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コーラルのエレクトリック・シタールには左利き用のモデルが存在する。これはジミ・ヘンドリックスのためにつくられたもので、現在はリック・キングという人が所有している。これもまたディーク・ディッカーソンの「THE STRAT IN THE ATTIC」から拾った話なのだが、そこにはリック・キングがヘンドリックスのエレクトリック・シタールを手に入れるまでの経緯が記されているのである。
1983年にディークの友人であるジム・ウォッシュバーンがダンエレクトロの創業者であるネイサン・ダニエルにインタビューしたことがあったそうだ。その中でジムは、彼自身が左利きということもあって、ダンエレクトロで左利き用のモデルを作っていたかどうかを尋ねたところ、ネイサンはジミ・ヘンドリックスのためにコーラル・エレクトリック・シタールの左利き用をつくった、と答えたのだという。
その数年後、ピーター・フランプトンがヘンドリックスのエレクトリック・シタールを所有しているということがわかったのだが、ピーターが持っていたのは右利き用のモデルであった。ヘンドリックスはエレクトリック・シタールを実は3本所有していて、そのうち2本は右利き用で1本だけが左利き用だったということらしい。ピーターはニューヨークのエレクトリック・レディランド・スタジオでヘンドリックスのシタールを手に入れたそうだ。残りの2本はヘンドリックスの死後、盗まれてしまったとのこと。
盗まれて行方のわからなくなったヘンドリックスのシタールであるが、しばらくしてリックはギター雑誌に左利き用のエレクトリック・シタールがあるという広告を発見するのである。その広告を出したのはロングアイランドにあるヴィンテージ・ギターショップ。リックはその店からシタールを手に入れた後、それが本物かどうかを鑑定してもらいにヴィニー・ベルに会いにいくのである。そのときに空港で乗務員とのやりとりがあるのだが、それがちょっといい話というか、ロック・レジェンドへの敬意に溢れているのがよい。
乗務員「あなたはそれ(エレクトリック・シタール)を機内に持ち込むことはできません。預けなければなりません」
リック「それはできないね。これはジミ・ヘンドリックスが持っていたギターなんだ」
乗務員「みなさん、道をあけてください!この人が運んでいるのはジミ・ヘンドリックスのギターなんです。気をつけてください、ジミ・ヘンドリックスのギターなんです」
こうしてリックはヴィニー・ベルに会うことができたわけだが、ヴィニー・ベルはリックが手に入れたシタールをヘンドリックスのために作られたモデルであると認めた。
リックは幸運にも長らく所在がわからなかったジミ・ヘンドリックスのエレクトリック・シタールを手に入れることができたわけだが、ギターショップへ在庫確認の電話を入れ、返事を待っている間は心臓がバクバクしていたとか、そのシタールが届くまでは「人生で最も長かった10日間」だったとか、ギターにとりつかれた男というものはどこでも同じようなものなんだなといったところで。
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