動画で楽しむDano(420)

2024-01-26 19:47:46 | Dano Movies(邦)
Superfly 『How Do I Survive?』Music Video


Superfly はボーカルの越智志帆とギターの多保孝一が2004年に結成したユニットである。

このユニット名 Superfly は、「カッコイイ」とか「イケてる」といった意味の俗語であるが、カーティス・メイフィールドの楽曲のタイトルでもあり、この曲を高校時代に聴いた多保氏が衝撃を受けたその体験がユニット名の由来なのである。

彼らは大学のサークルで知り合い、2007年にメジャーデビューするが、その後すぐに多保氏が作曲やプロデュースに専念するために脱退することとなり、Superfly はユニット名はそのままに越智志帆のソロプロジェクトに移行していく。



デビュー当初は「ジャニス・ジョプリンの再来」として1960~70年代のロックやファッション、アートワークに影響を受け、そこにこだわりを見せており、2008年にリリースされた6枚目のシングル「How Do I Survive?」のジャケットはローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズへのオマージュであり、ここでテーブル代わりにコーヒーカップとソーサーが置かれているギターがダンエレクトロのDC3である。このギターは同曲のプロモーションビデオにも登場する。

現在はロックというスタイルに過度にとらわれることなく、より自然体の音楽になっているようで、NHKの朝ドラの主題歌になった「フレア」のように、優しくつつみこむような歌がなかなかに素晴らしい。
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動画で楽しむDano(419)

2024-01-17 19:02:23 | Dano Movies(洋)
The Move | I Can Hear the Grass Grow (Live, 1966)


ザ・ムーヴは1965年、バーミンガムで結成された。中心となったメンバーは「目にした楽器はすべてマスターする」こととした男、ロイ・ウッドである。彼はマルチ・プレイヤーとして知られているが、彼以外のメンバーである、カール・ウェイン、トレヴァー・バートン、エース・ケフォード、ベヴ・ベヴァンらも、バーミンガムですでにバンド活動をしていて、全員がすぐれた演奏能力を持ち、リード・ボーカルを担うことができた。

ザ・ムーヴは結成当初はザ・フーのようなグループになることを目指していて、モータウンやロックンロールを演奏し、その後、バーズのようなアメリカ西海岸の音楽を演奏するようになっていった。そんな彼らは同じバーミンガム出身のバンドであるムーディー・ブルースのマネージャーをしているトニー・セクンダとマネジメント契約をし、ロンドンへ進出、ザ・フーの後釜としてマーキークラブで毎週演奏する仕事を得ることとなった。トニーはロイ・ウッドにもっとオリジナリティのある楽曲を書くよう要求し、その結果生まれたポップでキャッチーな楽曲の数々はイギリスのヒットチャートを賑わすこととなった。しかし、どういうわけかアメリカでは受け入れられず、アメリカでの、さらには全世界的な成功はザ・ムーヴ解散後の発展形としてのエレクトリック・ライト・オーケストラを待たねばならない。もっとも、そのときにはロイ・ウッドはバンドを去っていたのだが。

さて、上の動画は、「X」のタイムラインに流れてきたもので、私はザ・ムーヴがダンエレクトロを使用していたことなどまるで知らなかったので驚いてしまった。おそらくはトレヴァー・バートンらしき人物がダンエレクトロの3021を弾いている。トレヴァーさんはザ・ムーヴに加入する前はダニー・キング・アンド・メイフェア・セットというグループに在籍していたそう。このバンドはシングルを数枚リリースしたが、それらはバーミンガム以外で知られることはなかったという。

この動画で演奏されているのは「I Can Hear the Grass Grow」という楽曲で、これは彼らの2枚目のシングルである。このタイトルの由来が興味深いのだが、トニー・セクンダとも交流のあった写真家でフランク・ザッパやローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイといったロックスターを撮影したこともあるロバート・デヴィッドソンが見知らぬ男から受け取った手紙に書いてあったというのである。「私がラジオでポップ・ミュージックを聴いているわけは、私の住んでいるところが草が伸びる音が聞こえてくるくらいひっそりと静かだからなんだ」

この曲はドラッグソングだと言われることが多く、本人はそれを否定していたそうだが、そう言われるのも無理はないと思うけどね。
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ギターと木材をめぐって

2023-12-22 17:38:22 | Dano Column
現在発売中のギター・マガジン2024年1月号の特集は「エレキ・ギターと木材の話」である。それほど目新しい情報はないけれども、量的には充実した特集となっているし、さらに付録として、約50種類のトーンウッドを網羅的に掲載した「ギター用木材ハンドブック」もついてくる。

エレキ・ギターと木材の、その歴史をさかのぼれば、当然のことながらアコースティック・ギターがあり、中世・ルネサンス期のリュートやウードといった撥弦楽器にまで至るのだが、弦の振動を共鳴させる部分(棹や胴)に木材が使用されてきたことから、エレキ・ギターという、音を電気的に増幅させる機構を備えた楽器においても、木材がそのサウンドに与える影響については、果てしない探求と議論が続いているというのが現状だろう。そのため、ともすれば議論が過熱してしまうことがあり、ギターマニアの間では、木材の話になると場が「荒れる」と言われたりもするのだが、それゆえに今月のギター・マガジンが「売れる」のならば、それはそれでまことにめでたいことではあるまいか。

とはいえ、この特集においては、木材に関する様々なテーマについて、56個のQ&A形式で記事にしてはいるものの、センシティヴな内容にはなるべく踏み込まないように配慮されているようではある。

極端に言えば、エレキ・ギターを構成する一つ一つの材すべてがそのギターの出すサウンドに影響していると考えられるならば、アコースティック・ギターなどに比べればその影響は小さいかもしれないが、使われている木材が違えば音も違うはずだし、同じ木材でも部位が違う、いや、そもそも全く同一の木材などないわけだから、個体差はあるはずだ、同じギターでも温度や湿度、弾き込みや経年変化によって音も変わるはずだ、といったようにどんどん議論がひろがっていってしまう。そのような音の変化、違いが人間の耳によって識別できるものなのか、周波数などを計測しないとわからないものなのか、そもそも、その違いが音の良し悪しの判断に関与するほどのものなのかどうか。いずれにせよ、木材の違いによる音の違いをいったん語りだすと、そうそう簡単にはいかなくなってしまうのである。

その一方で、木材ではない素材を使用したギターというのも、エレキ・ギターの歴史には登場する。「Dano研」的にはどちらかといえばこちら側が本領となるわけだが、今回の特集でもそれらについては若干触れられている。これまでのエレキ・ギターの歴史においては、レゾグラスと呼ばれるFRP樹脂やアクリル、アルミニウムやカーボンなど、実に様々な素材が使われてきた。ここには、さほど遠くない未来に到来するだろう森林資源の枯渇を見越しながらの新素材の活用という側面があり、また、加工のしやすさや低コスト化を追求するといった側面もあったわけで、そのなかで、ダンエレクトロのギターについても記事の一つとして触れられているのだが、ダンエレクトロといえば、もちろんその素材はメゾナイトということになる。とはいえこれは木材チップを圧縮した材なので、木材といえば木材ということになってしまうため、新素材の話とは別枠での記事になったのだろうと思われる。



ダンエレクトロついでに蛇足を言えば、その最初期のモデルにおいてはネックの一部にアルミが使われていたことがあったし、また、通常の木材の使用ということで言えば、ネックにはポプラ、ボディにはパインが使用されていた。そして指板には今では希少材となったハカランダが使用されてもいた。このことからわかるように、ハカランダは、1950年代、60年代にあっては、通信販売で売られているような廉価なスチューデントモデルにも使用されるくらいありふれた木材だったのであり、そんなにありがたがらなくてもいいようなものだったのである。
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動画で楽しむDano(418)

2023-12-21 21:23:27 | Dano Movies(洋)
Sponge - "Molly (16 Candles)" - official video


オルタナティブ・ロックなどという呼称がいつごろから確立されたのかは不明にして知らないのだが、私の記憶が確かなら、あのニルヴァーナも出てきた当時は「メタルの新しい形、新種」として伊藤政則あたりが紹介していたような気がするので、そもそも日本では、そんな曖昧模糊とした状況だったかと思う。

そんなわけで、スポンジなのだが、このバンドのことは私は全く知らなかった。90年代はロックから遠ざかっている時期だったせいもあるが、このスポンジというバンド自体、日本ではほとんどプロモーションされていなかったようなので、私が知らなくても不思議はないといったところ。

スポンジは、ギターにマイク、ベースにティムのクロス兄弟とヴォーカルのヴィニー・ドンブロスキーによって1992年、デトロイトで結成された。彼らのサウンドについては「うわべは薄いメタルの、クラシックなハードロックとパンチの効いたオルタナティヴ・ポップの多彩なブレンド」と評されたことがあるらしいが、何が言いたいのかよくわからない。いわく言い難し。それがオルタナティヴだということか。このバンドについていろいろ調べていたら、オリジナルメンバーのマイク・クロスが2022年の3月に57歳で亡くなっていたことがわかった。彼もまた私と同世代だったというわけだ。

上の動画は彼らの3枚目のシングル曲「Molly」で、そこそこヒットもしたらしい。この動画では、おそらくジョーイ・マッツォーラの方だと思うが、ダンエレクトロのコンバーチブルを弾いている。あんまりじっくりと見ることができないが、ノブが交換されているのがわかる。
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動画で楽しむDano(417)

2023-11-22 18:48:33 | Dano Movies(洋)
Listen to the Flower People


1984年の映画「This Is Spinal Tap」はスパイナル・タップという架空のバンドのストーリーを、ドキュメンタリー的な手法でもっともらしくでっちあげつつ、当時のロックスターを取り巻く業界のあれやこれやを戯画化した作品である。監督・脚本はロブ・ライナーで、これが彼の監督デビュー作となる。

さて、スパイナル・タップといえば、「目盛りが11まであるアンプ」のエピソードがとりわけ有名であるが、このバンドは一応、デヴィッド・セントハビンズ(演じているのはマイケル・マッキーン)とナイジェル・タフネル(演じているのはクリストファー・ゲスト)という二人の出会いから始まり、1964年にはビート・バンド風、1965年にはサイケデリック・ロック風、そして1980年代にはハード・ロック風といった感じで、時代により音楽性を変化させていった歴史を持っている。

そこでこの動画であるが、これはそのサイケデリック・ロック期の楽曲で「Listen to the Flower People」が演奏されている。この映像も音楽もいかにもフラワーな雰囲気がいい感じなのだが、ここでナイジェル・タフネルが弾いているのがダンエレクトロのダブルネック、3923なのである。しかしながらここで聞こえてくるのはエレクトリック・シタールの音だったりするのである。
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動画で楽しむDano(416)

2023-11-19 19:45:17 | Dano Movies(洋)
Haim - The Steps (Guitar Tutorial with Danielle Haim)


この動画でギターの手ほどきをしているのは、ハイムのヴォーカル、ダニエル姐さんである。ハイムはLA出身のガールズグループで、三人のメンバーは姉妹なのである。音楽一家で小さい頃から楽器を演奏したり、歌ったりしていたそうだが、2012年にデビュー。イギリスのチャートで1位になったり、グラミー賞にノミネートされたり、テイラー・スウィフトのワールドツアーに同行したりと順調な活動を経て現在に至っている。

ベースを担当している長女のエスティはUCLAで民族音楽学の学位を取得したそうで、三女のアラナは映画「リコリス・ピザ」で主演するなど、女優としても活躍している。

ここでダニエル姐さんが弾いているのは自分たちの楽曲である「The Steps」のリフで、弾いているギターはシルバートーンの1300というコッパーフィニッシュの1ピックアップのモデルである。このギターは三女のアラナが弾いていることもあり、姉妹で仲良く1本のギターを分かち合っている様子がうかがえて何とも微笑ましい。
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動画で楽しむDano(415)

2023-11-08 18:59:35 | Dano Movies(洋)
Coldplay - God Put A Smile Upon Your Face (Official Video)


ちょっと前に来日公演を行ったばかりのコールドプレイは、UCL出身のメンバーによって1997年に結成され、1998年にデビューした。
現在まで9枚のアルバムをリリースしていて、そのすべてが全英1位となったり、また、グラミー賞など様々な賞を歴史上最も多く受賞したグループとも言われたりと、そうした意味でも彼らの音楽性は高く評価されているといったところだが、残念ながらこの私ときたら、彼らの音楽を今までほとんど聴いたことがなかったのである。縁がなかったといえばそれまでだが、ウェルメイドによくまとまった音楽がそれほど好きではないせいもある。

2002年にリリースされたアルバム「A Rush of Blood to the Head」に収録され、シングルにもなった「God Put A Smile Upon Your Face」のプロモーション・ビデオで、ギターのジョニー・バックランドがダンエレクトロの59DCを弾いている。
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動画で楽しむDano(414)

2023-08-05 19:35:54 | Dano Movies(洋)
What It Is - Nina Hagen & Snap Her live at Whisky a Go Go in 1995


この映像はニナ・ハーゲンが1995年にウイスキー・ア・ゴー・ゴーで行ったライブを収めたものである。それはそうであるのだが、何か意図があってのことなのか思ってしまうくらい、画質・音質がひどすぎて何が何だかよくわからない。この時期はスナップ・ハーというパンクバンドがバックバンドとして関わっていて、リズムギターのアンディ・ベルトラモ=シェイがシルバートーンの1301を弾いているのが見える。

ウイスキー・ア・ゴー・ゴーはアメリカ最初のディスコとして1964年に設立された。ディスコなので、もともとは録音されたものを流すはずだったのだが、バンド演奏とその周りをミニスカートとブーツの女の子が踊って盛り上げる、というスタイルを生み出したことで知られている。いわゆる「ゴーゴーダンス」というやつだ。60年代後半にはドアーズやバーズ、バッファロー・スプリングフィールドといったグループが専属的なバンドとして出演していたが、70年代後半になるとラモーンズやブロンディ、トーキング・ヘッズなどのパンク/ニュー・ウェーヴのグループが出演するようになった。80年代には衰退し、閉鎖されたりもしたが、86年に営業を再開、この時期はガンズ・アンド・ローゼズやメタリカなどのハードロックやヘヴィ・メタルのバンドを輩出した。90年代に入るとグランジのムーヴメントの中心となって、ニルヴァーナなどが出演した。ウイスキー・ア・ゴー・ゴーとはこのような歴史を持つ会場なのである。

スナップ・ハーは1993年にシュトゥットガルトで結成されたパンクバンドで、ラモーンズやバズコックスから影響を受けたという。すぐに活動の拠点をロサンゼルスに移し、2003年まで活動した。ニナ・ハーゲンのバックをやっていたのは1995年から1996年の間くらいのようだ。彼女たちのファッションからわかる通り、リーダー的存在であったアンディ・ベルトラモ=シェイはバンド活動の傍ら、SM小説を書いたりなどしていて、次第にバンドよりも書くことの方へ活動の重心が移ったことによって、バンドを解散することにしたそうだ。とはいえ、それから何年も経過し、今もバンド活動はしているようである。そこでもダンエレクトロのギターを愛用しているとのこと(シルバートーンの1301は手放してしまったそうだ)。Facebookへの投稿から彼女のこうした近況が垣間見える。

さて、ニナ・ハーゲンであるが、彼女については東ドイツが生んだアヴァンギャルド姐さんとしてあまりにも有名なので、敢えてここに書くこともないであろうと思う。
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2023年のダンエレクトロ〈番外編〉

2023-04-19 17:29:40 | Dano Guitars
例年だと1月か2月くらいに開催されていたはずのNAMMショーが今年は4月の13日から15日(現地時間)に開催されたようで、やはりコロナ禍の影響だろうか、イベントごとはまだまだ例年通りというわけにはいかないご様子。

今年のNAMMショーにはダンエレクトロも出展していて、このブログでも2023年モデルとして紹介したDIVINEの3ピックアップモデルや2022年モデルとして紹介したロングホーンのバリトンギターなどが展示されていた。ダンエレクトロのブースの様子や会場全体の雰囲気などはYouTubeに動画もアップされているし、ダンエレクトロの日本代理店であるキクタニミュージックのツイートもあるので、現地に行かずとも、ああこんな感じなんだということはよく伝わってくるわけで。



それで、2023年モデルのDIVINEなのであるが、これには市場に出ることはなかったプロトタイプが存在するのである。フェイスブックの Danelectro Owners というグループに投稿された画像を見ると、3ピックアップであるところとピックアップの切り替えがストラトのような5wayスイッチになっているところは共通しているが、ボディのほとんどを覆うようなピックガードとウィルキンソンのトレモロユニットが搭載されていることや、サイドにミントグリーンのバインディングが施されているところが大きく違っている。これはピックガードの形状と合わせ、ヘッドストックこそコークボトルのままとはいえ、ショートホーンの4021に見た感じが非常に近いという印象である。

   

プロトタイプということで、市場には出ていないのだが、4021に近いルックスという意味でも、単純にかっこいいわけなのだから、新製品として来年でもいいから発売したらいいんじゃないかしら、と思ったりした次第である。
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ギターマガジン2023年5月号 鮎川誠とトム・ヴァーレインについて

2023-04-15 19:29:47 | Dano Column
ギターマガジン2023年5月号には、今年の1月に相次いで世を去った二人のギタリスト、鮎川誠とトム・ヴァーレインの特集記事が組まれている。

鮎川誠については、大鷹俊一によるバイオグラフィ的な記事が1本と過去にギターマガジンが行ったインタビュー3本の再掲、次いでギターやアンプの機材紹介とディスコグラフィがあり、そして関係のあったミュージシャンたちへのアンケートによって構成されている。インタビューの1本目は1981年、「ピンナップ・ベイビー・ブルース」リリース時のもの、2本目は1993年、ウィルコ・ジョンソンとの「ロンドン・セッション」リリース時のもの、最後3本目として鮎川誠がパンクを語った2018年のものとなっている。これらのインタビューはいずれも興味深いものだが、とりわけ、ブルースへの想いを熱く語った部分が素晴らしい。



鮎川誠のギターについての私の関心は、彼が敬愛していたリンク・レイにあやかってダンエレクトロのギターを所有していたかどうかにあった。先月だったか、復刻版が出た鮎川誠の「60s ロック自伝」の、リンク・レイについて書かれた箇所を見ていたら、そこにダンエレクトロが「三流のギターメーカー」と書かれてあるのを見つけてしまい、悪意はないだろうと思いながらも、今回の機材紹介を見ると、ダンエレクトロ関連では2本所有していたことがわかった。1本目は1986年製のグレコDE-70という、ダンエレクトロ・ショートホーンのコピーモデルで、赤く塗装されているが、この赤は「シーナ・レッド」なのだそうだ。6弦が外されていて、5弦ギターとしての使用が想定されていたようだ。2本目は2002年製のダンエレクトロDC12で、2016年にサンハウスのメンバーだった浦田賢一から贈られたものだとのこと。レコーディングやライブで使用された形跡はないので、あくまでコレクションということなのだろうけども。

トム・ヴァーレインについては、バイオグラフィとディスコグラフィ、ジミー・リップとネルス・クラインへのインタビュー、そして「トム・ヴァーレインが愛したギターたち」で構成されている。

トム・ヴァーレインが亡くなったとき、このブログに記事を書いたが、そこで彼がなぜポール・ヴェルレーヌから名前を取ったのかについて、深い意味はないのではないかと書いたのだったが、十代の頃にリチャード・ヘルとともにデカダンな詩人に憧れていたということからすると、19世紀末の象徴派の詩人の名前には深い意味が生まれてくるし、トムがヴェルレーヌでリチャードがヘルというのも、おそらくヘルは「地獄の季節(A Season in Hell)」のことで、つまりはそれを書いたランボーにつながっていくのではないかと考えられるとすれば、さらに深い意味が生まれてくるではないか。ヴェルレーヌとランボーが破局したのと同様にトムとリチャードも決裂してしまうわけだけども。

ネルス・クラインがインタビューの中で「トム・ヴァーレインはどういうトーンを求めていたのか?」という質問に対して、「トム・ヴァーレインがリップスティック・ピックアップを気に入っていたことに共感している」と言い、「そのクリスタルのように煌びやかでクリアな音色は僕も大好きで、彼もそれを求めていたんだと思う」と答えている。ネルス・クラインも「わかっている」のだな、と思う。



そしてトム・ヴァーレインのギターについてとなるわけだが、ダンエレクトロ関連では3本のギターが紹介されている。1本目は画像は掲載されていなかったものの、初期にはダンエレクトロの4021を使用していたことが記されている。次いで2本目は白のダンエレクトロ・デラックス6036で、これは画像も掲載されているが、その説明に「3つのミニスイッチとマスターボリュームという仕様へと改造が施されていた」とあるのが引っかかる。マスターボリュームの位置は変わっているようだが、これはおそらくミニスイッチに改造したのではなく、ノブが取り外された状態になっただけ、と見るべきなのではないかと思われる。3本目はシルバートーンの1457で、トム・ヴァーレインはこのギターをいつもベッドのそばにおいて、曲作りの時などに使用していたそうだ。このことは知らなかったので、私にとっては新たな発見であった。
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