観測者に対して動いている方の時間が遅れる。相対論はそう言います。そうしてこれが「双子のパラドックス」のそもそものはじまり、原因になるのでした。
まあそれはさておき、この時間の遅れを実験的に検証した、という報告があります。
・時間の遅れの実験的テスト : https://archive.fo/0nLz0
Rossi and Hall 1941 : http://spiff.rit.edu/classes/phys314/lectures/muon/rossi.pdf が始まり、原典になります。(注2)
それを当方向けにやさしく解説したものがこちらです。
・第4章 時間の遅れと長さの収縮 : http://www.sp.u-tokai.ac.jp/~yasue/ffn/soutairon-4.pdf
その説明は Ⅲ.素粒子の寿命の伸び から始まります。
内容はμ粒子の寿命を時計代わりにして宇宙線によって大気上層で生成されたμ粒子が山の上と地表(海面高さ)でカウントされる個数を比較したものであった。
結果は「静止しているμ粒子の寿命のままではいくらその速さが光速なみであっても海面高さまで到達するには十分ではなく、寿命の延びを考慮に入れないと説明できない」と言うものであった。
まあそれは「相対論がいう時間の延びを検証したもの」と言えそうなのだが、その次の章に Ⅳ.素粒子の寿命の伸びと相対性 というのがあって、そこでは「μ粒子は静止していて、地球がμ粒子側に光速で運動しているとも考えられる」という「運動の相対性の観点からの説明」がある。
「運動の相対性」は相対論が主張している事、あるいは相対論の基礎になっている話だと思うのだが、それによれば「地球が運動している」と見た場合は「μ粒子と海面までの距離がローレンツ短縮で短くなる」、それで「短くなった距離をμ粒子の静止時の寿命時間の範囲内で、ほぼ光速で地球がμ粒子側に移動した」ので「μ粒子と海面はぶつかる事が出来たのだと考える事もできる」、と書かれてある。
まあそれは「μ粒子の寿命が延びた」とみるか、あるいはμ粒子の立場に立って「距離が縮んだ」と見るかの相違なのだが、ローレンツ短縮は通常は「運動している物体は縮む」のであって、「運動している物体と観察者との間の距離は縮まない」というのが当方の理解である。
次に「地球が光速で近づいてきた」のであれば観測者は「地球上の時間は遅れている」と報告しなくてはならないのだが、その件についてはこの報告では言及がない。
海面を観察したのであれば、海面上の波は止まって見えたはずだが、その様な記載もないのである。(注1)
さてそれで「μ粒子の寿命の延びを地上の観測者が観察した」というのであれば、「μ粒子の時計は遅れていた」のであって、それはつまり「μ粒子からみれば地上の時計は進んでいた」のである。
そこにあるのは「一つの物理現象の観察」であって、なるほど立場を入れ替える事は出来るが「相手の時計が遅れている」ならば「当のその相手に言わせるならば」、「こちらの時計が進んでいた」のである。(注1)
そうであれば「地球が光速でμ粒子に近づいてきた」「それゆえにその距離が縮んでおり」「μ粒子と海面は衝突できた」と解釈できるが、その際には「地球上の時計はμ粒子の時計より遅れていた=運動しているのが地球だから地球の時計は遅れている」という解釈は成立せず、「地球上の時計はμ粒子の時計より進んでいた」と理解するのである。
そしてその様に理解するのが「時間についての相対性の正しい理解である」と個人的にはそう思っている、考えているのです。
なるほど「観察者の立場は2つ取り得る」が、そこにあるのは「一つの事実、一つの物理現象であるから」です。(観測された結果が立場を入れ替える事で変化を受ける事はない。)
この時に「いや地球が光速でμ粒子に近づいてきた」のだから「地球の時計は遅れる」と主張するのが「タキオン反電話のスタンス」であり「計算の途中で観測者を入れ替える事が出来る」という立場である。
しかしながら「現実のこの宇宙ではその様なスタンスは成立してはいない、と言う事はすでに証明できた事である」と当方は思っているのですが、さて、、、。
注1:すこし話があいまいになっているので数値例で補足します。
引用している例によれば
移動ミュー粒子の 2.2・10^-6 秒経過=静止ミュー粒子の 20.7・10^-6 秒経過
ちなみに
静止しているミュー粒子の寿命は 2.2・10^-6秒
ほぼ光速で飛んでいるμ粒子の寿命は 2.2・10^-6秒から20.7・10^-6 秒まで伸びると地球座標では観測されます。
しかしそれはμ粒子と一緒に動いている観測者には相変わらず 2.2・10^-6秒 なのです。
他方でその観測者が窓の外を見ますればμ粒子の2.2・10^-6秒の間に地上の時計は20.7・10^-6 秒まで進む事になる、と言うのが当方の主張です。
それに対して「タキオン反電話の主張」によれば「地球の時計は0.234・10^-6秒までしか進まない」という事になります。
なんとなれば「動いているのは地球でありμ粒子は止まっているから」と言う事になりますから。
そうしてもちろん「事実は一つしかない」のであって、「20.7・10^-6 秒を選ぶ」のか「0.234・10^-6秒を選ぶ」のか、と言う話です。
注2:1940年ごろの実験の実施かと思われます。
その時点では「原子時計はなかった」のでしょうが、「その時点で入手可能な設備」で「相対論の検証をした」という「工夫の巧みさ」に驚きを感じます。
Rossi and Hall 1941:に始まったこの実験は
Frisch, D. H.; Smith, J. H. (1963)で完成した模様です。
↓
"Measurement of the Relativistic Time Dilation Using μ-Mesons". American Journal of Physics.
https://web.mit.edu/8.13/8.13c/references-fall/muons/frisch-smith-1963.pdf
そうであれば「ダークマターの検出」にも物理学者のもう一頑張りの工夫を期待したいと思います。
追伸
上記(注1)にて「20.7・10^-6 秒を選んだ方」にとっては「双子のパラドックス」はその時点で解消された事になります。
そうして「0.234・10^-6秒を選んだ方」にとってはまだ「双子のパラドックス」は存在し続けている事になりますね。
追伸の2
『ほぼ光速で飛んでいるμ粒子の寿命は 2.2・10^-6秒から20.7・10^-6 秒まで伸びると地球座標では観測されます。
しかしそれはμ粒子と一緒に動いている観測者には相変わらず 2.2・10^-6秒 なのです。
他方でその観測者が窓の外を見ますればμ粒子の2.2・10^-6秒の間に地上の時計は20.7・10^-6 秒まで進む事になる、と言うのが当方の主張です。』
↑
どうしてこういう主張になるのか、そのあたりのロジックをもう少し書きます。
通常の地球上の時間の流れの中では静止μ粒子の寿命は 2.2・10^-6秒と観測されます。
そうしてその状況は光速で飛び込んでくるμ粒子の寿命測定の実験中もそうであったと言えます。(当方の見方はそうなります。)
従って光速μ粒子の寿命が20.7・10^-6 秒まで伸びている間に地球上の静止μ粒子は9.41個崩壊できます。(シリーズに並べた静止μ粒子を想定して、前の静止μ粒子が崩壊したら次の静止μ粒子を解凍・時間を動かすイメージ)
これが地上の時計代わりです。
さて光速で飛び込んでくるμ粒子と併走する座標系の観察者は、横にある「飛行中のμ粒子」を「止まっている」と見ますから「その寿命は2.2・10^-6秒」と観測します。
他方で、その観察者は「横のμ粒子が崩壊する間に地球の時間は0.234・10^-6秒までしか進まない」と主張します。(その観測者は地球が光速で移動している、と見ますから、地球の時間は相対論電卓の計算によって観測者の時計よりは遅れる事になります。)
しかしこの主張はその観察者が持っている時計で地上の時間を計った値です。
(もっともどうやってその観察者が地上の時間を計ったのかは不明ではありますが、、、。)
それでその観察者は地上におかれた静止μ粒子は、隣のμ粒子が崩壊する間に9.41個崩壊した事を確認できます。
それはつまりその観察者の時計では「地上のμ粒子の寿命は0.234・10^-6秒である」と言っている事になります。
しかし地上の観察者にとっては「静止μ粒子の寿命は 2.2・10^-6秒のまま」であって、「μ粒子と併走する座標系の観察者の主張」は却下される事になります。
以上の話のポイントは「光速で飛び込んでくるμ粒子と併走する座標系の観察者は地上におかれた静止μ粒子が、併走している隣のμ粒子が崩壊する間に9.41個崩壊する事を確認できる」という所にあります。
そうであれば確かに地上では「光速で飛び込んでくるμ粒子が崩壊する間(そのμ粒子の時計では2.2・10^-6秒の間)」に「地上の時計は20.7・10^-6 秒まで進んだ」という事が出来るのです。
追伸の3
そうして確かにこの事例は「加速度運動なしでの双子のパラドックスの解」であり、アインシュタインが何と言おうと「宇宙はこうなっている」という「宇宙からの回答」であります。
おまけ
・(µ 粒子の寿命と走行距離 (1))
http://rokamoto.sakura.ne.jp/education/physicsIIB/life1.pdf
・µ+寿命の測定 と フェルミ結合定数の決定 - 宇宙線研究所
https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/prwps/wp-content/uploads/SS2021_ti.pdf
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