JAZZ & BAR em's(ジャズバーエムズ)

 銀座6丁目に2003年末オープンしたジャズバーです。
「大人のくつろぎ空間」をお探しの皆様にご案内申し上げます。

「声」について

2010年02月07日 | つれづれ
 あるラジオ番組で、キャリアのある舞台女優の方が
「ボイス・トレーニングで、少しビブラートが『縮緬(細かく震えること)』になってきた、と
指摘されまして・・・やはり舞台で若い役をやるときにはマズイわけですね。
できるだけ腹筋を鍛えて保って、若々しい声も出るように努力しています。
というようなことを話されているのを聞きました。

 なるほどなあ、舞台での歌は、ある役(人)になりきってその人を表現するものだから
その女優さんの「ナマの現在」は、必ずしも全部投影されないのですね。

 ずうっと以前に、「影山さんはミュージカルはやらないの?」という質問を受けて、
そうだなあ、興味を持ったことがないなあ、なぜだろう?となんとなく思っていましたが
長いことスタンダード・ソングをライブスペース(劇場の舞台でなく)で歌っていると、
その違いがわかってきたような気がします。
 つまり、ライブシーンで演奏する歌は、その時の自分そのものなのだな、と。
たとえば10年前のほうがきれいな高音が出た、としても、今は今の良さもあるわけで、
その時々に共演したり、聴いてくださる方々が、その時間を一緒に楽しめることが
一番の目的です。

 主役のお姫様がやりたい!という熱烈な意志が欠如しているというか、むしろ今の気分に
合った曲がやりたい、という傾向のほうが強いのが、劇場型でないミュージシャンなのかな、と。
 声が全く出なくなったらまた話は別ですが、しゃがれた声でも音域が狭くなっても、
その曲が表現できる限りはいろいろに楽しめるものだから、永年飽きずに続けられるのかも
しれません。
 「この声が出なくなったら(変化したら)この役はやれない」ということはあっても
「この曲は歌えない」ということはまずないでしょう。もちろん、好き嫌いは分かれるでしょうが・・・。


 今の自分そのものの表現だ、と言っても、実際に自分の「ナマの現在」をあからさまに
感じさせる歌手も、また具体的には感じられない歌手もいますが、それは人それそれの
性格によるのですから、ま、どちらでも良いわけです。
この「なんでもアリ」っていうユルさが、現場のジャズマンの良いところ・・と、私などは
思っているのです。
 
 現に、「今日は何歌うの?」と聞かれても、最初から決まっていることはほとんど
ありません。その日の演奏家の演奏を何曲か聴いているうちに、「あ、アレやろう」と
思いついて譜面を取り出す・・・というのが普段のスタイル。
ユルイというか、行き当たりばったりというか・・・
こういう性格の人は、現場向きです。   ん?