パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

逆さまな世界

2006-03-17 21:31:34 | Weblog
 歯医者の待ち合い室に、「ホモホモ7」の、みなもと太郎の同人雑誌が置いてあった。一応、好き勝手に作ってはいるのだろうが、これこれこういうことをしたいから、あえて同人誌を作った――という感じではない。つまり、要するに、正直言って、あんまりおもしろくない……。和田誠の「お楽しみはこれからだ」を真似たページなんかがあったりして……いまさら、あまりといえば、あまり……なので、読むのを止めて奥付を見た。というのは、みなもと太郎の事務所は、「抜弁天」の近くにあって、一度尋ねたことがあるのだ。それで、まだいるのかなと思ったら、いましたいました。発行人住所は、新宿区富久町だった。そう、いつも、不動産のちらしを播いているところだ。一戸建てだったら、みなもと先生んちと知らずにポストに放り込んでいた可能性がある。でも、「ホモホモ7」以後、鳴かず飛ばずだし、そんな金あるのかなー。でも、以前、お邪魔した場所が、今は、広い道路に変貌しているので、もしかしたら、その時に立ち退き料をせしめて、同じ町内に一戸建てを買った可能性もある。あるいは、立ち退き料で一戸建てを買ったので、こつこつ漫画を描くのがめんどくさくなったとか……なんてこともあり得るだろう。

 「映画の研究」がらみで、「逆さ眼鏡」のことを調べた。上下左右が逆さまに見える眼鏡のことだが、これをかけると、実は、上下左右だけでなく、前後(奥行き)も「逆さ」になる。ていうことはどういうことかというと、たとえば――女の人には想像しづらいかも知れないが――立ち小便をすると、自分が自分に向かって小便をしているように見えるらしい。
 どういうことかというと、要するに、下を向いて自分の身体を見ると、視界の一番手前にあるはずの「自分の身体」が一番遠くに位置するのだ。つまり、「前後」が逆になる。(ただし、「前後」が逆になるのは、「自分で自分の身体を見る」場合に限られる)
 それから、低い天井の廊下なんかを歩くと、天井がちょうど自分の腰のあたりに位置することになるため、コンクリートをメリメリぶっ壊しながら歩いているような感じになるんだそうで、これがなかなか「快感」らしい。
 こういったことは、「視界」の世界は逆さになっていながら、「自分」の身体感覚は前と同じく正立しているために起こるのだが、数日後には「世界」が正常に、つまり、正立して見えるようになるが、今度は「自分」が逆さになった感じになる。「視界そのものは正立していて、それを見ている自分が逆さになっている」というニュアンスはよくわからないが、ともかく、このようなプロセスを経て、最後の段階で、自分の身体に関する感覚と外界の見え方が一致し、逆さ眼鏡をかけたままで、すべて「自然」な状態になるらしい。

 なんと不思議な……。