小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

俺たちの勲章

2011-09-01 21:47:16 | Weblog
松田優作の「俺たちの勲章」の第一話の最初は。あるスケート場を、ある日、強盗で襲って金を奪うグループがあるという情報を聞き、(仲間の一人の裏切りによるタレコミか?)スケート場に待ち伏せして、グループが強盗の行動に出た瞬間に、捕まえるというシーンで始まる。拳銃をぶっ放したことで始末書を書かされている松田優作の所に、新人刑事の中村雅俊が来て、こんな会話がなされた。

中村雅俊「あなたはスケート場に強盗が入るという情報を聞いて知っていたんですね」
松田優作「ああ。そうだよ」
中村雅俊「事件を起こさないようにするのも刑事の仕事じゃないでしょうか?」
松田優作「お前。何を言いたいの?」
中村雅俊「情報を知っていたなら事件は食い止められたはずです」
松田優作「じゃあ、お前さんは、あのチンピラ達に、スケート場、襲うの、やめてくれませんか、って頼むべきだったっていうの?なるほど。でもさ、スケート場、襲うのやめるかもしれないけど、代わりに今度はどこかの銀行、襲うかもよ」

という会話で始まる。

これは悪人の性格は変わらないという松田優作の主張。と、説得によって人間の心は変わる、という中村雅俊の(ちょっと現実的でない、きれいごとの)主張の違いである。

しかし、これにはもう一つの問題が含まれている。それは、共謀罪(というバカげた発想)の問題である。共謀罪とは、犯罪の計画を立て時点で逮捕できる、という警察当局の狂った発想である。このドラマでは、そんなバカげた発想は、脚本家の頭に浮かびもしなかっただろう。計画を立てただけでは犯罪行為とはならない。なぜなら、そのあと、計画を実行するまでに、猶予期間があるではないか。罪悪感か、あるいは捕まる心配をおそれて、やっぱりやめよう、と思い直して、犯罪を思いとどまる可能性があるではないか。しかし、犯罪行為を始めた瞬間に、その人間の犯罪の意志の間違いない存在が証明されたことになる。これは間違いのない意志の証明である。
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