ドリフトしながら単振動する場合の時間の遅れ :で示した様に「単振動での時間の遅れの精密測定」を使えば「地球が基準慣性系であるのかどうか判断できる」という事でした。
さて本当にそれができるのか、以下、具体的に検討してみましょう。
まずは状況を整理します。
地球が基準慣性系に対してドリフトしているかどうかは不明、でした。
したがって地上に据えられた時計、これは地球に対しては静止していますが、基準慣性系に対しては静止しているかどうかは不明です。
しかしながら、単振動した場合の時間の遅れを比較、検討出来るのはこの「地球に対しては静止している時計」以外にはないのです。
1、それで、地球が静止慣性系だとしたらそこに据えられた時計を積分した値は2π(2パイ)になるという事は前述した通りです。それでこれが理論上の基準値となります。
それに対して単振動速度:0.9994C ドリフト速度:0.001C とした場合の以下の2つの計算は上記で示した「ドリフトしながら単振動する場合の時間の遅れ・相対論」ですでに終わっています。
2、基準慣性系で単振動した場合
桁落ち計算結果 : 4.0102
桁落ち回避結果 : 2.00509944359250・・・*2
=4.010198887185・・・(注1)
3、基準慣性系に対してドリフトしながら単振動した場合
ドリフトしながら単振動した場合の計算も終わっています。
桁落ち計算結果 : 4.0102
しかしながらこれでは精度が足りませんので2番から3番を引き算したものを積分しました。
桁落ち回避結果 :6.63976*10^-7=0.000000663976・・・・
これが引き算の答えですから、従って3番の答えは2番-差分の計算結果となります。
従って3番の桁落ち回避結果は
桁落ち回避結果 :4.010198223209・・・
4、そうしてまだ計算が終わっていないのが「地球がドリフトしているとした場合の地上に設置された時計の積分」です。
この場合は地球の基準慣性系に対する相対速度はV=0.001Cですので
sqrt(1-0.001^2)を積分する事になります。
sqrt(1-(0.001^2))をxが0から2πまでの範囲で積分
https://ja.wolframalpha.com/input/?i=%EF%BD%93%EF%BD%91%EF%BD%92%EF%BD%94%EF%BC%88%EF%BC%91%EF%BC%8D%EF%BC%88%EF%BC%90%EF%BC%8E%EF%BC%90%EF%BC%90%EF%BC%91%5E2%EF%BC%89%EF%BC%89%E3%82%92x%E3%81%8C0%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BC%92%CF%80%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86
答えは6.28318
残念ですが、これでは桁数が足りません。
sqrt(1-(0.001^2))=0.99999949999987・・・
これを0から2πまでの範囲で積分しますから
2π*sqrt(1-(0.001^2))
=6.2831821655861474・・・
桁落ち回避結果 : 6.2831821655861474・・・
以上で全ての場合の計算が終了した事になります。
結果をまとめます。
A:地球が基準慣性系だとしたら単振動による時間の遅れは
2番結果/1番結果(2パイ)=4.010198887185/2π
=0.638242975677110・・・
B:地球が基準慣性系に対してドリフトしていたとしたら単振動による時間の遅れは
3番結果/4番結果
=4.010198223209/6.2831821655861474
=0.638243189123722・・・
地球上で単振動速度:0.9994Cで単振動させた時計の時間の遅れは地球に対して静止している時計に対してどれだけの割合で遅れたのか。
それを精密測定して割合を計算する。
その値がAであれば「地球は基準慣性系である」となり
Bであれば「地球は基準慣性系ではない」となります。
但し測定精度は少なくとも有効数字7ケタ以上が必要である事が分かります。
注1:「桁落ち回避」は以下の文のウルフラムへの入力によります。
sqrt(1- ((0.9994cos x)^2))
https://ja.wolframalpha.com/input/?i=%EF%BD%93%EF%BD%91%EF%BD%92%EF%BD%94%281%EF%BC%8D+%28%280.9994cos+x%29%EF%BC%BE%EF%BC%92%29%29
計算結果を下に見ていきますと「定積分」の項があり、そこで0~π(パイ)まで積分した値が表示されています。
追伸:差分(ドリフトありーなし)>0 であって、ドリフト有の方が遅れの割合がすくない。それを計算します。
B-A=2.13446611E-7
=0.00000021344661
=0.00002%程の差があります。
そうしてこれが地球上での観測で検出可能な数値となります。
しかしながら、この差分の小ささが「当面、地球基準で物理実験を行っても、それほどおかしな結果が生じてこなかった事の説明になっている」とも言えそうです。
追伸の2:宇宙マイクロ波背景放射(CMBR)
https://math-ucr-edu.translate.goog/home/baez/physics/Relativity/SR/experiments.html?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc#CMBR
『CMBRは拡散性でほぼ等方性のマイクロ波放射であり、明らかにすべての空間を満たします。
それは一般的にビッグバンの遺物であると考えられています。
SRのテストではありませんが、一部の読者はCMBR測定に関心があるかもしれません。
地球の近くには、双極子モーメントがゼロである独特の局所慣性系があります。
このフレームは、太陽に対して約370 km / sの速度で移動します。』
↑
以上の議論においてCMBに対する地球の移動速度を約300 km / sと近似しています。
従って前提は「基準慣性系に対するドリフト速度は0.001C」となります。
追伸の3
地球が基準慣性系に対してドリフトしていた、とすると、この新しく登場した「静止時計と単振動する時計の組み合わせによる地球スピードメーター」は宇宙空間にある星座を見ることなく地球のドリフト速度を検出できる、という「優れもの」であります。
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