特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・「MN図の唯一性定理」

2022-12-15 02:49:24 | 日記

1、「ミンコフスキー パラドックス」に関連して

以下「ミンコフスキーの4次元世界」 : https://archive.ph/Cvvyf :を参照します。

それで同上資料の「(7)時計の遅れ」第37図から始めます。それで第37図によってミンコフスキーさんは「相対運動している慣性系同士はお互いに相手の時計が遅れている事を確認する」と説明しています。

このような「一つのMN図を対象としていながら、そこから相異なる2つの結論を導き出す説明」、「お互いに相手の時計が遅れている事を確認する」と言う様な主張を指して「ミンコフスキー パラドックス」と命名したのでした。



さて その3・ ミンコフスキー パラドックス・相対論 :では「点Dは点Bを見る事は出来ず、点Bは点Dの時刻を知る事は出来ない、従ってどちらの時計が遅れていたのか判断できない」という事を確認しました。

それでその第37図ですが、ミンコフスキーさんにとっては「このMN図1枚で世界を表すことが出来る」と主張している事になります。


しかしながら通常の特殊相対論の相互に観測する時間遅れの説明ではMN図のY軸に取る慣性系を入れ替える事で「お互いに相手の時計が遅れている事を確認する」と言う状況を説明しています。

したがってこの場合はMN図は2枚登場する事になり、しかも「この2枚が1つの同じ現実を表している」と通常の説明では主張されるのです。

と言うのもミンコフスキーさんの第37図の説明から導かれる事になる「ミンコフスキー パラドックス」によって1枚のMN図だけでは「お互いに相手の時計が遅れている事を確認する」と言う状況を説明する事ができない、という事が明らかになるからであります。

それで2枚のMN図を提示して説明する事が必要になりました。(・・・と推定する次第であります。)


さてしかしながらミンコフスキーさんは「1枚のMN図が一つの現実の世界に対応している」とそこまではそのように認識していたのではないか、と推察するのでありました。


2、第37図でミンコフスキーさんがトライした説明について

MN図でY軸に取るのは「ひとまずは静止系として扱う慣性系=K系」の方です。

そうしてその「ひとまずの慣性系」に対して速度Vで運動していると見なす慣性系=K'系をローレンツ変換を考慮した形でMN図に描きこむ事で第37図は出来上がっています。

そうであればK系に対してK'系の時間が遅れる、と言うのは第37図からの結論としては「当然の事」なのです。

なんとなれば「速度Vで移動している事を反映したローレンツ変換を行って表示しているから」であります。

そしてどの程度時間が遅れているのか、それは相対論電卓で計算した通りの値になっています。


しかしながら「静止していると見なしたK系の時間が運動していると見なしたK'系に対して遅れる」という事は「それほどには自明の事ではありません。」

なぜそんな事がいえるのか?

先に「K'系がK系に対して時間が遅れる、と言ったではないか?」と反論されるからですね。

しかしながらミンコフスキーさんは「数学的にはこのように考えればその様な結果が得られる」という事をまがりなりにも示しました。

この数学的に示された結果は物理的には検証不可能なものでしたが、少なくともミンコフスキーさんはそれを示した、という事は評価されるべき事柄であると思われます。


3、「ミンコフスキー パラドックス」の本質

K系の観測者がK'系を観測する時に観測対象とする時空上の点Qがまずは決まります。

それで今度はそのK'系で決められた時空上の点QからK系を観測すると元のK系の観測者が立っていた時空上の点を観測するのではなくて、それよりも過去の時点を観測する事になる、という所にこのパラドックスの本質があります。

そうして「何故そんな事が起こるのか」と言えば「観測者と観測される時空上の点との間に空間的な距離があるからである」となります。

したがって「K系の観測者とK'系にある観測対象地点との間の空間距離をゼロにすればこのパラドックスは消え去る」のでありました。


4、タキオン反電話について

タキオンを使えば過去に情報を送れる、という話は間違っている、という事についてはすでに述べた事であります。: その1・ タキオン反電話・相対論 : https://archive.md/zEk7d :を参照ねがいます。

ここで問題にしたのは「計算の途中で視点を切り替える事」でした。

そうしてその事はまさにMN図を切り替える事に対応していました。

そうであれば「MN図の唯一性定理」によって「計算の途中で視点を切り替える事」はできなくなり、従って「タキオンは過去には飛ばない」という事になります。



ちなみにMN図を切り替えることなしでタキオンが過去に飛ぶ図を描いている方もおられます。

ここでその例として、いつもお世話になっているEMANさんの相当するページを参照させて頂きます。: https://archive.ph/oHkcI :



このページの一番下の図で点BからY軸に向かってタキオンを放射しているのですが、これによってY軸の点tから点Bに向かって放射されたタキオンの時刻よりも過去に点Bから折り返したタキオンが戻る、と説明されています。

それでその説明のどこが間違っているのか、といいますと、点BからY軸に向かって放射されたタキオンが無限大の速度を持っていた、としても点BからY軸に向かってX軸と平行になる所までしかタキオンの世界線を描く事ができず、それはつまり「点BからY軸に対して情報が瞬時に伝わる」という事を表しているのですが、それが限界であって、それよりも過去に向かって情報を運ぶタキオンはない、という事になります。



それで「そうではなくてタキオンを使えばそれが可能である」とするEMANさんの主張のよりどころは

『協力者の同時線(水色の破線)よりは上を向いているので,協力者にとってはこの信号は未来に向けて普通に飛んで行っていることが読み取れる.

しかしそれは我々にとっては,最初に信号を発した時刻 t よりも過去に向かっているのである.』

という所に現れています。



これはこのページに描かれたMN図は1枚なのでありますが、点BからY軸に向かってタキオンを飛ばす時に「緑の線で示された協力者に視点を変えている事」を示しています。

そうしてその事は「実は協力者をY軸に取ったMN図に視点を切り替えている=もう一枚のMN図の世界に状況を切り替えている」という事になります。

そうやって「MN図を切り替える=視点を切り替える=世界を切り替える事」でタキオンがあたかも過去に飛んだかのように表すことが可能になっています。

しかしながらそれは「MN図の唯一性定理」によって禁止されている事なのでありました。

そうであれば残念ながらEMANさんの認識は間違っている、と言えます。

そうしてまたそれはアインシュタインの認識の間違いでもあります。(注1)

それでその間違いについては少しも訂正されることなく、「アインシュタインが間違っている」などとは少しも思われずに、「アインシュタインが特殊相対論で間違った認識をするはずがない」という事で、その間違いについては後進によって少しも疑われることなく延々と今に至っているのでありました。



注1:過去に情報を送る架空の装置としてのタキオン反電話 : https://archive.ph/tUfuW
: https://en.wikipedia.org/wiki/Tachyonic_antitelephone :については
『これは、1910年にアインシュタインとアーノルドゾンマーフェルトによって「過去に電報を送る」手段として説明されました。 』とされています。


追伸
タキオン反電話についてのNM図を使った説明の原典になったと思われる資料です。

その3・ タキオン通信・相対論・参考資料 :http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=26492 :に掲示してありますが、以下にも引用しておきます。

『参考文献[1]

ティプラー、ポールA。; Llewellyn、ラルフA.(2008)。現代物理学(第5版)。ニューヨーク州ニューヨーク:WH Freeman&Co。p。54. ISBN 978-0-7167-7550-8。...したがって、粒子の存在v > c ...タキオンと呼ばれる...相対性理論と深刻な...無限の創造エネルギーと因果関係のパラドックスの問題を提示します。

現代物理学(第5版)のpdfアドレスはこちら

http://web.pdx.edu/~pmoeck/books/Tipler_Llewellyn.pdf

P54を見ろ、と言ってますのでそこを見ます。
『Tachyons and Reversing History
Use tachyons and an appropriate spacetime diagram to show how the existence of such particles might be used to change history and, hence, alter the future, leading to a paradox.・・・』

タキオンと逆転の歴史
タキオンと適切な時空図を使用して、そのような粒子の存在が歴史を変え、したがって未来を変え、パラドックスにつながる可能性があることを示します。・・・

・・・という出だしに続いて

Figure 1-42
『A tachyon emitted at O in S, the laboratory frame, catches up with a spaceship moving at high speed at P. Its detection triggers the emission of a second tachyon at P back toward the laboratory at x = 0. The second tachyon arrives at the laboratory at ct < 0, i.e., before the emission of the first tachyon.』

実験室の座標系であるSの(原点)Oで放出されたタキオンは、点Pまで高速に移動し、そこで宇宙船に追いつきます。宇宙船はその検出により、点Pで2番目のタキオンをx=0(原点位置にある)実験室に向かって放出します。2番目のタキオンは実験室に到着します。 ct <0で、つまり最初のタキオンが放出される前に。

と説明している図1-42が出てきます。

この図をこの本(初版)が出た後での世の中の諸氏方が参照しているものではないのか、と思われます。(ネット上で確認できる図はたいていがこの図のコピー、あるいはそれを多少、修飾したものになっている模様。)

なお本文内容につきましては該当ページをコピーされグーグル翻訳にてどうぞ。』

ここで示されている図1-42はEMANさんが示している図と同じであり、従って「実質上は2つのMN図を切り替えてタキオンの飛行の世界線を示している=観測主体の切り替えを行っている」というミスを犯しています。

それでMN図を切り替えない場合は、点PからY軸に向かう戻りのタキオンは無限の速度を持っていた、としてもX軸に平行の角度でしかY軸に飛べません。

つまりS系の原点よりも上の位置に戻るのであって、原点よりも下には戻れないのですよ、ティプラーさん。


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.ph/LKSK0