とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

京都に行ってきました 2

2008-08-30 22:32:00 | 日記
京都に行ったのは、“教育の集い”という集会に参加するためでした。
初日は全体会があります。挨拶や基調講演という難しい話は、これだけの人数の中では集中できにくいような気がします。
ましてや今回の会場はいつもの階段状のホールではなく、大きなフロアーでした。
中央に少しだけ台が用意してあるような会場で、メインのスクリーンを見ながらの集会だったせいもあるかもしれません。



挨拶等が終わると京都らしく創作狂言によるおもてなしがありました。
就職を前にした息子に心配する父親が「将来何になりたいのだ?」と聞くと、
「楽でお金がもらえて、働きたい時だけに働けて、休みたい時に休める仕事がいい」ととんちんかんな答をする。
早くゲームセンターに行きたい息子は父親をやりこめて、その場を逃げ出すというストーリーになっています。
たいしたストーリーではないのですが、狂言の口上で聞くと何ともユーモラスに聞こえるのが不思議です。



次に、今回楽しみにしていた劇作家井上ひさし氏の講演がありました。演題は「憲法について、いまどうしても伝えたいこと」でした。
氏は、憲法擁護の立場で様々な場で発言してきています。そういう意味で非常に興味がありました。

  

講演の要旨をかいつまんで紹介したいと思います。
初めにデンマーク陸軍大将フリッツ・ホルムの紹介を始めます。何の話を始めるんだろう?と思っていると彼が起草し制定を促すべく各国へ配布した「戦争を絶滅させること受合ひの法律案」(「戦争絶滅受合法案」)のことでした。
日本での紹介者は長谷川如是閑だということも紹介します。
そこで始めてピンときました。
長谷川如是閑については学生の頃に注目して研究をしたことがあります。
丸山真男氏の師匠にあたる人でもあり、後に貴族院議員として、日本国憲法制定に参加したことからしても興味深い人でもあります。
「戦争絶滅受合法案」このことについてもすっかり忘れていました。

その骨子については実に興味深いので紹介しておきます。

「戦争行為の開始後又は宣戦布告の効力の生じたる後、十時間以内に次の処置をとるべきこと。即ち下の各項に該当する者を最下級の兵卒として召集し、出来るだけ早くこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実戦に従わしむべし。

一、国家の元首。但し君主たると大統領たるとを問わず、尤も男子たること。
二、国家の元首の男性の親族にして十六歳に達せる者。
三、総理大臣、及び各国務大臣、並びに次官。
四、国民によって選出されたる立法部の男性の代議士。但し戦争に反対の投票を為  したる者は之を除く。
五、キリスト教又は他の寺院の僧正、管長、その他の高僧にして公然戦争に反対せ  ざりし者。

上記の有資格者は、戦争継続中、兵卒として召集さるべきものにして、本人の年齢、健康状態等を斟酌すべからず。但し健康状態に就ては召集後軍医官の検査を受けしむべし。
以上に加えて、上記の有資格者の妻、娘、姉妹等は、戦争継続中、看護婦又は使役婦として召集し、最も砲火に接近したる野戦病院に勤務せしむべし。」

戦争犠牲者の具体的な内訳についても触れています。
第1次大戦   軍人…95% 一般市民…5%
第2次大戦   軍人…52% 一般市民…48%
朝鮮戦争    軍人…16% 一般市民…84%
ベトナム戦争 軍人…5%  一般市民…95%

こんな戦争はやめなければいけない。
イラク戦争になるとイギリスの医療誌によるとイラクの死者は65万人、傷者はその10倍、難民は400万人(イラクの総人口は4000万人)

ここで、雑誌「論座」での赤城氏の論文を紹介します。

「今の凝り固まった世の中において、一度負け組とされた者はもはやそこからぬけだせない
だからもう一度社会を流動化する必要がある。
その手段で考えられるのは戦争だ。
戦争が社会を流動化し負け組にチャンスが訪れる

だから戦争を望むこともありうる。」

「閉塞状態を打開するには戦争しかない」でも殺されるのは市民そのものなのだ。
「平和とは、戦争がない状態を示すだけでなく、将来の希望があることなのだ」と氏は強く強調されました。

次にイラク戦争の原因について解説されました。
イラクのフセイン大統領は「石油をドルでなくユーロで売りたい」と言っていた。アメリカは赤字が出るとドルを刷ればいいから楽である。
現在の状況はアメリカの実力の2倍のドルが出回っている。ドルの価値は不安定そのものだ。

フセインはユーロで売りたい。それに対してサウジとイランが賛成していた。そのうちサウジが脱落して、イラクとイランだけが残った。
そのためにイラク戦争は引き起こされた。
事実、アメリカが主張していた武器は一切出てこなかったことから明らかです。

暗い話ばかりではなく暴力と戦争をなくそうという動きも起こっている。
話は変わるが…ということで脳の話になります。
脳には辺縁系と新皮質があって辺縁系は主に感情を司り、新皮質は情報や分析、知識を司ると言われます。
(途中略)
感情で物事を判断するのであるから豊かな感性が育たなければ正しい判断も育たないことになる。
知性や知識だけでは判断できない。理性だけでも判断できない。
私たちは「どうしてこんな人を選ぶの?」と思えるような不釣り合いのカップルをたくさん見てきた。
ここに感情の尊さがある。

南極条約の話をするのに、戦後腹腔の話から入って行く。
戦争に負けて外交ができないなかで国家の予算を維持してきたのはタバコ産業であることを主張する。
昭和23年の国家予算8000億その2割がタバコ税で補ってきたことを強調していきます。自分は今まで2000万の税金を納めてきたことになると主張します。
世の中から灰皿がどんどんなくなっていくのをみると「世の中を変えるのは簡単だ」と空恐ろしくなると愛煙家の主張を繰り返すが、さすがに同調できない。

戦後の文部官僚に木田ひろしという人がいる。この人は『新しい憲法のはなし』を書いた人で、国民体育大会を企画して予算がないなか各県を回すことでスポーツ施設を建設したことでも知られている。
この人が関わったことで戦後我が国が学術面で世界に復帰したことに南極探検があります。
当時南極は、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、チリ、イギリス、フランスが領土権を主張していたり、アメリカ、ソ連が軍事基地を建設することで牽制しあっていてまとまりがつかなかった。
木田氏は日本国憲法を英訳したものを配り、大演説をして、次の日まとまったという。
そしてできたものが南極条約である。
・南極地域の平和的利用(軍事的利用の禁止)
・科学的調査の自由と国際協力
・南極地域における領土主権、請求権の凍結
・核爆発、放射性廃棄物の処分の禁止
・条約の遵守を確保するための監視員の設置
・南極地域に関する共通の利害関係のある事項についての協議の実施
・条約の原則及び目的を助長するための措置を立案する会合の開催

まだまだ講演は続くのですが、これ以上長くなっても読みにくいのでこのあたりで終了します。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする