特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その4・ ミンコフスキー パラドックス

2022-12-08 01:57:41 | 日記

以下「ミンコフスキーの4次元世界」 : https://archive.ph/Cvvyf :を参照します。

それで同上資料の「(7)時計の遅れ」第37図から始めます。それで第37図によってミンコフスキーさんは「相対運動している慣性系同士はお互いに相手の時計が遅れている事を確認する」と説明しています。

このような「一つのMN図を対象としていながら、そこから相異なる2つの結論を導き出す説明」、「お互いに相手の時計が遅れている事を確認する」と言う様な主張を指して「ミンコフスキー パラドックス」と命名したのでした。



さて前ページでは「点Dは点Bを見る事は出来ず、点Bは点Dの時刻を知る事は出来ない、従ってどちらの時計が遅れていたのか判断できない」という事を確認しました。

さてそれで次は「点D’は点B’にある時計の時刻を確認できる」のでしょうか?

その事について以下、確認していきます。



それでその事については前の議論から分かりますように、点B’から無限大の速度を持つタキオンを使った通信機で点D’に向けて情報を発信してもらえば可能となります。

・・・という事は「不可能である」という事の別の表現でしかありません。

つまりこのままのMN図では「点D’は点B’にある時計の時刻を確認できない」のです。



しかしながらこの場合はとても巧妙な方法が適応可能なのです。

点B’からX軸に向かって垂線を下します。

その垂線がX軸と交差した場所、点Hに時計を置きます。

そうしてこの時計はK系の原点にある時計と時刻合わせをしておきます。

そうそう、このH点にある時計は勿論K系に属していますから、K系の原点にある時計から離れた場所にあっても正確に時刻合わせが可能なのです。



これで全て解決しました。

あとは点Hにある時計の場所までK’系の時計が移動して来るのを待つだけです。

そうしてK’系の時計が点B’に到達した所でK’系の観測者は、すでにその場所(=点H)に置いてあったK系の時計(この時計はK系の原点にある時計と時刻合わせ済です)と時刻情報を交換すればよいのです。(注1)



それで前ページとやり方が違うのは、K系の原点におかれた時計は左から来たK’系の時計とすれ違う時に時刻情報は交換しますが、時計の時刻そのものはリスタートしない、という事です。

そこでリスタートしてしまうと点Hにおかれた時刻合わせが終わっている時計と同期がとれなくなってしまうので、それでは困るからですね。



こうしてK’系の観測者はK系の原点通過時のK系の時刻と点B’到達時のK系の時刻を知る事が出来るのです。

そうしてもちろんK’系の観測者は自分の時計でK系の原点から点B’まで移動するのにどれだけ時間が必要であったかを知る事が出来ます。

さてそうであればK’系の観測者はK系の時間が遅れていたのか、K’系(自分の系)の時間が遅れていたのか知る事ができる、という具合です。



そうしてまたこの状況はK系の2名の観測者(原点に一人、H点に一人)にとっても同様であります。

この2人はK’系の時計が点B’を通過した後でお互いの情報を交換するのですが、そうする事でK系(自分の系)の時間が遅れていたのか、K’系の時間が遅れていたのか知る事ができるのです。

それでこうやって観測された時間遅れについての認識はK系とK’系で共有され、そこに登場している3人の観測者の間で意見が食い違う、という事は無いのです。

つまりこの場合は「K系の時間が遅れていたのか、K’系の時間が遅れていたのか、一つの客観的な事実が判明する事になる」のです。



そうしてこの場合はミンコフスキーさんの2つある説明の内の一つの説明が成立していて「K’系の時計がsqrt(1-β^2)分、遅れている事が分かる」のです。

それでこの時に重要なことは、「K’系の時計がsqrt(1-β^2)分、K系に対して遅れている」という事はK系から見てもK’系から見てもその様に見える、それ以外の結論には到達しない、という事であります。



ここは大事な事なのでもう一度いいます。

そこにはただ一つの客観的な事実が存在している。

そうしてそこに存在する客観的な事実をK系の観測者もK’系の観測者も同じように観測する事ができます。

というよりもそれ以外の観測のありようはないのです。

その結果、両者は同じ一つの認識を共有し、同じ一つの結論に至るのです。



さてこの結論はミンコフスキーさんが言う様な事「一つのMN図から2つの結論が出てくる」と言う様な事、「K系から見るとK’系が遅れて見え、K’系からみるとK系が遅れてみえる」という様な事は成立していない事を示しています。

ミンコフスキーさんの説明では「K系の時計が遅れているのかK’系の時計が遅れているのかわからない」「一つの客観的な事実は存在しない」というものでした。

しかしながら実際はそうではなくて第37図として示されたMN図は「K’系の時計がsqrt(1-β^2)分、K系に対して遅れている」という事を示しているだけなのであります。

そうしてそれはまた「第37図が示す様な一つの客観的な状況、一つの物理的な状況が存在する」という事を示しているのです。



注1:ここで点B’と点HのK系での原点からの距離は同一であり、ただ時刻が違う、というだけであります。

従ってMN図においてはその2つの点は違う場所にプロットされる事になりますが、しかしながらK系の原点から見れば点B’と点Hは実は距離的には同じ場所に位置している訳であり、つまり同じ場所を示す同一の点の別名(エイリアス:alias)となります。


追伸
上記例においてK’系の観測者が「静止していたのは当方の系であって、動いていたのがK系の方だ」と自分の主観的な観測状況をいくら主張しても時間遅れの測定結果には何の影響も与えません。

「K’系の観測者の主張を取り入れて描かれたMN図=K’系をY軸に採用して描かれたMN図」によれば「時間が遅れるのはK系である」とそういう事になります。

しかしながら上記の観測事実が示す結果は「時間遅れが発生しているのはK’系である」という事でした。

従ってこの場合「K’系の観測者の主張を取り入れて描かれたMN図=K’系をY軸に採用して描かれたMN図」では上記の時間遅れの状況を説明しない為、「K’系の観測者が主張するMN図は現実によって却下される」という事になります。


さて、しかしながら通常の特殊相対論の解説では「K’系の観測者の主張は認められる事になっている」のです。

つまり「K’系から見るとK系の時間が遅れて観測される」としているのです。

しかしその主張は上記例の説明によれば「そのような事は起こってはいない」という事であり、「特殊相対論による通常の解説はとても奇妙な事を主張している」と言う事になります。(注2)


追伸の2
第37図に点Hを加えた実験を計画し「K’系の時間の遅れを測定」しようとしました。

所が結果は当初予定に反して「K系の時計の遅れ=K系の時間の遅れ」が検出されてしましました。

さあこれは大変です。

特殊相対論は間違っていたのでしょうか・・・?

いやいや、そんなことは無くて「間違っていたのはMN図の描き方」の方です。

第37図はY軸にK系を選んで描いていますがそれをK’系にして描きなおせば今回の観測結果=「K系の時間が遅れている」を説明できるMN図となります。

つまり「説明の為に現実にMN図を合わせる」のであって、「MN図が現実を決めるのではない」のです。

そうしてそうやって描き改められたMN図が教える事は当初の想定に反して「動いていたのはK’系ではなくてK系である」という事になります。


注2:さてここでの指摘は「特殊相対論は間違っている」という事になるのでしょうか?

いや、当方はその様にはとらえておりません。

特殊相対論は成立している、但しその理解の仕方が間違っている、という事になるかと思います。

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.ph/MNLAy
https://archive.ph/mvfVx