特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その5・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮

2022-10-26 06:17:37 | 日記

さて前のページでは『「エーテルは存在する」+「ローレンツ短縮が起こる」という立場でMM干渉計の実験結果は完全に説明可能となる事』を見てきました。

それで次のテーマは「特殊相対論の立場で見た時にはどうなるのか」という事になります。

この立場では「エーテルの存在=光が波だからその伝達する媒質が存在するはずだ」を前提としません。

ただ単にMM干渉計が存在している慣性系で観測者が見た時、とそれからMM干渉計に対してー0.8Cで移動している慣性系に立つ観測者から見た時の2つの場合の比較・検討となります。

そうして「光速はいずれの観測者に対しても一定の値、Cである」が前提となります。



1、MM干渉計がある慣性系に立つ観測者から見た時

腕の長さがCである直交する2つの腕の先に付けられた鏡に飛んで帰ってくる光は、X軸、Y軸方向ともに2秒後に戻ってくることを観測者は観測します。

そうして、MM干渉計をどの方向に回転しようがその事はこの結果に対しては何の影響も与えない、という、「ほとんど常識的・直感的な結果」を特殊相対論は結論として出してきます。

なぜならば「MM干渉計と観測者との間の相対速度はこの時にはゼロ」であるからです。



2、MM干渉計に対してー0.8CでX軸方向に移動している慣性系に立つ観測者から見た時(注1)

相対論講義録2007年度 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :の32Pの図で真ん中と右の絵がその状況を表しています。

ちなみに左の絵は1、の状況を示しています。

さてこの絵ではMM干渉計がXプラス方向に0.8Cで走っている時の状況になっています。

それはつまりこの絵が「MM干渉計に対してー0.8Cで移動している慣性系に立つ観測者から見た時の絵である」、という事になります。

その場合は「静止しているエーテルに対してMM干渉計が+X方向に0.8Cで移動している時」と全く同じ結果を特殊相対論は与えます。

つまり

T(Y軸方向)=3.333・・・(秒)

T(X軸方向)=5.555・・・(秒)

で光は原点に戻ってくる、という計算になります。

ただしこの時はまだローレンツ短縮の効果は入れてはいません。

ここにX軸方向のローレンツ短縮分を加味すると

T(X軸方向)=3.333・・・(秒)

となり、光は同時に原点に戻ってくることが分かります。

つまりは特殊相対論の前提である

・すべての慣性系は平等である

・光速はいつもCである

という条件だけではMM干渉計の結果を説明できないのです。

そうしてこの事は「エーテルが存在する」という前提での検討状況と同じです。

そうであれば特殊相対論の立場からしても「MM干渉計の結果を説明する為にはローレンツ短縮が必要となる」という事であって、その事は「エーテルが存在するとした場合となんら変わらない」と言えます。


ちなみに、1、の計算結果と2、の結果を比較する事で2、においては「0.8Cで移動しているMM干渉計の時間は遅れる」という事も分かります。

この「時間が遅れる」という結果は「エーテルに対していつも光は光速Cで伝わる」という前提からは出てきません。

「光の速度はどうやって計っても光速Cである」という「特殊相対論の前提から出てきている」様です。

そうであれば「時間が遅れる」という観測結果が示されれば「エーテルに対していつも光は光速Cで伝わる」という前提・仮定は否定されると考えてよさそうです。

但しMM干渉計の結果のみではまだそこまでの事は言えません。

なんとなればMM干渉計はX軸方向に飛んだ光とY軸方向に飛んだ光が戻ってきた時の時間差のみを検出する装置であるからです。



さてそうであれば、世間一般に言われれいる様に「MM干渉計の結果を持ってエーテルは存在しないという事の証明になっている」という立場は間違いであると言えます。

それは「エーテルは存在する」+「ローレンツ短縮が起こる」という立場でMM干渉計の実験結果は完全に説明可能となるからであります。



追伸:上記2、の説明の中に「特殊相対論の双子のパラドックス(加速度運動なし)」がすでに潜んでいる件

2、の説明で観測されている干渉計を干渉計①とします。

そうしてそのMM干渉計①に対してー0.8CでX軸方向に移動している慣性系に立つ観測者の観測によって、干渉計①がある慣性系の時間が遅れている事がわかりました。

それでその時に同時に「ー0.8CでX軸方向に移動している慣性系にもMM干渉計②をすえつける事が可能」です。

そうしてその干渉計②を干渉計①が据えられた慣性系から観測する事も可能です。

それで、その様な観測を行いますと今度は干渉計②がある慣性系の時間が遅れている事が分かります。

それは2、で行った説明を今度は立場を入れ替えて干渉計②に行えばよいだけですから、「干渉計②がある慣性系の時間が遅れている」という結論に到達します。

それでこれは特殊相対論の前提

・すべての慣性系は平等である

・光速はいつもCである

という前提から当然の結末として出てくる結果です。

こうして『特殊相対論は「双子のパラドックス(加速度運動なし)」を必然的に内包することになる系である』という事が分かるのでありました。


そうしてもちろん当方の立場は、といえば「お互いが相手の時計を遅れていると観測する様な状況は現実には成立しない」と言うものになります。


追伸の2:MMさんたちはもちろん「エーテルに対して地球はたいていの時間、移動している」と判断し、そうであれば「光の到達時間差を検出できる」として実験を始めたのでした。

しかし自然はローレンツ変換を用意していました。

従ってMMさん達は「どうやっても光の到達時間差を検出できなかった」という結果に終わったのであります。

そうしてその事は逆に言えば「MM干渉計の実験はローレンツ変換が存在するということの糸口を始めて確認した実験であった」という事ができます。


注1:MMは運動しながらMM干渉計を見てはいない、という突込みが出来そうです。

確かにMMはMM干渉計に対して静止した状態で干渉縞の移動があるかないかを確認したのでした。

そうしてその結果は、「干渉縞の移動は見当たらなかった」であります。

さてこの状況にあるMM干渉計を0.8Cで移動している観測者が見た時に、干渉計の縞模様は移動するでしょうか?

ローレンツ短縮を入れていない特殊相対論の2つの前提条件にたてば答えは「移動する」となります。

しかし現実には干渉縞は0.8Cで移動しながらMM干渉計をみても移動しないのでした。(従ってこの事からも、特殊相対論においては「ローレンツ短縮はマストとなるのでした。)

なぜならその時すでにMM干渉計に対して静止している観測者が「干渉縞の移動は起きてはいない」と報告しているからです。

そのように状況が決定されている物理状態を0.8Cの移動している観測者が見ると「違う結果が見える」という事はありえません。

したがって「0.8Cで移動している観測者が見た時」=「-0.8CでMM干渉計が移動している時」にも干渉縞の移動は確認されない事になるのです。


コメント:MMさん達がやった「エーテルの風探し」は今の時代においては「ダークマターの風探し」に通じるものがあります。

両方ともに「目には見えないもの」ではあるが「確かに地球に吹き付けている」と想定され、探されたものであります。

そうして残念ながら「エーテルの風」は見つかりませんでしたが、さて「ダークマターの風」はとらえる事ができますやら。

要注目であります。


その4・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮・相対論 https://archive.ph/xDfrM

 

PS:相対論の事など 記事一覧

 

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