月に1、2度、図書館に通う。電車内で睡眠薬代わりに読む本を借りるためだ。色んなジャンルを手当たり次第に借りているが、気楽に読める藤沢周平や佐伯泰英の時代小説が多い。鞄の中に放り込めるように文庫本や新書サイズを主体としているが、最近は読破し尽くして、本が少なくなってきている。もちろん新刊をオーダーすればいいのだが、それほど執着心がある訳ではない。心地よい眠りに誘ってくれればいいのだから。
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ところが、この前「半落ち」を見つけた。人気がある本はなかなか出くわすことがないのだが、たまたま返却日と重なったのだろうか。2年ほど前に映画化されていたので知っていた。
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妻に「半落ち」を見せると、読みたいというので、貸した。2日間くらいで読み終えたが、その感想が「私には向かないだろう」だった。そんなものかなぁ、と気にすることなく引き続いて私も読んだ。
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大体、1冊の本を1週間かけて読む。睡眠薬代わりなので、気持ち良く眠られればいいのだ。が、この本はわずか2日で読んでしまった。自首するまでの2日間の空白はなぜ?という好奇心と巨大組織の軋轢、法廷物の迫力、次から次へと駒が渡っていくストーリーを追っかけねばという強迫感もあって、一気に読んだのだった。
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私の性格は、熱しやすく冷めやすい直情径行型で、感情移入が激しい。要するにすぐにその気になってしまう。だから水戸黄門や子供向けアニメを見ていても、すぐに涙が出てしまう種類の人だ。この本を読んでいても最後の方は涙で文字が霞んできてしまった。
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2日間の行動は、「やはり」という期待感と、「なぜそれほどまでして隠しておかなければならなかったのか」という孤高性に疑問を抱えたけれども、読後感はさわやかだった。私が亡くしてしまったピュアな精神を思い起こさせ、心の点滴のように汚れた精神を浄化させてくれたように感じた。<o:p></o:p>
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妻は私が涙もろいのを知っており、そのため恋愛物や涙物は避けて通るのを知っていたから、私には向かないといったようだ。確かにその通りかもしれない。寺尾聡がどのような演技を見せたのか、こんどビデオを借りて来よう。