ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

「これは面白い。」と心底思った小説100and more

2017-08-30 | 物語(ロマン)の愉楽
 この5月に「物語/反物語をめぐる100冊」ってのをやったんだけど、詩集だの学術本だの哲学書だの評論集が混じってたうえに、人類が生んだ最大の物語の宝庫「ギリシア神話」が抜け落ちていた。あとで見返してびっくりしたよ。そこで、あらためてフィクションだけに限定した100冊+αをピックアップします。選ぶ基準は、とにもかくにも、読んでいて「これは面白いッ。」と心底から思ったこと、その一点のみ。日本か海外か、エンターテイメントか純文学か、古典か現代文学か、そういったこたぁお構いなし。一緒くただ。順番もあまり関係ない。というか、あえてシャッフルしている面も。長編小説が主だが、それ以外も入っている。
 なお、出版社などは現在もっとも入手しやすいものを挙げた。残念ながら絶版のものもあるが、それはもうしょうがない。



 01 大聖堂 上中下 ケン・フォレット 矢野浩三郎・訳 新潮文庫→ソフトバンク文庫
 02 巨人たちの落日/凍れる世界/永遠の始まり 計11巻 ケン・フォレット 戸田裕之・訳 ソフトバンク文庫
(ケン・フォレットは外せない。)
 03 血の収穫 ハメット 河野一郎・訳 中公文庫
 04 ロング・グッドバイ チャンドラー 村上春樹・訳 ハヤカワ文庫
 05 日はまた昇る ヘミングウェイ 高見浩・訳 新潮文庫
(この三人はぼくのなかではほぼ等価値。)
 06 明治小説全集 全14巻 山田風太郎 ちくま文庫
 07 項羽と劉邦 上中下 司馬遼太郎 新潮文庫
 08 風の果て 上下 藤沢周平 講談社文庫
(フータローとリョータローと藤沢さんは日本文学の宝。)
 09 馬の首風雲録 筒井康隆 扶桑社文庫
(『パプリカ』(新潮文庫/中公文庫)とどっちにするか迷ったけど、より知名度の低そうなこちらの初期長編を。)
 10 新潮現代文学73 野坂昭如 火垂るの墓/骨餓身峠死人葛ほか 新潮社
 11 半島を出よ 上下 村上龍 幻冬舎文庫
 12 不夜城 馳星周 角川文庫
 13 新世界より 上中下 貴志祐介 講談社文庫
 14 女たちのジハード 篠田節子 集英社文庫
 15 空飛ぶ馬 北村薫 創元推理文庫
(ミステリは苦手だけど北村さんは別。上品で知的で、そして優しい。)
 16 継ぐのは誰か? 小松左京 ハルキ文庫
 17 日本三文オペラ 開高健 新潮文庫
 18 久生十蘭短篇選 岩波文庫
 19 センセイの鞄 川上弘美 文春文庫/新潮文庫
 20 黒い雨 井伏鱒二 新潮文庫
(この作品をたんに「面白い」と言ったら不謹慎だが、読み始めたらページを捲る手が止まらなかったという意味で、あえて入れさせて頂きます。)
 21 東京セブンローズ 上下 井上ひさし 文春文庫
 22 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド 上下 村上春樹 新潮文庫
 23 豊饒の海 一~四 三島由紀夫 新潮文庫
 24 聖餐城 皆川博子 光文社文庫
 25 リテラリーゴシック・イン・ジャパン 高原英理・編 ちくま文庫
(悪趣味な話が多いけど、そこも含めて面白い。)
 26 織田信長 全五巻 山岡荘八 講談社文庫
 27 至福千年 石川淳 岩波文庫
 28 泉鏡花集成6 陽炎座・歌行燈ほか ちくま文庫
 29 雪国 川端康成 新潮文庫
 30 細雪 谷崎潤一郎 中公文庫
 31 ギリシア神話 上下 呉茂一 新潮文庫
 32 聖書 新共同訳 日本聖書協会
(ただし、ギリシア神話は十代のころ初めて読んだ時から面白かったが、聖書を面白いと思えるようになったのはずっと後年になってから。)
 33 シェイクスピア戯曲集 平井正穂ほか訳 集英社ギャラリー世界の文学2
 34 神曲 ダンテ 寿岳文章・訳 集英社ギャラリー世界の文学1
 35 ドン・キホーテ正篇 会田由・訳 集英社ギャラリー世界の文学1
 36 ボヴァリー夫人 フローベール 生島遼一・訳 新潮文庫
(リアリズム小説と思われがちだが、じつは文学技法の見本帖みたいな作品。邦訳はほかに何種も出ている)
 37 ユリシーズⅠ~Ⅳ ジョイス 丸谷才一ほか訳 集英社文庫
 38 百年の孤独 マルケス 鼓直・訳 新潮社
 39 壜の中の手記 ジェラルド・カーシュ 西崎憲ほか訳 角川文庫
 40 薔薇の名前 上下 エーコ 河島英昭・訳 東京創元社
 41 舞踏会へ向かう三人の農夫 パワーズ 柴田元幸・訳 白水社→河出文庫(上下) 
 42 シャイニング 上下 スティーヴン・キング 深町真理子・訳 文春文庫
 43 三つの小さな王国 スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸・訳 白水Uブックス
(ホラーと純文学。アメリカを代表するふたりのスティーヴン。どっちも稀有のストーリーテラー。でもって、ちょっと病的。)
 44 悪霊 上下 ドストエフスキー 江川卓・訳 新潮文庫
 45 ウェルギリウスの死 ブロッホ 川村二郎・訳 集英社版 世界の文学13
 46 聖少女 倉橋由美子 新潮文庫
 47 新装版 レズビアン短編小説集 女たちの時間 利根川真紀・編訳 平凡社ライブラリー
 48 フリッカー、あるいは映画の魔 上下 セオドア・ローザック 田中靖・訳 文春文庫
 49 20世紀SF 全6巻 中村融/大森望・編 河出文庫
 50 シュルリアリスム宣言・溶ける魚 ブルトン 巌谷国士・訳 岩波文庫
 51 ブラウン神父の童心 チェスタトン 中村保男・訳 創元推理文庫
 52 吾輩は猫である 夏目漱石 新潮文庫・岩波文庫ほか
 53 阿修羅ガール 舞城王太郎 新潮文庫
 54 虚無への供物 上下 中井英夫 講談社文庫
 55 迷路 上下 野上弥生子 岩波文庫
 56 神聖喜劇 全五巻 大西巨人 光文社文庫 
 57 地の果て 至上の時 中上健次 新潮文庫
 58 燃えあがる緑の木 上中下 大江健三郎 新潮文庫
(この作品が絶版状態とは犯罪ものだ、と怒っていたが、電子版では買えるようだ。)
 59 行隠れ 古井由吉 集英社文庫
 60 邪宗門 上下 高橋和巳 河出文庫
 61 シンセミア 阿部和重 講談社文庫 上下/朝日文庫 全4巻
 62 日本文学全集74 岡本かの子 老妓抄・巴里祭ほか
 63 集英社日本文学全集38 横光利一 寝薗・上海ほか
 64 日と月と刀 上下 丸山健二 文藝春秋
 65 惜春 花村萬月 講談社文庫
 66 百年の預言 上下 高樹のぶ子 朝日文庫
 67 中島敦全集 全3巻 ちくま文庫
 68 羊たちの沈黙 上下 トマス・ハリス 高見浩・訳 新潮文庫
(ぼくが読んだのは菊地光訳だが、いずれにせよ、この小説のおかげで悪趣味に、というかグロ趣味に耐性ができてしまった。)
 69 夢は枯野を 立原正秋 中公文庫
(フェミニストたちは立原正秋を認めぬだろうが、オトコたちには今も根強い人気がある。)
 70 悪人 上下 吉田修一 朝日文庫
 71 右大臣実朝 太宰治 (新潮文庫『惜別』所収。青空文庫でも閲覧可)
(ダザイでいちばんカッコいい。いまどきの用語で言えばキレッキレ。)
 72 麻雀放浪記 阿佐田哲也 全四巻 角川文庫/文春文庫
 73 日本文学100年の名作 池内紀/川本三郎/松田哲夫・編 全十巻 新潮文庫
(名短篇のアンソロジー。これは本当に面白くてお買い得。ただしぼくが面白く読めたのは8巻まで。現代に近づくほど希薄になる。)
 74 戻り川心中 連城三紀彦 講談社文庫→光文社文庫
 75 阿修羅のごとく 向田邦子 新潮文庫
 76 小さいおうち 中島京子 文春文庫
 77 死の島 上下 福永武彦 新潮文庫(電子書籍版)・講談社文芸文庫
 78 真昼のプリニウス 池澤夏樹 中公文庫
 79 町でいちばんの美女 チャールズ・ブコウスキー 青野聰・訳 新潮文庫
 80 告白 町田康 中公文庫
 81 乳と卵 川上未映子 文春文庫
 82 ジーブスの事件簿 ウッドハウス 岩永正勝/小山太一・訳 文春文庫
 83 銀河ヒッチハイク・ガイド ダグラス・アダムス 安原和見・訳 河出文庫
(ジーブスと銀河ヒッチハイクガイドは抱腹絶倒もの。)
 84 流転の海 宮本輝 新潮文庫
 85 わが人生の時の時 石原慎太郎 新潮文庫
(シンタローは嫌いだけど、この短編集だけはべらぼうに面白い。)
 86 遊動亭円木 辻原登 文春文庫
 87 寒村自伝 上下 荒畑寒村 岩波文庫
(長らく品切れだったが、最近ようやく再版したようだ。)
 88 荒涼館 ディケンズ 佐々木徹・訳 岩波文庫
(ちくま文庫版とは別の人による新訳。全四巻のうち二巻まで出ている。)
 89 この人の閾(いき) 保坂和志 新潮文庫
 90 ナイン・ストーリーズ サリンジャー 野崎孝・訳 新潮文庫
 91 沖縄文学選―日本文学のエッジからの問い 岡本恵徳/高橋敏夫・編 勉誠出版
 92 輝く日の宮 丸谷才一 講談社文庫
 93 香水 パトリック・ジュースキント 池内紀・訳 文春文庫
 94 カフカ寓話集 フランツ・カフカ 池内紀・訳 岩波文庫
 95 スロー・ラーナー トマス・ピンチョン 志村正雄・訳 ちくま文庫
 96 グレート・ギャツビー フィッツジェラルド 村上春樹・訳 中央公論新社
 97 黒死館殺人事件 小栗虫太郎 河出文庫/創元推理文庫
 98 贖罪 上下 イアン・マキューアン 小山太一・訳 新潮文庫
 99 わたしを離さないで カズオ・イシグロ 土屋政雄・訳 ハヤカワepi文庫
 100 シュルツ全小説 ブルーノ・シュルツ 工藤幸雄・訳 平凡社ライブラリー
(シュルツ全小説は、これまで読んだ小説の中でいちばん好きかもしれない。)

 当たり前だけど、とても100では収まらないですね。いずれまた第二弾、第三弾を。こうやっているあいだにも、日々新しい状況のもとで新しい物語が紡がれているわけだし。