我が社はアメリカのサブプライム問題に端を発した世界不況の前までは、設備投資やオール電化政策の追い風を受けて、好況そのものだった。7年前のリストラ騒動など、誰も覚えていないかのようで、受注に生産が追いつかないほど現場は多忙を極めていた。そのため、昨年から今期にかけて、売り上げは急上昇しリストラ効果もあって利益率も高く、要するに儲かって仕方が無い状況だったのだ。
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この活況下で会社が考えたのが、更なる生産活動の効率化だった。要するに生産に従事する事務所や現場・物流拠点を集約し、効率的な配置を目論んだのだ。この原資は税金に持ってゆかれるはずの利益を充てるので、当然といえば当然のことなのだ。
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我が技術開発部もその流れの中に組み入れられ、半年掛けて「技術開発センターリニューアルプラン」を策定し、経営層に提出した。「情報インフラを主体とした能率的な事務機器の整備と配置」がその主旨であろうが(プランを詳しくは読んでいないのだが、そう違わないだろう)、総額4千万円以上の予算で今期中に完了させることを条件で承認が下りた。そして、1月から準備に取り掛かり、まず今居る技術棟2Fを全面改造することから始めることになった。そして先週末に全員のデスクやパソコン、技術資料などの膨大な設備を1Fの作業フロアに運び込んだのだ。
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1Fの作業フロアは15m*18mの広さである。この中に48人が詰め込まれているのだから、それこそぎちぎちで、人が通り抜けるのさえ容易ではない。 おまけに床はコンクリートだから、冷気が足元から伝わって寒さに震える。加えて暖房はデマンドのために時々強制的に切れるし、照明も暗い。とても事務所環境ではないのだ。
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この仮住まいは2Fの改造が終わる来週半ばまで続き、今月末に再度引っ越すことになる。もちろん、能率的な新デスクが待っているのだろうと思う。それはそれで楽しみなのだが。
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確かに情報インフラが整備されることによって、飛躍的に能率が上がることは間違いない。昔は手書きで設計図面を書いていたのだが、それがCADに代わって設計工数が10分の1以下になったのではないかと思えるし、データ検索も便利になった。パソコンの整備は私が現役時代にTOPにその主旨を説明して認めてもらったので、その流れは充分に判るし、生産活動には必須の条件なのだ。
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けれども、と考える。会社内を眺めていると、部門意識が強く、個人の意識も変わっているようだ。要するに社内での連帯意識が欠けているように思える。社の行事であった、運動会やソフトボール大会、海水浴などが中止となり、課単位の慰安旅行でさえも補助金が廃止されたので行けなくなった。情報の伝達は一方的な上意下達のメールだから、課内でさえも仲間意識が薄くなっているように思える。
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ハード的なインフラ整備は必要ではあるが、やる気を起こさせるソフトもまた必要では無いだろうか。開発意欲は快適職場から生まれると思う。能率職場ではないと思うのだ.。