
「恐れ入りますが、歌っている間は私よりも大きな声で
お話になりませんよう」
このセリフが出たときには、ミュージシャンか、集中して音楽を聴きたいと
思うオーディエンスにとってジャマになる話し声がしているということと
思ってください。

もしもこういうお話のし方をしている人々が
目の前にいたら、もちろん、直接そうお願いします。でも、マイクを持っている
私がツカツカと客席に歩み寄って、その日初めていらした方に注意する、
というのは、その方もバツが悪いし、まわりも居心地が悪くなるでしょう。
ちょっと距離がある場合、私たちは、いかにその雑音を耳からシャットアウト
して曲に入り込むか、に神経を集中させますが、何分にも狭い空間です。
一番神経に障るのは、間断なく話す、というタイプですね。
静かなイントロが始まれば、普通は話すのをやめてステージのほうを
向きますよね。歌がクレッシェンドしてきたら、それに負けないように
話そうなんて思いませんよね。普通はね。
自然に反応しながら、合いの手にお連れの方と感想を言い合う、なんて
感じがいちばんしっくりくるオーディエンスの風景です。
でも、たまにいらっしゃいますね。
曲の間中ずうっと居酒屋とか職場のお昼休みと同じようにしゃべり続けていて、
曲の終わった瞬間、拍手だけちゃんとする方が。

たいへん気に障ります。だったら、他の場所にいらしたほうが
いいのでは?拍手に気を使うのは大変でしょ?

演奏中にオーダーをしたいとき、「すみませ~ん!」と大声で
五味さんを呼ぶというのも、ちょっと信じられません。

みんながステージに集中している間は、シェイカーやブレンダーの
音を立てるタイミングはもちろん、どこかに実はオーダーしたい人がいるかも、
ということも、五味さんは神経を尖らせて見ているんですよ。
カウンターのほうを振り向いただけで、ちゃんと目顔でわかってくれます。

昔から、きちんとしたサービスのある場所では、目顔だけでコンタクト
するものですよ。 カジュアル、ざっくばらん、おおいに結構。
エムズは大衆的な酒場です。ですが、無神経とかがさつ、というのは
お断りですね。