちるという事であります。)


追伸
さてそう言う訳で、以下、前回「17」で提示した寿命関連の記述は次のように修正される事になります。

『従来のBHの寿命式はこうでした。
t=(8.41E-17)*M^3(Sec)
この式ですとM=250000Kg(250トン)に到達してから寿命まではt=1.314secです。

これが前回まで提案してきた「多層の仮想粒子発生モデル」ですとほぼ10倍のt=13.14secに伸びます。<--フェルミオンの場合はこれでOK。

でも光の場合には、ここが10倍からさらに3倍した30倍に修正する必要がある、というのが今回の検討結果になります。
そしてその結果はt=13.14secから39.42sectに伸びる事になります。


さらにBHが放出する粒子は光子のみである、とすると寿命は上記の6.85*10^11倍に伸びて29.1万年程となります。<--BHが光の低周波数側を受け入れない事による結果です。

上記のt=13.14secーー>39.42secが加味されその結果、寿命は29.1万年が85.6万年程にさらに伸びる、という事になります。』


同様に「17」の注2の記述も以下の様に修正されます。
『注2
BHが光子のみを放出と言う事で計算すると、最後の1秒で8.3Kgの質量が光子(γ線)に変わります。
それは7.46E+17(J)程度でありTNT換算で178メガトン、水爆3個程度に相当する爆発が起こりそうです。

ちなみに最後の瞬間から2年前の1日間ではTNT換算で376トンのエネルギーがγ線に変換されます。
それは1.57*10^12(J)/日=18205KW。
一般世帯4550軒相当のエネルギーになります。

そうであれば、BHの蒸発の観測、というのはこの辺りの状況が限界かと思われます。
その時のBH質量は3316Kg(車2台分程度),ホライズン半径は4.92*10^-24(m)。
陽子半径が8.75*10^-16(m)ですから、まあBHというものはいずれにせよ大変なしろものではあります。』


ホーキング放射が実際にはニュートリノを放出するプロセスがどれくらいの割合を占めて、光を放出する割合がどれくらいであるのか、あるいはあったのか、BHの寿命計算に与える影響を見てもそれはとても重要なポイントである、と言う事が分かります。
しかしながら、それについての情報、手がかりは残念ながら今の所はあまりない様であります。

加えて申し添えますれば、BHの最後の1秒間に放出される事になるエネルギーがγ線であれば人類にとってそれは観測可能な事象となりますが、ニュートリノであった場合は、その観測は非常に難しくなる、それはまるで「無音の爆発」の様であります。

注1
以下、上記追伸のさらに重力赤方偏移による修正となります。<--リンク
BHから放射される光は重力赤方偏移を受けます。

wikiから、仮想粒子放出点rでの時間間隔(時間の流れのスピード)=BH重力圏外の観測点の時間間隔*SQRT(1-Rs/r)。
放出点で振動数νを持つ光の周期は1/νになります。
従って1/ν(放出点)=1/ν(観測点)*SQRT(1-Rs/r)

観測されるエネルギーEはE=(生h)*ν(観測点)であり、観測点での光の振動数に比例します。
そうしてν(観測点)=ν(放出点)*SQRT(1-Rs/r)によって放出される光の振動数ν(放出点)に対しては重力による補正を行いν(観測点)を求める必要があります。

今回はr=1.049*Rsと決めましたので、この値で修正値SQRT(1-Rs/r)を計算します。
r=1.049*Rsを代入してSQRT(1-Rs/r)=0.2161・・・が求まります。

以上より上記記述は最終的に以下の様になります。
『注2
BHが光子のみを放出と言う事で計算すると、最後の1秒で8.3Kgの質量が光子(γ線)に変わります。
それは1.61E+17(J)程度でありTNT換算で38.5メガトン、水爆0.6個程度に相当する爆発が起こりそうです。

観測点ではこうなります。
そうして、我々は対象BHの重力圏外に位置する観測点でしか、このような小さなBHの状況は観測できないのであります。

ちなみに最後の瞬間から2年前の1日間ではTNT換算で81トンのエネルギーがγ線に変換されます。
それは3.39*10^11(J)/日=3935KW。
一般世帯962軒相当のエネルギーになります。』

そうして重力赤方偏移は観測されるエネルギーについての修正にはなりますが、BHの寿命そのものには影響を与える事はなく、寿命の計算は従来の考え方で問題はありません。

さてそう言う訳で、従来の計算では原始BHの最後は1秒間で250トンの質量がγ線に変わり、大変な爆発現象が観察される、と期待されていましたが、実際に状況を詳細に検討してみますれば、250トンが8.3Kgになり、さらには重力赤方偏移の効果によって観測されるエネルギーは1.8kg相当の質量がγ線としてエネルギーに変換された様に見えるだけの様です。

そうであればこれはBHの最後の姿というものが、本当にいつのまにか「大爆発ではなく、線香花火になってしまった様なもの」であります。

以下、ご参考までに。
・銀河中心ブラックホールの近傍で一般相対性理論を検証<--リンク
http://archive.fo/J68su

注2
[そうして重力赤方偏移は観測されるエネルギーについての修正にはなりますが、BHの寿命そのものには影響を与える事はなく、寿命の計算は従来の考え方で問題はありません。]

こう書きましたが、BHタイム、[BHがホライズン近傍で感じている寿命]はこの記述の通りでありましょうが、さて、[BHの重力圏を離れた外部の観測者が測定する寿命]が本当にBHタイムと同一であるのかどうか、そこの所は多少の疑問が残る所でもあります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/I2zbR
http://archive.fo/Fq8Dz


ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・17・BH(ブラックホール)は光を出すのか?

2019-04-05 00:20:37 | 日記
「BHが黒体輻射している」というのはホーキングさんの結論でありました。
そうであれば「いまさら何を言っているんだ、お前は」と言われそうであります。

しかしながら、ホーキングさんは放出される粒子が「光子である」とは一言も言っていません。
「なにやらエネルギーをもった粒子であろう」そう主張されているにすぎない様です。
そうしてその粒子の持つエネルギーを数多く観測すれば、そのスペクトルが黒体放射スペクトルと一致する、そう主張しているにすぎません。

そうして今までの議論が何ゆえに「放射される粒子はニュートリノである」と想定して話を進めてきたのか、より一般的に真空の揺らぎで対生成される粒子といえば光子ではないのか、そう言われそうであります。
まあそうなんでありますが、ニュートリノはフェルミオン、光子はボゾンであり、前者は閉じた弦で表され、後者は開いた弦で表されます。
そしてニュートリノのサイズは閉じた弦のサイズ、それはプランク長あたりであろうとされていますが、そのような「大きさ」を想定する事が可能であります。

他方で光子というのは「波長というサイズ」を持つ事は、これもまた周知のことでありましょう。
それゆえに顕微鏡の分解能はその顕微鏡が使用している波の波長程度が限界となります。

さて、BHもホライズンの直径というサイズを持っています。
このサイズがプランク長未満になると、フェルミオンはBHの中に飛び込めない、「そこで一応の準安定に到達する」と言うのが当方の主張でした。

同様に光子に対してもその波長サイズがBHに入れるかどうか、それを決める要因になっていると想定するのは妥当な事であります。
現にベッケンシュタインさんはBHの直径サイズの波長をもった光子がBHに入る事でBHのホライズン表面積がLp^2程増加する、そしてそれがBHが情報を蓄積する際の最小単位である、と主張されたのでした。
そうしてBHの直径よりも大きな波長をもった光子がBHの中に入る状況、というものは、確率的にはゼロと言う事ではないでしょうが、相当に起こりにくい現象であろうという事は想定できます。

さてそうであれば、ここではベッケンシュタインさんに同意し、「BHに入れる光の波長はBHホライズンの直径が上限である」と想定し、話を進める事とします。

質量MのBHのホライズン半径RsはRs=2*G*M/C^2 .でした。
直径が波長λになりますからλ=4*G*M/C^2 です。
その時の光の周波数νはν=C/λ=C/(4*G*M/C^2)=C^3/(4*G*M)です。.

そしてその時のBHのホーキング温度TはT=h*C^3/(8*pi*Kb*G*M)。
プランク則よりその温度の時の最も多く放出される光子の振動数νpは (生h)*νp = 2.82*Kb*Tから
νp=(2.82*Kb*T)/(生h)
生h=h*2*Piを代入して
νp=(2.82*Kb*T)/(h*2*Pi)
上式にT=h*C^3/(8*pi*Kb*G*M)を代入して整理すると
νp=(2.82*C^3)/(16*Pi^2*G*M)

次にνがνpの何倍になっているか調べます。
レシオRはR=ν/νp=(C^3/(4*G*M))/((2.82*C^3)/(16*Pi^2*G*M))
R=(4*Pi^2)/2.82=13.99942≒14

そういうわけで、BHが受け入れ可能な光子の振動数はBHのホーキング温度Tで計算される黒体放射スペクトルのピーク周波数νpの14倍以上からである、と言う事が分かるのでした。
これはつまり「BHは光に対してはローカットフィルターになっている」と言う事であります。
そうして、BHが光を吸収してはじめてBHは反対方向への光の放射が可能になるのですから、放射される光のスペクトルは黒体放射スペクトルとはまるで違うものになる、と言う事が分かります。


さてここでプランクの放射則を簡略化した式(hとKbを1とし、温度を100とした式)x^3/(e^(x/100)-1)を使います。(注1)
ここでxは振動数を表しています。
そしてここでもWolframを使います。<--リンク
プロットを選びます。
「x^3/(e^(x/100)-1) ,0<x<1500」<--こんな風に書いて入力(コピペ)するとスペクトルグラフが出てきます。
このグラフのピークは「x^3/(e^(x/100)-1) の極大値」と書けば出てきます。
グラフにカーソルを合わせて282がピークである事を確かめましょう。

Wolframの「例」に戻って積分ーー>定積分を選びます。
「0から1500の範囲でx^3/(e^(x/100)-1) を積分」しますと6.49267*10^8が答えです。
「0から無限の範囲でx^3/(e^(x/100)-1) を積分」で6.49394*10^8。

さて問題の14倍ではX=282*14=3948
「3948から無限の範囲でx^3/(e^(x/100)-1) を積分」では0.0000474879。

実は光の振動数は上限がありそうですが、まあ一応それはここでは無視しています。

そうして問題は「3948から無限の範囲」の光子が発生する確率ですね。
それは母数が6.49394*10^8ですから、それで割ってやればよろしい。
Ans=0.0000474879/(6.49394*10^8)
Ans=7.31*10^-14=0.0000000000000731

さて、光はBHから出てきそうですが、それは従来予想された頻度よりも随分と低い状況の様です。
ただしピーク周波数の14倍以上のエネルギーを持っていますから、それを考慮しますとエネルギーの放射効率⊿Erは⊿Er=(7.31*10^-14)*14~20程度かと思われます。
最大予測値の20で見積もって
⊿Er=(7.31*10^-14)*20=1.46*10^-12=0.00000000000146程度かと。
それはつまりBHの寿命は放出される粒子が光子のみであるとすると、放出粒子をフェルミオンと想定して計算した場合の1/0.00000000000146倍に伸びる、と言う事であります。


さて従来のBHの寿命式はこうでした。
t=(8.41E-17)*M^3(Sec)
この式ですとM=250000Kg(250トン)に到達してから寿命まではt=1.314secです。(注2)

これが前回まで提案してきた「多層の仮想粒子発生モデル」ですとほぼ10倍のt=13.14secに伸びます。

さらにBHが放出する粒子は光子のみである、とすると寿命は上記の6.85*10^11倍に伸びて29.1万年程となります。

そう言う訳で、BHは確かに光子は放出しそうですが、なかなかそれは難しい事である、と言う事が分かるのでありました。
(イトウ 2019年4月3日)

注1
ここでは温度を100にしていますが、この温度を1000にするとピークのXが2820となりその14倍の値が39480となり、無限大までの積分の値が変わってきますがそれと同じようにゼロから無限大までの積分の値も変化し、その結果、必要なレシオの値、確率の値は一定に保たれます。
そうしてそれが「プランク則のグラフの形は温度には寄らない」と言う意味になります。

注2
BHが光子のみを放出と言う事で計算すると、最後の1秒で12Kgの質量が光子(γ線)に変わります。
それは1.08E+18(J)程度でありTNT換算で258メガトン、水爆4個程度に相当する爆発が起こりそうです。

ちなみに最後の瞬間から2年前の1日間ではTNT換算で644トンのエネルギーがγ線に変換されます。
それは2.7*10^12(J)/日=31200KW。
一般世帯7800軒相当のエネルギーになります。

そうであれば、BHの蒸発の観測、というのはこの辺りの状況が限界かと思われます。
その時のBH質量は4780Kg(車3台分程度),ホライズン半径は7.099*10^-24(m)。
陽子半径が8.75*10^-16(m)ですから、まあBHというものはいずれにせよ大変なしろものではあります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/yjfmx
http://archive.fo/yVWjz