訂正:(2024/2/20):以下、本文の計算条件の初期設定に一部間違いが見つかりました。
それを修正すると
1、アリス座標系固定 566.6日 580.00日
2、ボブ座標系固定 566.6日 580.00日
となり両者の差がなくなりました。
つまり「静止系がどこにあってもこの方法では検出できない」がここでの結論となります。
この件について何をどのように修正したのか、内容詳細についてはまた後日、ページを改めての報告となります。
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「宇宙船通信パラドックスの謎」を解きましょう。
ポイントは「基準慣性系に対する相対速度が時間の遅れを生む」という理解にあります。
それでここで言う所の「基準慣性系」については「その2・相対論で時間が遅れる件」で説明した様に「CMBパターンに2極のドップラーシフトが検出されない慣性系である」という事になります。そうして当面、銀河系内であればそれは地球で観測されたCMBパターンで考えて差し支えないと思われます。
ちなみに我々の銀河から100億光年ほど離れた場所から見える「観測可能な宇宙の姿」は当然我々の場所から見える「観測可能な宇宙の姿」とは異なる事になります。(注1)
従いましてその場所では地球から観測されるCMBパターンとは違うパターンが観測されます。ですからその場所では基準慣性系を決める為に、その場所で観測されるCMBパターンに2極のドップラーシフトが検出されない慣性系を新たに見つけ出す必要がある、という事になります。
さてそれで、「その1」で指摘した「 宇宙船通信パラドックス」の内容は以下の様でした。
2隻の宇宙船、左からアリス号、右からボブ号が0.8Cの相対速度で近づいてきます。
そうして、2つの船の距離が480光日になった所で2隻の船の時計をリスタートさせます。
次にアリスは自分の時計で300日経過した所でボブに向かって信号を通常の無線で出します。
その無線を受け取ったボブはすぐさまアリスに対して返信を出します。
お互いの船ではその作業を各自の時計の時刻とともに動画撮影記録をします。
さて2隻の船が巨大宇宙基地に戻った後で、記録画像を照合します。
そうすると、アリスが何時信号を出したか、ボブがそれをいつ受け取ったか、そうして又その返信をアリスが何時受け取ったかが明らかになる、という事になります。
しかしながら、事前の検討によればアリスに固定した視点で計算した結果とボブの視点で計算した結果には大きな相違がみられました。
↓ ーーー以下「その1・宇宙船通信パラドックス」から引用
3、以上をまとめますと、アリスが300日目に信号を出した、その信号を再び受け取るのは
観測者 アリスが受信した日(アリスタイムで) ボブが信号を受け、返信した日(ボブタイムにて)
1、アリス座標系固定 566.6日 259.98日
2、ボブ座標系固定 353.33日 580.00日
こうして「観測者を固定した場合はいずれにせよ過去には情報は飛ばない」という事はあきらかになりました。
しかしながらこまった計算結果になっています。
一連の操作手順、アリスが固有時間300日目に出した情報をボブがすぐさま返信し、それをまたアリスが受け取る、という一連のイベントについて、観測者を入れ替える事で(それはつまり同等であるはずの2つの慣性系であるはずなのですが)アリスが再び信号を受け取る日時がまるで違ってしまう、という事になっています。
つまりアリスとボブは相対速度0.8Cで近づきつつあるのですが、事前の打ち合わせ通りに「アリスは時刻合わせ終了後300日目にボブに向かってシグナルを出します」。
ボブはそれに対して即座に返事を出すのですが、その返事がいつアリスに戻るのか、上記計算結果によれば「決定できない」という事になりました。
これが「タキオン反電話」に触発されて明らかになった「宇宙船通信パラドックス」となります。
さてこのパラドックス、どなたかご説明の上で解いていただけると助かるのですが、、、。
追伸
ちなみにそれぞれの船に積まれたレコーダーには、アリス号では「いつ信号を発信し、それをいつ受信したか」、ボブ号では「いつ信号を受信し、いつそれに返信したか」という記録が残されます。
そうであれば、実際にこのような状況を作り上げて実験するならば、一連のイベントが終了した時、つまり「アリスに信号が再び戻ってきた時」ですが、それぞれのレコーダーにはただ一つの、一連の記録が残されているはずです。
そうしてそれは宇宙基地である巨大ステーションに2台が帰還した後で照合し、確認する事が可能なのであります。
アリス号の記録の最初だけは予測可能で、そこには「時間合わせ後300日時点でボブに向け、信号発信」と記録されています。
しかしながら、それに続くボブの記録、「アリスからは???日に信号受信」以降については、イベント発生時刻について、全く予測が出来ない状況です。
↑ ーーーここまで「その1」から引用:計算手順詳細については「その1・宇宙船通信パラドックス」を参照願います。: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=26571
さて「答え」ですが、簡単です。
アリスに視点を固定して計算したケースでは、実はアリス号は基準慣性系に対して相対速度がゼロでした。
その場合はボブ号の基準慣性系に対しての相対速度は0.8Cとなります。
逆にボブに視点を固定して計算したケースでは、今度はボブ号が基準慣性系に対して相対速度がゼロでした。
その場合は上記と同様にして今度はアリス号が基準慣性系に対して相対速度0.8Cを持つ、という事になります。
はい、たったこれだけです。
CMBパターンを考慮しない場合は上記の二つのケースは分離不可能です。これがパラドックスを生んでいました。
しかしCMBパターンから導かれる基準慣性系を導入しますと、上記の2つのケースは「全く違う状況にある」という事がはっきりと分かるのです。
そうしてまた「相対論電卓による計算結果」も確かにその事を裏付けていますね。
注1:観測可能な宇宙の大きさが450億光年である事を表した図 = 宇宙図 : https://www.mext.go.jp/stw/common/pdf/series/diagram/uchuzu2018-ja_A3.pdf
追記:CMBパターンを作っている光の話
CMBパターンのもとになっているマイクロ波はビッグバンの時の光が空間の膨張で伸びたもの。
その光は「宇宙の一番最初の時点での光」であって、その頃は宇宙の中での物質の分布は、今よりもずうっと均一であった。
その状況はと言えば「ほぼ一様、等方的である」と言って差し支えはない。
そうして、それらの物質は(といっても電子と陽子のプラズマではあるが)光と相互作用をしながら平均をとればその場所の空間に対して「静止していた」と考えられる。
個々の電子や陽子はランダムウオーク、熱運動していたであろうが、そうしながら相互に衝突を繰り返して、均一化していた、と思われるが、相当な大きさの球を考えて、そのなかでの物質と光の運動量を合計したもの、それがゼロになる慣性系が「基準慣性系」であったと思われ、それがその場所の空間の位置を代表するに足るものであると主張します。
そうして、そのようにして解き放たれた光である、という故をもって、CMBパターンは「基準慣性系を見出す指標」としての役割をはたせるのであると推察致します。
さてそうすると「宇宙空間が一様・等方である」とするならば、「宇宙の一番遠くに見えている状況」は「目の前の空間と同じである」という事になります。
ちなみに、我々が今いる場所でも138億年ほど前には今、CMBパターンを観測している場所と同様に「光とプラズマで満ちていた」のである。そうして、そこにあった光とプラズマがその場所での空間の位置を示していたのであります。
そうして又これは「宇宙が誕生した時から今までの間に我々がいる場所の基準慣性系は1ミリも移動してはいない」という主張でもあります。
さて「そうであればこそ」宇宙の任意の場所において定義できる、決まっている基準慣性系に立てば「宇宙はその場所を中心として始まった」=「ビッグバンの中心はここである」と「錯覚できる」のです。
おまけ:
CMBパターンが決まった時の宇宙の状況についての参考資料
↓
第6講 熱的宇宙
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/konan-class06/ch6-thermal-cosmos.pdf
の
6.5 再結合温度
にあります。