当方の前提では「基準慣性系に対する運動が時間の遅れを引き起こす」というものです。
これは従来の特殊相対論の解釈、「相対速度があれば、相手の時間は遅れる」というものとは一線を画すものです。(注1)
そうしてこの基準慣性系は宇宙のどの場所に於いてもユニークに決定されているのです。
それでその基準慣性系が相対論で言う「静止系」にあたります。
ちなみに地球がその基準慣性系=静止系になっているのかどうかは、今の所はまだはっきりしません。
たぶん違っているとは思うのですが、基準慣性系からのずれ量が光速Cに比べて小さいために目立たなくなっていると思われます。
まあそれはさておき、そのように世界を設定しますと、時間の遅れと基準慣性系に対する運動=相対速度 Vとの間の関係が単純に表せます。
それで相対速度 Vは光速Cで割って規格化しておきます。
つまり Vは0以上、1以下の数値になります。
それから時間の遅れ=時間軸方向の速度 Vtを導入します。
これは時間軸方向の速度を示すもので、基準慣性系=静止系では1となり、光の速度で動くとゼロになります。
その様に設定しますと時間の遅れのローレンツ変換は以下の様に書けます。
Vt=sqrt(1-V^2)
さてこの式はこうも書けます。
Vt^2+V^2=1
これは半径が1の円の式です。
VtをY軸にとり、VをX軸にとれば原点を中心とした半径1の円です。
そうして、運動していない時=静止している時は時間軸方向にのみ速度Vt=1で固有時間が進むのです。
しかしながら、空間方向に運動し始めますとその運動速度Vの分だけ時間軸方向の速度が半径1の円に沿って落ちます。
こうして「時間についてのローレンツ変換=時間の遅れは単に以上の様な事を言っているにすぎない」という事になるのです。
ちなみにこの場合X軸、Y軸ともに速度を表していますので、通常のミンコフスキー時空図ではない、という事にご注意願います。
追伸
上記の様に世界を設定しますと「保存量は速度ベクルの大きさ=1=C」であって、その値が通常のミンコフスキー時空の中で保存されている、という事になります。(その様に解釈できます)
追伸の2
基準慣性系に対して止まっている時、我々は時間軸方向に光速で移動しています。
他方で光は常に空間方向に光速で移動する存在であり、それ以外の運動方式をとりえません。
光は時間軸方向には速度を持たないのです。
しかしながら我々は時間軸と空間軸が作る世界の中を移動する事が可能なのです。
・・・この辺りの理解の仕方が通常のミンコフスキー時空図の理解の仕方とは少し違ってきています。
注1:すべての慣性系は平等であって、特別な慣性系はない=基準慣性系はない、というのが通常の特殊相対論の立場です。
しかしながら、その様に宣言する、という事は「すべての慣性系は自分を静止系として相手が運動している慣性系である」と見る事を可能にします。
そうしてこの見方が「双子のパラドックス(加速度運動なし)」=「お互いが相手の時計が遅れている、と主張する事」を生み出す原因となっているのです。
現実の世界では「2つの時計は同時刻を示すか、一方の時計が他方の時計より遅れるか進むか、その3つの場合があるだけ」であり「お互いの時計が他方の時計より遅れる」などという状況は起り得ません。
そうしてそんな事が起こっている、としたらそれは「因果律の破壊」と同程度にひどい「論理(ロジック)の破壊」=「世界は物理法則ではなくファンタジーの世界の法則に支配されている」という事になります。
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