喉の調子がよくないと食べ物の嗜好が変わる。いつもだったら美味しい筈のサンマの干物が不味い。大根おろしを一杯すって一緒に食べたのに、喉に引っかかって食べ辛いのだ。納豆も喉にくっつくみたいで珍しくご飯を残してしまった。普段からあまり食欲の湧かない生野菜はもっとダメ。一口二口食べただけで残してしまう。反対に猛烈に食べたくなるのは天麩羅うどんと握り寿司。喉の調子が悪くなってから一日に一度はどちらかを食べている。うどんがのど越しがいいのは分かるけど、にぎり寿司がよく分からない。でも、今日も帰ってからスーパーで買ったご飯が固くなった握り寿司を食べる。ご飯が固まっていてのど越し?がいいからか?とにかく具合がまだ本調子じゃない。昨日今日とスタッフのO君が病気で休んでいて、俺が買い物、調理、後片付けをすることになっているだけど、買い物と調理はともかく、お客さんにお酒を御馳走になってカウンターに坐ってしまうと、もう動きたくない。厨房のシンクには汚れた皿と鍋が山積みになっていることは分かっているんだけど、もうそのままにして帰ってしまいたくなる。でも、そのままお客さんに勧められてお酒を飲み続けていたら泥酔して帰れなくなってしまいそうだったので勇気を奮って皿洗いにかかる。多分いつもなら二十分程で終わる筈なのが、気づいてみれば一時間。帰宅して冷たいお寿司でお腹を満たしてから頼まれていたエッセイの〆切がタイムリミットになっているので、パソコンに向かう。普段なら一時間で書ける筈の文章が三時間近くもかかってしまった。食欲も運動能力も作業能率も創作能力も何もかもが病気のせいでとろくなっている。