特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・ 光速不変を使わないローレンツ変換の導出

2023-01-23 09:24:36 | 日記

参考資料 : http://www2.physics.umd.edu/~yakovenk/teaching/Lorentz.pdf

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さてそれで、次に進む前に以下の下準備をしておきます。

それは

『この導出では、ローレンツ変換のグループプロパティ(=群論?:訳注)を使用します。つまり、2つのローレンツ変換の組み合わせも ローレンツ変換となる事。』(注1)

とビクターさんは「当然のごとくに」言っている事ですね。

確かに実際のローレンツ変換では

「速度Vによるローレンツ変換をF(V:x,t)と書くならば

F''(V'':x,t)=F(V':x',t')=F(V':F(V:x,t))

と書くことが出来る、という事になります。

ちなみにこの場合はたぶんV''はV'とVの相対論的な速度合成則によって与えられる事になると思われます。」

という事が成立しています。(注2)

しかし今は「ローレンツ変換の具体的な形が分からない前提」で「光速不変を使わずにローレンツ変換の具体的な形を求める」という事をやっているのですから、ここで「実際のローレンツ変換式ではこういうルールが成立しているからそれを使う」と言うのでは「順序が逆」でありましょう。

「答えの一部分を知っていてそれを使う」というのではダメであってあくまで「一般的な状況の中でローレンツ変換の具体的な形を求める」という事が出来なくてはなりません。



しかしながら数学の世界では、あるいは数理物理の世界では

『慣性フレーム間の座標変換は、群(=グループ=適切なローレンツグループと呼ばれる)を形成します。グループ操作は、変換の構成(次々に変換を実行する)です。確かに、4つのグループの公理は満たされています:(注3)

1、クロージャ:2つの変換の構成は変換です:慣性フレームKから慣性フレームK '( K → K 'で示される)への変換の構成を検討し(=実行し:訳注)、次にK 'から慣性フレームK ''への変換の構成[ K ′→ K ′′]を検討します(=実行します:訳注)、慣性系Kから慣性系K ′′への直接変換[ K → K ′] [ K ′→ K ′′]が存在します。(訳注:数学では、群とは、集合の任意の2つの要素を組み合わせて、集合の3番目の要素を生成する操作を備えた集合です。:の事か)


2、結合性:変換([ K → K '] [ K '→ K ''])[ K ''→ K '']および[ K → K ']([ K '→ K ''] [ K ' ' → K '''])は同一です。(訳注:これは結合則です。)


3、単位元:単位元、変換K → Kがあります。(訳注:恒等変換の存在)


4、逆元:任意の変換K → K 'に対して、逆変換K '→ Kが存在します。』

である事は「業界の常識(?)」である模様です。

つまり「慣性フレーム間の座標変換は群を形成し、群をつくるなら

F''(V'':x,t)=F(V':x',t')=F(V':F(V:x,t))

が成立している」という主張になります。

それでこの主張に対して「どうも疑わしい」と言う方はこれ以上の事は個別に調べていただくしかなさそうです。

ちなみに当方にとっても「ビクターさんが当然のごとくに」言っている「慣性フレーム間の座標変換は群を形成する」という主張については現状では「あまりさだかではない」のです。



従いまして当面の当方のスタンスとしましては「慣性フレーム間の座標変換が全て群を構成するかどうかは不明ではあるが、そのなかで群を構成する座標変換の部分について今回は具体的な形を求める」と言うようにビクターさんのレポートを解釈します。

つまり「ビクターさんが求めた以外の慣性フレーム間の座標変換様式があるかも知れないが、それについては今回は不問とする」という立場ですね。

まあそうとらえても特に困る事はなさそうであります。



注1:ローレンツ変換の形式は光速度一定とは無関係 : https://archive.ph/VXKSq :も参照願います。

注2: その3・ ローレンツ変換を調べてみた :によれば、ローレンツ変換の変換式は以下の様に表せるのでした。
(2)式・・・x’ = Ax + Bt,
(3)式・・・t’ =Bx + At,
ここで、A、B、は、実数の定数となります。

それで上記が一回目のローレンツ変換、で二回目は

(4)式・・・x’' = Ex' + Ft',
(5)式・・・t’' = Fx' + Et',

と書けます。

そして一回目を二回目に代入すると

(4)式・・・x’' = E(Ax + Bt) + F(Bx + At)=(AE+BF)x+(BE+AF)t
(5)式・・・t’' = F(Ax + Bt) + E(Bx + At)=(AF+BE)x+(BF+AE)t

ここで

(AE+BF)=A'

(BE+AF)=B'

と置き換えるならば

(4)式・・・x’' = A'x+B't
(5)式・・・t’' = B'x+A't

さてこれは確かに新たなローレンツ変換式の誕生と見る事が出来ます。

つまり速度Vによるローレンツ変換をF(V:x,t)と書くならば

F''(V'':x,t)=F(V':x',t')=F(V':F(V:x,t))

と書くことが出来る、という事になります。

ちなみにこの場合はたぶんV''はV'とVの相対論的な速度合成則によって与えられる事になると思われます。



注3:グループ(数学) : https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Group_(mathematics)?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

及び

ローレンツ群 : https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Lorentz_group?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :を参照願います。



追記:ローレンツ変換の導出: https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Derivations_of_the_Lorentz_transformations?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :より以下抜粋。ご参考までに。

『前述のように、一般的な問題は時空での変換によって解決されます。
これらは、ブーストが行う一方で(迎え角によっては回転する場合もあります)、提起されたより単純な問題の解決策としては表示されません。
光のように分離されたイベントの間隔の不変性のみを主張する場合、さらに多くの解決策が存在します。

これらは非線形等角(「角度保存」)変換です。

ローレンツ変換⊂ポアンカレ変換⊂共形群変換。(訳注:共形群変換の中にポアンカレ変換がありそうしてその中にローレンツ変換がある、という主張)

物理学の方程式の中には、等角不変であるものがあります。たとえばソースフリー空間でのマクスウェルの方程式[6]、しかし、すべての方程式がそうである訳ではありません。


時空における共形変換の関連性は現在のところ不明ですが、2次元の共形群は共形場理論と統計力学において非常に関連性があります。[7]
したがって、特殊相対性理論の仮定によって選ばれるのはポアンカレ群です。(訳注:なぜ「従って」になるのか不明ではあるが、共形群変換の中から「特殊相対性理論の仮定によって選ばれる」のがポアンカレ変換群である、と言っています。)

ガリレイ相対性のガリレイ群からそれを分離する通常のブーストとは対照的に、それはローレンツブースト(光速よりも速い速度を可能にする単なるベクトル加算とは異なる速度の追加)の存在です。(訳注:今度はそのポアンカレ変換群の中からローレンツ変換が選ばれる、という主張です。)

空間回転、空間的および時間的反転、および並進は両方のグループ(=ガリレイ変換の世界とローレンツ変換の世界)に存在し、両方の理論(運動量、エネルギー、および角運動量の保存則)で同じ結果をもたらします。

受け入れられているすべての理論が、反転の下での対称性を尊重しているわけではありません。(訳注:ここの部分意味不明)』


追記の2:変換が群を作る、と言う事について。

どのような変換F(V:x,t)(=2つの慣性系の間をつなぐもの)であってもそれが群を作る、というのであれば
F''(V'':x,t)=F(V':x',t')=F(V':F(V:x,t))
を満たさなくてはならない。

それはつまり速度Vで変換してその結果をさらに速度V'で変換したその結果に一度の変換でたどり着く速度V''が存在する、という事である。

そうであればそこには速度V''を速度Vと速度V'の足し算(=変換ごとに独自の形を持つ速度の合成則)が存在しなくてはならない。

従って
「V''=変換に対応した速度の合成則G(V'+V)」と書ける「変換に対応した速度の合成則G(V'+V)が存在する」ということは「変換が群を作る」という事と同等である様に見えます。

ちなみに
V''=V'+V という速度の合成則はガリレイ変換に独自のものであり
V''=(V'+V)/(1+V'V/C^2) という速度の合成則はローレンツ変換に独自のものです。

 

追記の3:2023/6:実はポアンカレがこのやり方を始めた最初の人である、という指摘があります。

詳細は: ・参考文献と参考資料 :にてご確認願います。

追記の4:2023/7: 菅野礼司氏の「アインシュタインの思考をたどる」: https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/archive/jp/projects/projects_completed/hmn/pasta/newsletter04_sugano.pdf :の 「6.変換群の意義」にも『物理学での座標変換は「群」を作っている。変換に対する「不変量」があるから、それを不変にするすべての変換は一つの変換群に括れる。』という記述があります。詳細は上記資料にてご確認を。

追記の5:群の公理: https://archive.md/rgA2e :ご参考までに。

追記の6:「ミンコフスキー時空上での量子論」: https://event.phys.s.u-tokyo.ac.jp/physlab2023/pdf/qnt-article05.pdf :「,g ◦ f も等長変換をなす.この合成を積とすれば,単位元 id と逆元 f−1: f(p) → p として等長変換全体は群をなす.
4.2 ポアンカレ変換
さらに,gµν(p) = gµν(f(p)) = ηµν を満たすような等長変換をポアンカレ変換と呼ぶ.」・・・ま、ご参考までに。



PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.ph/VMYso