小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

シェーン・ドラゴン怒りの鉄拳 (小説)

2020-07-07 22:14:31 | 小説
シェーン・ドラゴン怒りの鉄拳

 ある海水浴場である。セクシーなビキニ姿の女や、日焼けしたビーチボーイ達が、サンサンと照りつける太陽のもと、青春を謳歌している。

一人の男が、入るとでもなく、入らないとでもなく、ウロウロと海水浴場の入り口に立っている。男は時々、チラッ、チラッ、と羨ましげな目つきで海水浴客達の方を見ていた。
何人ものセクシーなビキニ姿の女性達が通る度に、男は顔を真っ赤にした。男が入りたがっている事は明らかだった。ついに男は勇気を奮い起こしたと見え、ヒョロヒョロと歩き出した。足がガクガク震えている。ビキニ姿の女達が胸を揺らしながら、キャッ、キャッ、と歓声を上げながら男の側を通り過ぎていった。

男は砂浜の上に腰を降ろして、そっと周りを見回した。
「ヘーイ。彼女―。ちょっと、遊ばない」
「うん。いいよー」
小麦茶色に日焼けした二人のビーチボーイが、さっそく、二人の女を捕獲した。
男は、しばし、ビーチを見ていたが、このようにして、次々とカップルが浜辺で出来上がっていく。
「けっこう、簡単なものなんだな」
男は、その言葉を、自分に言い聞かせるように腹の中に飲み込んだ。
「そうだ。女は男を求めて、ここへ来ているんだ」
男は、自分に言い聞かせるように言った。だんだん、男は腹から自信が沸いてきて、肘を上げて、グイと力瘤をつくった。
男は、スックと立ち上がると、少し砂浜を歩いた後、ピンクのビキニ姿で一人で、うつ伏せになっている茶髪の女に、声をかけた。さすがに、その行為は勇気が必要で、彼はゴクリと緊張の唾を飲んだ。
「あ、あの。お、お姉さん。・・・お、お茶しませんか」
女はムクッと顔を向けて、男を一瞥すると、すぐに顔を戻して拒否の手を振った。
「顔パス」
男はガーンと、頭を鉄の棒で叩かれたようなショックを受けた。だが、彼は、すぐに気を取り直した。
「ふっ。ま、まあ、はじめてだからな。こういう事も、あるものだ」
オレは、消極的すぎるんだ。もっと、自己アピールしなくては、いけないんだ。
そう思って男は気を取り直して、歩き出した。考えてみれば、彼は大変、有利な条件を持っていた。彼は医者で、個人スポーツは、ほとんど万能だった。こんな有利な条件を彼は謙譲の美徳のために使った事がなかったのである。

ある水玉模様のビキニの女がうつ伏せになって、体を焼いていた。男は、そっと女の傍に腰掛けた。
「あ、あの。お、お姉さん」
男が声をかけると女はムクッと顔を上げた。男は勇気を出して、声をかけた。
「あ、あの。よかったら、お茶しませんか」
女はしばし、訝しそうな、目で男を見ていたが、拒否の手を振って、パタリと顔を戻した。
男は、執拗に食いついた。
「あ、あの。ぼ、僕。医者なんです」
だが、女は全く相手にしない。男はさらに、熱を込めて言った。
「あ、あの。ぼ、僕。色々、スポーツも出来るんです」
女は、振り返って、罵るように言った。
「あなた。最低の男ね。見えすいたウソついて、ナンパしようなんて。男として最低よ。私に、まとわりつかないで。あっち行って」
「ほ、本当なんです」
男は必死に何度も訴えたが、女は全く相手にしようとしない。
男は、ガックリして立ち上がった。
「よし。今度は、医師免許証の原本を持ってこよう」
そう思いながら、ビーチを歩いていった。すると、黄色いビキニの女性が座って膝組みしていた。美しい長い黒髪。じっと海を見つめている。つつましそうである。男はドキンとした。
(今度こそ。この女性なら、きっと、受け入れてくれる)
男は、そう思って、女性に近づいた。そして、声をかけた。
「あ、あの。お姉さん」
女性は、男に顔を向けた。拒否している感じは、見られない。男は、やった、と思った。
「あ、あの。よろしかったら、お茶しませんか」
男は、微笑して、話しかけた。と、その時。男は、後ろからポンと肩を叩かれた。
男が振り返ると、そこには、肩にサソリの刺青をした、いかつい体格のオールバックの男が、ガムをクチャクチャ噛みながら男をにらみつけている。
「おい。手前。オレの女に手を出すとは、いい度胸してるじゃねえか」
そう言うや、刺青の男は、男を突き飛ばした。男は、ビーチに倒れた。
「うせろ。二度と来るんじゃねえ」
男は、ペッと男に唾を吐きかけた。
「譲二。かっこいい」
膝組みしていた女は、ピョンと立ち上がって、欣喜雀躍とした様子で男の腕にしがみついた。刺青男は、女に誉められて気をよくしたのだろう。倒れている男を、めった蹴りし、顔を思いきり踏みつけた。そして、グリグリと顔を踏みにじった後、男の体に馬乗りになり、何度も、力の限り男の顔を殴りつけた。20発くらい殴った後、おもむろに余裕の表情で立ち上がり、女と共にビーチシートに戻った。
「すてき。譲二。たのもしいわ」
女は、うっとりした表情で、男の頬っぺたにチュッとキスした。

殴られた男は、ヨロヨロと立ち上がり、鼻血をダラダラ流しながら、フラフラとおぼつかない足取りで、近くの海の家に向かった。

男は、海の家に飛びこんだ。そこは西部劇の酒場のような、つくりになっていた。「海の家ライカー」と書いてある。ちょうど、映画、「シェーン」の酒場のような感じだった。
男が入るや、そこにいた客達が一斉に男を見た。みな、垢抜けたエレガントな感じである。
みな、ブランデーやウイスキーを飲んでいた。
男は、場違いな感じを持ったが、一度、入った以上、黙って出て行くのも決まりが悪い。
ので、カウンターに、恐る恐るついた。
「あ、あの。ソーダ水ください」
男が、そう言うと、客は一斉に笑い出した。
バーテンダーは、ニヤリと笑って、軽蔑の口調を込めて言った。
「おい。何がいい。イチゴ味か。レモンか。メロンか」
「メ、メロン味を下さい」
男がそう言うとバーテンダーは、嫌そうに、レモン味のソーダ水を男に向かって放り投げた。
客はニヤニヤ笑っている。
「そら。これを持って、とっとと店を出ろ。二度と来るな。ここは、お前の来るような所じゃねえんだよ」
男が、ソーダ水を持って店を出ると、バーテンダーは、塩のビンを持って、店の前に塩をふりまいた。
「て、てめえら・・・」
男は、腹から怒りがこみあげてきて、ブルブルと体を震わせながら、拳をギュッと握りしめた。
男は、もう帰ろう、と思って、俯いて、ビーチの出入り口に向かった。
男が、ビーチを出ようとすると、小麦色に焼けた体格のいいピアスに茶髪の男が、男の肩に手をかけて、引き止めた。男は顎をしゃくって、ビーチの入り口に男の目を向けさせた。
男が顔を上げると、ビーチの出入り口に大きな立て札があった。それには、こう書いてあった。
「NO DOGS AND SOMBER ADMIT」
(犬とネクラは、おことわり)
男は、すぐに振り返って、ピアスの男を見た。ピアスの男はニヤニヤ笑っている。
その時、犬を連れた、きれいなビキニ姿の女が入ってきた。ピアス男は、ニコッと笑った。
「へーい。順子。ひさしー」
「やあ。ジョ二ー。来てたのー。ひさしー」
仲むつまじい挨拶がかわされた。
女は、犬を連れてビーチに入って行った。
「あれは何だ」
男は、ピアス男を、睨みつけて女の連れている犬を指差して聞いた。
「お前は例外だ」
ピアス男は、男の胸を見下すように、人差し指でつついた。そして、こう言った。
「おい。お前。どうしても、このビーチに入りたいのか。だったら犬のように四つん這いになれ。そうしたら、オレが連れて入れてやるぜ」

男の心に、煮えたぎるような、怒りがこみ上げてきた。
「あちゃー」
男は、ニヤニヤ笑っている、ふやけた男を力いっぱい殴りつけた。
ピアスの男は、吹っ飛ばされて、失神した。
男は、煮えたぎるような、怒りで、拳を握りしめ、全身をブルブル震わせて、その立て札をしばし、にらみつけていたが、ちょうどブルース・リーの「怒りの鉄拳」のように、「あちゃー」と、叫んで、ジャンプし、その立て札を飛び蹴りで、叩き割った。

数日後、米軍基地が何者かによって、おそわれ、武器が盗まれた、という事件が起こった。

その数日後の事である。
一人の男が、海水浴場に現れた。
夏だというのに、黒い革のジャンパーを着ている。ゴルフバックを持っている。
目立つため、ビーチの客は、一斉に男に視線を向けた。その男は、数日前に来たネクラ男である。「海の家ライカー」のバーテンが、すぐに男を見つけて、男の所にやって来た。
「おい。お前、耳が悪いのか」
男は黙っている。
「二度と来るな、と言っただろうが」
バーテンダーは居丈高に言った。
「ああ。もう、今日が最後で二度と来ないぜ」
男は、そう言うや、ゴルフバックを、おもむろに開いた。
中身は、なんと、機関銃だった。重量9キロの重機関銃である。
男は革のジャンパーを脱いだ。体に給弾ベルトが、巻きつけられている。
男は給弾ベルトを、体から外して、機関銃に装着した。
バーテンダーは、一瞬、たじろいで後ずさりした。
男は、足を開いて、機関銃をガッシリと構えると、銃口の先をピタリとビーチの客に向けた。
「死ねやー。ウジ虫どもー」
ズガガガガガー。
ビーチの客達は、一瞬、たじろいだ。が、発射速度550発/分のマシンガンである。ビキニの美しい女達や、ナンパ男達が、マシンガンのマグナム弾によって、被弾し、バタバタと倒れていった。真夏の海水浴場は地獄絵図と化した。
きゃー。
海水浴客達は、逃げまどったが、男は、容赦せず、撃ちつづける。
「やめろー。やめないと撃つぞー」
ビーチに設置されたバラックの海水浴場の特設警察所から、警察官が出てきた。ニューナンブ38口径を、男に向けて構えた。
しかし、ニューナンブ38口径と、マシンガンでは、話にならない。
男は、警官にマシンガンを向けた。
ズガガガガガー。
一瞬にして、警官の体は蜂の巣になり、倒れた。
男はすぐに、再びビーチの客にマシンガンを向けた。
男はマシンガンの引き金をひいた。
ズガガガガガー。
きゃー。
ビーチの客は、逃げまどったが、男は容赦せず、マシンガンを連射しつづけた。
ついに全弾、撃ち尽くして弾がきれた。
男は、パイナップル(手榴弾)を取り出すと、思いきり投げた。
ボガーン。
ビーチの海水浴客が、一瞬にして、吹っ飛ばされた。
男は、ふー、と、ため息をついて、あたりを見回した。
もう生存者は一人もいなかった。真夏のビーチは、しんと静まりかえってる。無数の美しいビキニ姿の女や、ナンパ男たちが、倒れ、口を開き、白目をむいている。

男はマシンガンを捨てると、踵を返し、ビーチの出口に向かって歩き出した。
一人の華奢な体格の子供が、男の所にやって来た。その少年も内気な性格で、以前、ビーチに入る勇気が持てず、さびしそうにしていた、のを男がなぐさめて、やったのである。
その少年は、日本人だが名前をジョーイと言って、ちょうど、映画、「シェーン」の少年のような顔立ちだった。少年は男を、シェーンという、あだ名で呼んでいた。
「シェーン、すごいね。やっぱり勝つと思っていたよ」
男は笑顔で、ジョーイの頭を撫でた。
「ジョーイ、ネクラと言われても負けちゃダメだぞ」
「うん。ぼく、負けない」
「ジョーイ。今日でおわかれだ」
「どうして。シェーン」
男は黙って熱い砂の上を歩きつづけた。
少年もトコトコついて来る。
「シェーン、どこへ行くの」
「警察所に行くのさ」
「どうして」
「人を殺した人間は、もうこの社会には、いられないんだ」
「じゃあ、どうして殺したの」
そうだな、と言って、男は、困惑した顔つきをした。
「人は自分の殻から抜けられない。抜けようと努力してみたがダメだった」
「いてほしいの。シェーン」
少年は涙ぐんだ。
男は手を振った。
「ジョーイ。パパとママを大切にするんだぞ」
「うん」
「ジョーイ。男は強くなれ。そして、真っ直ぐに生きるんだ。Strong & Straight」
「うん」
男と少年の距離が、だんだん離れていった。

「パパが仕事を手伝ってほしいって、言ってたよ」
少年が大声で言った。
男は、以前、少年の家に行った事があるのである。少年の家は、貧乏で、今時、こんな家があるのか、信じられないが、材木座の丸太で組んで作った家だった。少年の家庭は牛を飼い、野菜をつくって細々と暮らしている農家だった。家の前に大きな切り株があって、それがジャマになっていて、困っていたので、男は斧で、その切り株を切ってやったのである。
男の姿は、さらに離れていった。
「ママがいてほしいって、言ってたよ」
男が、切り株を切ったので、お礼に少年の母親は、手作りのアップルパイを男につくって、手をかけた料理もつくって、あたたかくもてなしたのである。母親はジーン・アーサーに似ていた。

男の姿が遠くなっていった時、少年は、突然、大声で叫んだ。
「シェーン。カムバック」
その声は海水浴場の大自然の荒野にこだました。

ビーチの出口では、男が真っ青な顔をして、ブルブル震え、立ち竦んでいた。その男は、前回、立て札を顎でしゃくって、ニヤニヤ笑って立ち入り禁止の警告を促したピアスのナンパ男である。
男は、ピアスのナンパ男をギロリとにらみつけた。
「おい。ナンパ野郎」
男は、大声で怒鳴りつけた。
「は、はい」
ナンパ男は直立して、その声は震えていた。
「俺は、逃げも隠れもせんぞ。自首するぞ。ただしネクラ人間だけには手出しをするな」
「は、はい」
ナンパ男は弱々しい声で答えた。
男は肩をいからせてビーチの出口に向かった。

ビーチを出ると、そこには遠くに警察官がズラリと並び、緊張の面持ちで、男に銃を向けて構えていた。
男の心に怒りが込み上げてきた。
男は我慢の限界に達したような面持ちになり、ピストルを構えている警官達に向かって全速力で駆け出した。
「あちゃー」
男は思い切りジャンプした。
「撃てー」
警官署長が叫んだ。
ズガガガガー。
警察官達は、男めがけ、一斉に発砲した。

その事件が、広まり、香港で、その話をモデルにした「ドラゴン怒りの鉄拳」という映画が、つくられた。それは、「サウンド・オブ・ミュージック」を越す、今までの香港映画の記録をことごとく破った大ヒット作となった、ということである。

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お鶴と亀吉 (小説)

2020-07-07 21:32:44 | 小説
お鶴と亀吉

それは植木職人の亀吉が、いつものように博打をして、いつものようにスッカラピンになって、長屋に帰って、寝酒をかねた、やけ酒をガブ飲みし、大いびきをかいて、ぐっすり寝て、大あくびをしながら、おきた翌朝のことだった。
台所でトントンと音がして、カタカタと鍋のなる音がする。亀吉がそっと台所をのぞくと、全く見ず知らずの女が襷をかけて、みそ汁の豆腐をきざんでいる。亀吉はおどろいて戸板からそっと、その女をみた。女はまるで幽霊かと思うほどおっとりしずかな様子で、華奢な手つき、体つき、である。女は亀吉に気づいて、ふり返り、あどけない顔つきで笑って、見ず知らずの亀吉に言った。
「待ってて下さい。今もう朝ごはんができますから」
まるで、あたかも、亀吉を知っているかのような口ぶりである。亀吉はおどろいて、再び寝床に入って蒲団をかぶって、いったいあの女はだれだろうと考えた。いつか飲み屋で出会った女だろうか。いやいやあんな女は知らない。それに、あの女はまるで俺の女房みたいな口の聞き方をする。亀吉は思案をめぐらしたが、どうにも合点がゆかない。亀吉がそんな思案をしているところへ、台所から、
「あなた。ごはんができましたよ。いただきましょう」
と女が声をかけた。亀吉が蒲団をおそるおそるあげると、卓の上に朝御飯の用意ができている。みそ汁から、あたたかい湯気がでている。女は座って静かにほほえんでいる。わけもわからないが、グータラな亀吉には、おもわず久しぶりのうまそうな朝ごはんに、おずおずと、食事をすることにした。
「うまい」
亀吉はパクパク食った。女も静かにたべている。亀吉が女をみると、女はだまってしとやかにほほえむ。喰いながら亀吉が、
「おい。お前はいったい何者だ」
と聞くと、女は、
「何いってるんですか。自分の女房をわすれるなんて」
と笑う。
「で、名前は?」
「鶴ですよ」
と女は答えた。食事がおわって、洗いがおわると、
「では、私は料理屋の仲居の仕事に行ってきます。あなたも博打ばかりしていないで、少しは働いて下さいな」
と言って出かけていった。亀吉はしばし思案にくれたが、もともと、何事もテキトーにすます性格の男。
「まっいいか。夢かもしれないな。これは」
と思って再び蒲団に入って大いびきをかいて、寝てしまった。
だが、その日の昼、同じ長屋の庄助が亀吉のところにとびこんできた。この男は生きた瓦版のような男で、何事もいちはやくかぎつけて、長屋にふれまわるような男である。時々、亀吉と博打で会うことがあって亀吉とは馴染みの男である。
「おい。亀公。けさ、お前の家から、えらい別嬪な女が出てくるのを見たって豆腐屋の弥助が言ってたぞ。いったい誰なんだ。何でも、消え入りそうな幽霊みたいな女だってそうじゃないか」
亀吉は起きて、
「知らん」
といってパタンとねてしまった。庄助は腕を組んでもっともらしく独り言のように、
「これは、お前がグータラなもんだから地獄の閻魔大王がおこって、幽霊をとりつかせてバチをあてたんだ。お前、気をつけないと牡丹灯籠の新三郎みたいになっちまうぞ。ともかく気をつけな」
といって帰って行った。鶴という女は、料理屋の仲居の仕事がおわると夕方帰ってくる。まるで幽霊のようだと、うわさは長屋にまたたく間にひろまった。鶴は夕ごはんをつくる。亀吉も、うまいもんだから食う。
そんな生活が何日かたつうちに亀吉も、女に申しわけないような気がおこってきて、酒もやめて、植木屋の仕事をするようになった。鶴も立ち直ってくれた自分の亭主がうれしい様子である。何やら、二人は、夫婦のような生活をはじめた。鶴という女は、足もとが暗く、足音がしないような歩き方をする。歩いているうちにフッと消えてしまうような感じである。長屋の者達は、生きた瓦版の庄助の、
「あれはきっと幽霊にちちがいない」
というふれこみから、皆、女をおそるおそるの目つきで見た。たまに視線があうと、鶴は微笑を返す。たしかに生気がない。生きている人間のような活気がない。それで長屋の衆は気味悪がって、女をさけるようになった。亀吉は、賭博でかった金で食ってきたような男だったが、怠け者でもキモがすわっている。又、自分に一心につくしているお鶴に、ほだされて、お鶴に情をもつようになっていった。亀吉の、弱々しいお鶴に対する思いは日に日に募っていった。
ある日の晩、ただでさえ生気のないお鶴が、いつも以上に憔悴している。理由を聞くと、村の子供達がいつも自分を幽霊だ、幽霊だ、といって、石をなげつける。それくらいならいいが、街中を歩いている時、城の大目付に目をつけられて、かこってやる。言う事を聞かなければ、お前は幽霊なのだから町奉行にひきわたす、と言われた、という。
「お前さん。わたし、どうしたらいいんだろう」
といってお鶴は涙をポロポロこぼすのであった。亀吉は肩をおとしてシクシク泣くお鶴を抱いて、
「心配するな。もう、仕事はやめろ。俺が働く」
といってなぐさめた。お鶴は嬉しそうに涙をふいて、か弱い表情にかすかな笑みをうかべ、うなずいた。
翌日、亀吉が仕事から帰るとガランとしずまり返っている。お鶴がいない。
「お鶴。お鶴」
といって、亀吉はあたりを探したが、みつからない。長屋のとなりの家の者に聞くと何でも今日、一人でいるお鶴を岡っ引きが町奉行に連れ去っていったという。それ以上は知らないといって戸を閉じた。亀吉は庄助のところへ行って、その様子をきいた。庄助が言うには、身元のしれぬあやしい女、くの一の疑いがあるというのが理由らしい。亀吉はとっさに、これはきっと大目付がお鶴が妾になることを断ったため自分の矜持を傷つけられて、おこったからだと直覚した。庄助は亀吉とお鶴のむつまじい仲をみているうちに、自分が以前、彼女を幽霊だなどといいふらしてすまなかったとわび、今では二人のためなら、どんな協力もおしまない、と言った。亀吉は何とかお鶴を救いださねば、と考えた。庄助は牢番をしている非人とは、わけあって知った仲だから、頼んで、連れ出そうか、と言った。だがそれでは非人にとがめが必ずかかる。夜もおそくなったので亀吉は庄助の家から帰った。燭台に火をともした亀吉は腰を抜かして、へたりおののいた。何とお鶴がしずかに端座してだまってうつむいていたからである。まさしくそのまわりには幽気がただよっている。
「お、お前。いったい、どうやって牢の中から出てきたんだ」
と問うと、お鶴はうつむいたまま、
「私にもわかりませんが、あなたのもとに帰りたいと心のうちに強く思っていましたら、気づくとここにきておりました」
と言う。亀吉はこの時、この女が幽霊にちがいないと確信した。しかし、亀吉にとっては、そんなことはもう、どうでもよかった。
翌日、必ず町奉行から役人が来るにちがいないし、こうなっては幽霊のことは、お寺の和尚に聞くしかないと思い、その夜のうちに二人は村はずれの寺に行った。和尚は、なぜお鶴が成仏できないのか、それは自分ではわからぬ。と言って、お鶴の方に顔を向けた。和尚はお鶴が、なぜ成仏できないか、もしかすると自分でも知っているのではないかと鶴に聞いた。和尚のあたたかい目に、お鶴はとうとう耐えられなくなり、わっと泣きして、身の上を語りだした。それによるとお鶴の身の上とはこのようなことである。彼女は子供の頃から体が弱く、村のお医者の言うところによると、体の関節が、そして、腎の臓器が、年とともにおかされていく、不治の病で、二十までに死ぬ病だという。日光にあたるとよくないので、ほとんど家の中ですごしてきたという。そして十七で死んだという。しかし、自分は人並みの幸せ、を、経験したかった。このままでは死んでも死にきれない。それが成仏できなかった理由だと思う、と語った。幽霊がとりつく、と、とりつかれた人の命はだんだん減っていって、最後には死んでしまう。といって、お鶴は申し訳なさそうに亀吉をみた。
「亀吉さん。ごめんなさい」
といってお鶴は涙を流した。
「それで良い人にとりついては申し訳ないので亀吉さんを選びました。はじめは少し、亀吉さんとすごして、おどろかせて、怠けぐせを直してから成仏しようと思っていました。それが亀吉さんのためにもなると不遜にも思いました。でも、亀吉さんは思った以上にいい人で、私を守り、大事にして下さいました。又、私も亀吉さんが、だんだん、そして今ではかけがえのない人になっていって、亀吉さんとの生活が楽しく、なかなか成仏できなくなっていってしまいました」
お鶴は亀吉に力ない視線を向けた。
「亀吉さん。ゆるして下さい。私とすごした日々の分、あなたの寿命が失われてしまっていたのです。私はあなたに好意を寄せるような振りをして、あなたの命を少しづつ、うばっていたのです」
亀吉は一笑した。
「そうだったのか。よく言ってくれた。ありがとう。なあに。気にすることなど全くない。オレのような怠け者が生きていたところで何にもならん。それより、お前が、きてくれたおかげで、どんなに生活にはりがでたか。生きがいがもてたか。今となっては、お前はオレにとってかけがえのない大切な女房だ。そうだったのか。お前が、だんだん、なぜ元気がなくなっていったのか、そのわけがわかった。お前は悪い心の持ち主じゃない。もし本当に悪い心だったら、オレをだましつづけただろう。今、すべて正直に語ってくれたことで、もう帳消しだ。オレは命がなくなるまでお前と生きる」
というと、お鶴は目に涙をうかべ、亀吉に泣きついた。二人はその晩、寺にとまった。
翌日の朝、二人が、この村を出て、旅にでようということになり、寺を出た時だった。いきなり、しげみにひそんでいいた侍があらわれ、お鶴に、
「おのれ。人身にとりつく悪霊め。成敗してくれる」
というや、お鶴に斬りかろうとした。この男、名を清十郎という浪人で、金とひきかえに何でもやる評判の悪い浪人である。大目付の命令で、お鶴を殺すことをひきうけたのだろう。お鶴は目をつぶってすくんでしまった。
「お鶴」
亀吉はとっさにお鶴の名をさけんで、お鶴をかばおうとした。清十郎は、悪霊をかばいだてするやつもゆるさん、といって、亀吉をメッタ斬りにした。亀吉の背から血がふきだした。亀吉がたおれると、お鶴は、
「あんた」
といって泣いて断末魔の亀吉に抱きついた。清十郎は、一息ついたあと、
「おのれ。人身にとりつく悪霊め。成敗してくれる」
と叫んで、お鶴に斬りかかった。だが、もともと幽霊のお鶴に実体はない。刀は空を切るだけである。二度、三度きりかかってもダメだとわかると、清十郎はとうとうあきらめて、急ぎ足に去っていった。断末魔の亀吉が、
「お鶴」
と一声いって息をひきとった時、お鶴は水蒸気のようにパッと消えてなくなった。亀吉のいなくなった世にはもう未練がなくなり、成仏できたのであろう。和尚は二人の葬式をして、「亀吉、鶴の墓」として寺の墓地に墓をたてた。清十郎はそののち、やくざと賭博でもめごとをして、ケンカとなり、殺されたということである。



平成22年11月8日擱筆

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羅生門 (の二次創作小説)

2020-07-07 19:38:21 | 小説
羅生門

ある日の暮方の事である。
一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。下人は、永年、使われていた主人から、解雇されて、行くあてが無く途方に暮れていたのである。
広い門の下には、この男のほかに誰もいない。何故かと云うと、この二三年、京都では、地震とか辻風とか火事とか饑饉とか云う災いがつづいて起こり、洛中はさびれ、羅生門もボロボロにさびれてしまっていた。するとその荒れ果てたのをよい事にして、羅生門には、狐狸が棲すみ、盗人が棲み、とうとうしまいには、引取り手のない死人を、この門へ持って来て、棄てて行くと云う習慣さえ出来てしまった。そこで、日の目が見えなくなると、誰でも気味を悪がって、この羅生門には近づかなくなってしまったのである。

下人は、特別に善人でもなければ悪人でもない普通の性格の人間である。だが今までに悪い事をしたことはない。しかし、主人から、解雇された今、生きていくには、盗人になるしかない。そうしなければ飢死してしまうのである。それで、生きていくためには盗人になってもいいものだろうかと、悩んでいたのである。そう悩むくらいだから、下人は、知性的で良心を持った、いい人間といっていいだろう。

下人は、大きなくしゃみをして大儀そうに立上った。夕冷えのする京都は、もう火桶が欲しいほどの寒さである。
下人は、そこでともかくも、今日は羅生門の上の楼で夜を明かそうと思った。幸い門の上の楼へ上る、幅の広い梯子がある。上なら、人がいたにしても、どうせ死人ばかりである。下人はそこで、腰にさげた太刀が鞘走らないように気をつけながら、その梯子段を登っていった。そうして頸を出来るだけ、前へ出して、恐る恐る、楼の内を覗いて見た。
見ると、楼の内には、噂に聞いた通り、幾つかの死骸が、無造作に棄ててある。下人は、それらの死骸の腐爛した臭気に思わず、鼻を掩おおった
さらに驚いたことに、その死骸の中に一人の老婆が蹲まっていた。檜皮色の着物を着た、背の低い、痩せた、白髪頭の、猿のような老婆である。
老婆は、松の木片を、床板の間に挿して、死骸の頭の長い髪の毛を一本ずつ抜いていた。
下人には、何故老婆が死人の髪の毛を抜くのかわからなかった。
そこで、下人は、両足に力を入れて、いきなり、梯子から上へ飛び上った。そうして太刀に手をかけながら、大股に老婆の前へ歩みよった。老婆が驚いたのは云うまでもない。
老婆は、一目下人を見ると、まるで弩にでも弾はじかれたように、飛び上った。
「おのれ、どこへ行く」
下人は、老婆が死骸につまずきながら、慌てふためいて逃げようとする行手を塞いで、こう罵しった。
「何をしていた。云え。云わぬと、殺すぞ」
下人は、老婆をつき放すと、いきなり、太刀を老婆の眼の前へつきつけた。老婆は、恐怖に震えながら、か細い声で、こう言った。
「この髪を抜いてな、カツラにしようと思うたのじゃ」
老婆は、片手に、まだ死骸の頭から奪った長い抜け毛を持ったなり、蟇のつぶやくような声で、口ごもりながら、こんな事を云った。
下人は、老婆の答が存外、平凡なのに失望した。
「成程な、死人の髪の毛を抜くと云う事は、何ぼう悪い事かも知れぬ。じゃが、ここにいる死人どもは、皆、そのくらいな事を、されてもいい人間ばかりだぞよ。現在、わしが今、髪を抜いた女などはな、蛇を四寸ばかりずつに切って干したのを、干魚だと云うて、太刀帯の陣へ売りに往んだわ。疫病にかかって死ななんだら、今でも売りに往んでいた事であろう。それもよ、この女の売る干魚は、味がよいと云うて、太刀帯どもが、欠かさず菜料に買っていたそうな。わしは、この女のした事が悪いとは思うていぬ。せねば、饑死をするのじゃて、仕方がなくした事であろう。されば、今また、わしのしていた事も悪い事とは思わぬぞよ。これとてもやはりせねば、饑死をするじゃて、仕方がなくする事じゃわいの。じゃて、その仕方がない事を、よく知っていたこの女は、大方わしのする事も大目に見てくれるであろう」
老婆は、大体こんな意味の事を云った。
下人は、太刀を鞘におさめて、その太刀の柄を左の手でおさえながら、冷然として、この話を聞いていた。しかし、これを聞いている中に、もはや下人は、盗人になるか、どうか、迷う気持ちは全くなくなっていた。
「そうか」
老婆の話が完おわると、下人は嘲けるような声で念を押した。そうして、一足前へ出ると、老婆の襟上をつかみながら、噛みつくようにこう云った。
「では、己おれが引剥ぎをしようと恨むまいな。己もそうしなければ、饑死をする身なのだ」
そう言って下人は、すばやく、老婆の着物を剥ぎとろうとした。

   二 (ここから創作)

その時である。
「待った」
と老婆は下人を制した。
「うぬの理屈はわかっとる。わしは生きるために、死体から髪の毛を抜いて、それで、糊口を凌いでいる。つまり、自分が生きるために悪いことをしている。だから、うぬも、その理屈で、生きるためには、悪いことをしても、いい、と言うんじゃな」
老婆はそう言った。
「そうじゃ。その通りじゃ」
下人は、老婆に詰め寄るように怒鳴りつけた。
「しかし、ちょっと考えてみんしゃれ。確かに、わしは自分が生きるために、悪いことをしている。しかし、わしのしている悪い事とは、死人から髪の毛を抜くことじゃ。わしは、自分を正当化するつもりはないが、すでに死んでいる人間から髪を抜くことが、はたして、そんなに悪いことじゃろうか?一方、わしの着物は一張羅じゃ。これなしには着る物が無い。餓死するかもしれん。うぬは、若く体力もある。うぬは、ちゃんと着物を着ている。わしから着物を奪わんでも、生きていけるはずじゃ。それより、うぬは、わしの自己正当化が気に食わんから、わしから着物を奪おうと、思っとるのじゃろ」
こう老婆は居丈高に言った。
「そうじゃ。その通りじゃ」
下人は自信に満ちた口調で、こう罵った。
しかし老婆は淡々と話し続けた。
「わしは自己正当化するつもりはない。しかし、罪には、軽重というものがあるんじゃなかいかの?強盗殺人でも、立ちションベンでも、確かに罪には、かわりない。しかし、その二つの罪を同等に、扱っていいものかな?」
下人は、うぐっと咽喉を詰まらせた。
「強盗殺人は重い罪じゃ。しかし立ちションベンは軽犯罪じゃ。同じ罪という言葉で、ひっくくって、二つを同等に扱ってしまっては、世の中の法体系が、ひいては、世の秩序が、全くおかしくなってしまうんじゃなかろうかな?」
下人は口惜しそうな表情をしながらも言い返せなかった。
老婆は嵩にかかったように、さらに続けて言った。
「うぬは・・・。生きるためには悪い事をしてもいい。うぬは、悪い事をしなくては生きていけない。それゆえ、うぬは、わしの着物を剥いでもいい。という三段論法で、見事に論理的に詰めたように思うとるのじゃろう。しかし詰めが甘いわ」
老婆は自信に満ちた口調で言った。
「どう、詰めが甘いんじゃ」
下人は老婆に詰め寄った。
「よう考えてみんしゃれ。人から物を奪うというても、死人から盗るのと、生き人から盗るのとでは大違いじゃ。死人から成長ホルモンを取り出すため脳下垂体を盗ることは、医療の世界では常識じゃ。親族の了解など得ておらんわ。臓器移植にしても、脳死と確実にわかった時じゃ。死人から、臓器を盗って、その臓器を難病の患者に移植して、その患者の命が助かったなら、これほどの功徳は、ないではないか。ぬしは、そうは思わんか?わしも、死んだら自分の髪の毛をカツラとして誰かに、抜いて貰いたいと思うとる。髪の毛どころか、わしは臓移植提供者のドナーに登録しておるがな。死んだ後なら、何を盗られようと、何も困ることはないからの。わしは構わんと思うとる。ぬしは、わしの言うことをどう思う」
老婆に論破されて、下人は、すごすごと羅生門の梯子を降りていった。もう雨は小降りになっていて雨宿りする必要は、ないほどになっていた。下人は無言で羅生門から離れていった。下人のゆくえは誰も知らない。



平成25年5月14日(火)擱筆

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少年と或る女 (小説)(上)

2020-07-07 18:34:54 | 小説
少年と或る女

夏休みが終わり、ちょうど二学期が始まったばかりの九月上旬のことである。純は中学一年生である。ある日の放課後。純は、学校を終えて、家に帰るところだった。学校と純の家の間は、全く人家がなく、人もほとんど通らない、寂しい野道だった。竹薮が鬱蒼と茂っている。その道が学校へ行くのに一番、近かったからである。純は、トボトボと狭い曲がりくねった野道を歩いていた。家と学校の間には、寂れた廃屋があった。廃屋の近くを通り過ぎようとすると、中から、人の声が聞こえてきた。何事かと思って、純は、そっと気づかれないよう、身を潜めて中を覗いた。純は息を呑んだ。
裸の女を二人の男が、取り押さえ、女の手を後ろ手に縛り上げていた。
「や、やめてー」
女は叫んだ。だが男二人は、聞く耳を持たない。
「おい。喋れないよう口にガムテープを貼れ」
男の一人が言った。
「おう」
と言って、もう一人の男が、女の口にガムテープを貼った。女はモゴモゴと口を動かそうとしたが、声は出せなかった。男は後ろ手に縛られた裸の女を廃屋の柱の所まで連れて行くと、後ろ手に縛り上げた縄の縄尻を廃屋の柱にカッチリと縛りつけた。
「よし。これで、大丈夫だ」
男の一人が言った。
「早く、金を引きおろそうぜ」
「おう」
二人の男たちは、なにか焦っているような感じだった。
「ふふ。すぐに戻ってくるからな。戻ってきたら、たっぷり可愛がってやるよ。もし、キャッシュカードの暗証番号が、デタラメだったら、痛い目にあわすからな」
男の一人が不敵な口調で女に言った。
「さあ。早く行こうぜ」
男の一人が言った。
「おう」
もう一人の男が相槌を打った。男二人は、丸裸で、ガムテープを口に貼られ、柱に縛りつけられている女をあとに、急いで廃屋を出た。一人の男が、廃屋の後ろにとめてあったオートバイを出してきた。男はフルフェイスのヘルメットを被った。男はオートバイに跨ると、エンジンをかけた。もう一人の男はフルフェイスのヘルメットを被ると、後部座席に乗った。前の男は、エンジンを駆けた。エンジンは勢いよく始動した。オートバイは、猛スピートで走り出した。純は、緊張してドキドキしながら二人に気づかれないよう、廃屋の陰に隠れて、オートバイの行方を見守った。オートバイは、どんどん遠くに去っていく。
オートバイが角を曲がって、完全に見えなくなるのを確認してから、純は急いで小屋に入った。女は純を見ると、一瞬たじろいだ。
「大丈夫ですか?」
純は、急いで、女に駆け寄り、口に貼られたガムテープをはがした。女はプハーと息を吐いた。女はものすごく綺麗で、整った美しい顔に、アクセントのように右頬の真ん中に小さな黒子があった。
「あ、ありがとう。ボク。助かったわ」
女は、ほっと安堵したように言った。
「まってて下さい。すぐ縄を解きます」
そう言って純は、女の後ろ手を縄を解いた。カッチリと縛られていて、なかなか解きづらかったが、何とか解けた。
「ありがとう。助かったわ」
手が自由になった女は、純に礼を言った。
「ボク。携帯電話、もってる?」
女が焦った様子で聞いた。
「はい。持ってます」
「貸してくれない」
「はい」
純はカバンから、携帯電話を取り出した。そして女に渡した。女は、急いで、104に電話した。
「もしもし。みずほ銀行サービスセンターの電話場号を教えて下さい」
女は、すぐに純に振り向いた。
「ボク。ノートと鉛筆もっていない?」
「はい。持ってます」
純は答えて、すぐに、カバンから、ノートと鉛筆を取り出した。
「ありがとう」
女は礼を言って、104に電話した。
「もしもし。みずほ銀行サービスセンターの電話番号を教えて下さい」
「はい。0120―×××―××××です」
すぐにオペレーターが答えた。
女は携帯を耳に当てたまま、ノートに、みずほ銀行サービスセンターの電話番号を書いた。女は、電話番号を書き終えると、急いで携帯を切った。そして、ノートを見ながら、みずほ銀行サービスセンターに電話した。
「もしもし。私は、佐々木京子と申します。キャッシュカードを盗まれてしまいまして、暗証番号を知られてしまいました。すぐに、利用停止にしてもらえないでしょうか」
純は少し女に顔を寄せた。
「はい。わかりました。名前と支店名と口座番号を教えて下さい」
電話の相手が言った。
「名前は佐々木京子です。銀行は××支店で、口座番号は、××××です」
二、三分後、
「はい。了解しました。キャッシュカードは利用停止にしました」
電話の相手がそう言った。
「よかったわー。これなら、まずまだ降ろされてないわ」
女はほっと一安心したように言った。
「一体、どういうことなんですか?」
純が女に聞いた。
「あとで話すわ。それより君。名前は?」
「岡田純です」
「私は佐々木京子。助けてくれてありがとう」
京子はつづけて言った。
「ねえ。純君。ここから最寄りのコンビニに車で何分くらいで行ける?」
「そうですね。7分くらいの所にコンビニがあります」
「そう」
京子は何かを考えているようだった。
「純君。ちょっと協力してくれない。勇気がいるけど」
「ええ。何でもやります」
「ありがとう」
そう言うと京子という女は、純に、色々と計画を話した。
「彼らは、すぐに戻ってくるわ。近くのコンビニでキャッシュカードで金をおろしたら、今度はたっぷり私を弄ぶって言っていたから。それでね、彼らに見つからないよう、小屋の外に隠れてオートバイのナンバーをメモして、メールで知人に、送っちゃって欲しいの。キーをつけたままだったら、抜き取っちゃって欲しいの。そして、彼らのスキをついて飛び出して、彼らの顔も撮っちゃって、メールに添付して、すぐに知人に送って欲しいの。私、出来るだけ時間をかせぐから」
純は、
「わかりました」
と言って、うなずいた。
「じゃあ、時間がないわ。お願い」
そう言って京子は柱の前に座った。そして両手を背中に回して手首を重ね合わせた。
「さあ。手首を縄で巻いて」
言われて純は柱につながっている縄で京子の手首をグルグル巻いた。それを京子はグッと握った。あたかも後ろ手に縛られたように見える。
「さあ。純君。ガムテープを私の口に貼って」
言われて純は、ガムテープを京子の口に貼った。そして、急いで小屋の外に出て、木の陰に身を潜めた。その時、ちょうど、さっきのオートバイがやって来た。ちょうどギリギリだった。オートバイの男二人は、小屋の後ろに、オートバイをとめると、急いで、小屋に入った。二人は、後ろ手に縛られている京子を見ると、ほっとしたような表情で、裸で縛られている京子の前に仁王立ちになった。そして京子に近づくと、ベリッと京子の口のガムテープをはがした。
「おい。キャッシュカードの暗証番号どころか、キャッシュカードそのものが、使えないぞ。一体、どういうことなんだ」
男が京子に問い詰めた。だが京子は固く口を閉めて黙っている。
「まさか、使えないキャッシュカードを財布に入れているはずはないし・・・。一体、どういうことなんだ」
もう一人の男が問い詰めた。だが京子は答えない。
「答えないと痛い目にあわすぞ」
男の一人が威嚇的な口調で言った。
「おい。どういうことなのか話せ。可愛がってやりたいと思ってるんだぞ。痛い目にはあいたくないだろう」
男の一人が言った。だが京子は黙っている。
「それじゃあ仕方がないな」
そう言って、男たちは、京子の鼻をつまんだり、頬っぺたをつねったり、耳を引っ張ったりし出した。
「い、痛いー。やめてー」
京子は叫んだ。
「ふふふ。時間の問題で喋ることになるんだ。早く喋っちまいな」
そう言って、男の一人が、京子の足首に片足で乗り、柱をつかんでバランスをとり、全体重を乗せて、ユッサ、ユッサと体を揺すり出した。
華奢な女の足首に男一人の全体重がかかった。
「ああー。い、痛いー」
京子は、悲鳴を上げた。
「ほら。早く喋りな」
もう一人の男は、座って、京子の恥毛をプチッと引き抜き出した。
男達は、京子の苦痛を楽しむように、笑いながらジワジワと京子を責めた。

その時。純がパッと男達の前に躍り出た。そして、カシャ、カシャッっと何枚も携帯で写真を撮った。そして、急いで、カチカチと携帯を操作した。
「あっ」
男たちは思わず声を出した。男たちは、あっけにとられている。
「な、何をしているんだ。やめろ」
そう言って、男の一人が純から携帯を取り上げた。その時、後ろ手に縛られているはずの京子が、サッと立ち上がった。そして、急いで床に散らかっているパンティーをとって履き、ブラジャーもつけた。そして、そして純の後ろに回って、スカートを履き、ブラウスを着た。女は純の肩に手を置いた。
「ふふ。あなたたち、もう観念した方がいいわよ」
京子は勝ち誇ったように言った。
「一体、何をしたんだ」
男が純の襟首をつかんで、問い詰めた。
「純君。二人の写真、送った?」
京子が純に聞いた。
「うん」
純が答えた。
「おい。どういうことなんだ。何をしたんだ」
「あのね。あなたたちが、私を縛って、去ろうとした、ちょうど、その時に、この子が小屋に通りかかって私の叫び声を聞いたの。それで、この子の携帯で、すぐに、キャシュカードが使えないように銀行に連絡したの。あなたたちは、お金を引き出した後に、戻ってきて、私を弄ぶ予定だったでしょ。それで、この子に、協力してもらったの」
「クソッ。そういうことだったのか」
男の一人が口惜しそうに言った。
「ねえ。純君。キーはどうだった?」
「キーはついたままでした」
今度は純が話し出した。
「オートバイのキーは、ハンドルロックして、抜きとり、遠くに放り投げました。そして、ナンバーをメモして、「犯人」と書いて、携帯に登録してある全ての人の所に送信しました。そして、あなたたちの顔を写真に撮って、それも、今メールで送りました」
京子は、ふふふ、と笑った。
「さあ。どうしますか?陸運局に電話すれば、あなた方の住所と氏名は、わかりますよ。顔写真もメールで送信しちゃいましたから、もう遅いですよ。私たちを殺してしまいますか?でも、オートバイのナンバーと、あなた方の顔写真が、この子の知人達に送られちゃいましたから、私たちを殺しても、すぐ警察につかまってしまいますよ」
京子は強気に言った。
「ま、参ったよ。悪かった。どうか、警察には連絡しないでくれ」
男たちは土下座して謝った。
「じゃあ、私の財布、返して下さい」
男は京子に財布を返した。
「ふふ。残念だったわね。私から、お金をとり、私を弄ぶ両方の予定が出来なくなっちゃって」
京子は余裕の口調で言った。
「純君。キーは、どこら辺に投げた?」
京子が聞いた。
「さあ。わかりません。思い切り投げましたから」
純は言った。
「あなた達。これからどうします?」
京子が聞いた。
「キーを探してみます。見つからなかったらJAFに連絡して来てもらいます」
男は、情けなさそうな口調で言った。
「おにいさん」
純が男に向かって言った。
「なに?」
「本当はキーは放り投げていません。隠れていた木の根元に隠してあります。ちょっと、待ってて下さい」
そう言って純は小屋を出た。そしてキーを持って、すぐに戻ってきた。
「はい。おにいさん」
そう言って純は男にキーをわたした。
「ありがとう」
男はペコペコと頭を下げた。
「これに懲りて、もう悪いことはしないことね」
京子が言った。男二人は、情けなさそうに、オートバイに乗って、エンジンを駆け、走り去った。あとには純と京子が残された。

   ☆   ☆   ☆

京子は純を見た。
「ボク。ありがとう。君が通りかかってくれなかったら、私、もう少しで一文無しにされて、彼らに犯されまくられちゃうところだったわ。銀行には、私の全財産500万円が、入っていたの。もしかしたら、団鬼六のSM小説の悲劇のヒロインのように、彼らに檻の中で死ぬまで監禁される、地獄の人生になっちゃたかもしれないわ。純君は、私の命の恩人だわ」
そう言って京子は、純の手をギュッと握った。
「い、いえ」
純は赤くなって小さな声で答えた。だが純は引け目を感じていたのである。本来なら京子が裸にされて、縛られているのを見た時に、すぐに飛び出して、やめろ、と言うべきだと思ってたのに、それをする勇気がなく、男二人が、去ってから小屋に入って行った不甲斐ない自分を。確かに、すぐに飛び出せば、彼らに捕まってしまうだけで、彼らに気づかれないよう、様子を見て携帯で、警察に通報するのが、冷静な対応ではあるが。理屈ではなく、男二人に裸にされて、縛られている女を、黙って見ていた自分に、感情的に不甲斐なさを感じていたのである。だが、それとは裏腹に、男二人に裸にされて、縛られている京子に、純は興奮していたのも事実であった。純は、そんな刺激の強い光景を見るのは生まれて初めてだった。純は先天的に、縛られた女に、激しく興奮してしまう性癖だったのである。
「純君。家は近い?」
「ええ」
「じゃあ、行っていいかしら。純君のお父さんやお母さんにも、お礼を言いたいし・・・」
「あ、ありがとうございます。家は近いです」
「じゃあ、行こう」
そう言って、京子は純は小屋を出て、手をつなぎながら純の家に向かった。京子の手の温もりが何ともいえず心地よかった。15分くらいして純の家についた。純は鍵をとり出して玄関を開けた。
「どうぞ」
純は恥ずかしそうに京子に言った。
「お邪魔します」
京子は元気よく答えて純の家に入った。家には誰もいない。
「お茶を入れますから、座って待っていて下さい」
そう言って純は台所に行った。京子は居間のソファーに座った。純は、ポットとティーパックと、カップとソーサーとお菓子を盆に入れて、すぐにもどってきた。
「はい。どうぞ」
そう言って純はソファーに座って、紅茶と菓子を京子にすすめた。
「ありがとう」
京子は礼を言って紅茶をとって啜った。京子は家の中を見回した。
「お父さんは、仕事だよね?」
「ええ」
「お母さんは。買い物かな?」
「い、いえ」
純は、あらたまって、へどもどと言った。
「僕には母はいません。僕が二歳の時、死んでしまったんです」
「そうだったの。嫌なこと聞いちゃってごめんね」
「い、いえ。僕の方こそ、家に誰もいないと知っていながら、言わずに京子さんを連れてきてしまって、ごめんなさい」
「いいわよ。そんなこと」
「あ、あの。京子さん」
「なあに?」
「あの。僕、京子さんにお詫びしなくちゃならないんです」
「なにを?純君は私の命の恩人だというのに」
「い、いえ。僕、京子さんが裸にされて縛られるのを見て興奮してしまったんです。こともあろうに京子さんの命がかかっている時に・・・」
「ふふ。いいわよ。気にしてないわ。男の子はみんなエッチだもの」
純は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「純君。助けてもらったお礼に何かしたいわ」
「い、いいです。家に誰もいないと知りながら、京子さんを家に連れてきてしまったんですから。それだけでもう十分です」
純はもうしわけなさそうに言った。
「でも私の気がすまないわ。純君は命の恩人だもの。お願い。お礼をさせて」
京子の強気の言葉に負けて、純は京子のお礼を、素直に受けようと思った。純は気が小さいのである。純は、しばし考え込んだ。少しして、パッと素晴らしい考えが浮かんだ。純はそれを思いついたことに嬉しくなった。
「京子さん」
「なあに。何か、お礼、思いついた?」
「ええ」
純は頬を赤くして言った。
「それは、なあに?お金だったら、100万円までなら出すわ」
「い、いえ。お金じゃありません」
「じゃあ、なあに?」
「あ、あの。一種に大磯ロングビーチに行って貰えないでしょうか。それがお願いです」
純は顔を赤くして言った。京子はニコッと笑った。
「いいわ。いつがいい?」
「いつでもいいです」
「じゃあ、明日は日曜だから、明日でいいかしら?」
「ええ」
大磯ロングビーチは9月の二週目の日曜日までやっている。ちょうどギリギリである。
「純君。私のこと、人に言わないでね。恥ずかしいことだから人に知られたくないの」
「ええ。誰にも言いませんとも」
京子は時計を見た。
「純君。ごめんね。銀行でキャッシュカードを使えるように手続きしなくちゃならないわ。私、銀行に行かなくっちゃ」
京子が言った。
「わかりました。時間をとらせてしまってすみません」
「じゃあ、明日の朝、9時に大磯駅で会いましょう。それでいい?」
「ええ」
京子は立ち上がろうとした。
「あ、あの。京子さん」
純はあわてて言った。
「なあに?」
「あ、あの。サインして貰えないでしょうか?」
そう言って純はカバンから手帳を取り出して開いた。京子は、ふふふ、と声を出して笑った。
「明日、たっぷり会えるじゃない」
「で、でも・・・。お願いです」
純は強く要求した。純は女と付き合ったことがないから、女の心理がわからないのである。学校でも女生徒と話したことなど一度もない。内気で無口なので女の友達など一人もいない。京子は、助かったお礼のために、今は純に親切にしてくれている。純は京子を熱烈に好いているが、しかし京子が本心で純をどのように思っているのかは、全くわからない。純は顔にも、そんなに自信がない。もしかすると、今日、帰ってから、気が変わってしまって、子供の付き合いなど面倒くさいと思って、明日は来なくなって、もう会えなくなるかもしれないと、咄嗟に、おそれを感じたのである。京子は、ふふふ、と笑いながら、差し出された純の手帳にサラサラッとサインした。字はちょっと崩れていて、いかにもサインらしかった。
「あ、ありがとうございます」
純は深々と頭を下げた。憧れの女優のサインを貰ったような最高に心地いい気分だった。「じゃあ、明日の9時に大磯駅でね。純君」
そう言って京子は純の家を出た。

   ☆   ☆   ☆

京子が帰った後、純はしばらく、最高の快感の余韻に浸っていた。しかし、しばしして、机に向かって勉強を始めた。純は勉強熱心で、将来は東大文科Ⅰ類に入ることを目標としていた。だが明日、京子のビキニ姿を見られると思うと興奮してなかなか集中できなかった。夕方になって、父親から、メールが来た。
「今日も遅くなる。夕食はコンビニ弁当で我慢してくれ。父」
と書いてあった。いつものことなので純は慣れている。純は自転車で最寄りのコンビニに行き、弁当を買った。そして家に持って帰って一人で食べた。そして風呂に入って、パジャマに着替えた。明日、うんと楽しむため、早めにベッドに乗って布団をかぶった。
ちょうどその時、父親が帰ってきた。純は階下に降りた。
「お帰りなさい」
純が言った。
「ただいま」
父親が言った。
純は挨拶だけすると、またすぐに部屋に戻って、ベッドに寝て、布団をかぶった。

純は、運動が苦手で嫌いだった。体力(特に持久力)が無いので、サッカーとか、バスケットとか集団のスポーツは、全然、ダメだった。4キロのランニングもいつもビリだった。しかし、純は水泳だけは好きだった。ずっと以前に、手塚治虫の「海のトリトン」を読んで、海のロマンスに憧れてしまったのである。もちろん、それだけではない。夏という太陽が照りつける季節、そして夏の海に、そして夏の無限の青空に、純は激しい官能を感じていたのである。それは誰でも、感じることであろうが、純の場合は特別、それが強かった。純は、体が弱く、アレルギー体質で、冷え性で、血行が悪く、冬は純にとって、地獄の辛い季節だった。以前、一度、父親にスキーに連れて行ってもらったこともあるが、雪山は純を魅さなかった。スキーで多少、滑れるようになっても、面白いとは思わなかった。スキーは高い位置から、低い位置へと、一方向にしか進められない。そして、滑り終わったら、おしまいである。それが純には面白くなかった。さらにスキーは位置エネルギーを利用しているのも、嫌な理由だった。人は誰しも、鳥になって、大空を飛びたいという願望をもったことがあるだろう。しかし純は飛行機に乗りたいとも、飛行機を操縦したいとも思わなかった。飛行機にはエンジンがついているからである。エンジンなしで自力で空を飛びたいのである。その点、ハングクライダーは、上昇気流という自然のエネルギーを利用してはいるが、エンジンなしで空を飛べるという点で純は、一度、ハンググライダーを操縦してみたいとも思っていた。鳥になって空を飛びたい、と思うのと同様、魚になって、大海原をどこどこまでも泳げるようになりたいと思っていた。これは鳥になるのとは違って、努力すれば、ある程度は実現可能なことである。実際、島から岸へ、60kmもの距離を15時間かけて、泳ぎきる遠泳の出来る人もいるのである。魚になりたいという願望のため、水の中でも自由に泳げるようになりたい、とも純は思っていた。魚は海面の上を泳いだりはしない。水の中を泳ぐのが魚である。水の中を泳ぐといえば、スキューバダイビングやスキンダイビングなどがある。しかし、純は、スキューバダイビングには全然、魅力を感じなかった。酸素ボンベという道具を使わないで、水の中を泳ぎたいのである。なら、スキンダイビングはどうかといえば、これは多少は魅力を感じたが、やはり、それほど、やってみたいとは思わなかった。スキンダイビングもシュノーケルとフィンという道具を使っているからである。純が身につけたいと思っていたのは、人工的な道具を使わない、素潜りであった。しかし、これも、あまり純を魅さなかった。素潜りでは、どう頑張っても、呼吸を止めていられる時間は、一分間が限界だった。たった一分間しか、水中で泳げないのでは、面白くないからである。
純は、水中の背泳ぎのバサロ泳法には魅力を感じていた。そのように、色々と願望があったが、現実には純の泳力は、理想とする目標とは、ほど遠く、50mをクロールで泳ぐのが精一杯だった。平泳ぎなら、50m以上、泳げたが、純にとっては、水泳といえばクロールだけだった。平泳ぎなんて、カエルみたいで格好良くないと純は思っていた。背泳ぎも魅力を感じなかった。仰向けで泳ぐ魚などいないからである。バタフライは、バタバタと激しい泳ぎ方で、これも魅力を感じなかった。というより、一度、バタフライで泳いでみようとしたことがあったが、全く泳げなかった。やはり魚になれる感覚を味わえるのは、クロールだけだと思っていた。水の上を泳ぐという点では、魚ではないという矛盾はあったが、感覚としては違和感がなかった。しかし、純が夏の海に魅せられるのには、水泳が上手くなりたいという願望の外にも大きなものがあった。それは海水浴場に来るビキニ姿の女たちである。母親を知らずに育った純は、女に餓えていた。一度でいいから、ビキニ姿の女性と海水浴場に行きたいと、純は熱烈に思っていたのである。海は、生物、生命の母親であり、女の子宮も生命の源である。現実の嫌いな純にとっては、夏の海と、ビキニ姿の女は、甘えたい、そこに戻りたい、という欲求をかきたてるという点で、共通しているものだった。それらは、二つ一緒になって、激しく純を魅了した。純は夏は、熱心に近くのプールへ行って水泳の練習をした。海には自転車で30分で行けた。しかし純は海水浴場には、どうしても入れなかった。海水浴場に来る客は、男も女も、みんな友達と一緒で、一人だけで海の家に入ったら、暗い性格の少年と思われるのが、怖かったのである。それでも純のビキニ姿の女に憧れる想いは強かった。それで、一度、大磯ロングビーチに行ってみた。大磯ロングビーチのポスターは、毎年、綺麗なビキニ姿の女の人だった。湘南で最大級のリゾートプールである。市営プールと違って、ビキニ姿の女の人も、来ていそうな雰囲気である。そして海の家に入るよりは、まだ入りやすい。そう思って純は、一度、勇気を出して大磯ロングビーチに行ってみたのである。行って吃驚した。予想以上に、女は海水浴場、同様、ほとんど全員、セクシーなビキニ姿である。純は、激しくそそり立った、おちんちんをなだめるのに苦労した。しかし、来場客は、恋人とか、親子とか、友達とか、複数人で来ていて、一人で来ている客は一人もいなかった。純は、監視員や、客たちに、一人ぼっちで来ている友達のいない、暗い内気な少年と思われるのが、死ぬほど怖かった。それで、一度、行っただけで、それ以後は、行くことが出来なかった。それが明日は京子という、絶世の美女と行けるのである。そう思うと、純は、興奮してなかなか寝つけなかった。

   ☆   ☆   ☆

日曜日になった。
空は雲一つない晴天である。吸い込まれそうな無限の青空の中で、早朝の太陽が今日も人間をいじめつけるように、激しく照りつけていた。純は、海水パンツや、タオルなどをスポーツバッグに入れて、家を出た。そして東海道線に乗った。大磯駅に着いたのは、8時半だった。大磯ロングビーチは朝9時からである。大磯駅から、ロングビーチへの直通バスが一時間に三本、出ていた。電車は15分に一本の割合でやってくる。電車が来るたびに純は緊張した。今度ので、京子は来るか。三回待ったが、京子はやってこなかった。純はだんだん不安を感じはじめた。もしかすると京子は来てくれないかもしれない、のではと不安になりだした。

京子は、助けてもらったお礼として、今日、大磯ロングビーチに来てくれると約束してくれた。純は京子を熱烈に好いているが、しかし京子が本心で純をどのように思っているのかは、全くわからない。もしかすると、昨日、帰ってから、気が変わってしまって、子供の付き合いなど面倒くさいと思って、今日は来てくれないかもしれないと、咄嗟に、昨日、感じたおそれを再び感じ出したのである。

四回目の下りの電車が来た。
「どうか京子が来てくれますように」
と純は祈った。電車のドアが開いた。
「純君―」
そう言いながら、薄いブラウスにフレアースカートの京子が手を振って、満面の笑顔で、小走りに走ってきた。純は、ほっとした。と同時に最高に嬉しくなった。純も、
「京子さーん」
と手を振った。
「純君。待った?」
京子が聞いた。
「いいえ。前の電車で着いたばかりです」
純は答えた。
「そう。それはよかったわ」
京子は嬉しそうに言った。二人は大磯駅の改札を出て、ロングビーチ行きのバスに乗った。純と京子は並んで座った。純が窓側で京子が通路側である。
「嬉しいです。京子さん。京子さんが来てくれて」
純は恥ずかしそうに小声で言った。
「私が来ないんじゃないかと思ったの?」
京子はニコッと笑った。
「い、いえ。そんなことはありません」
純は焦って首を振った。
「ふふ。今日はうんと楽しみましょう」
京子が言った。すぐにバスが発車した。

10時少し過ぎにロングビーチに着いた。もうビーチの中は人でいっぱいだった。キャッ、キャッと騒ぐ客たちの歓声が聞こえてくる。京子と純は、チケット売り場で、入場券を買った。
「大人一人と子供一人」
と言って京子がチケットを買った。
「はい。純君」
そう言って、京子は純に、子供用の一日券を渡した。二人は建物の中に入っていった。建物の中には、セクシーなビキニ売り場がある。京子はどんなビキニなのだろうかと思うと純はドキンとした。それだけで、おちんちんが固く大きくなり出した。京子は、ビキニ売り場には目もくれなかった。家から水着を持ってきているのだろう。

男性更衣室と女性更衣室の前で、二人は別れた。純は慣れているので、すぐにトランクス一枚になって、バッグに洋服を詰め、更衣室を出てきた。京子はまだいなかった。純は京子がどんな水着を着てくるのか、胸をワクワクさせながら京子を待った。五分くらいして、京子が女子更衣室から出てきた。
「ああっ」
出てきた京子を見て、純は思わず声を洩らした。セクシーなビキニで、京子の美しいプロポーションにピタッとフィットしていたからである。純のおちんちんは一瞬で固く大きくなった。
「ふふ。どうしたの?」
京子がドギマギしている純に聞いた。
「あ、あまりにも美しいので、びっくりしちゃったんです」
純は思わず本心を言った。人間は、あまりにも強い衝撃を受けると、茫然自失して、ウソを考えるゆとりがなくなってしまうものである。
「ふふふ」
と京子は笑った。
「じゃあ、純君。荷物、一緒に入れましょう」
そう言って京子は、300円のロッカーを開けた。純と京子は、それぞれのカバンをロッカーに一緒に入れた。二人は手をつないで本館の建物を出た。

京子と純は手をつないで、ビーチサイドを歩いて行った。
「おおっ」
芝生に寝転がっていた三人の男たちが、一斉に、京子を見た。
「すげー美人」
「超ハクイ」
「あれで子持ちとは信じられないな」
「いや。彼女の子供とは限らないぜ。甥とか、親戚の子かもしれないじゃないか」
「そうだよな。子供を産んだら、あんなプロポーションでいられるわけないよな」
「ナンパ防止のために、知人の子供を連れてくることって、結構あるんだよな」
男たちは口々に言い合った。京子は噂されるのを嫌がる意思表示のように早足で歩いた。

純は京子と手をつないで、シンクロプールの前のリクライニングチェアに座った。
「京子さん。来てくれてありがとうございます。最高に幸せです」
純はあらたまって言った。
「なに言ってるの。純君は私の命の恩人じゃない。来なかったらバチが当たるわ」
京子はあたりを見回した。
「いいリゾートプールね。外国の高級リゾート地に来たみたいな気分だわ」
「京子さん。日焼けするの嫌じゃないですか?」
「ううん。全然、大丈夫よ」
そう言いながら京子は日焼け止めのスプレーを体に振りかけた。
「はい。純君も」
そう言って京子は純の体にもスプレーを振りかけた。
「純君」
「何でしょうか?」
「どうしてプールにしたの?」
「そ、それは。プールや海が好きなんで・・・。それと京子さんのビキニ姿が見たくて・・・。僕、京子さんのような綺麗な人と一度でいいから、大磯ロングビーチに来たかったんです。その夢がかなって、今、最高に幸せです」
京子はニコッと笑った。
「純君は泳げるの?」
「ええ。ほんの少しなら」
「どのくらい?」
「クロールなら50mが精一杯です。平泳ぎなら、200mくらいです。これじゃあ、泳げるとは言えませんね」
「それだけ泳げれば、十分、泳げると言えるわよ」
「でも持久力が全然なくて、運動神経が鈍くて、練習しても、なかなか上手くなれないんです」
「純君の泳ぎが見たいわ。見せて」
「は、はい」
純は、水泳帽を被り、ゴーグルをした。そして25mのシンクロプールに入って、クロールで泳いだ。一往復した。純は、息継ぎは問題なく出来たが、まだ、クロールの水のキャッチが十分、出来てはいなかった。京子に速く泳ぐ姿を見せたかったが、ムキになって速く泳ぐと、バシャバシャと、みっともない泳ぎになってしまう。それで、速く泳いで見せたい気持ちを押さえてスピードを少しおとして、スムースに見えるよう、でも、ある程度、速く、25mのシンクロプールを一往復した。その後、平泳ぎをした。平泳ぎは、上手く泳げるので、思い切り速く泳いだ。そしてプールから上がった。純はゴーグルをとった。
「うまいわ。純君」
京子は笑って、パチパチと手をたたいた。
「京子さんは、泳げますか?」
「ええ。ほんのちょっと。でも下手よ。子供の頃、夏に家族と海に行って遊んだのと、小学校と中学校で、体育の授業の時に水泳があったから。平泳ぎは少し出来るわ。でも純君の方が私より上手いわ。私、クロールは全然、出来ないわ」
そう言って京子はニコッと笑った。
「僕、子供の頃、海にほとんど行かなかったので、小学校の時は全く泳げませんでした」
「純君。一緒に泳がない?」
「ええ」
純と京子は、シンクロプールに入って、平泳ぎで、ゆっくり泳ぎ出した。純は京子のスピードにあわせて、横に並んで泳いだ。純も京子も水から顔を出して泳いだ。泳ぎながら、時々、お互いの顔を見て笑いあった。
25m泳いで、ターンすると、純は、面白いことを思いついて、嬉しくなった。純はスピードをおとして、京子の真後ろを泳いだ。水中に顔を入れると、ビキニに覆われた京子の尻や太腿が、もろに見える。尻や太腿は水の力によって揺らいだ。平泳ぎで、足で蹴る時、両足が大きく開いて、ビキニに覆われた女の股間が丸見えになった。それはとても悩ましく、純は激しく興奮した。純の股間の一物は、すぐさま勃起した。京子は、見られているとも知らず、大きく股を開いて泳いだ。

一往復して、元の場所に着くと、京子はプールから上がった。純もプールから出た。そして、二人はプールの縁に並んで座った。
「ああ。疲れた。泳ぐの久しぶりだわ。中学校の体育の授業の時、以来だわ」
京子が言った。
「でも、ちゃんと泳げるじゃないですか」
純は、チラッと京子の体を見た。ビキニが水に濡れて収縮し、股間と胸にピッタリと貼りついて悩ましい。体から滴り落ちる水滴も。それは、ただの水滴ではなく、京子の体についていた水なのである。

太陽は、かなり高く昇っていた。客もそうとう多くなっていた。流れるプールには、多くの男女や子供が、歓声を上げながら、水に流されながら泳いだり、ゴムボートに乗って、楽しんでいた。

「純君。今度は、流れるプールに入らない」
京子は、ニコッと笑って聞いた。
「はい」
純は笑って答えた。
純と京子は、手をつないで、流れるプールに向かった。純は、子供のようにウキウキしていた。流れるプールは陸上競技のトラックのような楕円形のプールである。流れるプールは、けっこう、速度がある。流れるプールでは、流れの方向に従って、泳がなくてはならない。
純は京子と一緒に流れるプールに入った。
流れるプールは、自力で泳がなくても、水に体をまかせていれば、水の流れによって、流されるので、泳いでいるような感覚になる。泳げば、流れる速度に泳ぐ速度が加わって、速く泳げているような感覚になる。そんなところが、流れるプールの面白さである。
純は、京子と手をつないで、しばらく流れにまかせて、水の中を歩いた。
「気持ちいいわね。純君」
京子が、ニコッと微笑んで言った。
「ええ」
純は微笑んで答えた。
しばし水に押されながら歩いた後、京子が立ち止まった。
「純君。ちょっと、ここで止まってて」
「え?」
純には、その意味がわからなかった。京子は、つないでいた手を放し、水を掻き分けながら歩き出した。水の速度と、水を掻き分けながら歩く速度で、京子は、どんどん進んでいき、二人の距離は、どんどん離れていった。純は、意味も分からず、京子に言われたように、立ち止まっていた。かなりの距離、離れてから、京子は、後ろを振り返って、純に手を振った。
「純くーん。私を捕まえてごらんなさい」
そう言うと、京子はまた、水を掻き分けながら、歩き出した。純は、京子の意図がわかって、可笑しくなって笑った。水中での鬼ごっこ、である。純は、ゴーグルをつけて、京子に向かって、泳ぎ出した。だが、人が多いため、ぶつかってしまい泳げない。仕方なく、純も、京子と同じように、水を掻き分けながら歩き出した。地上と違い、水の抵抗があるため、なかなか、速く進めない。京子は、捕まえられないよう、キャッ、キャッと、叫びながら、逃げた。だが、そこは、やはり大人と子供の差。本気で京子が逃げると、京子との距離は、全く縮まらない。それどころか、どんどん離れていってしまう。これでは、純は、いつまで経っても純をつかまえられない。それを慮って、京子は、純が何とか、自分をつかまられる程度の速度に手加減したのだろう。だんだん京子との距離が縮まっていった。もう三メートル位になった。幸い、近くに人があまりいなかったので、純は、平泳ぎで全力で泳ぎ出した。水の中から、必死で、逃げる、ビキニ姿の京子の体が、はっきりと見える。純は、可笑しくなって、ふふふ、と笑った。
「京子さん。つーかまえた」
そう言って、純は、タックルするように、京子の体を、ギュッと抱きしめた。京子の体に触れるのは、これが初めてである。それは、あまりにも柔らかい甘美な感触だった。捕まえられて、京子は、
「あーあ。つかまっちゃった」
と、口惜しそうに言った。
二人は顔を見合わせて、ふふふ、と笑った。
「じゃあ、今度は、京子さんが鬼です。僕をつかまえて下さい」
純が言った。
「わかったわ」
京子は立ち止まった。純は、水を掻き分けて進み、京子から少し離れた。
「さあ。京子さん。もういいですよ」
京子は、ニコッと笑って、水を掻き分けて、純を追いかけ始めた。純もつかまえらないよう、必死で水を掻き分けて逃げた。純には、京子に捕まえられたくないという気持ちと、その反対に、京子に捕まえられたいという逆の気持ちもあって、それが面白かった。何より京子が自分を追いかけてくれるのが嬉しかった。純は全力で水を掻き分けて逃げた。だが京子も全力で水を掻き分けて、純を捕まえようと追いかけてくる。そこは大人と子供の差。本気で京子が追いかけると、純との距離は、どんどん縮まっていった。純は必死で逃げた。二人の距離はだんだん縮まっていった。ついに、京子は純をつかまえた。
「純君。つーかまえた」
そう言って、京子は、後ろから純の体にヒシッと抱きついた。京子の柔らかい胸のふくらみの感触が、純の背中にピッタリとくっついた。それは、最高に気持ちのいい感触だった。
「京子さん。ちょっと、疲れましたね。少し、休みませんか」
「ええ」
二人は流れるプールから出た。
二人は、ビーチパラソルの下のリクライニングチェアに座った。京子の体からは、水が滴り落ちている。それはとても美しい姿だった。純には、京子が、陸に上がった人魚のように見えた。

「純君。今度は、あれをやらない?」
そう言って京子が、ウォータースライダーを指差した。
「はい」
純は二つ返事で答えた。
純と京子は、手をつないでウォータースライダーの所に行った。
ウォータースライダーはスリルがあって面白いので、いつも行列が出来ている。一人乗りと、二人乗りのゴムボートがあったが、大磯ロングビーチには、みな友達と来ているので、ほとんど全員が二人乗りだった。それで純は、二人乗りで、楽しんでいるカップルや親子などをうらやましく見るだけだった。一人で乗っても、さびしいだけである。なので純はウォータースライダーに乗ったことが一度もなかった。だが今回は京子がいる。純は得意そうに列の後ろに京子と手をつないで並んだ。純たちの番がきた。二人乗りのゴムボートの後ろに京子が乗り、純は、その前に乗った。京子は純をギュッと抱きしめた。京子の大きくて柔らかい胸のふくらみが純の背中に当たった。それは、すごく心地よい感触だった。ゴムボートが、水の流れと共に、遊園地のジェットコースターのように勢いよく、曲がりくねった水路の中を滑り出した。京子は、キャッ、と言って、純をガッシリ抱きしめた。純は、この時、生きているという実感を生まれてはじめて味わった。
「これが生きているということなんだ」
と純は思った。もし、京子と出会わなければ、孤独な純は統合失調症になったかもしれない。ウォータースライダーは無事に滑り降りた。
「スリルがあって、怖かったけど凄く楽しいわね」
京子が言った。
「ええ」
純が笑って答えた。

純と京子は、再び、ビーチパラソルの下のリクライニングチェアに座った。

「京子さん。お腹空いてませんか?」
純が聞いた。
「ええ」
「じゃあ、何か食べましょう。京子さんは、何を食べたいですか?」
「私は、何でもいいわ。純君と同じ物を食べたいわ」
「わかりました」
そう言うと純は、パタパタと小走りに食べ物売り場に走って行った。純は、何にしようかと、迷って、しばし色々と食べ物売り場を回ってみた。そして、結局、焼きソバとオレンジジュースを買った。

純が、焼きソバを持って、もどる途中、一人でいる京子に、見知らぬ男が京子に近づいて声をかけていた。気の小さい純は、少し離れた所で立ち止まって様子をうかがった。
「あ、あのー。お姉さん。もしよろしかったら僕と・・・」
「ごめんなさい。彼氏がいるの」
「えっ」
男は首を傾げた。
「純くーん」
京子は離れて焼きソバを持って立っている純に声をかけた。純は京子の所にやって来た。「すみませんでした。お子さんがいらっしゃるとは知りませんでした・・・。あまりに若く見えるもので・・・。ちなみにご主人は?」
男はそっと周りを見回した。
「今日はこの子と二人で来たんです」
男は首を傾げた。男はしつこくねばった。
「もしかして、ご主人と離婚した未亡人とか・・・」
男は小さな声で聞いた。夫がいなければ、付き合おうという魂胆だろう。
「いえ」
「では、ご主人とは仲が悪くて離婚協議中とか・・・」
「いえ」
「では、今日はご主人は仕事とか・・・」
「いえ」
「ごめんなさい。この子が私の彼氏なんです」
「は、はあ」
男は、首を傾げながら、ついにあきらめて去っていった。
純は、テーブルに焼きソバと、オレンジジュースを置いた。
「ありがどう。純君」
そう言って京子はニコッと笑った。

その時、傍にいた別の男が京子に声をかけてきた。
「あ、あのう」
京子は携帯を持った男に呼びかけられた。
「何でしょうか?」
「写真とってもいいでしょうか?」
「ええ。いいわ」
「ありがとうございます」
「ただし条件があるんですけど・・・」
「何でしょうか?」
「この子と一緒に写してくれませんか」
「それは・・・ちょっと残念・・・だけど・・・仕方ない。わかりました。まあ、人妻というのも面白いですし・・・」
「ボク。綺麗なお母さんで、いいねー」
男は純を見て言った。純は恥ずかしくなって顔を赤くした。
男は、携帯でカシャっとカメラを撮った。
「いやー。でも、子供を産んでも体が崩れませんね。抜群のプロポーションですね」
そう言って男は去っていった。
純は焼きソバをテーブルに置いてリクライニングチェアに座った。
「焼きソバにしたけれど、よかったでしょうか?」
純が聞いた。
「ええ」
京子はニコッと笑って答えた。二人は、焼きソバを食べ出した。
「おいしいわ」
京子が微笑んで言った。
純もニコッと笑って、焼きソバを食べた。

純に今まで思ってもいなかった疑問が、突如として純に起こった。京子は若く見えるので、今まで、てっきり独身の女だと思っていた。それは、今まで、全く考える余地さえない事だった。しかし、考えてみれば、京子が独身である保証はない。もしかすると、結婚していて、夫がいる可能性だって、なくはない。さらには、もしかすると、子供だって、いるかもしれない。純は勇気を出して京子に聞いてみた。

「あ、あの。京子さんは、結婚してるんですか?」
純が聞いた。
「ごめんね。純君。ちょっと言えないの」
「京子さんは何歳なんですか?」
「何歳に見える?」
「20代に見えます」
「よくそう言われるわ」
と言って京子はニコッと笑った。
「ということは、もっと上なんですね」
「ふふふ・・・」
京子は、いわくありげに笑った。
「子供はいるんですか?」
「ごめんね。純君。それも、ちょっと言えないの」
京子は答えなかった。だが、答えないということが、すでに何かある、という答えになっていた。何事でも、言いにくい事というのは良くないことがあるからである。
子供は幼い時に死んだのかも・・・。
子供は別れた夫にひきとられているとか・・・。
ともかく純は、少しがっかりした。若く見える京子は、てっきり独身の女だと思っていたからである。それなら、歳が離れていても京子と恋人として付き合える可能性があると思っていたからである。しかし、もしかすると京子には、夫も子供もいるのかもしれない。そして、明るい楽しい家庭生活をしているのかもしれない。京子は、助けてもらったお礼として、嬉しそうに振舞っている演技をしているのかもしれない。そう思うと純は、さびしくなった。だが実際のところはわからない。夫は、死んで未亡人なのかもしれないし、夫とは離婚して、子供は夫と暮らしているのかもしれないし、また好きな彼氏がいるのかもしれない。そういうケースでも、結婚や子供のことは、語りたくないだろう。だが、もしかすると京子は、まだ独身なのかもしれない。ともかく京子が話してくれない以上、純には、何が何だかわからなかった。
「ああ。おいしかったわ」
京子が焼きソバを食べおわって言った。
「純君。また、遊ぼう」
京子が言った。
「はい」
純は答えた。二人は立ち上がった。

「今度は波のプールに行かない?」
京子が言った。
「はい」
そうして踵を返した時、目の前で、若いカップルが、ピースサインをしてニッコリ笑っていた。その二人に、OISOと書かれた青いTシャツを着た男が、デジカメを向けている。「大磯でカシャ」である。土曜と日曜は、大磯ロングビーチは入場客がたくさん来て混む。よく言えば賑やか、である。それで、土曜日と日曜日には、入場客の写真を撮って、大磯ロングビーチのホームページに、その日のうちにアップしていた。これは、土曜日と日曜日だけ行われていた。平日はない。写真を撮って欲しければ、「撮って下さい」と一言いうだけで、撮ってもらえるのである。
「純君。一緒に、写真、撮ってもらおうか」
京子が嬉しそうに言った。
「でも、ネットにアップされますよ。大丈夫ですか?」
純は聞き返した。
「ええ。大丈夫よ」
京子は笑顔で、あっさり言った。純はこれには驚いた。もし、京子が結婚していたり、子供がいたりしたら、他人の子と一緒に楽しそうにしている写真を撮られるのは、夫や子供に見つかったら、どういうことなのかと聞かれて、出来にくいはずである。仮に夫に見つからなくても、友達や知人に見つかれば、夫に報告されて知られてしまう危険がある。だか、それは京子は大丈夫らしい。なら、京子は、結婚しておらず、子供もいない可能性もある。それとも京子は、未亡人とか、あるいは離婚した、とかの複雑な事情があるのかもしれない。
「写真、撮って下さい」
京子は、カメラを持っている青いTシャツの男に言った。
「はい。わかりました」
と言って、男は、カメラを覗きながら、少し後ずさりした。京子は純と手をつないだ。そして、お互い、反対の手で、ピースサインをした。
「では、撮りますよー」
男が言った。京子は笑顔をつくった。純も笑顔をカメラに向けた。
カシャ。
写真が撮られた。
男は、近づいてきて、撮った写真を二人に見せた。仲のいい親子という感じの写真が撮れていた。
「お二人の関係は?」
男が聞いた。京子は純の顔を見た。
「恋人にする。それとも親子にする?」
京子は、嬉しそうに純に聞いた。
「ええっ・・・」
純は驚いて口が聞けなかった。
「じゃあ、ジャンケンしよう。私が勝ったら、親子で、純君が勝ったら、恋人ということにしよう」
京子が言った。純はまた驚いたが、京子は、
「ジャンケン・・・」
と声をかけて、拳を振り上げた。
純はつられて反射的に、京子に合わせて拳を振り上げた。
「ポン」
二人の手が振り下ろされた。
純はパーを出し、京子はチョキを出した。
「私の勝ちね。じゃあ、間柄は親子ね」
京子は、写真を撮った男に、
「間柄は、親子です」
と、あっけらかんと答えた。
「では、今日中にアップします。どうもありがとうございました」
そう言って写真を撮った男は去っていった。
「京子さん。間柄は親子なんて言って本当にいいんですか?写真の下に書かれますよ」
純は眉間を寄せて京子に聞いた。
「ええ。大丈夫よ」
京子はあっけらかんと答えた。京子に夫や子供がいるのなら、写真は公開されない方がいいし、ましてや間柄は親子などと出鱈目なことはしない方がいい。純は京子が何を思っているのか、ますます分らなくなった。

その時。
「おおっ」
と大きな歓声が上がった。すぐ近くのダイビングプールで、一番高い所から男が飛び込んだのである。ダイビングプールでは、多くの人が集まって、飛び込む人を見ていた。
「純君。ちょっと見ていかない」
京子が聞いた。
「ええ」
純が答えた。二人は手をつないで、飛び込みを見た。純は京子の手をギュッと握った。二人は、しばし、飛び込む人を見た。
純は最高に嬉しかった。純は母親を知らずに育ってきたため、女と手をつないだことが一度もない。今まで、余所の子が母親と手をつないでいる姿を見ると、うらやましくて仕方がなかった。それが今、京子という絶世の美女と手をつないでいるのである。まさに夢、叶ったりだった。純は、飛び込みを見ながら、しばしその心地よさに浸っていた。飛び込みは、女性でも結構、飛び込む人がいた。
「京子さんも飛び込んでみませんか?」
純が、笑いながら悪戯っぽく言った。
「えっ。ちょっと怖いわ。私、飛び込みしたこと一度もないもの」
「大丈夫ですよ」
純は笑って言った。
「じゃあ、純君が飛び込んだら、私も飛び込むわ」
「わかりました」
そう言うと、純は、飛び込み台に昇っていった。そして飛び込みを待つ人のあとに純は並んだ。純は、以前、飛び込みをしたことがあったので、怖くはなかった。四人、飛び込んだ後、純の番がきた。純は思い切り、踏み切って空中に飛んだ。トボーン。無難に飛び込んだ。飛び込みも、足から垂直に飛び込まないと、腹や顔を打ってしまい、勇気がいる。純は、水中から浮き出て、プールサイドに辿りつくと、すぐに京子の所にもどってきた。
「さあ。飛び込みましたよ。今度は京子さんの番ですよ」
純は得意げに言った。
「わ、わかったわ」
京子は、そう言うと、飛び込み台に昇っていった。そして飛び込みを待つ人のあとに並んだ。三人、飛び込んだ後、京子の番になった。京子は、飛び込み台の縁に直立した。京子のビキニ姿はこの上なく美しかった。

「おおっ」
飛び込みを見ていた男達は、一斉に歓声を上げた。
「すげーハクイ女」
「すげー美人」
「超美人だな。女優なみの顔に、モデルなみのプロポーションだな」
男達は口々に言った。
「ちょっと待てよ。あの女。どこかで見た覚えがあるような気がするな」
男の一人が言った。
「えっ。ということは本当にモデルか?」
「何の雑誌で見たんだよ?」
男の仲間が聞いた。
「うーん。えーと。何の雑誌だったかなー。ちょっと、思い出せないなー」
男は思い出せない苦しさに唸りながら言った。
「他人の空似じゃないの?」
仲間が言った。
「いや。確かに、あの人だと思う。だって右の頬っぺたに黒子があるから」
「じゃあ、本当にモデルか。あれだけ綺麗なら無理ないよな」

聞いていた純も驚いた。確かに京子ほど綺麗なら、モデルであっても何の不思議もない。京子はモデルなのだろうかと、また京子に対して疑問が起こった。京子は、しばし、緊張した面持ちでプールを見ていたが、無難に飛び込んだ。水の中から浮き上がって顔を出すと、京子は、笑顔で純に手を振った。そしてプールサイドに泳いできて、純の所に戻ってきた。
「どうでしたか?」
純が聞いた。
「怖かったわ。プールの中にちゃんと入ってくれるかなって心配になっちゃったわ」
京子が言った。
「上から見るとプールが小さく見えちゃいますからね」
純が言った。

その後、二人は、またウォータースライダーで遊んだ。ウォータースライダーは面白いため、三十人以上も、待つ人の列が出来てしまう。純と京子は、何回も繰り返してウォータースライダーに乗った。そうこうしているうちに日が暮れだした。
時計を見ると、もう五時近くになっていた。ちらほらと人々は帰り支度をしていた。
「純君。残念だけど、もう時間だわ。もう、帰りましょう」
「はい」
二人は手をつないで、本館の建物に向かった。
「京子さん。今日は最高に楽しかったです。どうも有難うございました」
「私もすごく楽しかったわ。有難う」
そう言って京子はニコッと笑った。
純と京子は更衣室とロッカーのある本館に入った。コインロッカーに入れていた、二人分の荷物を出して、二人は、それぞれ男性更衣室と女性更衣室に入っていった。
純はシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かして、服を着て、更衣室を出た。そして、京子が出てくるのを待った。五分くらいして、京子は、着てきた薄いブラウスとフレアースカートを着て出てきた。二人は手をつないで大磯ロングビーチの建物を出た。

そして送迎バスに乗って大磯駅に着いた。
「純君。お腹へったね。何か食べていこう。純君は何を食べたい?」
京子が聞いた。
「何でもいいです」
純が答えた。駅前には、一軒、焼き肉屋があった。
「純君。焼き肉、好き?」
「ええ」
「じゃあ、あの店で食べよう」
二人は、焼き肉屋に入った。二人は向かい合わせにテーブルに着いた。ウェイターがやって来て、メニューを差し出した。
「さあ。純君。好きなものを選んで」
京子はメニューを純の方に向けた。純は、これとこれとこれ、と言ってロースとカルビと卵スープとキムチとコーラを指差した。
「じゃあ、ロースとカルビと卵スープとキムチとコーラ二人分」
と京子がウェイターに注文した。ウェイターは、焜炉のスイッチを入れて厨房に戻っていった。そしてすぐにロースとカルビと卵スープとキムチとコーラを二人分持ってきた。京子は熱くなった焜炉に肉を乗せていった。肉はすぐに焼かれていった。
「さあ。純君。食べて」
言われて純は、焼かれた肉を食べ出した。京子はスープやキムチを食べるだけで、あまり焼き肉を食べようとしない。
「京子さんも食べて下さい」
と純が言っても、京子はあまり、肉を食べない。純に多く食べさせたいという思いからだろう。仕方がないので、純は焼かれた肉をどんどん食べていった。結局、純が、ほとんど二人分の焼き肉を食べた。純は、謎の京子、がどんな素性の女なのか、全くわからず、知りたくなった。結婚しているのか。子供はいるのか。いないのか。自分のことをどう思っているのか。本当にモデルなのか。等々。それで京子に聞いてみた。
「僕、京子さんが好きです」
「ありがとう。私も純君が好きよ」
「あの。さっき、ダイビングプールに京子さんが立った時、男の人たちが話していたのを聞いたんですけど、京子さんはモデルなんですか?」
「・・・ふふふ。さあ。どうかしら」
「じゃあ、京子さんの写真集とか、あるんですか?」
「あったらどうする?」
「京子さんの写真集、ぜひ欲しいです」
「わかったわ。ちょっと恥ずかしいけど、昔、私の写真集が出版されたことがあるの」
「えー。すごいですね。まだありますか?」
「あるわ」
「ぜひ欲しいです」
「・・・わかったわ。家に帰ったら小包で送るわ」
「ありがとうございます」
「でも、あんまり見ないでね。少し見たら捨てちゃってくれないかしら」
この発言の意味は全くわからず、純は、その理解に苦しんだ。
「どうしてですか。捨てるもんですか。なぜ捨てなければならないんですか?」
「だって恥ずかしいもの・・・」
純ははっと気がついた。もしかするとヌード写真なのかも。
「わ、わかりました。少し見たら捨てます」
と純はウソをついた。

焼き肉屋を出ると、二人は大磯駅で上りの切符を買った。すぐに上りの東海道線が来て、二人は乗った。純は、京子の写真集が手に入れられることが嬉しくて、それで頭がいっぱいで、電車の中では、ほとんど京子と話さなかった。藤沢駅に着いた。
「私、小田急線に乗り換えなくちゃ」
京子が言った。
「あっ。そうですか」
「純君。今日は本当に楽しかったわ。ありがとう」
「僕もです。写真集、送って下さいね」
「ええ」
そう言って京子は電車を降りた。ドアが閉まって電車が発車すると、京子は、笑顔で、純が見えなくなるまで手を振り続けた。

   ☆   ☆   ☆

一人になった純に、色々なことが頭を駆けめぐった。まず単純に、携帯をロッカーの中に入れずにプールに持っていっていれば良かったことを後悔した。そうすれば京子のビキニ姿がたくさん撮れたのである。純は今まで、いつも一人でプールに入っていたため、勝手に他人のビキニ姿の女の写真は撮れないので、携帯はロッカーに入れるのが、当たり前という感覚になっていたのである。しかし、写真集を送ってくると、京子は言ったし、大磯でカシャ、で撮ってもらった写真をパソコンで見ることも出来る。大磯でカシャ、は一枚だけである。純は京子が、間違いなく写真集を送ってくれることに、祈りたいほどの気持ちだった。京子の、住所とか、携帯の電話番号とか、メールアドレスとか、も聞きたいとは思っていた。しかし、京子が純をどう思っているのかは、わからない。純は、人に恩着せがましくするのや、しつこくするのは嫌いなので、二人の男に襲われている京子を救ってあげたからといって、京子に、携帯の電話番号を聞くことも出来にくかった。もしかすると、京子の方から教えてくれるかも、とも期待してはいた。しかし残念ながら、京子は言わなかった。聞けば教えてくれたかもしれない。しかし、今日、京子と楽しい一日を過ごせたのは、二人の男に襲われている京子を救ってあげたことに対しての京子の、お礼である。今日一日だけ、お礼として、付き合ってくれたのであって、もしかすると京子には愛する夫も子供もいるのかもしれない。そんなことを思うと、京子の携帯の電話番号やメールアドレスを聞きだすことも出来にくかった。それは今でも後悔していない。一日だけでいいから、京子のような綺麗な女性と大磯ロングビーチに行きたい、という長年の夢が叶ったのだから。純は、そういう控えめな性格だった。しかし、もしかすると、京子が送ってくれると言った写真集の小包に京子の住所が書いてあるかもしれない。と純は思った。というより、普通、郵便では、差出人の住所は書くのが普通である。そうすれは京子の住所がわかる。純はそれに期待することにした。

   ☆   ☆   ☆

純は電車の中でそんなことを考えていた。
家に着いたのは7時30分だった。
「日焼けしたな。プールか海に行ってきたのか。もう9月になっているのに、まだやっているプールがあるのか?」
と、酒を飲みながらテレビを見ていた父親が聞いた。
「大磯ロングビーチに行ってきました」
と純は答えた。
「今日は、オレはもう夕食は食べてきた。すまないが夕食は、コンビニ弁当でも買ってくれ」
と父親は言った。
「僕も夕食は外で食べてきました」
純は言った。
「ああ。そうか。それはちょうどよかった」
そう言って父親は観ていたテレビを消して、自室に行った。純は、風呂に入って石鹸で体を洗った。そしてパジャマに着替え、自分の部屋に入った。純は、すぐにパソコンを開いた。そして、大磯ロングビーチのホームページを見た。大磯でカシャ、で京子と純が手をつないで笑顔でピースサインを出している写真が綺麗に写っていた。間柄は、親子となっている。あらためて写真で見る、京子のビキニ姿は美しかった。ジャンケンで、間柄を親子とするなど、子供のようで、京子は一体、何を考えているのか、さっぱり純にはわからなかった。しばらく純は、京子のビキニ姿を眺めていた。昼間、大いに遊んだ疲れから、純はすぐに眠りについた。

   ☆   ☆   ☆

翌日になった。月曜日である。純は気を引き締めて学校に行った。教室に入ると同級生の一人がやって来た。
「おい。純。昨日、大磯でカシャ、で、お前が、綺麗な女の人と手をつないでいる写真を見たぜ。親子と書いてあったけど、お前に母親はいないのに、どういうことなんだ?」
と聞かれて純は返答に窮した。純は、
「親戚の人だよ」
と答えておいた。真面目な純だが、京子が小包を送ってくれるかどうかが気になって仕方がなく、授業も上の空だった。その日は、小包は来なかった。まあ、それは純も予想していたことだった。京子が家に帰った日曜の夜に送っても、翌日にはつかない。次の火曜日も来なかった。その次の水曜日も。京子は本当に写真集を送ってくれるだろうか。純はだんだん心配になってきた。木曜日の学校から帰った後、郵便ポストの中に、小包を見つけた時、の純の喜びといったら、たとえようがない。純は小躍りして喜んだ。ただ非常に残念なことに、差出人の住所は書いてなかった。純は、小包を部屋に持っていくと、胸をワクワクさせながら小包を開いた。

小包を開いて純は吃驚した。それは京子のSM写真集だった。200ページほどある写真の全部が、京子の写真だった。純は興奮しながらページをめくっていった。始めは、普通の服を着た写真であって、次には服を着たまま、後ろ手に縛られて畳の上に正座させられている写真で、それから、上着は着たままで、パンティーを膝の上まで中途半端に脱がされている写真だった。京子は、女の恥ずかしい所を隠そうと、腿をピタッと閉じ合わせていた。羞恥心に頬を赤く染めている。それからは、丸裸にされて、胡坐縛り、柱縛り、爪先立ち、駿河問い、吊り、とありとあらゆる恥辱のポーズの写真がつづいていた。女の恥ずかしい所は、股縄をされていたり、京子が腿をピタッと閉じていたり、女の羞恥心を煽るため、悪戯っぽく、女のアソコに、わざと小さな布が置かれていたりしていた。純は激しく興奮した。おちんちんは激しく勃起した。
発行年は、平成×年と書かれてあるから、今から8年前に撮影された写真ということになる。だが見た目は、昨日の京子とほとんど変わらない。
小包には、京子のSM写真集と一緒に、一枚の手紙が添えられていた。
それにはこう書かれてあった。
「純君。この前の日曜日は楽しかったわ。約束した私の写真集を送ります。恥ずかしい写真集なので、送ろうか送らないか迷いました。でも純君との約束は守らなくては、と思いました。あまり見ないでね。また、あまり写真集ばかり見て、勉強がおそろかにならないようにしてね。佐々木京子」

あまり見ないでね、と書いてあるが、純は食い入るように京子のSM写真集を見た。京子は丸裸にされて、後ろ手に縛られて、様々な、つらそうな格好にされている。京子は眉を寄せて苦しげな表情をしている。全身には珠の汗が吹き出ていた。純は性格が優しかったので、何とか助けてあげたいと思った。しかし、京子は写真の中なので、どうすることも出来ない。また、純は助けたいという気持ちだけではなかった。純は、京子が苦しむ姿に激しく興奮していたのである。いじめたい、という気持ちと、助けたい、というアンビバレントな二つの感情があった。純はハアハアと息を荒くしながら、激しく勃起した、おちんちんをさすりながら、裸で様々な格好に縛られている京子を食い入るように見た。

その時、携帯のメールの着信音がピピッとなった。父親からだった。
「今日は遅くなる。すまんが夕食はコンビニ弁当で済ましてくれ。父」
と書いてあった。父親はいつも帰りが遅い。

純は、自転車で近くのコンビニに行き弁当を買った。そして家でコンビニ弁当を食べた。食べ終わると、純は急いで自分の部屋にもどって、ベッドに寝転がって、再び京子の写真を見入った。
その日、純は枕元に、その写真集を置いて寝た。純にとって、その写真集は宝物だった。その日、純は激しい興奮でなかなか眠れなかった。
父親は夜中、純が蒲団に入ってから帰ってきた。いつものように酒を飲んで酔っていた。家に帰ってからも、ビールを数本飲んでから寝た。

   ☆   ☆   ☆

翌朝になった。サラリーマンは、夜は遅くなってもかまわないが、遅刻は許されない。父親はスーツを着て、降りてきた。昨夜、酒を呑んだためか、二日酔いの頭を振った。
「おはよう」
純が挨拶した。
「おはよう」
父親が返事した。二人は食卓についた。朝食は毎日、同じで、コーヒーにトーストに、サラダにゆで卵だった。
「いただきます」
純は、元気に言って、トーストを食べ出した。純が嬉しそうなので父親は首を傾げて純を見た。
「純。なんだ。何かいいことがあったのか」
「ううん。別に」
純は笑顔で答えた。純の内気な性格は十分知っている父親なので、それ以上、聞き出そうとはしなかった。
「そうか。最近、お前が何かソワソワしているから、気にかかっていたんだ。何か嬉しいことがあったんだな」
父親が聞いた。
「ま、まあね」
純は、あやふやに答えた。
「そうか。それは、よかったな」
食事がすむと、純は京子の写真集を引き出しの奥に仕舞った。そして、父親に、
「行ってきまーす」
と言って、純は元気に家を出た。
だが純は授業中も京子の写真集のことが気になって仕方がなかった。


学校が終わった。純は急いで家に帰った。何だか、家に置いてある写真の京子が、家で純の帰りを待っている新婚の妻であるかのような心地いい快感が起こった。部屋に入ると、引き出しを開けて、SM写真集を取り出して、京子をじっくり見た。
「ただいま。京子さん。会いたかったよ」
純は写真の京子に話しかけた。
「お帰りなさい。私もよ」
写真の京子が返事したような気がした。京子の写真の一枚は、裸で、爪先立ちで吊られていて、つらそうな格好である。純はその写真をしげしげと眺めた。
「長い間、爪先立ちで、つらかったでしょう」
「いいの。優しい純君が私を守ってくれるから、つらくはないわ」
京子がそう言ってるように純には聞こえた。
「僕が、京子さんを守ってあげるよ」
「ありがとう」
「でも、本当のこと言うと、僕は京子さんがいじめられて苦しんでいる姿にすごく興奮しちゃうんです」
「いいの。私もいじめられることが嬉しいの。純君のような優しい子に、うんといじめられたいわ」
そんな会話が、純と写真の京子とで交された。純はもう、写真の世界に完全に入り込んでいた。純は、SM写真集を机の上に置いて、勉強を始めた。勉強熱心な純の勉強は夜中までつづく。純は、一時間くらい勉強して、頭が疲れてくると、写真集を開いて、京子を眺めて、一休みした。そしてまた勉強をはじめた。


日が経つにつれ、純の苦悩はつのっていった。純は、また、どうしようもない苦悩に悩まされ出した。授業中も、一人でいる時も、京子のことで頭がいっぱいになってしまった。
「どうしたんだ。純。この頃、ソワソワして授業に集中してないぞ」
と担任教師に注意された。
「何かあったのか」
と聞かれたが、
「何でもありません」
と純は言った。

純の京子に対する思慕の情は、どんどん募っていった。
「会いたい。もう一度、京子に会いたい」
純は、日を増すごとに、自分の気持ちが抑えられなくなってしまった。とうとう、純はある行動を決意した。それは、京子のSM写真集を出版した出版社に行って、憧れの京子に、何とか会えないか、会えなくても、京子に関する事を何でもいいから知りたい、という行動である。
ある日。純は、出版社の住所をたよりに電車に乗って出版社に行った。数日前、京子のSM写真集のおくづけ、に書いてある出版社の電話番号に電話して事情を話したのである。
「行ってもいいですか」
と聞いたら、しばししてから、
「×日に来れますか」
と聞いてきた。
「はい」
と純は答えた。

×日は、風邪をひいたので休むと学校に連絡して、出版社に向かった。そこは、神田川の見える都心の一角のビルの一室だった。ドぎついSM写真集を作っているような出版社なので、チャイムを鳴らすのが、かなり怖かった。ヤクザと関係のある出版社なのではないかとも思った。任侠とか仁義とか書かれた書が額縁に納まって飾られ、オールバックや角刈りの頬に傷のあるガラの悪い男達が出てくるのではないか、と一瞬、不安になった。つまり暴力団事務所がイメージされたのである。
だが純は勇気を出してチャイムを鳴らした。戸が開いた。若い社員が出た。
「いらっしゃい」
ワイシャツを着ていて、ヤクザそうではなく、オフィスも普通の会社のようで純は、ほっと安心した。
「お邪魔します」

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少年と或る女 (小説)(下)

2020-07-07 18:32:44 | 小説
純はペコリと礼儀正しくお辞儀した。純は来客用のソファーに座らされた。オフィスには5人、社員がいた。社員の一人がソファーの前のテーブルに茶を持ってきて座った。
「この前、電話で連絡した者です。岡田純といいます」
純は自己紹介した。
「ああ。わかってるよ」
社員は答えた。純は京子のSM写真集をカバンから出した。かなり恥ずかしかった。
「あ、あの。電話でお話した通り、この女の人について知りたくて、何でもいいですから、何か、知っていたら教えてくれませんか」
純はさっさく用件を言った。
「ああ。わかってるよ」
社員は答えた。
「君。その女に会いたいほど、その女が好きなんだろう」
「え、ええ」
純は真っ赤になって答えた。
「今日、学校はどうしたの」
「風邪をひいたので休むと連絡しました」
「確かに、かなりの熱だね。じゃあ、ぜひ、こっちから君に頼みたいことがあるんだ。おそらく君なら引き受けてくれると思ってね。用意もしてあるんだ」
「何なのですか。その頼みって」
「すぐにわかるさ。もうちょっと待ってて」
社員は意味ありげな様子で笑った。純には何のことだか、さっぱり分からなかった。
「君。学校で、彼女とか、憧れてる女の子とか、いないの」
「いません」
社員は腕時計を見た。
「もう、そろそろだな」
社員は独り言のように言った。その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「やっ。来たな」
社員は、立ち上がって、ドアの所に行き、開けた。
「お久しぶりです」
そう挨拶して一人の女が恭しくオフィスに入ってきた。純は吃驚した。何と、女は純の憧れの京子だったからである。
「やあ。よくいらっしゃいました。さあさあ、こちらにどうぞ」
男に誘導されて、京子は純の座っているソファーの所に来て、テーブルの反対側の、ソファーに純と向かい合わせに座った。社員は、女の隣に座った。純は何が何だか、わけが、わからなくて緊張して、頭が混乱していたが、京子の顔を見ずにはいられなかった。
「純君。久しぶり」
京子はニコッと笑って、純に挨拶した。
「お久しぶりです。京子さん」
憧れの京子を前にして純は心臓がドキドキしてきた。
京子の大きな胸はブラウスを盛り上げ、大きな尻はタイトスカートをムッチリと張らせていた。その下からは、しなやかな足がつづいている。京子は足を揃えて慎ましく座っている。
「はは。驚いたかい。君の事を彼女に電話で伝えたんだよ。彼女に会いたいと電話までしてくる熱烈なファンがいるって、伝えたんだよ」
社員は、くだけた口調で説明した。純は納得した。しかし純は首を傾げた。なぜ出版社がそこまで親切にしてくれるのか、そして、なぜ京子が、わざわざ来てくれたのか、という疑問である。それを察するように編集者の社員は話し出した。
「もちろん、ここは会社だからね。会社は利益を上げることしか考えてないから、親切心だけで君の願いを叶えてやったわけじゃないんだ。会社はいつも、売れる事しか考えてないからね」
男の説明に純は納得した。では、一体、何の目的かという疑問が次に来た。男はつづけて話した。
「彼女の緊縛写真集は人気があってね。もう一度、設定を変えて撮影することになったんだ。それが今日なんだ」
男は言った。
純は驚いた。
ということは今日、また京子の裸の緊縛姿が撮影されることになる。美しい、爽やかなカジュアルな服を着ている憧れの京子が、これから惨めに脱がされていって、恥ずかしい裸にされると思うと純の股間が熱くなり出した。
「それでね。今回は、美人家庭教師の課外授業というタイトルで、生徒が女教師役の彼女をいじめる、という設定でいこうということに決まったんだ。そんな役を引き受けてくれる少年はなかなか、見つからないからね。そこで君に目をつけたんだ。君なら、やってくれるかもしれないって思ってね。どうだね。やってくれないかね。いくらか謝礼はするよ。君の顔はわからないように、撮る角度に気をつけて、後ろか、斜め後ろから撮るよ。少しでもわかりそうなものには目にモザイクを入れるから」
男は身を乗り出して純に聞いた。純は極度の緊張で、どう答えていいのかわからなかった。まさか、こんなことになるとは予想もしていなかった。
「ははは。電話で頼んだら、迷っちゃうんじゃないかと思ってね」
と社員は笑って言った。なるほど、と純は思った。こうやって、お膳立てしておいて、彼女に会ってしまえば、もう後には引けにくくなる。京子は男の隣でニコッと笑っている。
「私も、大人の人ばかりの中でいるより、純君がいてくれる方が安心だわ」
京子も純を促した。自分が彼女の緊縛写真の中に入るのは、人に知れたらと思うと、確かに少し怖くはあったが、それ以上に、京子と一緒に写真の中に納まって、それが写真集として形のある物になって、ずっといつまでも残ると思うと、その幸福感の方がずっと、怖さをはるかに上回った。
「わかりました。とても嬉しいです。よろしくお願い致します」
そう言って純は深々と頭を下げた。
「ありがとう」
編集者が喜んで言った。
「私も嬉しいわ。よろしくね」
京子もニコッと笑った。純も何だかほっとした。

   ☆   ☆   ☆

「よし。じゃあ、すぐに撮影場所に行こう」
男は携帯をポケットから取り出した。
「もしもし。これから撮影場所に行くからね。撮影お願いしたいんだけど。すぐ来てくれないかね。すまないが縄師のNさんを乗せてきてやってくれないかね」
電話の相手の返事を、ウンウンと肯きながら、聞いてから、
「有難う。よろしく頼むよ」
と言って携帯電話を切った。次に男はまた電話した。別の人のようである。
「もしもし。今日の撮影が決まってね。今、カメラマンに連絡したところなんだ。すぐにカメラマンが車で来るから」
そう言って男は電話を切った。そして携帯をポケットに入れた。
「今、カメラマンと縄師に連絡したんだ。カメラマンが車で、縄師のNさんを乗せて、一緒に撮影場所に行くから。30分位で、撮影場所につくだろう。待たせちゃ悪いから、さあ。すぐ行こう」
男が立ち上がったので、京子も立ち上がった。純も立った。
「じゃあ、撮影に行ってきます」
男はオフィスの中の他の社員に向かって言った。
「おお。頑張ってきて」
社員の一人が言った。京子と純は、男の後についてオフィスを出た。男は駐車場に止まっている車の後部座席を開けた。
「さあ。乗って」
男は、京子と純を見て言った。京子が後部座席の奥の方に座った。
「さあ。君も乗って」
男に言われて、純も後部座席に乗った。純は憧れの京子と、久しぶりに隣り合わせになって、緊張で心臓がドキドキした。男は後部ドアを閉めると、運転席に乗り込み、エンジンをかけて、車を出した。こんなことになろうとは全く予想していなかったので、純は極度に緊張した。性欲よりも、これからどうなるのかという緊張感でいっぱいだった。
「今日は何処で撮影するんですか」
京子が運転している男に聞いた。
「前回と同じレンタル撮影スタジオです」
男は運転しながら答えた。純は横目でチラッと隣の京子を見た。ブラウスの胸の所が乳房に押し上げられて膨らんでいる。タイトスカートが大きな尻によってパンパンに張っている。それにつづく太腿からヒールへと流れるような美しい脚線美である。純は、それを見て激しく興奮した。やがて車はあるビルの前で止まった。ビルの前には二人の男が立っていた。二人は、それぞれ大きなカバンを持っていた。
「はい。着きました。降りて下さい」
男に言われて純と京子は降りた。男は車を駐車場に泊めると、二人の男の所に行った。
「やあ。どうも。お待たせしてしまい申し訳ありません」
編集者は、二人の男に挨拶した。
「いや。待ってないよ。我々もちょうど今、着いたところだから」
男の一人が言った。
「こちらの人がカメラマンのKさん」
「こちらの人が縄師のNさん」
と編集者は、純と京子に二人の男を紹介した。編集者は携帯をポケットから取り出した。
「もしもし。今日、予約していたM社です。今、スタジオに着きました」
相手と少し話して編集者は携帯を切った。そして皆に言った。
「スタジオの管理人が5分ですぐ来ますから」
編集者は、皆に向かって言った。すぐに車が来た。男が降りて、やってきた。スタジオの管理人だろう。
「お待たせしました」
そう言って管理人の男は編集者に鍵を渡した。
「はい。スタジオの鍵です。今日はどの位の時間、ご使用になられますか?」
管理人の男が聞いた。
「そうだね。予約では、5時間という予定だったけれど、延長するかもしれないな」
編集者が言った。
「そうですか。では、撮影が終わりましたら、また電話して下さい。すぐ来ますので。では、ごゆっくり」
そう言って管理人の男は車で去って行った。
「じゃあ、入りましょう」
編集者は皆に言って、スタジオの戸を開けた。カメラマン、縄師、京子、純の四人は編集者についてスタジオに入っていった。
「今日はこの部屋で撮影します」
そう言って編集者は、ある部屋を開けた。そこには机と椅子のある床の部屋と、畳の和室の二部屋があった。
「じゃあ、今回は、美人家庭教師と教え子で、美人家庭教師が、教え子に、いじめられるという設定でいきますから」
編集者が言った。
「まず、少年が机に座って教科書とノートを開いています。その横で、家庭教師が厳しい表情で、足組みして、アンテナペンで教科書を指し示す写真を撮って下さい」
編集者はカメラマンに言った。
「さあ。純君。机について」
言われて純は学生服のまま机についた。
「ノートや鉛筆などの小道具は机の中に入っているから、それを出して」
純は机の引き出しを開けた。中には、ノートや鉛筆などの小道具が入っていた。純はノートと鉛筆を出して、勉強しているポーズをとった。
「じゃあ、京子さんは純君の横に座って」
編集者が言った。京子は純の横に、純の方を向いて座った。
カメラマンのKは、純の斜め後ろに三脚を立てて、カメラをセットした。純の顔は見えず、純の方を向いている京子の顔がカメラに写っているアングルである。
「じゃあカメラマンのKさん。これで撮影おねがいします」
編集者のHが言った。
「京子さん。ちょっと居丈高に、アンテナペンで教科書を指して」
カメラマンに言われて京子は、アンテナペンで教科書を指した。
「そうそう。叱ってるような表情で、口を開いて」
言われて京子は口を開いた。
「うーん。ダメだなー。口を開いてるだけで。もうちょっと本当に叱ってるような気分になって」
カメラマンが注意した。
「すみません」
京子は謝って、スーハースーハーと深呼吸して、再び、アンテナペンで指して、口を開いて、教え子を叱るポーズをとった。
「よし。そのまま」
カシャ。カシャ。
カメラマンがシャッターを切った。カメラマンは三脚の位置を変えて、カメラをセットした。
カシャ。カシャ。カシャ。
「うん。いいのが撮れた」
カメラマンは、ともかくやたらと何度も撮る。それは当然のことで、カメラマンは何枚も撮って、一番、写りがいいのを選ぶからである。
「じゃあ、今度は教え子が教師を縛り始める所を撮って」
編集者が言った。
「こういう風に撮って」
そう言って編集者は、皆に、ある写真を見せた。それは、正座した女が、後ろ手に縛られて、男が女の後ろで縄尻をとっている写真だった。女は服を着ているが、怖がった顔で、男は女の背中を踏んで、縄尻を引っ張っていた。いかにも、これから何をされるかわからない恐怖感に脅えているといった雰囲気がよく出ていた。
「さあ。京子さん。正座して。さっきのつづきと見えるよう机の近くに座って」
編集者が言った。京子は机の近くに正座して座った。
「じゃあ、縄師のNさん。彼女を後ろ手に縛って下さい」
言われて縄師のNは、ホクホクした顔つきで彼女を後ろ手に縛り、胸を挟むように胸の隆起の上下を二巻きずつ縛った。
「さあ。純君。彼女の縄尻をとって、彼女の背中を踏んで」
編集者が言った。純は言われたように京子の背後に回った。そして縄尻をとった。何だか、念願の京子を捕まえたような気になってきた。
「京子さん。ごめんなさい」
そう言って純は縄尻をとったまま、片足を京子の背中にそっと乗せた。
「あん」
純の足が京子の背中に触れると、京子は、思わず小さな声を出した。
「あっ。京子さん。ごめんなさい」
純は足をそっと離した。
「いいのよ。思わず声を出しちゃったけど。遠慮なく踏んで。縄も引っ張っていいわよ」
言われて純は京子の肩を足で踏んだ。純は京子の体の柔らかさにドキドキした。カメラマンが三脚の位置を色々と変えて、カメラのファインダーを覗いた。正座した京子はカメラの方を向いている。その後ろで、純が京子を縛った縄の縄尻をとって、京子の背中を踏んでいる。いかにも、教え子が、美人の家庭教師をつかまえた図である。
「京子さん。口を開けて、つらそうな顔をして」
カメラマンが言った。京子は、言われたように、口を開けて、眉を寄せて、つらそうな表情をつくった。
「うーん。イマイチだな。純君。もっと思い切り背中を強く踏んで、縄を強く引っ張ってみて」
純はカメラマンの指導に忠実に、京子の背中を強く踏んで、縄尻をグイグイ引っ張った。
「ああー」
京子がつらそうな喘ぎ声を出した。
「そうそう。その表情。いいよ」
カメラマンが言った。
パシャ。パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。
「よし。オーケー。お疲れさん」
カメラマンが言った。純は、ほっとして、京子の背中を踏んでいた足を降ろし、縄尻を離した。編集者がカメラマンの所へ来て、撮った写真を見た。
「純君。ちょっと来て」
編集者に呼ばれて純はカメラの所に行った。縛られた京子の苦しげな顔がリアルに撮れていた。最初の三枚は、純の顔が、写真の上枠の上に、はみ出ていたが、後の三枚は、純の顔も写真の中に入っていた。
「君の顔も写った写真も撮るけど、いい?写真集には使わないで記念にあげるよ。万一、君が了解してくれるなら目にモザイクを入れたのを出したいんだけどね」
「ええ。かまいません」
純は答えた。
「口のマスクとか、サングラスとかをかけると、もっと隠せるんだがね。写真の意図からしておかしくなっちゃうからね。まさか家庭教師の教え子がサングラスをかけていては可笑しいからね。写真を撮るアングルで顔が隠せるようにするから」
編集者は言った。純はそれほど自分の顔が出るのが嫌ではなかった。写真集を見るのは、大人のマニアだし、女の素性を知りたいとは思っても、男の素性を知りたがる人はいないだろう。それより憧れの京子と一緒の写真集が出来る事の方が嬉しかった。

「じゃあ、次は、座っている女の家庭教師を生徒が後ろから胸を触ったり、スカートの中に手を入れて悪戯している姿だ」
編集者が言った。
「純君。彼女の後ろに座って」
言われて純は、京子の背後に座った。背中では手首がカッチリと縛られている。
「京子さん。あなたは横座りになって」
言われて京子は後ろ手に縛られたまま横座りになった。
「さあ。純君。片手で彼女の胸を触って、片手を彼女のスカートの中に入れて」
言われて純は恐る恐る背後から手を伸ばして左手で京子の胸を触り、右手を京子のスカートの中に入れた。純にとって女の胸を触るのは生まれて初めてだった。柔らかい胸の隆起の感触がこの上なく甘美だった。純は右手を京子のスカートの中に入れた。そして京子の太腿の上にそっと手を乗せた。しなやかな京子の太腿の柔らかい温もりが伝わってきた。確かに、これは女を縛った男が、女に最初にする行為だった。
「ごめんなさい。京子さん」
純は京子の胸と太腿を触っていることを謝った。
「いいの。気にしないで。遠慮しないで触って」
京子が言った。
「じゃあ、これで撮るから」
カメラマンが言って、三脚を京子の前に立てた。純の顔は京子の後ろに隠れて見えない。触っている男の顔が見えない方がエロチックである。
「さあ。京子さん。悶えた顔をして」
カメラマンが言った。京子は口を半開きにして、眉を寄せ、悶えた表情をした。
「そう。いいよ」
パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。
「じゃあ、今度はパンティー一枚になって、今と同じ構図の写真を撮るよ」
編集者が言った。縄師のNが来て、京子の縄を解いた。

縄師は京子のブラウスを脱がせ、スカートを脱がせた。そして、ブラジャーを外した。京子の豊満な乳房が顕になった。腰にとどくほどの長いストレートの髪が美しい。縄師は縄を持って京子の背中に回った。そして京子の両手を背中に回して、手首を重ね合わせた。縄師は京子の重ね合わせた手首を縛ると、その縄を前に回して、京子の乳房を挟むように乳房の上下を、それぞれ二巻きずつ、カッチリと縛った。縄に締め上げられて、乳房が上下の縄の間から、搾り出されているかのように、クッキリと弾け出た。華奢な二の腕は、縄が食い込んで窪んだ。京子はパンティー一枚だけである。

いよいよ京子が裸になりだしので、純は激しく興奮した。
「さあ。純君。さっきと同じように、後ろから、彼女の胸を触って」
編集者が言った。純は京子の背中にピタリと体をくっくけた。そして、両手を前に回して、京子の豊満な乳房を触った。
「ああっ」
触った瞬間、京子が思わず、声を出した。
「ご、ごめんなさい。京子さん」
純はあわてて謝って、手を引こうとした。
「いいの。思わず、声を出しちゃったけど。気にしないで。好きにして」
京子が言った。純はほっとした。京子の柔らかくて温かい乳房の感触が最高に心地いい。
「京子さん。じゃあ、また、悶えた顔をして」
と編集者が言った。京子は言われたように口を半開きにして、苦しげに眉を寄せた。
「そうそう。その表情」
カメラマンがそう言ってシャッターを切ろうした。
「ちょっと待って」
編集者がカメラマンを制した。
「純君。ちょっと京子さんの乳房や乳首を揉んでみて。乳首が立ってないから。揉めば乳首が立ってくるから。悶えた表情も演技じゃなくって本当に興奮してた方が、もっと迫真にせまったいい表情が出るから。ちょっと、京子を後ろから弄んで本当に興奮させてみて」
編集者が言った。
「いいのよ。純君。遠慮しないで好きなことをして」
京子が言った。編集者は等身大の鏡を持ってきて、京子に向くようにして、少し離れた位置に置いた。今まで見えなかった京子の正面が純に見えた。
「こうすれば自分の恥ずかしい姿が見えるから、より興奮するだろう。純君。さあ、やって」
編集者が言った。
「ご、ごめんなさい。京子さん」
純は、京子に謝って、ゆっくり乳房を揉み出した。そして乳房を指先でスッとなぞったり、乳首をつまんだり、弄くったりした。純にとって、女の体を触るのは生まれて初めてだったので、純はビンビンに勃起して、夢中で京子の乳房を愛撫した。純は、こういう悪戯を想像で、していたので、初めてでも上手かった。純はさらに首筋をくすぐったり、尻を触ったり、脇腹をくすぐったりした。
「ああー。か、感じちゃうー」
京子は、ハアハアと喘ぎ声を出し始めた。乳首が大きく尖り出した。純は京子の後ろにいるので京子の乳首は見えないが、乳首の感触でわかった。純は大きくなり出した乳首をさらに、つまんだり、コリコリさせたりした。乳首は、それにともなって、さらに大きくなっていった。

京子は、少し後ろ手に縛られた手首を動かそうと揺らした。だが手首は縄でカッチリ縛られているために、はずれない。それは京子もわかっているはずである。京子は拘束されて弄ばれていることに、被虐の快感を感じているかのようだった。
「ああー。か、感じるー」
京子は、激しく悶え声を出した。
「よし。いいよ。その調子。演技よりずっといい。本当の表情が出ているよ」
カメラマンが言って、ファインダーを覗いた。
パシャ。パシャ。
カメラマンはシャッターを切った。
「じゃあ、次は。京子が足をM字に大きく開いて、純君がパンティーを触っている図を撮るから」
編集者が言った。京子は、ハアハアと息を荒くしながら、膝を立てて足を開いていった。京子の前の鏡に京子の白いパンティーが現われた。京子はもう我を忘れて本気で興奮しているかのようだった。
「純君。まずパンティーを肉ごとつまんで」
編集者が言った。
「京子さん。ごめんなさい」
純はそう言って、京子のこんもりしたパンティーを肉ごとつまんだ。
「ああっ」
京子が反射的に声を出した。
カシャ。カシャ。
カメラマンがシャッターを切った。
「よし。じゃあ、次はパンティーの中に手を入れて」
編集者が言った。
「京子さん。ごめんなさい」
純が言った。
「いいのよ。純君。遠慮しないで」
京子が言った。純は、片手で京子の乳房を触って、片手をそっと京子のパンティーの中に入れた。いやらしい図である。京子は、
「ああー」
と鏡を見て、パンティー一枚で後ろ手に縛られて、股を開いている自分の姿を見て、苦しい喘ぎ声を出した。純は、パンティーの中の柔らかい温かい肉の感触に激しく興奮していた。
「京子さん。もっと足を開いて、足首をピンと伸ばして。女は興奮すると足首を伸ばすでしょ」
カメラマンがファインダーを覗きながら言った。カメラマンに言われて、京子は足首を爪先までピンと一直線に伸ばした。
「そうそう」
パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。
「ようし。じゃあ、このポースでの撮影はこれでおわりだ」
編集者が言った。
純は、ほっとしたように京子のパンティーから手を出した。

「じゃあ、今度は畳の部屋に行こう」
編集者が言った。編集者と緊縛師とカメラマンと京子と純は、隣の畳の部屋に行った。パンティー一枚で後ろ手に縛られて移動する京子は、他の四人が服を着ているのに、一人だけパンティー枚で、惨めそうだった。畳の部屋には、真ん中に大黒柱があり、天井には梁があった。
「では、縄師のNさん。京子さんの後ろ手の縄を解いて、元にもどして下さい」
編集者が言った。縄師は、言われたように、京子の胸の縄を解いて、後ろ手の手首の縄も解いた。これで京子はパンティー一枚の自由な身になった。京子の手首にはクッキリと縄の跡がついていた。自由の身になっても、京子は恥ずかしそうに、手のやり場に困っていた。自然と片手を顕になった乳房へ、そしてもう片方の手はパンティーの上を覆っていた。
「では、今度は、手首を頭の上で縛って、天井の梁に吊るして下さい」
編集者が言った。京子は両方の手を前に差し出した。縄師は、京子の手首を縛った。そして、椅子を持ってきて、椅子の上に乗り、縄尻を天井の梁に通して、引っ張った。引っ張るのにつれて京子の手首が、どんどん高く上がっていき、頭の上まで引き上げられた。さらに縄師は縄を引いた。京子の腕がピンと伸び、縄がピンと張った。そこで縄師は縄を梁に結びつけた。

京子は、まさに縄で吊るされた形になった。大きな二つの乳房が隠しようもなく顕になっている。京子は頬を赤くした。縄師は、椅子をどけようと、椅子を持って離れようとした。
「待った。椅子はそのまま京子の横に置いといて」
編集者が言った。縄師は椅子を残したまま離れた。純は疑問に思った。椅子は、京子を吊るすための道具であり、吊るしてしまえば、何も無い方が、女が救われようがなく見える。だが、その疑問はすぐにわかった。
「純君。椅子の上に立って」
編集者が言った。純は言われて、椅子の上に立った。
「純君。では、カメラに後ろを向いて、梁に結びつけられている縄を両手でつかんで」
言われて純は両手で、梁に結びつけられている縄を両手でつかんだ。あたかも純が椅子に乗って京子を吊るしているかのような図になった。
「そうそう」
編集者は納得したように言った。
「では、カメラマンさん。これで撮影おねがいします」
編集者は言った。カメラマンは、純が、京子を縄で吊るしている図が上手く収まる位置に三脚を立て、カメラのファインダーを覗いた。
カシャ。カシャ。
カメラマンはシャッターを切った。純がパンティー一枚の京子を吊るしている写真が撮られた。
「じゃあ、今度は吊るされた京子を純君が後ろから、悪戯している写真を撮るから。純君は京子の後ろに回って」
編集者が言った。純は編集者に言われたように京子の背後に回った。
「さあ。後ろから、京子の胸を揉んで」
編集者が言った。言われて純は京子の背後から、京子の乳房に手を当てた。
「ああっ」
京子は思わず声を出した。
「ごめんなさい。京子さん」
純は咄嗟に謝った。
「いいの。純君。私、純君にいじめられる事が嬉しいの。遠慮なく、好きなことをして。うんといじめて。私が喘ぎ声を出しても続けてやって」
京子が言った。
「あ、ありがとうございます。京子さん」
純は言った。そして、京子の乳房を両手で揉んだ。
「ああー」
京子は眉を寄せて、苦しそうな顔で口を半開きにした。
パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。吊るされて、後ろから男の手が女の体を這い回るという図は、極めてエロティックで読者を興奮させるものである。純も、だんだん興奮してきた。
「さあ。今度はこれを使って、京子をくすぐって」
そう言って編集者は、純に二本の筆を渡した。
純は、二本の筆をとって、京子のガラ空きの脇の下を筆の先で、くすぐった。
「ああー」
京子は、体を捩って悶えた。元々、こういうスケベな悪戯に関しては、純は想像力豊かである。
「いいよ。その責め」
編集者が言った。
パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。
「じゃあ、今度は、片手で京子の乳房を揉み、片手を京子のパンティーの中に入れて」
編集者が言った。
純は筆を畳の上に置き、片手で京子の乳房を揉み、片手を京子のパンティーの中に忍び込ませた。
「ああー」
京子は、体を捩って悶えた。極めてエロティックな図である。
「いいよ。そのポーズ」
編集者が言った。
パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。いかにもエロティックな図である。
「純君。じゃあ、今度はパンティーを下げていって」
編集者が言った。純は京子の後ろで屈んで、京子のパンティーのゴムの縁をつかんでパンティーを下げて行った。パンティーが膝の上まで降りた時。
「ストップ。そこで止めて」
と編集者が言った。
純は、降ろしかかったパンティーを膝の上で止めた。この方が、いかにも脱がされかかっているように見える。SMのエロティックな写真を見る人が興奮するのは、女の惨めな姿に対してであるが、さらには、そういう写真を撮ろうとする見えざる製作者のスケベな精神に対しても、読者は興奮するのである。
「いいよ。それで」
編集者が言った。
パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。
パンティーを脱がされかかった京子の写真が撮られた。
「純君。立って。そして、片手を京子の乳房に当て、片手を京子のアソコに当てて」
編集者が言った。
純は立ち上がった。そして、片手を京子の乳房に当て、片手を京子のアソコに当てた。覆うように、ほんの少し触れるだけだった。裸の女を後ろから、弄んでいるようにも見え、また、裸の女の恥ずかしい所を、読者に見せないよう隠しているようにも見えて、両方に解釈できる図である。
パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。
「よし。純君。じゃあ、今度は前に来て」
編集者が言った。純は言われて京子の前に回った。編集者は椅子を京子の前に置いた。
「さあ。これに座って」
編集者が言った。純は椅子に座った。編集者が純に、細い、しなる竹の棒を渡した。
「さあ。これで京子の体を突いて」
編集者が言った。
「いいのよ。純君。やって」
京子が純の躊躇いを察するように先回りして言った。純は竹の棒の先で、京子の乳房や乳首を捏ねくりまわした。
「ああー」
京子は思わず、悶え声を出した。
パシャ。パシャ。
カメラマンがシャッターを切った。純はカメラに対して背中を向けているので、顔は見えない。頭の後ろが見えるだけで安全である。それは、いかにも、まだセックスを知らない子供が、大人の女にする最もエッチな行為に見えた。実際、純はまだセックスを知らない。こういう悪戯が一番、純には興奮するのである。純が竹の棒の先で京子の乳首を転がしている内に、だんだん京子の乳首が勃起してきた。
「よしよし」
編集者はニヤリと笑って、京子の前に行き、京子の勃起した乳首の根元を糸で括った。そして、その先を純に手渡した。
「さあ。これを引っ張って」
編集者が言った。
「い、いいのよ。純君。遠慮なく引っ張って」
京子が言った。
「ごめんなさい。京子さん」
そう言って純は、糸を引っ張った。糸が京子の乳首から純の手へと、ピンと一直線に張った。京子の乳首が引っ張られて、それにつれて、京子の乳房がせり上がっていった。
「じゅ、純君。遠慮しないで。思い切り引っ張って」
京子が言った。純は、京子に言われて、糸を強く引っ張った。糸がピンと一直線に張った。京子の乳首が強く引っ張られて、重力で下垂した乳房の下が持ち上がり、京子の乳房は乳首を頂点とした円錐形のようになっていった。
「ああー」
京子が思わず声を出した。
「痛くないですか。京子さん」
純が聞いた。
「大丈夫。何でもないわ」
京子が言った。
「よし。カメラマンさん。これで撮影おねがいします」
編集者が言った。
パシャ。パシャ。
カメラマンはシャッターを切った。純が余裕で座って、京子の乳首に糸をとりつけて、引っ張っている図の写真が撮られた。いかにも子供が、大人の女を、意地悪く、いじめている図である。
そのあと、京子の縄を解いて、今度は、京子のパンティーを脱がして丸裸にして、後ろ手に縛り、床に寝転がして、京子の片足を梁に吊り上げた。そして純が京子の顔を踏んでいる写真や竹の棒で、京子を突いている写真など様々な格好の緊縛写真を撮った。

「よし。もう、これぐらいでいいだろう」
編集者が言った。
やっと撮影が終わった。編集者は携帯を取り出して、スタジオの管理者に電話した。
「やあ。撮影は終わったよ」
編集者が言った。
「では、すぐ行きます」
管理者が答えた。直ぐに、スタジオの管理者が車で来た。
「どうでしたか。出来は?」
管理人が聞いた。
「ああ。最高にいいのが撮れたよ」
編集者は言った。
「じゃあ、今日の仕事はこれで、おわりにしよう。どうも有難うございました」
編集者は、カメラマンと縄師に礼を言って、金をわたした。
「では、私は出版社にもどるけど、純君と京子さんはどうするかね」
編集者は、京子と純に聞いた。
「私は電車で帰ります」
京子が言った。
「純君はどうする?」
編集者が聞いた。
「ぼ、僕も電車で帰ります」
純が答えた。
「そう。じゃあ、少ないけど、今日の謝礼」
と言って、編集者は、京子と純に封筒を渡した。純は封筒を覗いた。五万円あった。
「うわあ。こんなに。たくさん。どうも、ありがとうございます」
純は礼儀正しく頭を下げて礼を言った。編集者は嬉しそうに笑って、車に乗った。
「京子さん。ぜひ、また撮らせて下さいね」
そう言って編集者は、エンジンをかけて車を出して去っていった。

   ☆   ☆   ☆

あとには、京子と純が残された。純は、京子と二人きりになって照れくさそうにモジモジしていた。
「あ、あの。今日はどうも有難うございました」
純は照れくさそうに京子に頭を下げた。
「ねえ。純君。ちょっと、お茶でも飲んでいかない」
京子が笑顔で言った。
「は、はい」
純は、ドキンとして心臓が高鳴った。実は純は、その言葉をかけられるのを心待ちにしていたのである。二人は、夕暮れの街を歩いた。
「純君。何か食べたい物ある?」
「い、いえ」
本当は、お腹が少し減っていたのだが、遠慮した。純は照れ屋なのである。
「ここでいい?」
京子が、ある喫茶店の前で止まった。
「え、ええ」
純は顔を赤くして答えた。二人は喫茶店に入った。京子と純は窓際のテーブルに向かい合わせに座った。ウェイターが来た。
「何にいたしますか?」
ウェイターが聞いた。
「純君。何がいい?」
京子は笑顔で聞いた。
「こ、紅茶をお願いします」
純は声を震わせながら言った。
「じゃあ、紅茶二つと、チーズケーキ二つ」
京子はウェイターに言った。
「はい。かしこまりました」
そう言ってウェイターは厨房に向かった。すくに、ウェイターは、紅茶とチーズケーキを持って来た。
「純君。今日はありがとう」
京子はチーズケーキを切りながら言った。
「い、いえ。僕の方こそ、本当に有難うございました」
純も京子に合わせるようにチーズケーキを切りながら言った。
「でも、純君に、裸の恥ずかしい姿を見られちゃって、悪戯されちゃって、恥ずかしいわ」
京子は、スプーンで紅茶をかきまぜながら言った。
「ご、ごめんなさい」
純は、京子にした数々の悪戯を思い出して赤面した。
「ふふ。いいのよ。私、純君にいじめられるのが、すごく嬉しいんだから。今日は最高に興奮しちゃったわ。いじめる人も、大人の男の人ばかりだと、やっぱり、少し怖いわ。裸にされて縛られちゃったら、何をされるかわからないもの。完全に我を忘れて、身を任せることは、どうしても出来ないわ。その点、純君のような、かわいい子にいじめられるのなら、安心して、我を忘れて、身を任せることが出来るもの」
この京子の発言に純は喜んだ。
「京子さん」
純が真顔で京子を見た。
「なあに?」
「どうして、写真集の小包に、京子さんの住所、書いてくれなかったんですか?」
純は強い語調で聞いた。
「ごめんなさい。それは。純君の気持ちを知りたかったの。もしかすると純君は、私のことを知るために、出版社に電話してくるかもしれないかなって思って。まさにそうなって、私、すごく嬉しいわ。そこまで私のことを想っていてくれたなんて」
「そうだったんですか」
純はほっとして紅茶を一口、啜った。
「京子さん。僕、大磯ロングビーチで京子さんと別れてから、毎日、京子さんのことばかり想っていました。僕、京子さんが好きです」
「それは嬉しいわ。ありがとう。私も純君が好きよ」
そう言って京子は紅茶を一口、啜った。
「ねえ。純君。また、いじめてくれない。今度は二人きりで」
京子は身を乗り出して言った。
「は、はい」
純は有頂天になった。
「ありがとう。ふふ。今度は純君にどんな、悪戯をされるか、楽しみだわ」
京子は無邪気に笑った。純は、京子と二人きりで、誰にも見られずに、心ゆくまで京子に悪戯できると思うと、有頂天になった。
「あ、ありがとうございます。まるで夢のようです」
純はペコペコ頭を下げた。純は、まるで、欲しくてしょうがない玩具を手に入れた子供のような気分だった。
「じゃあ、純君の連絡先を教えて」
そう言って京子は携帯電話を取り出した。そして純に渡した。携帯は、電話帳登録画面だった。
「純君。純君の携帯のアドレス入力してくれる?」
京子が言った。
「は、はい」
純は喜び勇んで、自分の携帯番号とメールアドレスを京子の携帯電話に入力した。そして京子に返した。
「あ、あの。僕にも京子さんの連絡先を教えてもらえないでしょうか?」
純は遠慮がちに、おそるおそる聞いた。
「えっ。そ、それは・・・」
京子は眉を寄せて困惑した表情になった。
「ダメでしょうか?」
純がもの欲しそうな口調で聞いた。
京子は、しばし迷って考え込んでいるようだったが、しばしして、やっと決断したらしく、パッと顔を上げて純を見た。
「わかったわ。いいわよ。じゃあ、純君の携帯、貸して」
京子が言った。
「はい」
純は喜んでカバンから携帯を取り出し、京子に渡した。京子は純の携帯を受け取ると、ピピピッと操作して、純に返した。純はすぐに携帯を見た。京子の携帯番号とメールアドレスが入力されていた。
「あ、ありがとうございます。京子さん」
純は、ペコリと頭を下げて礼を言った。

「純君のお父さんって、どんな人?」
京子が聞いた。
「しがない会社員です」
「純君は、父子家庭だから、母親の愛に餓えているのね」
「は、はい。そうです」
「学校で好きな女の子はいないの?」
「いません」
「どうして?」
「みんな明るくて、僕みたいに暗い性格じゃ、とても彼女なんて作れません」
純はそう言って、チーズケーキを切って一口、食べた。
「京子さんは、結婚してるんですか。それとも一人暮らしですか?」
今度は純が京子に聞いた。
「ふふふ。どっちだと思う?」
京子が逆に聞き返した。
「一人暮らしだと思います」
純は自信をもって答えた。
「どうしてそう思うの?」
京子は純の目を見つめながら聞いた。
「だって、結婚してたら、夫とのセックスで満足できるんじゃないでしょうか。僕が好きだとか、わざわざ僕に会いに来てくれるなんて、性欲が満たされていないんじゃないでしょうか?」
「ふふふ。そうよ。その通りよ。一人暮らしよ」
京子は紅茶を啜りながら言った。

二人はチーズケーキを食べた。
「じゃあ、今度いつか、どこかで会いましょう」
京子が言った。
「はい。ありがとうございます」
純はペコリと頭を下げて礼を言った。二人は喫茶店を出た。少し行くと、地下鉄の駅が見えてきた。
「じゃあ、私、ここで地下鉄に乗るわ。この道をもうちょっと行けば、JRの××駅が見えてくるわ」
京子が言った。
「今日は本当にありがとうございました」
純は深々と頭を下げた。
「さようなら。気をつけてね」
京子は笑顔で手を振って地下鉄の入り口に入って行った。
純はウキウキしてJRの駅に向かった。
その晩、純はなかなか眠れなかった。

   ☆   ☆   ☆

翌日になった。
純は授業中も上の空だった。その日の晩、純は京子にメールを送った。
「京子さん。愛してます。純」
と、極めて簡単なメールだった。純は控えめな性格なので、すぐにメールを送ることを躊躇っていたのである。純はホクホクした。京子が、どんなメールを返してくれるかと思うと。だが、一日経っても、二日経っても、メールの返事は来ない。純はだんだん焦り出した。もしかするとメールアドレスを京子が書き間違えたのかもしれない。そう思って純は、京子に電話してみた。
「はい。マクドナルド××店です」
純は驚いた。
「あ、あの。そちらに佐々木京子さんという女の人はいませんか?」
「は?アルバイトの人ですか?」
「は、はい。右の頬っぺたに黒子のある人です」
「いや。いません」
「そうですか。わかりました」
まさか。電話番号も間違えるはずなどない。と、純は疑念が起こってきた。それで、もう一度、メールを送ってみた。
「そちら様は佐々木京子さまでしょうか。もしかするとアドレスが間違っているかもしれませんので、間違っていた場合はご返答いただけると幸いです」
すると、すぐに返事のメールが返ってきた。
「間違いです」
とだけ書かれていた。純は頭が混乱した。電話番号もメールアドレスも間違えるとは、考えられない。これは、間違えたのではなく、京子が故意にデタラメを入力したのだ。純はそう思った。ガッカリした。京子は、笑顔とは裏腹に純とは、もう会いたくないのだと、思っていたのだ。それから純の失意の日が続いた。京子の写真を見るのも嫌になった。大人はずるい。純にとって京子は女神のような存在だった。純の京子に対する想いは宗教の信者の想いにも近かった。その気持ちが一挙に逆転したのである。それは、愛情の法則であって、いくら相手が美しくても相手が自分に好意を持っていないのであれば、自分も相手に好意を持つことは出来なくなる。
純は京子のことは忘れて勉強に打ち込むことにした。しかし、さびしい。そんな、むなしい日々が続いた。
ある時、純が机に向かって勉強していると、携帯電話がピピピッと鳴った。発信者非通知なので、誰だか分からない。
「はい。もしもし。岡田純です」
「あっ。純君。元気?京子です」
それは忘れもしない京子の声だった。純は吃驚した。嬉しさもあったが、口惜しさもあった。
「京子さん。電話番号もメールアドレスも違うじゃないですか。どうして、わざとデタラメ入力したんですか?」
「テヘヘ。ごめんね。怒った?」
「いえ。でも、さびしいです。どうしてデタラメ入力したんですか?」
「ごめんね。純君に電話番号やメールアドレス教えちゃうと、それにふけって、勉強が疎かになるんじゃないかと思ったの」
「そうですか」
純はさびしそうに答えた。
「それと、純君が毎日、電話かけてきたら、私も困っちゃうから、どうなるか、咄嗟にわからなくて、デタラメ入力しちゃったの。ごめんね」
「そうですか。わかりました。でも、電話してくれて、ありがとうございます。ものすごく嬉しいです」
「純君。今週の日曜、あいてる?」
「ええ」
「じゃあ、今週の日曜、会ってくれる?」
「ええ。どこで会うんですか?」
「あの。日曜日、純君のお父さん、家にいる?」
「いえ。土曜から父が大阪に出張しますので、日曜はいません」
「じゃあ、今週の日曜日、純君の家に行くわ。楽しみにしてるわ」
そう言って京子は電話を切った。

なにはともあれ純は嬉しくなった。
鉛筆を握る手に力が入った。京子は一人暮らしである。ということは、おそらく独身だろう。純は将来、東大法学部を主席で卒業して、大蔵省に入り、大蔵官僚になって、京子にプロポーズしようと思った。歳の差はあっても、そんなことはどうでもいい。学校での勉強も、今まで以上に熱が入った。教師の喋ることは、一言残らずノートした。純の夢想は、京子との結婚に変わった。ハネムーンはハワイに行こうと思った。なぜ純がハネムーンをハワイにしたかというと、純は数年前、父親と一緒に一週間のハワイ旅行をしたことがあって、それでハワイを気に入ってしまったからである。純は京子との結婚生活を想像してワクワクした。ワイキキビーチでうつ伏せに寝ているセクシーなビキニ姿の京子が、
「ねえ。あなた。オイル塗って下さらない」
と頼み、純はウキウキして、オイルを塗る。サーフィンをしたりする。十分、新婚旅行を楽しむ。そして帰国する。純は寛容なのでセレブな京子に多少は浮気をすることも許す。しかし料理だけは、ちゃんと作るように命じる。京子が風呂に入っている間に、京子の服をとってしまって京子を困らす。京子が寝ている間に裸にしてしまう。いきなり襲いかかって、後ろ手に縛り上げる。そんなことを純は想像した。そんな事を想像すると純は、大蔵官僚にならなくてはと、ますます勉強に熱が入った。

   ☆   ☆   ☆

日曜日になった。
純は、京子が来るのを今か今かと待っていた。純の父親は昨日から仕事で出張していて、いない。昼頃になった。ピンポーン。チャイムが鳴った。純はワクワクしてドアを開けた。薄いブラウスにフレアースカートの京子が立っていた。
「こんにちは。純君」
京子は微笑んでペコリと頭を下げた。久しぶりに会えた京子に、純は小躍りして喜んだ。
「やあ。どうも、わざわざ来て下さって本当に有難うございます。最高に嬉しいです。さあ。どうぞ。中へ入って下さい」
「じゃあ、お邪魔します」
そう言って京子は家に上がった。純は京子を居間に案内した。京子は純にすすめられてソファーに座った。
「お父さんは?」
京子はキョロキョロ家の中を見た。
「父は仕事で昨日から大阪に行っています」
純は答えた。純は、台所に行って、紅茶を持ってきた。京子は紅茶を一口、啜った。
「京子さん。来て下さってありがとうございます。本当に嬉しいです」
純は京子の隣に座って、京子の手をヒシッと握った。
「いえ。いいの。それより、この前は、携帯とメールをデタラメ入力しちゃって、ごめんね」
「いえ。いいです。気にしてません」
「ありがとう。純君。もっと怒ってるかと思ってたの」
「いえ。今日、京子さんが来てくれただけで、僕はもう最高に幸せです」
「ありがとう。純君。じゃあ、お詫びも兼ねて、この前の約束通り、純君にいじめられるわ。さあ。私を好きにして」
京子が言った。純はゴクリと唾を呑み込んだ。しばし京子をじっと見つめていたが、純は、京子が来てくれたことの嬉しさ、や、さみしさからジーンと涙が溢れ出てきた。純は、堪らなくなって、わっと、京子に抱きついた。
「ああっ。京子さん。好きです」
純は叫んで、京子の胸に顔を埋めた。京子は、ふふふ、と笑って、純の頭をやさしく撫でた。しばし純は、そのままでいた。純は至福の思いだった。やっと京子と二人きりになれたのである。純は、ずっと京子に抱きついていたいと思った。
「純君。この前のお詫びをしたいわ。私をいじめて」
京子が言った。だが純はどうしていいか、わからない。京子をいじめることなど優しい純には出来なかった。
「どうすればいいんですか?」
純が聞いた。
「私を裸にして。そして縛って」
京子がねだるように言った。だが、気の弱い純は、自分の意志で京子の服を脱がすことなど出来ない。撮影の時は縄師が京子を裸にしたり縛ったりと、お膳立てしてくれたから京子を弄ぶことが出来たのである。それを覚ったかのように京子は、ふふふ、と笑った。
「じゃあ、私が脱ぐわ」
そう言って京子は服を脱ぎ出した。京子はブラウスを脱ぎ、スカートを脱いだ。そして、ブラジャーを外し、パンティーも脱いで丸裸になった。そうして京子は、カーペットの上にペタンと座り込んだ。
「は、恥ずかしいわ」
そう言って京子は両手を背中に回して、背中で手首を重ね合わせた。
「ふふふ。さあ。純君。縛って」
京子は、ねだるように言った。これで純も京子を縛る決心が出来た。
「じゃあ、縛らせてもらいます」
そう言って、純は背中で重なり合っている京子の手首を麻縄で縛った。これでもう、京子は手が使えなくった。
「ふふふ。純君に縛られちゃった。恥ずかしいわ。怖いわ。あんまりいじめないでね」
京子は笑って言った。相手がおとなしい純なので、京子は安心しているのだろう。無防備な様子である。だがピッチリと太腿を閉じ合わせている。
「京子さん。恥ずかしいですか?」
「え、ええ」
「じゃあ、パンティーを履かせてあげます。立って下さい。恥ずかしいでしょうから後ろを向いて下さい」
言われて京子は後ろ向きに立ち上がった。大きな尻が純の目の前でムッチリと閉じ合わさっている。純は京子の脱いだパンティーを拾うと、京子の足を通して、スルスルっと上げて、ピッチリと京子にパンティーを履かせた。京子は再びペタンと座り込んだ。
「あ、ありがとう。純君。純君って優しいのね」
そう言って京子はニコッと微笑んだ。純の目の前には京子の豊満な乳房が丸出しになっている。思わず純はそれを見てゴクリと唾を呑み込んだ。
「ああっ。好きです。京子さん」
純はそう言うや、京子に抱きついて、顔を胸の谷間に埋めた。
「ああっ。温かい。柔らかい。好きです。京子さん」
純は興奮しながら叫んだ。京子は純に抱きつかれた拍子に、そのまま床に仰向けに倒れた。純はしばし、京子の胸に顔を当てて、京子を抱きしめていたが、少しすると、顔を起こして、京子の乳首をチューチュー吸いだした。それは、大人のペッティングというより、母親の母乳を求める赤ん坊のようだった。実際、純は生まれて此の方、母親を知らない。
「ふふ。純君の甘えん坊」
京子がからかうように言った。
「そうです。僕は、甘えん坊なんです」
純は開き直って言った。しばし、京子の乳首を吸った後、身を起こして、パンティー一枚で、後ろ手に縛られ、仰向けに寝ている京子の体をしげしげと眺めた。京子の体は美しかった。
スラリと伸びたしなやかな脚。細い華奢なつくりの腕と肩。細くくびれたウェスト。それとは対照的に太腿から尻には余剰と思われるほどたっぷりついている弾力のある柔らかい尻の肉。パンティーは、はち切れんばかりに、その大きな尻の肉を収めて女の腰部を美しく整えている。それらが全体として美しい女の肉体の稜線を形づくっていた。純は、しばし、ゴクリと唾を飲み込んで、美しい人形のような京子の体を眺めていたが、その柔らかい肉の感触を調べるように、そっと京子の体のあちこちを触りだした。純は、京子の腹や太腿、など京子の頭の先から足の先までを隈なく触っていった。そして、京子の体をペロペロ舐めた。
「ふふふ。京子さんのお臍」
「ふふふ。京子さんの足の指」
などと言いながら。
それは、まるで欲しがっていた玩具を手に入れて有頂天になっている子供のようだった。
京子は、
「ふふふ。くすぐったいわ」
と言って身を揺すった。
「ああっ。京子さんは僕の物だー」
純は耐え切れなくなったかのように、叫んで、京子をあらためて抱きしめた。純はしばし、京子を抱きしめていたが、思い立ったように、パッと京子から離れた。そして、急いで、京子のハンドバックを開けた。中にはハンカチとコンパクトと財布しか入っていなかった。純は急いで財布を開けた。中には三万円の札と小銭だけしか入っていなかった。携帯電話は無い。京子の身元を確認できる物が何も無い。
「京子さん。どうして携帯も持ってこなかったんですか?」
純が聞いた。
「テヘヘ。縛られて、純君に身元を知られたくなかったから、何も持って来なかったの」
京子は笑いながら言った。
「京子さん。僕はどうしても、あなたと、また会いたいです。身元を教えて下さい」
純は尋問するように言った。
「それは許して」
京子が落ち着いた口調で言った。
「いや。教えて下さい。僕はどうしても、京子さんとの縁を切りたくない」
純は真剣な口調で言った。
「お願い。それだけは許して」
京子が言った。
「そうですか」
純は諦めたような、しかし強気な口調で言った。純は京子のパンティーをスルリと抜き取った。京子は丸裸になった。純は縄を手にして、京子の足首をムズとつかんで京子の両足首を纏めて強く縛った。
「な、何をするの?」
京子が聞いた。
「京子さんが逃げられないようにして、そして、京子さんを拷問するためです。京子さん。僕は、京子さんが住所と電話番号を言うまで拷問します」
「や、やめて。純君。許して」
京子は脅えた口調で言った。
「ダメです。これだけは。やめて欲しかったら、住所と電話番号を喋って下さい。そうすれば直ぐ止めます。さあ。どうですか」
純は問い詰めた。
「ゆ、許して。お願い」
京子は悲しそうな顔で純に訴えた。
「そうですか。それでは拷問します」
そう言って純は、京子の脇腹をコチョコチョとくすぐり出した。
「あはははは。や、やめてー。純君」
京子は、身をくねらせながら訴えた。だが純は京子の訴えなど無視して、くすぐり続けた。京子は、苦しそうに笑いながら、身をくねらせながらも、
「やめてー」
と言うだけで口を割ろうとしない。しばしして、純はふーと溜め息をついて、くすぐりをやめた。
「この程度の責めじゃダメなようですね。じゃあ」
と言って純は、京子の乳首をコリコリと指先でくすぐり出した。
「な、何をするの?」
京子が聞いた。だが純は答えない。純は黙って乳首を乳首や乳房をくすぐり続けた。
「ああっ」
京子は、眉を寄せて苦しげな喘ぎ声を出した。同時に、京子の乳首が大きく勃起してきた。「よし」
純は、くすぐりを止めた。そして糸を持ってきて、京子の勃起した乳首の根元に巻きつけた。
「な、何をするの?」
京子は、不安げな表情で純を見た。純は答えず、乳首の根元を巻いた糸の両側を引っ張っていった。だんだん乳首の根元が引き絞られて、縊れていった。
「ああっ」
京子は、脅えた表情で声を出した。だが純は容赦なく、どんどん引っ張っていった。乳首の根元は、益々、縊れていった。
「い、痛いー」
京子は、大きな声を出した。だが純は止めない。さらに強く引っ張っていった。
「や、やめてー。純君。お願い」
京子は辛そうな顔で訴えた。
「住所と電話番号を言って下さい。言ったら直ぐ止めます」
純は何としても京子の身元を吐かせたい一心で真剣そのものだった。
「さあ。早く言って下さい。言わないと乳首がちぎれちゃいますよ」
そう言って純は、さらに強く糸を引っ張った。だが京子は、
「許して。お願い。許して」
と哀願するばかり。とうとう京子は、
「痛いー」
と叫んでクスンクスン泣き出した。純はとうとう、諦めて糸を緩めた。純は、京子の体に傷をつけることは出来なかった。

しかし京子の身元を吐かせることも諦められない。純は京子をうつ伏せにした。
「な、何をするの?」
京子が脅えた口調で聞いた。純は、京子の背中で後ろ手に縛られている右手の人差し指と中指をつかんで、グイと開き出した。指裂きである。
「さあ。京子さん。身元を言って下さい」
そう言って純は、さらにグイグイと京子の指を開いていった。だが、今度も、京子は、
「ああー。痛いー」
「許してー。お願い」
と泣き叫ぶばかり。かなりの時間、責めたが京子は喋ろうとしない。純は仕方なく諦めて、指裂きを止めた。

純は、やれやれといった表情で立ち上がって、居間を出た。そして、椅子と縄とハサミを持って戻ってきた。純は椅子を京子の隣に置いた。そして純は、持ってきた縄の片端に小さな輪を作った。そして、もう一方の縄の先端を、作った輪の中に通して、首吊りの縄のようにした。そして純は、その縄を京子の首に巻いた。
「こ、今度は何をするの?」
京子は脅えた表情で純を見た。
「今度こそ、京子さんの身元を吐かせるんです」
そう言って、純は縄尻を持って、椅子の上に乗り、天井の梁にひっかけた。そして椅子から降りて、縄の先を京子の足首を縛っている縄に通した。
「さあ。京子さん。うんと頭と足を高く上げて体を反らして下さい」
純が命令的な口調で言った。
「な、何をするの?」
京子は脅えた顔つきで、純に聞くだけで、頭と足を上げようとしない。
「それでは、仕方ありませんね」
そう言って、純は京子の肩と足首を持ち上げて、上半身を思い切り反らせた。
「な、何をするの?」
京子は脅えた口調で聞いた。純は黙って、高く上がっている京子の足首の縄に、梁から回してきた縄をカッチリと結びつけた。縄がピンと張った。京子は、うつ伏せで、顔と足を高々と上げている、苦しい弓反りの姿勢になった。純はパンパンと手を払って、ドッカと京子の前のソファーに座った。
「ああー」
京子は悲鳴を上げた。京子は後ろ手に縛られて、腹だけ床につけた、激しい弓なりの姿勢である。しかし、その姿勢をやめて、高々と上がった頭や足を少しでも降ろしたら、首が絞まってしまう。そのため、京子はどんなに苦しくても、弓なりに反った姿勢を保たなくてはならない。
「ああー。純君。お願い。やめて。こんなこと」
京子は叫んだ。だが純は、ふふふ、とふてぶてしく笑った。
「ふふふ。やめて欲しかったら、京子さんの住所と電話番号を言って下さい。そうしたら、すぐに縄を解きます」
純はふてぶてしく言った。これは賢い責め方だった。乳首責め、や、指裂き責めと違って、純の意志で責めるわけではない。純はただ見ているだけでいいのである。京子の意志がどこまで耐えられるかにかかっている。しかし、こんな苦しい姿勢をいついつまでも続けられることが出来るはずがない。時間の問題で京子は、根を上げるだろう。純はそれを、眺めて待っているだけでいいのである。純は立ち上がってキッチンに行き、オレンジジュースとスナックを持ってきて、ドッカと京子の前のソファーに座った。そして、さも余裕綽々のように、足を組んで、ジュースを飲みながら、目の前の京子を見た。京子は激しく体を反っている。全身がプルプル震えている。
「じゅ、純君。お願い。許して」
京子は、体をヒクヒクさせながら悲しそうな目で純を見て訴えた。
「京子さん。これは遊びじゃなく本気です。僕はあなたの身元がどうしても知りたい。今日は父が帰ってきませんから、喋るまで一日でも、二日でも、責め続けます。いずれ時間の問題で、喋ることになるんだから、はやく降参しちゃいなさいよ」
純は、ジュースを飲みながら、ふてぶてしい口調で言った。純は、さも余裕を示すかのように、煎餅を口に入れて、ゆっくりポリポリ噛んで音をさせた。京子は、激しく体を反らせて、全身をプルプル震わせている。
「純君。私を好きなだけ鞭打って。純君の奴隷になります。どんなみじめな姿にも、どんな責めも受けます。だから、この責めだけは、許して」
京子は声を震わせて言った。だが純は、黙って京子を見ながら、ジュースをゆっくり飲んだ。
かなりの時間が経った。京子の体からは脂汗が沸々とにじみ出てきた。純は、京子が相当なハードマゾだと思った。京子は激しく体をガクガク震わせて、
「許して。許して」
と叫び続けるだけである。
「仕方がないなあ」
純は、やれやれといった様子で立ち上がった。純は蝋燭を二本もってきた。そして、その一本を京子の足を吊っている縄に結び付けた。そして、京子の首にかかっている縄の方にも同じように、蝋燭を一本、結びつけた。
「な、何をするの?」
京子は、不安に脅えた目を純に向けた。
「こうするんですよ」
そう言って純は、ライターをポケットから取り出して、蝋燭の芯に点けた。蝋燭に火がぽっと灯った。純はすぐにまた、ソファーに戻ってドッカと座った。熱せられた蝋燭が溶け出して、ポタポタと蝋涙が滴り落ち出した。足の方の蝋燭は、京子の尻に滴り、首の方の蝋燭は、京子の背中に滴り落ち出した。
「ああー。熱いー。純君。お願い。やめてー」
京子は、悲鳴を上げて叫んだ。だが、どんなに身をくねらせても、蝋燭の灯った縄もそれにともなって共に動くので、蝋涙は、容赦なく京子の尻と背中に滴り落ち続けた。ただでさえ、辛い、弓反りの責めに、さらに蝋燭責めが加わった。京子は、
「熱いー。やめてー」
と、激しく身をくねらせながら叫び続けた。だが、純は悠揚とした表情で、苦しみにのたうつ京子を眺めている。
「お願い。純君。やめてー」
京子は、身をくねらせながら叫び続けた。
「やめて欲しかったら、京子さんの身元を言って下さい。そうすれば、すぐにやめますよ」
純は冷徹に言った。しばしの時間が経った。京子の尻と背中は、蝋涙でいっぱいになった。だが京子は、身をくねらせて、許しを乞う悲鳴を上げつづけるだけで、降参しようとしない。純は、いいかげんイライラし出してきた。純は、立ち上がり、ハサミと手鏡を持って、身をくねらせている京子の所に行った。そして、ふっと息を吹きかけて、蝋燭の火を消した。これで、蝋燭責めはなくなった。しかし、苦しい弓なりの責めはつづいている。純は京子の顔の前に座った。
「も、もう、許して。純君」
京子は、弱々しい瞳を純に向けた。
「ずいぶん、頑張りますね。京子さん。でも僕は、あなたの身元を絶対、知りたいから、必ず喋らせますよ」
そう言って純は、手鏡を京子の顔の前にさしだした。
「こ、今度は何をするの?」
京子は、脅えた口調で聞いた。
「本当は、こんな事、したくないんですけどね。京子さんが喋らない以上、仕方がありません」
そう言って純は、京子の長い黒髪の一部をつかんで、それをハサミで挟んだ。
「さあ。喋って下さい。喋らないと、髪を切っちゃいますよ」
「ゆ、許して。純君。それだけは。お願い」
京子は、弱々しい瞳を純に向けた。
「髪は女の人の命ですからね。でも、京子さんが喋ってくれない以上、仕方がありません」
そう言って、純はハサミをジョキンと閉じた。京子の髪の一部がバッサリと切れて床に落ちた。
「ああー」
京子は弱々しい瞳を純に向けた。純はまた、京子の長い黒髪の一部をハサミで挟んだ。
「さあ。これで脅しじゃないってことがわかったでしょう。喋らないと、髪を全部、切っちゃいますよ」
純は冷めた視線で京子を見て、冷徹な口調で言った。
「許して。お願い。純君」
京子は、涙をポロポロこぼしながら訴えた。京子は女の命である髪を切られても、喋ろうとしない。
ここに至って純は、はっと気がついた。
『京子には、どうしても身元を言えない何かの事情があるんだ』
純はそう確信した。
純は、急いで京子の足首を縛っている縄を解いた。縄の緊張がとれて、京子は、長い間、反っていた足をどっと床に落とした。そして高く上げていた顔も床に落とした。純は、京子の首にかかっている縄をはずした。
「ありがとう。純君」
京子は、そう言うと、グッタリと床にうつ伏せになった。純は京子の後ろ手の縄も解いた。これで京子は完全に自由になった。だが京子は、長い時間の疲れから、床にうつ伏せになって、グッタリしている。
「ごめんなさい。京子さん。京子さんには、どうしても身元を言えない何かの事情があるんですね」
純は、グッタリと、うつ伏せになっている京子の尻と背中にいっぱいにこびりついている蝋涙を丁寧に剥がしていった。そして、風呂場に行って、湯を入れた洗面器とタオルを持ってきた。京子は、長い時間、激しく体を反った苦しい姿勢をしていた極度の疲労のため、全身が珠の汗でいっぱいだった。純は、タオルを湯に湿して、京子の汗まみれになった体を丁寧にふいた。京子は長い時間の拷問で、グッタリして微動だにしない。純は、京子にパンティーを履かせ、ブラジャーをつけた。純は敷布団と掛け布団を持ってきた。そして、敷布団を京子の横に敷いた。そして京子を敷布団の上にのせて、掛け布団をかけた。
「京子さん。ごめんなさい。京子さんには、どうしても身元を言えない何かの訳があるんですね。それを気づくことが出来ずに、さんざん苦しめてしまって」
純は看病人のように京子の横に座って言った。
「いいの。気にしないで」
京子は微笑して言った。
「どうして、どうしても言えない事情がある、と言ってくれなかったんですか」
純が聞いた。
「ごめんね。純君。純君に、デタラメの携帯番号と、メールアドレスを言ってしまって、純君を困らせてしまった、お詫びをしたかったの」
京子が答えた。純は、床にある、切られた京子の髪の束を見た。
「京子さん。ごめんなさい。京子さんの大切な髪を切ってしまって」
純は頭を下げて謝った。
「いいの。少しだし、全然、目立たないわ」
「もし僕が気づくのが遅かったら、もっと切っていたかもしれません」
純は悄然とした表情で言った。
「もう、京子さんの身元を聞きだすことはしません。ゆっくり休んで下さい」
そう言って、純は、せめてものお詫びのように、京子の体を優しく揉みほぐした。
「もう、こんなことしたら、京子さんと会えないかもしれません。これは京子さんの記念として、大切にとっておきます」
そう言って純は、床にある京子の髪を集めて拾った。
「ううん。全然、気にしてないわ。純君とは、また会いたいわ」
京子はニコッと笑って言った。
「ありがとうございます」
そう言って純は京子の手をギュッと握った。京子も純の手をギュッと握り返した。

その日、京子と純は、近くのレストランで食事をした。食事中、京子はとても嬉しそうだった。
「純君。学校は楽しい?」
「ええ」
「お父さんには、私のこと、言わないでね」
「はい」
「食事とかは、どうしてるの?」
「ほとんどコンビニ弁当です」
「掃除は?」
「たまにしてます」
「純君は将来、何になりたいの?」
「東大に入って、大蔵省の官僚になりたいです」
「ふふ。すごいのね」
「そして京子さんと結婚したいです」
京子は、ふふふ、と笑った。
「それは無理よ。歳が離れすぎているもん」
「愛し合うことに年齢は関係ないと思います」
純は真面目な口調で言った。
なごやかな話をして、純は京子と別れた。
家に帰って、純はゴロンとベッドに寝た。京子が、何故、身元を明かしてくれないかが気になって仕方がなかった。

   ☆   ☆   ☆

月曜になった。
三時間目の体育の授業の時。ランニングしていると。
「おい。あそこの木の陰に女がいるけど、じっと純の方を見ているぞ」
同級生がそう言って指差した。言われて純が視線を向けると、何と京子らしき女がいた。サングラスをかけて、帽子を被っていたが、体つきといい、ちょっとした仕草で京子とわかった。女は、純と視線が合うと、気まずそうに去っていった。純は吃驚した。
その日の夜、京子から電話がかかってきた。
「純君。こんばんは」
「京子さん。今日、体育の時間に僕を見ていたの、京子さんですよね」
「ええ。気づかれないようにしようとしたけど、ばれちゃったわね」
京子は笑いながら言った。
どうやら、京子はかなり純に好意を持っているようである、と純は不思議に思った。

   ☆   ☆   ☆

そんなある日のことである。純の父親が電車の脱線事故で死んでしまったのである。青天の霹靂だった。一瞬のことだった。
純はこれで父親も母親もいない天涯孤独の身となった。純は父親の兄である伯父の家に移り住むことになった。純の一番近い親戚は、この伯父夫婦しかいなかったのである。ほとんど話したこともないし、伯父夫婦には、不良の高校生の一人息子がいた。叔父の家は寒い北海道である。純は気が進まなかった。だが、仕方がない。
そんな時、京子から、電話がかかってきた。
「純君。お父さんが亡くなっちゃったのね」
「ええ」
「明日、純君の家に行ってもいい?」
「ええ」
翌日は、祝日で学校は休みだった。
純はどうして、京子が、父親が死んだことを知っているのか疑問に思った。その日の夜は、将来に対する不安で心配で、なかなか寝つけなかった。

   ☆   ☆   ☆

翌日になった。
昼過ぎに京子がやって来た。
純は、京子を家に通し、紅茶を出した。
「純君。もう、本当のこと、言うわ」
そう言って京子は話し始めた。
「・・・私ね。純君の本当の母親なの」
純は吃驚した。
「ええー。どういうことですか?僕の母親は、僕が二歳の時に死んでしまったんです。僕は、父からそう聞かされました」
「それは、ウソだわ。純君を傷つけないための」
「どういうことですか?」
「私、純君を産んだけれども。その翌年に、バブルがはじけて。お父さんの会社が倒産しちゃったの。そして多額の借金を抱えて。豪華な家も売り払って。自己破産して生活保護になったの。職安で仕事を探してまた、働き出したけど、ゼロからの出発でしょ。給料も少ないし、生活が苦しくなっちゃって。それで共働きしなくてはならなくなったの。私、パートをするようになって。純君も育てなくてはならない、と思うと。家庭が嫌になっちゃったの。私っていい加減な女なのね。私、割りのいいアルバイトとして、SM写真集のモデルに応募したの。アダルトビデオの女優にもなったわ。その生活の方が面白くなっちゃってSMの世界にどんどん入っていっちゃって。純君と、お父さんに黙って、家出してしまったの。それ以来、お父さんには会わす顔がなくて、ずっと連絡しなかったの」
「そうだったんですか。じゃあ、僕は本当のお母さんにエッチなことをしてきたんですね。これって完全な近親相姦ですね。恥ずかしいです」
「でも近親相姦と知っても、そんなに恥ずかしくないでしょう」
「ええ」
「それは、私が純君とずっと、離れていたからよ」
「どういうことですか?」
「血のつがった親ではあるけれど、育ての親ではないからよ。近親相姦という感覚は、物心つく幼児の頃から、ずっと一緒に暮らしてきた育ての親に対して起こる感情なのよ」
「そうですね。でも、どうして京子さんは、僕の母親であることを言ってくれなかったんですか?」
「それは、私には、純君の母親の資格がないと思ったの。純君を見捨ててしまって、すまないと思っていたから、その罰として純君にいじめられたかったの」
「そうですか」
「私が、二人の男に小屋で襲われていたでしょ。あれは実は、お芝居だったの。純君と関わる機会が持ちたくて。あの男二人は、出版社の社員なの」
「そうだったんですか」
「ねえ。純君。これからは、一緒に暮らさない?」
「それは、願ってもない嬉しいことです。でも、どうして、父に会おうとしなかったんですか?父は、、きっと京子さんを許してくれたと思います」
「純君のお父さんは、もっと、真面目で誠実な女の人と再婚するかもしれないし。その方が、純君にも、お父さんにも、いいと思っていたの。純君のお父さんは謹厳な人だから。私、家を出た後、一度だけ、純君のお父さんに電話したことがあるんだけど、『君とは会いたくない。君には母親の資格がない。純にも決して近づかないでくれ』と言われたの」
「そうだったんですか」
「ねえ。純君。私が、今、住んでいるアパートを引き払って、ここで暮らしてもいい?」
「願ってもないことです」
京子は、住んでいたアパートを引き払って、純の家に越してきた。
こうして純は母親と繰らすようになった。


平成23年11月22日(火)擱筆

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卍(まんじ)(小説)(1)

2020-07-07 08:16:14 | 小説
卍(まんじ)

ある学校である。
ある日の放課後。女生徒三人が、帰りがけにマクドナルドに寄って、ペチャクチャお喋りしている。
「ねえ。純君って、気が弱くて、おとなしいでしょ。私、純君を見てると、いじめてみたくなっちゃうの。昨日も、純君をいじめることを想像して、オナニーしちゃった」
そう言って京子は、ふふふ、と笑った。
「私も。純君を見てると、いじめたくなっちゃうわ。純君って、きっとマゾなのよ。おとなしい子って、マゾが多いから」
悦子が言った。
「圭子は、純君のこと、どう思ってる」
「私もいじめてみたいわ。弱い子って、母性本能をくすぐられちゃうわ」
「じゃあ、三人で、いじめさせて、って聞いてみようかしら」
圭子が言った。
「バカ。そんなこと、出来るわけないでしょ。それに純君が本当にマゾかどうかは、わからないじゃない」
悦子が言った。
「じゃあ、純君がマゾかどうか、調べてみるわ」
言いだしっぺの京子がチーズバーガーを食べながら言った。
「ええー。一体、どうやって」
悦子が身を乗り出して聞いた。
「ふふふ。いい方法があるのよ」
京子は、思わせ振りな含み笑いをして言った。
「えっ。京子。どういう方法なの。教えて」
圭子も身を乗り出して聞いた。
「ふふふ。それは秘密。近いうちに、純君がマゾかどうか、わかるわ」
京子は自信に満ちた口調で言った。
「じゃあ、純君がマゾだとわかったら、三人して、純君をいじめちゃいましょう」
京子が言った。
その後、少しお喋りして三人は別れた。

   ☆   ☆   ☆

純は体の弱い中学生である。純は学科の勉強は、出来て好きだった。だが、唯一、体育だけは嫌いだった。体育の授業ではマラソンをした。6キロを走るのである。体力が無く、ふだん運動などしない純は、このランニングが大嫌いだった。だが体育教師は厳しく、完走しないと許さない。純は、ヘトヘトになって、走り通した。純が、このハードなランニングが嫌いなのは、走った後、3日くらいは、太腿と脹脛の筋肉痛に悩まされるからである。筋肉痛があると、勉強してても、鈍痛がつらく、すっきりした気持ちで勉強できないからである。
その日も体育では、マラソンをやらされた。純は当然ビリで、ヘトヘトに疲れた。ランニングの後、京子が純の所にやって来た。
「ねえ。純君。マラソンで疲れてるんでしょう。駅前の横丁に、あたらしくマッサージ店が出来たわよ。行ってみたら。マッサージをしたら筋肉痛もとれるんじゃない」
京子が純に話しかけた。
「そう。今日、放課後に書店に行くから、寄ってみるよ」
そう純は答えた。
「そう。じゃ、お店はここよ」
そう言って京子は、サラサラッと地図を書いて純に渡した。

   ☆   ☆   ☆

その日の放課後、純は、参考書を買うために、駅前の書店に行った。だんだん筋肉痛が起こり出してきた。立っていても、不快な鈍痛がジワジワと純の足を悩ませた。純は参考書を買うと、書店を出た。これから三日間、不快な思いで過ごさなくてはならなくなると思うと、うんざりした。純は、ポケットから京子に貰った地図を出した。それを見て横丁に入った。ふと見ると、マッサージ店の看板が出ている。最近、出来たようである。一時間、6000円と書いてある。マッサージしてもらえば、この嫌な筋肉痛が早くとれるだろう。幸い、純の家は金持ちで、小遣いは十分あった。6000円で、この嫌な筋肉痛がとれるなら、安いものだな。そう思って純は、マッサージ店に入った。店はビルの三階だった。ブザーを押すと、ピンポーンとチャイムの音が室内に起こったのが聞えた。パタパタと足音がして、カチャリとドアが開かれた。中から顔を出したのは、二十歳くらいの若いきれいな女性だった。
「いらっしゃいませー」
女性は純を見ると、にこやかな顔で挨拶した。男のマッサージ師だとばかり思っていた純は、こんな若いきれいな女の人が出でくるとは、予想もしていなかったので吃驚した。
「おいで下さって有難うございます。さあ。さあ。どうぞ。お入り下さい」
女性に勧められるまま、純は靴を脱いで、部屋に入った。部屋の中にはソファーがあった。
「さあ。どうぞ、お座り下さい」
女性に言われて純はソファーに座った。何だか、普通のマッサージ店と感じが違う。ここは、何をする所なのだろうと純は疑問に思った。
「あ、あの。ここはマッサージしてくれる所ですよね?」
純は顔を赤らめながら聞いた。
「ええ。そうですよ」
女性はニッコリ笑って答えた。
「あ、あの。マッサージする人は誰ですか?」
純は、この女性は、受け付けの役で、マッサージ師は、別の男の人ではないかと思って聞いた。
「私です」
女性はニッコリ笑って答えた。純はドキンとした。このような、きれいな女の人にマッサージしてもらえると思うと、想像しただけで心臓がドキドキしてきた。
「お客様。お茶は冷たいのがいいですか。それとも温かいのがいいですか」
女性が聞いた。
「冷たいのをお願いします」
マッサージの前に、お茶まで出してくれるとは。随分とサービスのいいマッサージ店だと純は驚いた。すぐに女性が、冷たい麦茶を持ってやってきた。
「どうぞ」
女性に麦茶を差し出されて、純はゴクリと麦茶を飲んだ。冷たい麦茶が咽喉を潤した。
「コースはどの、コースにしますか?」
女性は、メニューを開いた。
「リラクゼーションコース、60分、6000円」
と書いてある。
「あ、あの。リラクゼーションコースって、どんなマッサージ何ですか?」
「指圧と、リンパマッサージのコースです」
「リンパマッサージって、どういう何をするんですか?」
「リンパ節を指圧して、リンパ腺の流れを良くするマッサージです」
女性に説明されても純は、ピンとこない。だが、そんな事は、どうでもよかった。何らかのマッサージなのだろう。ともかく純の頭は、目の前にいる、きれいな女性にマッサージしてもらえる喜びと興奮でいっぱいだった。
「では、そのコースでお願いします」
そう言って純は、財布から6000円取り出して、女性に渡した。女性は笑顔で、それを受け取った。
「はじめての方なので、4000円割り引きします」
そう言って女性は、純に4000円、返した。純は吃驚した。いくら割り引きといっても、4000円は多すぎる。
「それではお部屋へどうぞ」
女性に言われて純は立ち上がった。女性は純の手をとった。部屋の前につくと女性は、戸を開けた。6畳のタタミの部屋の真ん中に布団が一枚、敷いてある。他には何も無い。純は、おどおどと部屋に入った。これから、女生と二人きりでマッサージして貰えると思うと、興奮して股間が熱くなり出した。
「では、服を脱いで籠に入れて下さい」
言われて純は学生服を脱いだ。そして籠に入れた。純はパンツ一枚だけになった。
「あの。お客さん。全部、脱いで下さい」
女性が言った。
「えっ」
純は驚いて聞き返した。
「あの。パンツも脱いで下さい」
女性が言った。純は吃驚した。丸裸になってマッサージを受けるのかと思うと、恥ずかしいやら、興奮やらで、心臓がドキドキしてきた。しかし、ともかく、言われた通り、パンツも脱いで籠に入れた。丸裸を目の前の女の人に見られている興奮のため、純の股間の棒は、激しくそそり立った。純は恥ずかしくなり、それを隠すように両手で勃起したマラを隠した。
「では、うつ伏せに寝て下さい」
純は、恥ずかしさから逃げるように、布団の上にうつ伏せになった。うつ伏せになれば、尻を丸出しにした丸裸は見られても、勃起したマラは隠すことが出来る。勃起してそそり立ったマラを腹につけるようにして純は、うつ伏せになった。丸出しの尻を見られているのが恥ずかしかった。だが、純はマゾで、裸を見られることに激しく興奮するのである。フワリと柔らかい物の感触が背中に乗った。バスタオルを女性が純の背中にかけたのである。バスタオルを一枚、丸裸の体の上にかけられて、丸裸が隠されて、純はほっとした。丸裸のまま、マッサージされるのは、純には刺激が強すぎる。だが、丸裸の上にタオル一枚だけかけられて、マッサージされるということに、純は激しく興奮した。タオルの下は、パンツも履いていない丸裸なのである。
「お客様。どこか、凝っている所はありますか?」
女性が聞いた。
「あ、脹脛が凝っています」
「わかりました。では、マッサージをはじめます」
こうして女性はマッサージを始めた。女性は、純の脹脛と太腿を念入りに揉みほぐした。ほどよい指圧に、筋肉痛がすーとひいていくようで、この上なく心地よかった。女性は、純の両足を念入りに揉みほぐしてから、純の背中に馬乗りになった。
「うっ」
と純は声を洩らした。
「あっ。ごめんなさい。重かったですか?」
女性があわてて聞いた。
「い、いえ。全然、重くありません」
純は首を振った。
「そうですか」
女性は安心したように純の背中に乗っかった。純が声を洩らしたのは、重さのためではない。女性の柔らかい尻が純の背中にピタリと、くっついた心地よい刺激に対する興奮のためだった。彼女は、純の背中に乗ったまま、背骨や肩、腕を揉んでいった。彼女の柔らかい尻の重みが純には心地よかった。背中に馬乗りされているのも、女性に虐められているようで、純は激しく興奮した。彼女は念入りに純の上半身を揉みほぐした。しばし、純の上半身を揉みほぐした後、彼女は純の背中から降りた。今度は何をするのかと、純はドキドキしながら待った。
「あっ」
純は、思わず声を出した。女性が、純の裸を覆っていたバスタオルの下を捲り上げたからである。純の尻が丸出しになった。純は、恥ずかしさと被虐の興奮で激しく心臓がドキドキした。
「な、何をするんですか?」
純が聞いた。
「回春マッサージよ」
女性は、そう言うと、純の足を大きく開いて、その間に座った。純の尻の割れ目が開かれた。
「ひいー」
純は思わす、叫び声を上げた。女性が純の尻の割れ目を、すっとなぞってきたからである。
「な、何をするんですか?」
純は驚いて聞いた。
「これが回春マッサージよ。気持ちよくなるから、じっとしていてね」
そう言って女性は、純の尻の割れ目を繊細な指でなぞったり、柔らかい尻の肉の上に指先を這わせた。純は、恥ずかしさと気持ちよさの入り混じった快感で、激しく興奮した。
「気持ちいいですか?」
女性が聞いた。
「は、はい」
純は答えた。
「そう。それは良かったわ」
そう言うと、女性は、純の背中のバスタオルを取り去った。そして背中に何か粉をふりかけた。
「な、何をするんですか?」
純が聞いた。
「パウダーマッサージよ」
そう言って女性は、純の背中に繊細な指を這わせた。繊細な指先が純の背中に這い回った。
「ああー」
純は、やりきれない、くすぐったさの快感に布団をギュッと握りしめて耐えた。しばし、彼女は純の背中を撫でていたが、また股の間に座った。
「お客さん。すみませんが、膝を立てて下さい」
女性が後ろから声を掛けた。こんな事をして一体、何をするのだろうと思った。そんな姿勢をすれば、尻の割れ目も、おちんちんも丸見えになってしまう。しかし、マッサージ師の指示には逆らえない。純は、女性に言われたように、膝を立てた。尻が持ち上がって、パックリと尻の割れ目が開いた。純には見えないが、女性に、目の前で、純の尻の穴まで見られていると思うと、純は激しく興奮した。純の、おちんちんは激しく勃起して、そそり立った。これは女に屈辱感を味あわせるために女にとらせるSMのポーズだった。ただSMでは、後ろ手に縛られるが、それはない。純は、こんなポーズをとらせて、一体、何をされるのかと、激しく興奮した。待っていると冷たい液体が、尻の割れ目にすっと垂らされた。
「ああー」
純は思わず、興奮のため声を出した。
「な、何ですか。それは?」
純が聞いた。
「ローションよ」
そう言って彼女は、冷たい液体を、さらに、たっぷりと純の尻の割れ目に垂らした。女性は、尻の割れ目に指を当てて、冷たいネバネバした液体を、尻やソケイ部にまで塗り広げた。
「ああー」
純は、激しい興奮で、声を上げた。女性は、ローションがたっぷり塗られた純の尻の割れ目に、念入りに指を這わせた。
「ああー」
激しい、昇天するような甘美な刺激のため、女性に聞かれる事も覚悟の上で、激しい声を上げた。彼女の指は、純の敏感な所を軽やかに這い回った。
「お客さん。気持ちいいですか?」
女性が聞いた。
「は、はい」
純は、布団を噛みしめて言った。彼女の指は、尻の割れ目から、ソケイ部に入っていき、玉袋を揉み出した。
「ああー」
純は、激しい興奮のため、大きな声を出した。まさか、マッサージに来て、こんな事をされるとは夢にも思っていなかった。純のマラは、激しい興奮のため、激しくそそり立っていた。
「ふふ。ボク。カチンカチンよ。精液がいっぱい溜っちゃってるのね」
そう言って女性は、純の硬くそそり立ったマラをゆっくりと扱き出した。彼女は、余っているもう一方の手で、純の尻の割れ目をなぞり出した。激しい甘美な刺激が純を襲った。純はもう我慢の限界だった。純は、おちんちんから、オシッコとは違う何かが出てくる気配を感じた。
「あ、ああー。で、出るー」
純は、歯を食いしばって叫んだ。純のおちんちんから、白い粘ついた液体が、ピュッ、ピュッと激しく飛び出した。
「わあ。すごい。いっぱい出たわね。膝立ちは疲れたでしょ。横になって」
言われて純は、どさっと横向きになった。彼女は、ティッシュペーパーを数枚、取り出して、純の足を開き、マラの先についている精液を拭きとった。
「どう。気持ちよかった?」
女性が聞いた。
「は、はい」
純は正直に答えた。女性はニコリと微笑んだ。女性は、横に置いてあった蒸しタオルで、純の股間に塗ったローションを丁寧に拭きとった。

ちょうど、その時、一時間を知らせる時計のチャイムが鳴った。
「あっ。ちょうど時間になったわ。じゃあ、シャワー浴びてきて」
女性は言った。
「はい」
純は答えた。
「さあ。これを腰に巻いて」
そう言って、女性は、純にバスタオルを渡した。純はバスタオルを腰に巻いた。
「じゃあ、シャワーを浴びてきて」
女性に手を引かれて、純は風呂場の前に連れて行かれた。
「ローションがついていると気持ちが悪いでしょ。時間は気にしなくていいから、ボディーソープで十分、ローションを落して」
「はい」
純は風呂場に入った。そして石鹸で洗って、ベタついたローションを落とした。
「どう。気持ちよかった」
「は、はい」
純は顔を赤くして答えた。女性は、冷たい麦茶を持ってきた。
純はそれを飲んだ。
「じゃあ、服を着て」
女性が言った。
言われて純は服を着た。
「よかったら、また来てね」
そう女性に言われて純は店を出た。

その晩、純は興奮のあまり、なかなか寝つけなかった。

   ☆   ☆   ☆

翌日。
昼休みに京子がやってきた。
「純君。どうだった。マッサージ」
京子が聞いた。
「い、行かなかった」
「どうして」
「お金がなかったから」
「店の前は通ったの」
「う、うん」
純は照れくさそうに答えた。
「そう。じゃ、一度、行って見なさいよ。疲れがとれるわよ」
「い、いや。いいよ。なんだか、高そうだし」
純は照れくさそうに言った。

   ☆   ☆   ☆

その日の晩、純は、また、あのマッサージを受けたくて仕方がなくなって、勉強が手につかなくなかった。日が経つにつれ、欲求はつのっていった。
四日後の日曜日に、とうとう純は、欲求に耐えられず、マッサージ店に行った。あのマゾ的な快感がたまらなかったのである。

店に近づくにつれ、純の心臓はドキドキしてきた。店についた。純はチャイムを押した。
ピンポーンとチャイムの音が室内に起こったのが聞えた。パタパタと足音がして、カチャリとドアが開かれた。この前のきれいな女性が顔を出した。女性は純の顔を見ると、ニコリと微笑んだ。
「やあ。ひさしぶり。また来てくれたのね。さあ。どうぞ」
純は、店に入って、ソファーに座った。
「今日は、どのコースにする?」
女性が聞いた。
「こ、この前と同じのをやって下さい」
純は顔を赤らめて言った。
「わかったわ」
女性は、ニコッと笑って純を部屋に案内した。
「さあ。純君。脱いで」
「は、はい」
純は服とパンツを脱いで全裸になった。
「さあ。シャワーを浴びてきて」
「は、はい」
純はバスタオルを腰に巻いて、風呂場へ行き、体を洗った。そして、バスタオルを巻いて、部屋に戻ってきた。
「さあ。純君。布団の上にうつ伏せに寝て」
女性が言った。純は、うつ伏せに寝た。女性は、裸の純の背中にバスタオルを乗せた。
「ではマッサージを始めます」
こうしてマッサージが始まった。女性は、純の脹脛と太腿を念入りに揉みほぐした。ほどよい指圧に、筋肉痛がすーとひいていくようで、この上なく心地よかった。女性は、純の体を念入りに揉みほぐした。
「じゃあ、回春マッサージを始めるわよ」
そう言って女性はバスタオルをとった。
「あ、あの。お姉さん」
純は声を震わせて言った。
「なあに」
女性はニコリと笑って聞いた。
「あ、あの。お願いがあるんです」
純は声を震わせて言った。
「なあに」
女性はニコリと笑って聞いた。
「あ、あの。僕、マゾなんです。回春マッサージは、僕を後ろ手に縛って、やって、いただけないでしょうか」
彼女はニコリと笑った。
「いいわよ」
女性は微笑して言った。
「あ、ありがとうございます」
そう言って純はカバンの中から、麻縄を取り出した。
「あ、あの。これで僕の手首を背中で縛って下さい」
そう言って純は、縄を女性に渡し、両手を背中に回して手首を重ね合わせた。女は、純の手首を縄で縛った。
「ああー。いいー」
純は、裸で後ろ手に縛られるという、生まれて初めて味わう被虐の快感に思わず声を上げた。
「じゃあ、マッサージを始めるわよ。うつ伏せに寝て」
言われて純は布団の上にパタリと倒れ伏した。女性が純の丸出しの尻を撫で出した。
「あっ。ちょっと待って下さい」
そう言って純は、膝を立てて足を大きく開いた。尻が高々と持ち上がって、パックリと尻の割れ目が開いた。
「これで、お、お願いします」
純は声を震わせて言った。女は、ふふふ、と笑い純の尻の前に座った。女は純の尻の割れ目にローションをたっぷり垂らした。そして、尻の割れ目や、ソケイ部に指を這わせ出した。
「ひいー」
純は思わず悲鳴を上げた。これはSMの屈辱的なポーズそのものである。純は、いつも、SM写真集を見て、マゾの快感に浸っている女性になることを夢見ていた。その夢がまさに叶ったのである。
「ああー。いいー。一度、こうされたかったんです」
純は、指をギュッと握りしめ、被虐の告白をした。
「ふふ。おちんちんがカチカチよ。純君って、すごいマゾなのね」
そう言って女は純の尻の割れ目や、穴を指先で、そーとなぞった。純はもう、何もかも忘れてマゾ女になりきっていた。
「それじゃあ、今度は仰向けになって」
しばし、純の尻をなぞっていた女は、そう言った。
「はい」
純は、言われたように、ゴロンと体を反転させて仰向けになった。
「じゃあ、今度は仰向けでマッサージするわ」
そう言って女は純の、おちんちんにローションを垂らそうとした。
その時。
「あ、あの。お姉さん」
と純は制した。
「なあに」
女性はにこやかな顔つきで聞いた。
「お願いがあるんです」
純は、カチンカチンに勃起したマラを丸出しにしたまま言った。
「今度はなあに」
「僕のカバンの中に縄が二本あります。それで僕の両足首を、それぞれ、縛って、天井の梁に吊るして下さい」
純はあられもない要求をした。
「ふふふ。わかったわ」
女性は、純のカバンから麻縄を二本、取り出した。そして、それぞれの縄を、純の言ったように、足首にしっかり結びつけた。
「ちょっと待ってて」
女性はニヤリと笑って、部屋を出た。そしてすぐに椅子を持って戻ってきた。そして、椅子の上に乗って、縄を天井の梁に引っ掛けて、グイと引き上げて梁に結びつけた。
純の両足は大きく開かれた。足がピンと一直線に伸びて、尻が持ち上がった。ビンビンに勃起したマラも、尻も、全てが丸見えである。
「ふふ。カチカチのおちんちんが丸見えよ」
女性が、笑いながら揶揄した。
「ああー」
純は被虐の雄叫びを上げた。もう、こうされては、何をされても、のがれることは出来ない。純は、激しい被虐の快感に興奮していた。
「一度、こうされたかったんです」
純は、あられもない告白をした。これから、女性に何をされるかと思うと、純のマゾの血は騒いだ。女性は、ローションをとって純のアソコに垂らそうとした。

その時である。ピンポーン。チャイムがなった。
「あっ。ごめんなさい。お客さんだ。ちょっと待ってて」
そう言って彼女は出て行った。これからという時に、邪魔が入って純は少し、がっかりした。何か、コソコソと話し声が聞こえる。話し声が消えると、すぐに彼女は、もどってきた。純はほっとした。
「ねえ。純君」
女性は純の傍らに座った。
「何ですか」
「悪いけど、お客さんが来ちゃったの。予約うけてたの。忘れてたの。どうしても、はずせないの。よく来てくれる、お客さんだから。それで、あと30分残ってるけど、別の人にかわってもいい?」
純は、がっかりした。しかしすぐ気をとりなおして聞いた。
「どんな人ですか?」
「優しい、かわいい子よ。だって、私の妹だもの」
妹と聞いて純は、嬉しくなった。彼女の妹なら、その人もきっと優しい人だろうと思った。「わかりました。その人にお願いします」
純は素直に言った。
「ありがとう。ごめんね」
「いえ。いいです」
そう言って女は部屋を出て行った。
純は、どんな人が来るのかワクワクしていた。見知らぬ人に、こんな姿を見られて弄ばれるのも、スリルがあっていいなと純はドキドキしてきた。

襖が、すーと開いた。
「ああっ」
純は心臓が止まるかと思うほど、びっくりした。何と、入ってきたのは京子だったからである。純は錯乱状態になった。どうして京子が。
「み、見ないでー」
純は考える暇もなく大声で叫んだ。丸裸で後ろ手に縛られて、両足を大きく開くように吊るされているという惨め極まりない姿を同級生の女に見られるという屈辱の極地。だが、そんな純の思いをよそに京子は純の、割り開かれた尻の前に静かに座った。目の前には、ビンビンに勃起した純のマラが天井に向かって、そそり立っている。その下には金玉がみじめに、ぶら下がり、足が高く吊り上げられているため、尻の割れ目も尻の穴も、京子には丸見えである。京子は黙って、しばし、それを楽しむように見た。
「ふふ。純君。それじゃあ、お姉さんの代わりに私がマッサージするわ」
この発言で、女性の妹とは京子だったのだと、純は錯乱した頭の中で理解した。しかし、どうしてこういう事が起こっているのかということは全く分からなかった。あるのはただ死んでしまいたいほどの屈辱の感情だけだった。
「や、やめてー。見ないでー」
純は叫びながら足をバタバタさせた。だが、両足を大きく開いてしっかり吊るされている以上、どうすることも出来ない。
「そういうわけにはいかないわ。お金を頂いているし、あと、30分、時間が残っていますから」
そう言って京子はローションを手にした。純は足をバタバタさせた。
「京子ちゃん。お願い。部屋から出てってー」
純は身を捩って叫んだ。
「ふふふ。そういうわけにはいかないわよ。お金いただいているお客さんだもの」
京子は純の狂乱など何処吹く風と落ち着いた口調で言った。
「ふふ。純君。おちんちんも、お尻の穴も丸見えよ」
京子は、ことさら純の今の惨状を純に認識させるために発言した。激しい羞恥が純を襲って純の全身がブルッと震えた。京子は純のおちんちんにローションをたっぷり垂らした。
「それじゃあ、マッサージを始めるわ」
そう言って京子は、ローションを純のおちんちんや、金玉や尻の割れ目に、塗り広げていった。
「ああー」
純は、頭を左右に振りながら激しく体を捩らせて叫んだ。
「ふふ。おちんちんがカチカチよ。こんな事されて興奮するなんて、純君って、ものすごいマゾなのね」
京子は純の玉袋を念入りに揉み出した。
「ち、違うんだ」
純は脂汗を流しながら首を振った。
「どうして。こういう格好でマッサージして欲しいって頼んだのは純君じゃない。お尻の穴も丸見えよ」
そう言って京子は純の尻の割れ目をすーとなぞった。
「ひいー」
と純は悲鳴を上げて尻の穴を窄めようとした。
「も、もう死にたい。お願い。もうやめて」
純は泣きそうな顔で哀願した。
「どうして。わざわざ縄まで持ってきて、こういう格好にされたいと頼んだのは純君よ」
京子は意地悪く言った。純は歯をカチカチ噛み鳴らした。
「お願い。お金を倍、払うからやめて」
純は全身をプルプル震わせながら言った。
「お金を倍、払うなら、倍の時間、延長して欲しいってことね。わかったわ。時間を延長して丁寧にマッサージします」
何を言っても京子は意地悪く言い返す。もうどうしようもないとわかると純は、とうとうあきらめて抵抗をやめた。
「も、もう。好きにして」
純は自棄になって言った。純は目をつぶって全身の力を抜いて京子に、されるがままに任せた。京子は、念入りに純の勃起したマラを撫でたり、金玉を揉んだり、尻の穴をなぞったりした。だんだん、純に被虐の感情が起こり出した。京子は純の勃起したマラをゆっくり扱き出した。
「ああー。で、出ちゃうー」
純は叫んだ。
「ふふ。遠慮はいらないわ。出しちゃいなさい」
京子は笑いながら、扱くのを速めた。純の勃起したマラがクチャクチャ音を立て出した。
「ああー。出るー」
純は激しく叫んだ。ピュッ、ピュッと、白濁液が勢いよくほとばしり出た。
「うわー。すごーい」
京子はことさら驚いたように言った。京子は、ティッシュで飛び散った純の精液を拭き取った。純はガックリしている。
「ちょっと待ってて」
そう言って京子は、部屋を出た。そして、蒸しタオルを数枚、持ってきて、純の前に座り、ローションと精液をきれいに拭き取った。純は、足を吊るされているために、グッタリと京子のなすがままにされている。
「ふふふ。純君。気持ちよかったでしょ」
京子は純の体を拭きながら言った。丁寧に拭き終わると京子は、椅子に乗って、純を吊っている縄を解いた。純は後ろ手に縛られているため手を使えない。京子は純にパンツを履かせてから、後ろ手の縄を解いた。縄が解かれると純は、焦って、一目散に服を着た。
「京子ちゃん。お願い。このこと、誰にもいわないでね」
純は真っ赤な顔で京子に言った。
「わかったわ」
京子は笑って言った。そして純は逃げるように、店を出た。

その晩、純は、明日から京子に会わす顔がない恥ずかしさに苦しんだ。口が軽い京子が、はたして黙っているかどうか気になって、なかなか眠れなかった。

   ☆   ☆   ☆

翌日になった。
学校に行った純は京子と目が合うと、京子はニコッと笑った。純は真っ赤になって、さっと目を避けた。
昼休みになった。純の所に京子がやってきた。
「純君。ごめんね。昨日の事、話しちゃった」
京子は、あっけらかんとした口調で言った。
「ええー。誰にー」
純は真っ青になって聞き返した。
「悦子と佳子に」
純は言葉に詰まった。純はそっと後ろを見た。悦子と佳子は純と視線が合うと、ニヤッと笑った。
その日の午後の授業は、純は、頭が混乱して、授業など耳に入らなかった。
やっと午後の授業が終わった。放課後、京子が純の所に来た。
「ねえ。純君。悦子と佳子が純君に話があるっていうの。体育館に来てくれない」
そう言って、京子はパタパタと教室を出ていった。

   ☆   ☆   ☆

放課後。純は、おそるおそる、体育館に行った。京子と悦子と佳子がいた。悦子と圭子は、いきなり、純に襲いかかってカバンをとりあげ、腕を捻り上げた。
「あっ。な、何をするの」
「ふふ。いい事」
そう言って悦子と圭子は純の上着を脱がしてしまった。
「や、やめてー」
純は叫んだが、力のない純はわけもなく上着を脱がされてしまった。二人は純を後ろ手に縛り上げ、その縄尻をマットの持ち手に結びつけてしまった。純は後ろ手の縄尻をマットにつなぎとめられてしまって、これでもう、逃げられなくなってしまった。
「な、何をするの」
純はマットの上に立て膝で座って聞いた。
「純君。話は京子から聞いたわ。純君って、マゾで縛られて回春マッサージされるのが好きなんでしょ。それじゃあ、私達がやってあげるわ」
そう言って悦子と佳子の二人は純のズボンのベルトをはずし、ズボンを脱がせてしまった。そして、パンツも一気に脱がせてしまった。純は丸裸で、ピッチリ腿を寄せ合わせ、おちんちんを見られないようにした。
「ふふ。もう、どうせ逃げられないんだから、覚悟しちゃいなさいよ」
悦子は略奪者が勝ち誇ったように、脱がした純のパンツをヒラつかせた。
「素直にしないと、服を持ってっちゃって、そのままにして、私達、帰っちゃうわよ。そうしたら、純君。どうするの」
佳子が笑いながら言った。
「もう、諦めなさいよ。どのみち逃げられないんだから」
そう言って悦子と佳子は、後ろ手に縛られた純の丸裸の体を前後から触り出した。それは、まるで男が女をいたぶる図だった。二人は自由の利かない純の体を、弄ぶように触った。純は必死に足を寄り合わせて、この屈辱に耐えようとした。悦子が、すっと純の尻の割れ目をなぞった。
「ひいー。やめてー」
純は悲鳴を上げた。
「ふふふ」
悦子は意地悪そうに笑った。
「さあ。純君。足を閉じてないで開きなさい。開かないとマッサージ出来ないわ」
佳子が言った。だが、純はピッチリ足を閉じ合わせている。
「仕方がないわね」
二人は顔を見合わせてニヤッと笑った。そして、それぞれ、純の足首をつかんで、縄で縛った。
「な、何をするの?」
純は恐怖に身を竦ませて聞いた。だが二人は黙っている。二人は顔を見合わせてニヤッと笑った。
「えーい」
悦子と佳子は純の足を思い切り引っ張った。後ろ手に縛られている上、力の弱い純には、女二人の力にはかなわなかった。
「ああー」
純の足はどんどん開いていった。おちんちんが丸見えになった。二人は、それぞれ、純の足首の縄を、マットの持ち手に結びつけてしまった。
「ああー」
純は眉を寄せ、苦しげな表情で叫んだ。だが、もうどうすることも出来ない。
「さあ。寝なさい」
そう言って、悦子は純をマットの上に倒した。純は、同級生の女三人の前で、丸裸を後ろ手に縛られて、両足を大きく開かされて、その足首をマットの持ち手につなぎ止められているという、みじめ極まりない姿である。
「お願い。やめて。見ないで」
純は真っ赤になった顔をそらして叫んだ。だが、女達には、聞く様子など全くなかった。
「うわー。すごーい。私、男の子のおちんちんを見るの、生まれて初めてだわ」
悦子が感激したように言った。
「この機会に男の子の体をしっかり勉強しておきましょう」
佳子がふざけた口調で言った。
「お願い。見ないで」
そう言って純は、足を閉じようとしたが、両方の足首をマットの持ち手に縛りつけられてしまっているので、どうしようもない。
「じゃあ、回春マッサージをしてあげましょう」
悦子が言った。
「でも、回春マッサージって、どういうふうにやるの?」
佳子が聞いた。
「パウダーをふりかけて、そーと爪先を這わせるのよ。くすぐったくて、もどかしい感覚に、男の子はたまらなく興奮するのよ」
昨日、純をマッサージした京子が言った。そして、京子は、パウダーを取り出して、裸の純の全身にふりかけていった。
「さあ。始めましょう」
京子が言った。悦子と佳子は純の両脇に座った。京子は純の開かれた足の間に座った。三人は、ふふふ、と笑いながら、爪先を、そーと純の体に這わせた。悦子は純の体の左側を。佳子は純の体の右側を。そして京子は太腿を。
「ひいー」
純は、脳天を突くような、やりきれない辛い感触に悲鳴を上げた。純は、脂汗を流しながら、全身を激しくくねらせた。だが、後ろ手に縛られたうえ両足をマットにつなぎとめられているので、どうすることも出来ない。
「お願い。やめて」
純は叫んだ。
「ふふ。この、もどかしい、やりきれない感触が最高の快感になるのよ。さあ、もっと、うんと、やりましょう」
京子が、そんな説明をした。
「ええ」
悦子と佳子は、笑って、指先をしなやかに純の体に這わせた。時々、純の乳首をコリコリと捩った。
「うわー。乳首が立ってきたわ」
悦子が言った。純の乳首は勃起して立っていた。
「そうよ。男の子も、乳首を刺激されて興奮すると、勃起して立ってくるのよ」
京子が解説した。京子は、太腿から鼠径部に向けて、そーと指を這わせた。
「ひいー」
純は興奮のあまり、悲鳴を上げた。純は固く目をつぶって闇の世界に入った。しかし、目をつぶると、女三人が、裸の純を、まじまじと見て、弄んでいる光景が想像されてきて、かえって、興奮してきた。しばしの時間がたった。悦子と佳子と京子の三人に弄ばれる、という、この上ない屈辱が、あきらめとともに、だんだん快感になってきた。
「も、もう、どうにでもして」
純は叫んだ。純に被虐の快感が起こり始めた。いったん、受け入れると、被虐の心地よさは、どんどん激しくなっていった。純のマラは激しく勃起し出した。
「うわー。すごーい。おちんちんが、そそりたってきた」
悦子が言った。その言葉は純をよけい興奮させた。純のマラは、いっそう激しくそそり立っていった。
「すごーい。男の子のおちんちんって、勃起すると、大きくなるっていうのは知ってたけど、こんなに大きくなるなんて」
佳子が言った。
「ふふ。純君は、とうとう、私達にいじめられる事を受け入れて、マゾの快感に興奮しだしたのよ」
京子が説明した。
「純君。顔を踏んでもいい」
悦子が聞いた。
「もう、どうとでもして」
純は投げ出すように叫んだ。
「じゃあ、三人で純君を踏んじゃいましょう」
そう言って三人は立ち上がった。悦子は純の顔を踏んだ。そしてグリグリと揺すった。佳子は純の胸に足を載せて、グリグリ揺すった。京子は、純の、マラを踏んだ。
「純君。どう。今の気持ちは」
悦子が純の顔をグリグリ揺すりながら聞いた。
「き、気持ちいいです」
純は押し潰されて歪んだ顔の下から言った。
「ふふ。ついに言ったわね」
悦子は純の口に足をつっこんだ。
「純君は、本当は、こうされたかったんでしょう」
佳子が聞いた。
「はい。そうです」
純は答えた。
「私達の奴隷になる?」
京子が聞いた。
「はい。なります」
純が答えた。
「抜いて欲しい?」
京子が聞いた。
「はい。お願いします」
「じゃあ、抜いてあげるわ」
そう言って、京子は、座って、純のマラを扱き出した。悦子は顔を踏み、佳子は胸を踏んでいる。純のマラは、激しく怒張していった。京子は、扱く度合いを速めた。
「ああー。出るー」
純が叫んだ。ピュッ、ピュッと、大量の白濁駅が放出された。
「すごーい。男の子の射精って、初めて見たわ」
悦子が言った。
「何か、変わった匂いがするわ」
佳子が飛び散った精液に鼻先を近づけて言った。
「こんなに、勢いよく出るなんて知らなかったわ」
悦子と佳子は、初めて見る、男の射精の感想をことさら純に言い聞かすように言った。
「さあ。もう、純君は私達の奴隷よ」
そう言って、京子は、ティッシュで、飛び散った精液をふいた。京子は純の両足の縄を解いた。そして後ろ手の縄も解いた。自由になった純は、パンツを履き、服を着た。

   ☆   ☆   ☆

こんなふうな具合で純は、三人の奴隷になった。
翌日の放課後も純は、三人と体育館に行った。
「さあ。純君。昨日と同じように、回春マッサージをするから裸になって」
京子が言った。純はもう、抵抗しようという気持ちはなくなっていた。むしろ、彼女らに弄ばれることを心待ちしていた。純は言われるまま、素直に学生服を脱ぎ、パンツも脱いで丸裸になった。しかし、やはり、羞恥心はまだあって、手で、おちんちんを覆うようにした。女達は、昨日と同じようにマットを敷いた。
「さあ。純君。マットの上に寝て」
言われて純は、素直にマットの上に仰向けに寝た。
「じゃあ、マッサージを始めるわ」
そう言って三人は、裸の純を取り巻いて、昨日と同じように、パウダーをふりかけて、マッサージを始めた。三人は、すーと、爪先で、触れるか触れないかのぎりぎりの接触で、純の体に指を這わせていった。
「ひいー」
純は被虐の喜悦の悲鳴を上げた。
「どう。純君」
「気持ちいいです」
純はためらいなく言った。三人は純の体を思うさま指先を這わせた。純のマラは、ビンビンに勃起している。もう純には抵抗する様子はなかった。純は、もう三人を受け入れて被虐の快感に完全に浸っていた。三人は、立ち上がって、ふふふ、と笑いながら、昨日のように、純を踏み出した。
「ああー」
純は被虐の悲鳴を上げた。
「さあ。お舐め」
悦子が純の口に足を差し出した。純は悦子の足をペロペロ舐めた。
「どう。純君。奴隷になった気分は」
「し、幸せです」
純はあられもなく言った。もう、純は丸裸を見られることや、裸の体を弄ばれることに抵抗を感じていなかった。被虐の快感に浸りきっていた。三人は、しばし丸裸の純を踏んで弄んでいた。しばし時間がたった。三人は純を踏むのをやめた。どうしてか、と純は疑問に思った。
「ねえ。純君。純君だけにエッチな事をしてしまってごめんなさい」
悦子が謝った。純はこの謝罪の意味が分からなかった。
「いえ。いいです。僕はマゾで女の人にいじめられることに興奮するんですから」
純は言った。
「そう言っても、やっぱり悪いわ。不公平だと思うの。純君だけ裸にして虐めるなんて。純君にも私達を触らしてあげるわ」
純は吃驚した。どうして、そんな殊勝なことを言うのか、どうしても、その意味が分からなかった。
「さあ。純君。起きて」
悦子が言った。言われて純はムクッと起き上がった。目の前では清楚な制服を着た悦子が緊張した面持ちで少しプルプルと体を震わせながら立っている。
「さあ。純君。私を好きなように触って」
悦子の声は少し緊張していた。純は、しばし迷っていたが、
「いいです。僕がいじめられる方が合っています」
と小さな声で言った。
「いいの。純君。遠慮しないで」
悦子は強気の口調で言った。京子と佳子の二人は、マットに座ってニコニコ見ている。純は、わからないまま決心した。純はそっと手を伸ばして、悦子の太腿を触った。柔らかくて温かい女の子の体の感触が伝わってきた。触れた瞬間、悦子の体は一瞬、ピクッと震えた。悦子の太腿を触っているうちに、純はだんだん興奮してきた。悦子も、嫌がる様子も見えない。純は、だんだん図に乗り出して、悦子のスカートの中に手を入れて、パンティーをそっと触ってみた。
「ああっ」
悦子は反射的に声を出してスカートを押さえた。
「ごめんなさい」
純は咄嗟に謝った。そして、あわてて手を引いた。
「ごめんなさい。つい、声を出しちゃって。いいのよ。純君。遠慮しないで。何でも好きなようにして」
悦子は、なだめるように言った。純は、気をとりなおして、恐る恐る、悦子のスカートの中に手を入れて、悦子のパンティーを触った。純は、女の柔らかい盛り上がりの部分をそっと撫でた。初めて、女のアソコを触る心地よさに、純は、だんだん調子に乗ってきて、パンティーの上から、柔らかい、盛り上がりの部分をつまんでみたり、大きな尻を撫でたりした。悦子は、だんだん、ハアハアと息を荒くし出した。純は、パンティーの縁のゴムをピチンと鳴らしてみたり、パンティーの上から、女の割れ目をなぞったりした。
「ああー。いいー」
悦子は、眉を寄せて、苦しげに叫んだ。純も興奮してきた。
「純君。女にもエッチなことをされたい気持ちがあるの。特に生理が近づいてくると、そういう気持ちになるの。でも、男の子は、年中、エッチなことをしたがっているから、怖くてなかなか言い出せないの。一度、許してしまったら、その後、しつこくつきまとわれるのが怖いから。でも、純君は、おとなしいから、安全だわ。それで、純君にエッチなことをしてもらおうと思ったの。だから好きにして」
悦子は、ハアハアと喘ぎながら言った。
「はい」
純が返事した。
「今度は、私を後ろから抱きしめて」
言われて純は立ち上がって、悦子の背後に回って悦子を後ろから、抱きしめた。
「純君。む、胸を揉んで」
悦子はハアハアと息を荒くしながら言った。純は、言われたように、セーラー服の上から悦子の胸を揉んだ。また小ぶりだか、柔らかくて気持ちいい。純はだんだん興奮してきた。
「悦子さん。パンティーの中に手を入れてもいいですか」
純が聞いた。
「い、いいわよ」
悦子が答えた。純は、悦子の胸を揉みながら、スカートの中に手を入れて、片手で、悦子のパンティーの上から、アソコの肉や柔らかい大きな尻をいやらしく揉んだ。
「ああー」
悦子は、足をピッチリ閉じて足をプルプル震わせている。純は、悦子の胸を揉みながら、パンティーの中に手を入れた。そして、直に、悦子の尻を触った。純は悦子の尻や尻の割れ目を念入りに触ったり、撫でたりした後、指を前に回し、女の割れ目に指を割り入れた。そこは粘々、濡れていた。
「悦子さん。濡れてます」
そう言って純は、女の穴に中指を入れた。
「ああー」
悦子は、眉を寄せて苦しげな喘ぎ声を出した。純は、ゆっくり指を動かしながら、片手で悦子の胸を揉んだ。
「ああー。いいー」
悦子は、喜悦の叫びを上げた。
「純君。私の服を脱がして」
悦子がハアハアと喘ぎながら言った。純は、言われたように、背後から悦子の服を脱がしていった。バンザイさせて、セーラー服を抜き取った。そして、ブラジャーの背中のホックを外して、ブラジャーを取り去った。悦子は、思わず、両手で顕になった胸を押さえた。純は、次にスカートのホックを外した。パサリとスカートが落ちて、悦子はパンティー一枚になった。純は、悦子のパンティーの縁のゴムをつかんで、ゆっくり下げていき、両足から抜き取った。これで悦子は、覆うもの何一つない丸裸になった。
「ああっ。は、恥ずかしい」
後ろを向いていると、丸出しの尻が見えてしまう。そのため悦子は、純に向き直り、胸と秘部を手で覆って、マットの上に立て膝に屈み込んだ。
「み、見て。純君」
悦子は言った。言われずとも、純は丸裸の悦子を目を皿のようにして見つめた。
「ああっ。裸を男の子に見られるのも、すごく気持ちがいいわ。女って、みんなマゾの性格があるの」
しばし、悦子は、見られることに陶酔しているかのように、呆けた顔で、じっとしていた。しばしして、悦子は、マットの上に仰向けに寝た。
「さあ。純君。私を抱いて」
悦子が言った。純は、ゴクリと唾を呑んで、裸の悦子の体の上に乗った。裸と裸の体がピッタリと、くっつきあった。
「ああっ。いいわっ。これがセックスなのね」
悦子は言った。
「さあ。純君。何でも好きな事をして。私をうんと弄んで」
悦子が言った。純は悦子を抱きしめ、首筋にキスした。そして、胸を揉んだ。
「ああっ。いいわっ」
悦子が喜悦の雄叫びを上げた。悦子の乳首が、大きくなってきた。純は、それを口に含み、コロコロと舌で転がした。そして、片手で女のまんこを撫でたり、揉んだりしてから、中指を女の穴に入れた。そこは、ネバネバしていた。純は、指を動かしながら、悦子の乳首を吸った。
「ああっ。気持ちいいっ」
悦子は、苦しげに眉を寄せ、叫んだ。
純は指の運動を速めた。
「ああっ。いくー」
悦子は、大きな声で叫んだ。そして、ガックリ虚脱した。
「今のが女のオルガズムなのよ」
座って見ていた京子が純に説明した。
「どうだった。純君」
「気持ちよかったです」
「わ、私も純君に触られたいわ」
悦子の痴態を見ていた圭子が片手をアソコに当てて、片手で胸を揉みながらハアハアと息を荒くして言った。
「圭子。ごめんね。今日は悦子だけにして。あなたは、次の機会にして」
京子がなだめた。
「わ、わかったわ」
圭子はハアハア喘ぎながら答えた。

「純君は、いじめられるのと、セックスと、どっちの方が気持ちいい」
京子が聞いた。
「どっちも気持ちいいです」
「純君はマゾだから、いじめられる方が気持ちいいでしょ」
「そうかもしれません」
「じゃあ、今度は、もっと刺激的なことを、してあげるわ」
そう言って京子は、ふふふ、と笑った。
「どんなことなんですか」
「ふふふ。それは秘密」
京子は意味ありげに笑った。
純は、京子のいう刺激的なこととは何かと、ドキドキした。
悦子と純は服を着た。四人は夕暮れの体育館を出た。

   ☆   ☆   ☆

翌日の放課後。
クラス委員長の京子が立ち上がった。
「女子は残って下さい。特別授業をします。男子は帰って下さい」
クラス委員長の京子が言った。言われて、男子は、わらわらと、教室を出ていった。純も出ていこうとすると、
「純君は残って」
と言って京子が引き止めた。純は、どうして自分だけ残るのか、疑問に思った。クラスの女子の中に一人だけ取り残されて、純は不安になった。
「さあ。純君。こっちへ来て」
京子に言われて純は、不安に震えながら、教壇の方へ言った。純はおどおどしている。
「今日は特別授業をするわ」
京子が教壇に立って言った。
「何の授業?」
女生徒の一人が聞いた。
「保健体育の実習よ。男の子の体の仕組みについて、皆で勉強します」
京子はそう言って、純の方を見た。
「実験台は純君です。さあ。純君。教壇の上に載って」
「ええー」
純は吃驚して叫んだ。
「さあ。純君で男の子の体の仕組みを勉強するんだから、裸になって教壇の上に載って」
京子は情け容赦なく言った。
「京子さん。お願いです。そんな事だけは許して下さい」
「駄目。純君は私達のいう事には何でも従うと約束したじゃない」
京子は強気の口調で言った。どんなに純が頼んでも許してくれる京子の性格ではない。純は、あきらめて、ワナワナと震える手で服を脱ぎ出した。上着を脱ぎ、ズボンを脱いだ。純はパンツ一枚になった。
「これだけは許して下さい」
純は、パンツを押さえながら哀願した。
「仕方ないわね。じゃあ、パンツを履いたままでいいから、教壇の上に載って」
言われて純は、教壇の上に載った。
「さあ。仰向けになって」
京子が言った。言われて純は教壇の上に仰向けになった。
「さあ。みんな来て」
京子が言った。クラスの女生徒は、わらわらと教壇に集まってきた。好奇心で満ち満ちた目で、教壇の上の純を見ている。
「さあ。純君。パンツも脱いで」
京子が言った。
「こ、これだけは許して下さい」
純は泣きそうな顔で言った。純はワナワナと体を震わせている。
「仕方ないわね」
そう言って京子は、スルスルッと純のパンツを抜き取ってしまった。
「ああっ」
純は、思わず声を出した。純は、咄嗟に膝をピッチリと閉じ合わせた。
「純君。足を開いて。それじゃあ、男の子の性器が見えないじゃない」
京子が言った。だが、純は足を開けなかった。どうして、クラスの女子みんなに見られるという屈辱に耐えられよう。
「仕方ないわね」
京子は、悦子と佳子にパチリと目配せした。二人はニヤリと笑って教壇にやってきた。
そして純の足をつかみ、グイと大きく開いた。
「ああー」
純は思わず叫んだ。
「動けないよう、足と手を縛っちゃいましょう」
京子が言った。悦子と佳子は、純の足首を縄で縛って、教壇の下に回して教卓に縛りつけた。両手首も縄で縛って、同様に教卓の下に回して、固定した。純は、足を大きく開いて、教卓に縛りつけられてしまった。
「ああー」
純が苦しげに叫んだ。
クラスの女生徒達は裸の純を食い入るように見つめている。クラスの女生徒、全員に、丸裸を見られると思うと、純は死にたい思いになった。しかしそれと同時に妖しい被虐心が起こってきて、純のマラは、勃起してきた。
「うわー。すごーい」
「なぜ、こんなにそそり立っているの」
女生徒たちは、純のそそり立ったマラを凝視して言った。
「興奮しているからです。男の子はエッチなことを考えると、おちんちんが、このように勃起してくるのです」
京子が先生のように説明した。
「純君は、今、どんなエッチなことを考えているの」
「純君はマゾなので、今、みんなに見られていることに興奮しているのです」
京子が説明した。
「おちんちんの下にぶら下がっているものが金玉ね」
「そうです。これが金玉です。女の卵巣に相当するものです。この中で精子がつくられるのです」
そう言って京子は純のぶら下がった玉袋を指差した。
「どうして体の外に出ているの。大切な物なのに」
「精子は熱に弱いのです。胎児の時は、はじめは体内にありますが、だんだん外に降りてきたのです」
「ふーん。なるほど」
京子は、みなにディスポーザブルの手袋を配った。
「さあ。それをはめて下さい」
言われて、皆は手袋をはめた。
「では、実際に触って、感触を確かめて下さい」
京子が言った。皆はわらわらと寄ってきて、純の金玉や、マラを触っていった。
「うわー。プニョプニョしている」
女生徒は純の金玉を揉みながら言った。
「おちんちんって、こんなに大きく固くなるのね」
女生徒は、純のそそり立ったマラを触りながら驚いたように言った。
「純君のおちんちんは、今は皮で覆われていますが、これは仮性包茎といって、大人になると、剥けてきます」
そう言って京子は、純のマラの皮を剥いた。亀頭を剥き出になった。
「うわー。なんか天狗の鼻みたい」
一人の女生徒が言った。
「悦子。ビーカーを用意して」
京子が悦子に言った。
「オッケー」
悦子はビーカーを持ってきて純のマラの前に用意した。
「では、射精を実演します」
そう言って、京子は純のマラを扱き出した。
「ああっ。京子さん。や、やめてー」
黙っていた純が、恥ずかしさに耐え切れずに叫んだ。だが京子は、やめない。だんだんクチャクチャ音がし出した。
「何なの。その音?」
「これはカウパー腺液といって、射精前に出る少量の液体です」
「どういう働きがあるの」
「これはアルカリ性の液体ですが、精子は酸性に弱いため、射精までの間に、精子の移動経路上の器官を洗浄する目的があります。また性交時に陰茎と膣の粘膜同士の摩擦を低減する目的もあります」
京子は淡々と説明した。
「ああー。出るー」
純は叫んだ。悦子が純のマラの先にビーカーを当てた。ピュッ、ピュッと勢いよく精液がビーカーの中に射出された。
「うわー。すごーい。男の子の射精って、初めて見たわ」
「射精は、一回きりなの」
「いえ。何回でも、射精します」
「どうして」
「純君の年頃の男の子は、性欲が盛んなので、すぐに精子がたまってくるのです。出してみましょうか」
「うん。やって」
女生徒が言った。
「や、やめてー」
純は叫んだ。
だが京子は、また手袋をはめて純のマラを扱き出した。悦子が純の尻の割れ目をすーとなぞった。
「ひー」
純は悲鳴を上げた。
佳子は純の乳首を揉んだ。しばしすると純のマラは、また激しくそそり立ってきた。
「ああー。出るー」
純は再び叫んだ。ピュッ。ピュッ。と精液が出た。
「すごーい。ほんとだ。純君って、真面目そうにしてるけどエッチなんだ」
皆は、感心したように言い合った。一人が、精液の入っているビーカーをとって、鼻を近づけた。
「うわー。なんか、すごい匂い」
一人が言うと、どれどれと、他の女生徒たちも、精液の匂いを嗅いだ。
「ほんとだ。すごい匂い」
女生徒たちは、口々に言い合った。
皆が、嗅ぎ終わると、京子はビーカーの精液をスポイトで吸いとって、スライドガラスの上に垂らし、カバーガラスを載せて、プレパラートをつくった。そして顕微鏡の上に固定した。
「さあ。のぞいてごらんなさい」
言われて皆は、顕微鏡をのぞいた。
「すごーい。たくさんのオタマジャクシみたいなのが、すごい速さで動いてる」
「これが精子です。このたくさんの精子のうち、一つが卵子にくっつくと受精するのです」
「この精子が私の卵子とくっついたら、純君の頭のいい遺伝子によって、頭のいい子が産まれて来るのね」
と一人の女生徒が言った。
「それはわからないわ。あなたの頭の悪い遺伝子の方が遺伝するかもしれないじゃない」
「それもそうね」
と言って、皆はどっと笑った。
「ねえ。京子。精液の中には、どの位の数の精子があるの」
一人の女生徒が聞いた。
「一億から四億ほどあります。この精子の一つが卵子に着くのが受精です」
「じゃあ、この精子は、私の卵子を求めて、こんなに活発に動いているのね」
一人が言った。
「違うわよ。純君の精子は私の卵子を求めているのよ」
別の女生徒が言った。
「ねえ。純君。純君は誰の卵子とくっつきたい?」
女生たちは純の顔を覗き込んで聞いた。
「も、もう。許して。いっそ、殺して」
純はあまりの屈辱に耐え切れなくなって叫んだ。
しかし女たちは、興味津々とした顔つきで顕微鏡を覗いていった。

しばしして京子は純の顔を覗き込んだ。
「純君。ごめんね。今度は純君を楽しませてあげるわ」
京子はそう言って、皆に向き直った。
「皆さん。じゃあ、今度は、男の子に触ってもらう体験をしてみましょう」
京子が言った。
「ええー。恥ずかしいわ」
女生たち全員が言った。
「その点は大丈夫よ」
そう言って、京子は、純に白い手拭いで目隠しをした。そして京子は純の手の縄を解いた。手が自由になっても、足は教壇に縛りつけられている。純は、グッタリしていて、起き上がろうとする気力も無かった。
「さあ。これで、誰が触られてるか、わからないわ。これなら、触られても安心でしょう」
そう言って京子は、皆を安心させた。
「そ、そうね」
一人が少し不安げに言った。
「じゃあ、二人ずつ、純君の両側に立って」
京子が言った。二人の女生徒が純の両脇に立った。
「さあ。純君。両側にクラスの女の子がいるから、スカートの中のパンティーを触ってあげなさい」
京子に言われて、純は自由になった両手を伸ばした。すぐに柔らかい太腿に触れた。純はスカートの中に手を入れて、太腿を触ったり、パンティーを触ったりした。純は、優しいので撫で方は上手い。パンティーの盛り上がりの部分を、やさしく撫でたり、肉をつまんだりした。そして下の女の割れ目の部分をすーとなぞったりした。両側の二人の女はだんだん興奮し出した。
「ああっ。いいっ」
二人は苦しげに喘ぐようになってきた。
「パンティーを脱いで、直接、触られてごらんなさいよ。もっと気持ちよくなるから」
京子が言った。二人は、少し赤面しながらもスカートの中に手を入れて、パンティーを下げて抜きとった。そして、また純の傍らに立った。
「はい。純君。また、触ってあげて」
純は目隠しされているので何も見えない。京子に言われて純はまた手を伸ばした。スカートの中に手を入れると、女のアソコの柔らかい肉が触れた。
「ああー」
女は思わず声を出した。無理もない。生まれて初めて男に、アソコを触られてたのだから。純は、しばし、やさしく割れ目を撫でていたが、中指を立てて、女の穴に差し入れた。
「ああー」
女は指を入れられて、苦しげに叫んだ。純は少し、穴の中でゆっくり指を動かしてみた。
「ああっ」
女は、喘ぎ声を出して、眉を寄せて、苦しそうに足をプルプル震わせている。だんだん、クチャクチャという音がし出した。愛液が出始めたのである。
「ふふ。どう。男の子にアソコに指を入れられる感じは」
京子は純の両側の二人の女に聞いた。
「き、気持ちいいわ」
女は、プルプル体を震わせながら、苦しそうに体をくねらせながら言った。
「じゃあ、そろそろ交代よ。純君。指を出して」
京子に言われて、純は女の穴に入れていた指を抜きとった。指は愛液でベッタリと濡れていた。京子はティシュペーパーで、濡れた純の指をふいた。
「さあ。次はあなた達よ」
京子は、次の女生徒二人を指差した。二人は、前の二人と同じように、純の横に立った。純は、同じように二人のアソコを愛撫した。こうして女生徒たちは、全員、純に触られた。
女たちはボーと酩酊した表情である。
「じゃあ、今日の特別授業は、これで終わりにします」
京子はそう言って、教卓に縛りつけられている純の足の縄を解いた。目隠しも解いた。純は、クラスの女達の嘲笑するような視線に耐えられなくて、急いで教卓から降りて、パンツを履き、制服を着た。
「純君。今日はありがとう」
女達は、純を笑顔で見ながら、カバンを持って教室を出て行った。
純は一人になると、わっと泣き出した。

   ☆   ☆   ☆

その翌日。朝の登校時。
「おはよう。純君」
と女生徒たちは嬉しそうに声をかけた。純の全身は声をかけらる度にビクンと震えた。
純はクラスの女たち全員に怯えていた。クラスの女たち全員に裸を見られてしまったのである。しかも射精するところまで見られ、精子まで観察されてしまったのだ。純も、クラスの女達のアソコを触ったが、目隠しされているため、触ったまんこが誰のかは、わからない。女達はそれに安心している。これは、女達に圧倒的に有利で、純にとって、圧倒的に不利である。

純が席に着くと、ある女生徒が、純の所にやってきた。
「ふふふ。純君の、おちんちん、見ちゃった」
と言って悪戯っぽく笑った。
「・・・」
純は、黙っている。
「でも私のアソコも触られちゃったから、おあいこね」
「・・・」
「でも、純君のような、真面目で優しい人に、触られたんだから、私、かえって嬉しいくらいだわ」
「・・・」
そう言ってから黙っている純をよそに、彼女は、去っていった。
「ねえ。純君。物理で解らないところがあるんだけど教えて」
別の一人の女が元気よく純の所に来た。
「ここがわからないの。教えて」
と言って女は教科書を開いた。
「知らない」
純は教科書も見ずに、跳ね除けるように言った。
「ずるいわ。私のアソコを触っておいて」
彼女は口を尖らせて、駄々をこねるような口調で言った。
純は仕方なく教科書を見て教えた。

その日の昼休み。
クラスのリーダー格の森田が京子の所に来た。
「京子。ちょっと話があるんだ。理科室に来てくれ」
森田が言った。
「な、何の用なの」
京子は聞き返した。
「まあ、それは理科室で話すよ」
そう言って森田はニヤリと笑って去って行った。

   ☆   ☆   ☆

放課後になった。京子は、一人、理科室に行った。
戸を開けると、森田がタバコを吸いながら机の上に胡坐をかいて座っていた。
「な、何の用なの。森田君」
京子が聞いた。
「ふふ。京子。見てたぜ。昨日、お前らが純を裸にして楽しんでるのを」
森田はふてぶてしい口調で言った。
京子は背筋がぞっとした。
「た、楽しんでなんかいないわ」
京子は焦って言った。
「じゃあ、何なんだ」
「ほ、保健体育の実習です」
京子は苦し紛れの口調で言った。
「おい。皆、入ってこい」
森田が大声で言った。するとクラスの男子達がゾロゾロと入ってきた。純はいなかった。
「ふふふ。昨日の放課後、女達と純だけが、遅くまで残っているから、何やってんのかと思って、隠れて見てたんだ」
男の一人が言った。
「ふふ。首謀者は京子だな。ちゃんと見てたぜ」
京子は真っ青になった。
「ち、違うわ。純君がマゾで、何でもやってって頼んだから仕方なくやっていたの」
京子は脂汗を流しながら苦しげに言った。
「まあ、ともかく。女達だけ、保健体育の実習をするってのは不公平だな。オレ達も、女の体の実習をしなくちゃ不公平だな」
「・・・・」
京子は言い返せず唇をキュッと噛みしめている。
京子は真っ青になって竦んでしまった。教室は男子生徒と京子だけである。
「さあ。それじゃあ、これから保健体育の実習だ。女の体の仕組みについて、京子で勉強するぞ」
京子は黒板の前で、立ち竦んで動けなくなってしまっている。女のか弱い体力では、逃げることは出来ない。それに、純をさんざん弄んでしまった弱みがあるから、先生に助けを求めることも出来ない。
「さあ。京子。服を脱いで裸になりな」
森田が言った。

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卍(まんじ)(小説)(2)

2020-07-07 08:14:21 | 小説
だが男子生徒の刺すような熱い視線が京子の体に集まっているので、京子は立ち竦んだまま何も出来ない。
「さあ。早く脱ぎな。脱がないと、お前が純にした事を先生に全部、報告するぞ」
森田が恫喝的な口調で言った。だが京子は、どうしても脱げない。どうして花も恥らう乙女が、クラスの男子達の前で、裸になることが出来よう。
「ゆ、許して。森田君」
京子は救いを求めるように森田を見た。
「しょうがないな。じゃあ、全部は脱がなくてもいい。パンティーだけになりな」
森田は口を尖らせて言った。パンティーは許してもらえるということが京子をかろうじて安心させたのだろう。京子は、男子生徒の見守る中、ワナワナと服を脱ぎ出した。セーラー服を脱ぎ、スカートを脱ぎ、ブラウスを脱いだ。京子の体を覆う物はパンティーとブラジャーだけになった。京子はブラジャーをはずす事をためらって、許しを求める視線を森田に向けた。
「それもとるんだ」
森田は容赦なく命令した。京子は背中に手を回してブラジャーのホックを外して、ブラジャーもそっと床に置いた。京子は覆いのなくなった胸を隠そうと、両手でヒシッと胸を覆った。森田はつかつかと、戸惑っている京子の背後に回ると、無防備になっているパンティーのゴムの縁をつかんだ。そして一気にずり下げて、片足ずつ持ち上げて、パンティーを抜きとってしまった。
「ああっ」
京子は、思わず叫んだが、もう遅かった。
「おおっ。すげー」
クラスの男達は丸裸になった京子を見て感嘆した。森田は京子の服を全部、持ち去って机の上にドッカと座った。
「も、森田君。約束が違うわ。パンティーは脱がなくてもいいと言ったじゃない。パンティーを返して」
京子は必死に訴えた。
「別に約束が違ったりはしないぜ。パンティーを自分で脱ぐのは恥ずかしくて、出来ないだろうから、代わりにオレが、脱がしてやろう、という意味だったんだ。お前の早トチリだぜ」
確かに言葉の点では矛盾がない。京子は言い返せなかった。京子は、アソコを手で押さえて立ち竦んでモジモジした。それ以外、京子に何が出来よう。服をとられている以上、教室から出ることも出来ない。
「すげー。京子の丸裸が見られるなんて夢のようだな」
「こうやってモジモジしてるのを見るのが一番、楽しいな」
「アソコを見られるのが恥ずかしいなら後ろを向けよ。そうしたらアソコを手で隠さなくてもいいじゃないか」
「でも、そうしたら尻の割れ目を見られちゃうじゃないか」
「それなら尻の割れ目を手で隠せばいいじゃないか」
「それも恥ずかしい姿になるじゃないか。違うよ。後ろを向いたら、何をされるか分からないから、怖くて後ろは向けないんだよ。オレ達の動向に対して警戒してなきゃならないから、前を向くしかないんだよ」
男達は口々に勝手なことを言い合った。
「おい。みんな。今日は女の体の構造と生理を調べる貴重な実習だぞ。みんな。京子の前に集まれ」
森田が真面目っぽく言った。
「ああ。そうだったな。もっと間近で見ようぜ」
そう言って、男達は席を立って、ゾロゾロと黒板の前の京子の所に集まっていった。それは、ちょうど生殖において、一つの卵子に無数の精子が集まる様子と似ていた。
「い、いやっ。来ないで」
卵子は生物学的法則と違って、集まってくる精子から身を引こうとした。男達は京子の体に触れんばかりに間近に近づいた。
「うわー。すげー。こんなに間近に女の裸を見るのは生まれて初めてだよ」
男達はみな、鼻息を荒くして京子の体をじっくりと見た。皆は、手を伸ばして京子の太腿や尻を触り出した。
「うわー。柔らかくて、気持ちいい」
京子の太腿に手を伸ばして触った男が言った。
「オレ。母親が、オレが子供の時、死んじゃったから母性愛に餓えているんだ。一度、女の太腿にしがみつきたいと思っていたんだ」
そう言って彼は、京子の太腿にしがみついて太腿に頬ずりした。
「どれどれ。尻の穴を見てみよう」
そう言って一人が、京子の後ろに回って、尻の割れ目を開き出した。
「ああー。や、やめてー」
京子は、尻の肉に力を入れて、割れ目をキュッと閉じ合わせた。
「おい。遊びはそれくらいにして、女のアソコの構造をしっかり調べるぞ」
森田が言った。
「おい。京子。教壇の上に乗って仰向けになるんだ」
森田が言った。だが京子はピッチリと足を寄せ合って動こうとしない。
「仕方がないなあ」
森田は、男子の四人に目配せした。目配せされた四人は、ニヤリと笑って、京子の手足をつかんだ。
「嫌っ。やめてっ」
京子は抵抗してジタバタしたが、四人の男の力には敵わない。京子は持ち上げられて教壇の上に仰向けに乗せられてしまった。森田が縄を渡した。四人は、それぞれ、京子の手首、足首を縛って、教壇にくくりつけた。京子は教壇の上で大きく足を割り開かされ、大の字にさせられてしまった。これでもう胸もアソコも隠しようがなくなった。
「み、見ないで。お願い」
京子は、憐れみを乞うような口調で言った。だが、そんな哀願が、性欲まっ盛りの男達に通用するはずがない。男達は初めて見る女の秘部を、目を皿のようにして見つめた。京子は恥ずかしくて赤くなった顔をそらした。
「すげー。女のここの実物を見るの、生まれて初めてだよ」
言われて京子の体はピクッと震えた。男達はしばし、京子の丸出しになった女の割れ目を生唾をゴクリと飲み込みながら見つめつづけた。頭にしっかりと記憶させるように。
「この中はもっと複雑になっているんだ。よし。じゃあ、割れ目の中を調べよう」
そう言って森田は、京子の閉じ合わさった割れ目を指で大きく開いた。つるつるしたきれいなピンク色の粘膜が現れた。
「うわー。オマンコの中ってこんなになっていたのか。まるで内臓みたいだ」
「そうだよ。ここはもう、内臓なんだ。唇の中と同じさ」
「これ何だか知ってるか?」
森田は、割れ目の上の方を開いて小さな突起を指差した。
「し、知らない。一体、何なの」
「クリトリスさ。男のおちんちんに相当する物さ。ほら。こうやれば皮が剥けるだろ」
そう言って森田はクリトリスの皮を剥いた。
「本当だ。一体、それ何をするものなんだ?」
「これは女の性感帯だ。ここを刺激すると女は興奮するんだ」
そう言って、森田は京子の顔を覗き込んだ。
「お前もオナニーする時、ここを揉むだろう?」
「し、しません。そんなこと」
京子は真っ赤になって首を振った。
「ふふ。本当かな」
森田はそう言って、クリトリスをゆっくり揉み始めた。
「ああっ」
クリトリスがみるみる大きくなっていった。
「や、やめて。森田君」
森田は揉むのをやめた。京子は、ハアハア苦しげに息をしている。
「ほらな。こういう風に興奮するだろ」
森田は、あたかも実験のように説明した。
「本当だ。クリトリスって名前は聞いたことあるけど、こういうものだったとは知らなかった。すごい勉強になるな」
真面目なのかふざけているのかわからない口調で一人が言った。
「セックスでおちんちんを入れる女の穴ってどこにあるの。見当たらないけど」
一人が言った。
「あっ。あった。小さな点が見えるよ」
そう言って彼はピンク色の膣前庭の中の小さな点を指差した。
「違うよ。それはオシッコが出る穴だよ」
森田が言った。
「どうして?オシッコが出る穴が、おちんちんを入れる穴だろ」
「違うよ。お前、全然、わかってないな。男はオシッコと精液が出る穴はおちんちんの先で同じだけど、女は、オシッコが出る穴と、おちんちんを入れる穴が別なんだ」
「ふーん。知らなかった。そんなこと」
男は感心したように言った。
「じゃあ、セックスの時の穴ってどこにあるの?」
「ここだよ」
そう言って森田は、膣前庭の下の方を大きく開いた。そこには窄まった穴が確かにあった。
「あっ。本当だ。窄まった穴がある。随分、下なんだな」
「ここが、おちんちんが入る穴なんだ。この穴の中に膣壁があって、その奥に子宮があるんだ。ここが本来の性感帯で、この穴の中を刺激されると、女はすごく興奮するんだ」
そう言って森田は京子に視線を移した。
「京子。お前も、オナニーする時は、ここに指を入れてこするだろ」
「し、しません。そんなこと」
「そうかな」
森田はしたり顔で、中指を京子の女の穴に差し入れた。窄まっていた穴に森田の指がスルッと入った。まるで蛇が卵を飲み込むようにスルリと。
「すげー。指が入っちゃったよ」
男達は感心したように言った。森田はしたり顔で、入れた中指をコニョコニョと動かし出した。
「ああー」
京子は、苦しげに眉を寄せて、体をくねらせて、尻をプルプル震わせながら、苦しげな喘ぎ声を出した。京子はハアハア喘ぎ出した。
「ほら。京子は今、気持ちいいんだよ」
森田はしたり顔で言った。京子のアソコがクチャクチャ音を立て出した。同時に、白い粘っこい液体が穴から溢れ出てきた。
「うわー。すごい。ネバネバした液体が出てきた。何なの。これ」
「ふふふ。これが愛液さ。女は興奮すると、この愛液が出てくるのさ」
「何で、そんな液体が出てくるの」
「男のおちんちんを受け入れやすくするためさ。乾いているより、濡れている方が、液体が潤滑油になって、おちんちんが入りやすくなるだろ。京子は今、男を求めているんだ」
「森田君。やめて。お願い。指を抜いて」
京子は体をプルプル震わせながら言った。
「じゃあ、お前のオナニーについて正直に言いな。月に何回くらい、どんな時にオナニーするんだ。正直に言ったら指を抜いてやる」
そう言いながら森田は、指を動かしつづけた。
「い、言います。生理前になると、エッチな気持ちになってきて、オナニーしてしまいました。生理前に、三回くらいオナニーしています」
京子は焦って早口に言った。
「よし。一応、言ったから、指を抜いてやろう」
そう言って森田は指を抜いた。指には、べったりと京子の愛液がついていた。森田はそれをティッシュで拭き、京子のまんこについている愛液もティッシュで拭きとった。
「すごいな。女って皆、こんなにエッチなの」
「人によって違うよ。京子の場合、淫乱度が相当、強いな」
「女の性感帯って、クリトリスと膣だけなの」
「違うよ。女は全身が性感帯だよ。だけど人によって一番、興奮する所は違うんだ。よし。じゃあ、今度は、京子の胸の感度を調べてみよう」
そう言って森田は京子の胸に視線を向けた。
「京子は胸も大きいから、胸の感度もいいだろう」
そう言って森田は京子の丸出しになっている乳房をゆっくり揉み出した。時々、乳首をそっとつまんだ。だんだん京子の乳首が大きくなり出した。
「ああっ」
京子は、また苦しげに眉を寄せて、小さく喘いだ。
「すげー。京子の乳首が大きくなってきたよ」
一人が言った。
「乳首も女が興奮すると勃起するんだよ」
そう言って森田は、しばし京子の乳首を揉んだ。男達は羨ましそうに京子を弄んでいる森田と、弄ばれている京子を見た。
「他にも、京子の感じる所を探してみよう。女は全身が性感帯だからな」
そう言って森田は、京子の首筋や耳朶をそっと撫でたり、脇腹をすーと撫でたり、足の裏をコチョコチョくすぐったりした。森田の全ての行為に京子は、
「ああー」
と、苦しげに喘いで、体を激しくくねらせた。
「すごいな。京子は全身が性感帯だ」
森田は京子の脇腹をすーと撫でながら言った。
「オレにもやらせて」
傍で見ていた一人が、もう耐え切れないといった様子で、京子の胸に手を伸ばした。彼は京子の胸を揉んだり、乳首をつまんだり、口に含んだりした。すると、他の者達も、
「オレも。オレも」
と言いながら、京子の体を触り出した。無数の手が京子の体に伸びていった。
「ふふ。心ゆくまで京子の体の感触を味わいな」
森田は余裕の口調で言って身を引いた。皆は、貪るように京子の柔らかい体を揉んだり舐めたりした。
「ああー。やめてー」
京子は悲鳴を上げつづけた。
これ以上の屈辱があろうか。丸裸にされ、大の字に教壇の上に縛りつけられて、身動きのとれない体を、クラスの男子に寄ってたかって、弄ばれているのである。
二人が両側から、京子の乳房を片方ずつ揉んだ。
「ふふ。乳房にマッサージや愛撫をすると、乳腺を刺激することでバストの血行が良くなり、胸が大きくなるんだ。うんと揉んでやれ」
森田は笑いながらそんなことを言った。
「よし。それなら京子の胸を大きくしてやろう」
言われた二人は、そう言って京子の乳房を荒々しく揉んだ。

アソコに真っ先に飛びついたのは、京子にラブレターを出したことのある、熱烈に京子を好いている助平である。京子は、ラブレターの返事をせず、それ以来、助平を無私した。助平はクラスの女生徒のスカートを、相手かまわず、めくったり、女子のパンティーを盗んだりとスケベな上、顔も性格も悪く、京子は助平につきまとわれたくなかったのである。

助平は、目の色を変えて、京子の女の割れ目を開き、女の穴に指を入れ、ハアハアと息を荒くしながら、さかんに指を動かした。
「おい。どうしたんだよ。助平。そんなに興奮して」
京子の胸を揉んでいる男が聞いた。
「オレ。オナニーする時は、いつも京子のことを思い浮かべていたんだ。京子を丸裸にして縛りつけ、ラブレターの返事を無視したことを泣きながら謝る京子を嬲ることを想像してオナニーしてたんだ。その夢が実現したんで、もう嬉しいやら、幸せやらで、頭が混乱しているんだ」
そう言って、助平はクリトリスを剥いたり、尻の肉を揉んだりしながら、割れ目に鼻を間近に近づけてクンクンと嗅いだ。
「ああー。いい匂いだ」
助平は上ずった声で叫びながら、さかんに穴に入れた指を動かした。
「す、助平君。ラブレターの返事をしなかったことは心より謝ります。ごめんなさい」
京子はハアハアと息を荒くしながら言った。
「どうして返事をしなかったんだ」
助平が聞いた。
「そ、それは。助平君ほど、品行方正で、カッコいい男の人は、私には分不相応だと思ったからなんです」
京子は苦しげな口調で言った。
「ふん。見え透いたウソを言うな。お前はオレなんかに、つきまとわれるのがイヤで無視したんだろうが」
「ち、違います。決してそんなことはありません」
京子は激しく首を振った。美しい艶のある長い黒髪が左右に揺れた。
「ふん。見え透いたウソ言わなくていいぜ。うんと気持ちよくしてやるぜ。その代わり、たっぷり楽しませてもらうぜ」
そう言って、助平は指をさかんに動かした。ある所を刺激すると、京子は、
「ああー、い、いっちゃう」
と、一際、大きな叫び声を上げた。京子はブルブルと全身を激しく震わせた。愛液がドクドクと出始めた。
「ふふふ。ここがお前のGスポットなんだな」
助平はしたり顔で言った。
「おい。Gスポットって一体、何なんだよ」
助平の隣の男が聞いた。
「Gスポットっていうのは、膣壁にある、女が最も感じる所なんだ」
助平は得意げに言った。
「おい。もう、そろそろ交代しろよ。オレにも京子のまんこを触らせろよ」
助平が、いつまても京子のまんこを弄んでいるので、他の男が不満そうに言った。
「おれもだよ」
「おれもだよ」
男達は口々に言い合った。
「よし。じゃあ、アソコは出席番号順に触っていきな」
森田が言った。
「よし。じゃあ、おれだ」
男子で出席番号が一番の男が、前に出た。彼は京子の割れ目を念入りに弄り出した。他の男達は、京子の乳房を揉んだり、太腿を触ったり、脇腹や脇の下を触ったり、口を開いて中を覗き込んだり、美しい長い黒髪をいじったり、と京子の体を皆で寄ってたかって、弄くった。
「ああー。お願い。やめてー」
京子は男達に寄ってたかって弄ばれて、激しい興奮から髪を振り乱し、体を激しくくねらせた。
「すげえ。京子のまんこが、オレの指を締めつけてくるよ」
京子のまんこを弄んでいる男が言った。
「ふふ。女は感じると膣が収縮するんだ。体が男を欲しがっているのさ」
森田が得意げに言った。
「どうだ。京子。気持ちいいだろう」
「も、森田君。や、やめて。お願い。こんなこと」
京子はハアハアと喘ぎながら言った。
「おい。森田。京子はやめてって、いってるぜ。どうしてなんだ」
「それは京子が人間だからさ。動物には恥の概念がないだろ。しかし人間には恥の概念があるからさ。京子の体は今、男を求めているんだけど、その気持ちを受け入れないように理性で食い止めているんだ。今、京子の頭の中では、動物としての本能と、人間としての理性が戦っているんだ」
森田は得意げに説明した。
「もっと、うんと京子を弄んで、京子の理性をなくしてしまえ」
森田が言った。
「よし。わかった」
男達は、一層、愛撫を激しくした。
「ああー」
京子は男達に寄ってたかって弄ばれて、髪を振り乱し、体を激しくくねらせた。
「オレ。もう、出したくって我慢できないよ」
助平がビンビンに勃起したズボンの股間をさすりながら言った。
「オレもだよ」
「オレもだよ」
皆が勃起した股間をズボンの上から、さすり出した。
「じゃあ、出しちゃえよ。京子に出してもらえ」
「どうやって」
「マラを出して京子に扱いてもらうのさ」
「でも、京子にマラを見られるの、恥ずかしいな」
「お前。何いってんだよ。京子は丸裸なんだぞ。オレ達も性器を出せば、京子の恥ずかしさが軽減するじゃないか。人間、思いやりの心が大切だぞ」
「そ、それもそうだな」
そう言って男達はズボンを脱ぎだした。そしてパンツも脱いだ。皆のマラは天狗の鼻のように激しくそそり立っている。
「おい。京子。片手の縄をはずしてやるから、皆のマラを扱いてやりな」
森田はそう言って京子の右手の手首を縛っている縄を解いた。京子は教壇の上に両足を固定されている。片手が自由になったことで、起き上がることは出来るが、京子は身も心も疲れ果てた様子でグッタリしている。それに、起き上がったとしても、すぐに男達に取り押さえられてしまうのは明らかである。
「じゃあ、誰からにするかな・・・」
森田が独り言のように呟いて、男達を見回した。
「オレにしてくれ」
助平が名乗りを上げた。
「よし。いいだろう。お前が一番、ザーメンが溜まっているみたいだからな」
助平は京子の右側に立った。天狗の鼻のように、助平のマラは、激しくそそり立っていた。
「さあ。京子。助平のマラを扱いてやりな」
森田が言った。京子は森田に言われて、チラッと横を向いた。目と鼻の先に、助平の天狗の鼻のように怒張したマラがせり上がっている。京子は、顔を赤らめてサッと顔を反対側に向けた。
「京子。オレもう出そうで、我慢の限界なんだ。扱いてくれ」
助平が言ったが、京子は、手を伸ばすことが出来ない。
「おい。京子。助平のマラを握って扱いてやれ」
森田が言ったが、京子は手を伸ばせず困っている。助平がしびれを切らしたように、京子の手をグイとつかむと、自分の怒張したマラを握らせた。
「ああっ」
京子は思わず声を出した。
「さあ。京子。オレのマラを扱いてくれ」
助平が鼻息を荒くしながら言った。一旦、触ってしまった以上、離すことも決まりが悪くて出来ない。

京子は、ゆっくりと助平のマラを扱き出した。
「ああー。いいー。憧れの京子に、マラを扱いてもらえるなんて、夢のようだ」
助平は声を震わせて叫んだ。しばし京子は助平のマラを扱いた。京子の頬は、ほんのり紅潮してきた。京子の手の動きは、命じられたから嫌々やっているだけではないように見えた。
「ふふふ。女は興奮すると男を求めるようになるのさ。フロイトも言っているが、女は男の男根を求める願望があるんだよ」
森田はそんなことを言った。
「あ、ああー。で、出るー」
助平は出そうになる精液を必死で耐えているといった様子である。助平は、体をガクガク震わせながら、片手で京子のまんこを触って、中指を京子の穴に入れた。そして、指を動かし出した。そして、もう一方の手で京子の胸を揉んだ。京子のアソコから愛液が出始めて、クチャクチャと音を立て出した。
「あ、ああー。い、いっちゃうー」
京子が眉を寄せて体をブルブル震わせて叫んだ。助平は京子のGスポットを知っている。Gスポットを巧みに刺激されたのだろう。京子のまんこからは愛液がドクドク溢れ出した。
「ああー。いくー」
京子が叫んだ。京子は助平のマラをより一層、激しく扱き出した。クチャクチャと射精の前に出るカウパー腺液の音がしだした。
「ああー。出るー」
助平が叫んだ。
「ああー。いくー」
京子が叫んだ。
助平の亀頭からピュッ、ピュッと勢いよく精液がほとばしり出た。精液は京子の顔に命中した。
二人は同時にいった。
助平も京子も、ハアハアと荒い呼吸をしていた。しばしして落ち着きを取り戻すと助平は、ティッシュペーパーで、京子の頬っぺたについている精液をふきとった。
「どうだった」
森田が聞いた。
「京子と一体になったようで、最高に幸せだ」
そう言って助平は京子に向き直った。

「好きだー。京子」
助平はそう言って、京子を抱きしめて、京子の唇を吸った。だが京子は抵抗しようとしなかった。しばし助平は京子の唇を吸いつづけた。プハー。しばしして、助平は口を離して大きく深呼吸した。
「やった。オレ。京子とディープキスしちゃったよ。京子の歯や口の中を舐めまくっちゃったよ。京子の口の中はヌルヌルで、唾液をいっぱい吸っちゃったよ」
助平は、小躍りしながら言った。京子は顔を左にそむけた。頬がほんのり紅潮していた。
「ふふ。京子も素直になってきたんだ」
森田が勝ち誇ったように言った。
その時。ピュッと白濁液が飛んだ。
「ああー」
一人の生徒が、大声をあげた。彼は情けなさい顔つきで森田を見た。
「オレ。ちんちん揉んでたら、出ちゃったよ」
彼は情けなさそうな顔で言った。
「ばかだなあ」
森田はやれやれといった感じで言った。
「おい。森田。オレも、もう出ちゃいそうだよ。早くしてくれよ」
「オレもだよ」
「オレもだよ」
皆が口々に言った。
「よし。わかった」
森田は、京子の左手の縛めも解いた。
「せっかく京子がいるのに、自分で出しちゃったんじゃ勿体ないじゃないか。京子の左手も自由にしたから、一度に二人、京子の両側に立って、出してもらえ」
森田の提案によって、二人が同時に京子の両側に立った。
「おい。京子。みんな、もう出る直前なんだ。両手を使って二人同時に抜いてやりな」
京子は、顔を赤らめながら、黙ったまま、両側に立っている二人のマラに手を伸ばした。そして両側の二人のビンビンに勃起したマラに手が触れると、ゆっくりと扱き出した。

男達は皆、出る直前なので、京子が少し扱くと、すぐに、
「ああー。で、出るー」
と苦しげに叫んだ。すぐに白濁液が勢いよく飛び出た。
そうやって、男達全員が、たまっていた精液を放出した。
「あー。楽しかった」
「これからも実験させてもらうぜ」
男達は口々に言いあった。京子はグッタリして横になっている。男達はティシュでマラをふくと、パンツを履き、ズボンも履いた。
森田はグッタリしている京子の足の縄を解いた。京子は自由になったがグッタリと机の上に横たわっている。男達はそんな京子を人形のように、パンティーを履かせ、ブラジャーをつけ、セーラー服を着せた。

「そういえば悦子と圭子も主犯格だな。あいつらも弄ぼうぜ」
森田はズボンを履きおえると独り言のように言った。
「実際の所、誰にどの位の割合なのかは、わからないな」
一人が言った。ピクッと京子の体が動いた。京子は、何か言いたそうだか、言えないといった迷った表情で眉根を寄せて困惑した表情で森田を見た。
「おい。京子。全て私の責任です、って言えば、悦子と圭子には手を出さないぜ」
一人が言った。京子は黙って唇を噛みしめている。
「普通、友達思いの女だったら、悦子と圭子は許してやって。私が何でもされます、とか言うんだよな」
と一人が言った。
「でも京子としては、自分一人が犠牲になるより、悦子と圭子も、同じ目にあった方が、生贄が三人に分配されるから、都合がいいんじゃないか」
別の男が言った。
「そうだよな。でも、それは友達を裏切ることになるからな。そこは京子も迷うところだろうな」
「おい。京子。明日の放課後、悦子と圭子の二人を理科室に呼び出すからな。二人を助けたいなら、二人に告げてもいいぜ。それは、お前の判断に任すよ」
男達は、そんなことを言いながら、もどかしそうな京子を余所に、笑いながら理科室を出て行った。

   ☆   ☆   ☆

翌日。
京子は朝からオドオドしていた。昼休みも黙って一人で机についていた。京子は、一人ブツブツと般若心経を一心に唱えていた。その時、悦子と圭子がやってきた。
「どうしたの。京子。元気ないわね。何かあったの」
「い、いえ。な、何もないわ」
「ねえ。京子。また、純君でアレをやりましょう。私、生理が近づいてきて、毎日ムズムズしているの」
悦子が言った。
「私も」
圭子が相槌を打った。
「ダメ。絶対、ダメ」
京子が教室中に聞こえるほどの大きな声で言ったので、皆は驚いて京子を見た。
「び、びっくりしたあ。でも、どうして?」
京子は、男達を見た。男達はニヤリと笑った。京子は横目で男達を見ながら言った。
「あれは実験でしょ。実験というのは一度すればいいでしょう。理科の実験で同じ実験を二回したりする?そんなこと決してないでしょう」
京子はニヤついている男達の方を向きながら言った。理科の実験という言葉を強調した。
「でも、楽しい実験なら何度やってもいいんじゃない」
「ダメ。実験される動物の身になってごらんなさい。何度も同じ実験をされたら、される動物が可哀相でしょ」
京子があまりにも激しく訴えるので、二人はたじろいだ。
「一体、どうしたの。京子」
悦子が聞いた。
「そうよ。あなた、今日、何かおかしいわよ。何か、悩み事があるの?悩み事があるなら言って。相談にのるから」
「な、ないわ。悩み事なんて」
「え、悦子。圭子。私、風水をしてるんだけど、今日、理科室の方角に悪いことが起こりそうな予感がするの」
二人は顔を見合わせた。
「いきなり、どうしたの。京子」
二人は怪訝な顔で京子を見た。
「京子。保健室に行ったら」
圭子が言った。
「そ、そうね。わかったわ。私、ちょっと保健室に行くわ」
そう言って京子は教室を出て行った。京子は、保健の先生に、今日は早退して医者にかかるように言われて、おぼつかないフラフラした足取りで、そのまま学校を早退した。
森田はニヤリと笑った。

昼休み。森田が悦子と圭子の所に来た。
「おい。悦子。圭子。ちょっと話があるんだ。放課後、理科室に来てくれ」
「何の用?」
「それは放課後に理科室で話すよ」
そう言って森田は去って行った。

   ☆   ☆   ☆

放課後になった。
悦子と圭子の二人は、理科室に向かった。
「何の用かしら」
「わからないわ」
二人は首を傾げながら理科室に入った。理科室には森田が座っていた。
「森田君。一体、何の用?」
悦子が聞いた。森田はニヤリと笑った。
「お前達、一昨日、純を裸にして、女子全員で弄んだだろう。ちゃんと見ていたぜ」
二人はギョッとした。
「あ、あれは・・・」
と言って二人は言いためらった。あれは京子が主犯とは、言えなかった。そう言うには自分達が積極的に関わり過ぎた。それで、少し躊躇してこう言った。
「あれは、男の子の体を知る実験だったの。純君も同意してくれたし・・・」
「同意したんなら神聖な学校で、あんな事してもいいのか?」
二人は言い返すことが出来ない。唇を噛んで黙っている。
「おい。みんな。入って来い」
森田が大きな声で言った。戸が開いて、男子生徒達がゾロゾロ入ってきた。純はいなかった。
「じゃあ、同意したんなら、あんな事やってもいいのかどうか、先生に聞いてみようじゃないか」
森田が二人に言った。二人は言い返せなくて唇を噛みしめている。
「それでな。オレ達も女の体を知る勉強として、昨日、主犯の一人の京子に実験台になってもらったんだ。だけど、主犯は京子一人じゃなくて、お前達もだろ」
森田が薄ら笑いしながら言った。
「えっ。きょ、京子が」
二人は目を見合わせた。
「もし、先生に言ったら、内申書に何て書かれるかな」
一人が嘯いた口調で言った。
「京子一人だけが実験台になるってのは、可哀相じゃないか」
一人が嘯いた。
「じゃあ、選択肢をやるよ。先生に知らせて、お前達の行為の判断をしてもらうか、それとも、お前達も実験台になるかだ」
「せ、先生には、い、言わないで」
悦子が言った。
「じゃあ、実験台になるというんだな」
森田が念を押した。
「・・・・」
二人は黙っている。
森田が続けて言った。
「じゃあ、第二の選択肢だ。お前達のどっちか一人だけが実験台になり、もう一人は無罪放免とするか、二人一緒に実験台になるかだ。どっちにする?」
二人は青ざめた顔を見合わせた。二人にとって友情の裏切りは出来ないことだった。また、恥ずかしいことでも、二人なら耐えられる。二人は目を見合わせて友情の手を握り合った。
「じゃあ、二人一緒ってことだな」
森田は満足げに言った。
「け、圭子。二人で一緒に地獄に落ちましょう」
悦子が言った。
「ふ、二人一緒なら、怖くないわ」
と声を震わせながら圭子が言った。
「じゃあ、まず服を全部、脱いで素っ裸になりな」
森田が言った。だが、そう言われても二人はなかなか脱げない。それはもっともで、花も恥らう乙女がどうして、いつも授業を共にしている男子達の前で裸になることが出来ようか。
「ええい。じれってえな」
森田は男達に目配せした。男達がわらわらと二人の前に集まってきた。
「な、何をするの」
二人はジリジリと後ずさりした。
「それっ」
一人の掛け声で男達は二人に襲いかかった。男達は二人の手を背中に捻り上げた。
「な、何をするの」
捕まえられて二人は声を震わせて言った。
「お前達は自分では脱げないから、オレ達が脱がしてやるんだよ」
そう言って一人が悦子のスカートのホックを外そうとした。その時。
「待て」
森田が制した。
「裸になるのが恥ずかしいんだから、まず服を着たままで調べようぜ」
森田はニヤリと笑った。
「なるほど。痴漢プレイってわけか」
助平がニヤリと笑った。男達は服を着た二人の上から、二人の体を触り出した。制服の上から胸を触ったり、スカートの上から尻を撫でたりした。
「い、嫌っ。や、やめてっ」
二人は抵抗した。だが男達に、両腕を捩じ上げられているので、か弱い女の力では、どうすることも出来ない。男達はだんだんハアハアと息を荒くしながら、セーラー服の中に手を入れて、ブラジャーの上から胸を揉んだり、スカートの中に手を入れてパンティーの上から尻やアソコを触ったりし出した。
「い、いいな。こうやって、触るのも」
一人がハアハアと息を荒くしながら言った。
「い、嫌っ。お願い。やめてー」
二人の女は身を捩って訴えた。
「よし。それじゃあ、そろそろ脱がしな」
森田が言った。
「ゆっくりと、時間をかけてな」
森田はニヤリと笑ってつけ加えた。男達は森田に言われてニヤリと笑った。男達は、セーラー服をたくし上げて、女にバンザイさせ、首からスポリと抜きとった。そしてスカートのホックを外した。パサリとスカートが床に落ちた。一人の男が女のセーラー服とスカートを勝ち誇ったように持ち去った。女はブラジャーとパンティーだけである。二人の腕を捩じ上げて、とりおさえている男達は、悦子と圭子の体を男達の方に向けさせた。男達は、涎を垂らしながら、二人の下着姿を見つめた。
「み、見ないで」
女は男達の視線に耐えられなくて、ピッチリと太腿を寄り合わせた。助平が、ふふふ、と笑いながら、ブラジャーの乳首の所をコリコリと刺激した。
「ああー。や、やめてー」
女は叫んだ。だが助平はやめない。眉を寄せて苦しげな表情である。
「ふふふ。こうやると、ブラジャーと乳首が擦れあって、女はたまらなくなるんだ」
助平は女の胸をしばし、刺激した後、パンティーに移った。他の男達も、女のブラジャーの上から、胸を触りだした。そしてパンティーも触った。女はピッチリ足を閉じて、腰を引いている。
「ほら。もっと足を開きな」
男が言っても、女は、
「嫌っ」
と言って頑なに足を閉じ合わせている。
「仕方がないなあ」
そう言って、二人の男が女の足を一本ずつ持って、グイと足を開いた。か弱い女の力では男二人の力には敵わない。女は閉じていた足を開かされた。
「ああー」
女は叫び声を上げた。男達は、アソコの盛り上がった部分を撫でたり、揉んだり、股の真下の凹んだ所を丹念に触った。股の真下の凹みを触られると、女は、
「ああー」
と悲鳴を上げた。そして男たちは鼻先を近づけてクンクンと匂いを嗅いだりした。男達は、パンティーの尻のゴムの縁を引っ張って離し、弦楽器のようにピチンと音をさせてみたり、
「Tバック」
と言って、パンティーのゴムの縁を引っ張って、尻を剥き出にしたりした。他の男達は、太腿にしがみついたり、腹を触ったりした。
「や、やめて」
女は泣きそうな顔で訴えた。
「おい。もう、そろそろ悪戯はやめて脱がしてやりな」
森田がそう言ったので男達は、女から手を離した。
「ブラジャーとパンティーと、どっちから先に脱がして欲しい?」
一人が聞いた。
「ものの順序としてブラジャーから脱がすのが、妥当だろう」
一人がそんな意見を言った。
「でも、そうしなければならないという決まりはないぜ」
男達は口々に勝手なことを言い合った。
「じゃあ、本人に決めてもらおう」
そう言って一人が悦子の顔を見た。
「おい。悦子。ブラジャーとパンティーと、どっちから脱がして欲しい?」
男は悦子の顔を覗き込んで聞いた。悦子は黙って紅潮した顔を、そむけている。
「返答なしか。じゃあ、好きにさせてもらうぜ」
そう言って男は、悦子のブラジャーの下の縁をムズとつかむと、ペロリとめくり上げた。ブラジャーの中に収まっていた乳房がもろに露出した。
「ああー」
悦子は思わず叫んだ。ブラジャーは乳房の上にめくり上げられてとどまっている。実にみじめな格好である。男は、ふふふ、と笑いながら、パンティーのゴム縁に手をかけた。悦子はヒシッと腿をピッタリくっつけた。男はゆっくりとパンティーを下げていった。やがてアソコの毛が現れ始めた。さらに下げていくと、アソコの盛り上がった所が露出した。
「や、やめてー」
悦子は耐えられないといった表情で叫んだ。だが男は、さらにパンティーを下げていき、太腿の真ん中で降ろすのをやめた。
「小休止」
と言って男はパンティーから手を離した。パンティーは中途半端に脱がされて、あたかも太腿という木の幹に引っかかっているように見える。パンティーの縁のゴムの収縮によって、ヒシッと太腿にくっついて動かない。大きな尻は割れ目までが全て丸見えである。

助平は、圭子も同様にした。ブラジャーを捲り上げ、パンティーを中途半端に降ろした。
「ははは。なかなか、いい格好だな」
男達は笑って揶揄した。
「このまま後ろ手に縛って、自由にして、二人がどうするか見るのもいいな」
一人がそんな提案をした。
「おい。悦子。圭子。このまま後ろ手に縛られて見られるのと、中途半端じゃなく、パンティーとブラジャーを脱がされるのと、どっちがいい?丸裸になっても手が自由になれば、手で隠すことは出来るぜ」
二人の女の腕を捻り上げている男の一人が言った。悦子と圭子は困惑した顔を見合わせた。
「言わないと、縄で後ろ手に縛るぞ」
別の男が言った。
「ぬ、脱がして下さい」
悦子は、顔を真っ赤にして言った。これは当然の選択だろう。こんなブラジャーとパンティーを脱がされかかった姿で後ろ手に縛られて、自由を奪われて、こんな格好を見せ物にされるのは惨め極まりない。
「ふふふ。言ったな。じゃあ、脱がしてやるよ」
悦子と圭子の前にいた男達は、してやったりと、二人のパンティーを降ろして足から抜きとった。腕を背中に捻り上げていた男達は二人の腕を離した。そしてブラジャーのホックを外して、ブラジャーを外した。男達は、ブラジャーとパンティーを持ち去った。男達は、机の上や椅子に座って、丸裸の二人を食い入るように見つめた。丸裸の二人は近寄りながら自由になった手で、アソコと胸を手で隠した。
「じゃあ、これから何をするか、だが、京子は教壇の上に縛られて、男全員にアソコに指を入れられて愛撫されたんだぞ。お前達もそうされたいか?」
森田が言った。男達全員が中指を立てた。
「や、やめて。そんなこと。お願い」
二人は必死で訴えた。
「じゃあ、選択肢をやるよ。お前達二人も京子と同じようにオレ達全員に弄ばれるか、それとも、二人でレズショーをするかだ。レズショーをするなら、オレ達は見ているだけにするよ」
悦子と圭子の二人は顔を見合わせた。
「け、圭子。男に触られるより、女同士なら恥ずかしくはないわよね」
悦子が言った。
「そ、そうよね」
圭子が声を震わせながら相槌を打った。
「よし。決まりだ。二人でレズショーをしな」
森田が言った。
「な、何をすればいいの?」
悦子が聞いた。
「まず二人で向かい合わせにピッタリと体をくっつけ合って抱きあいな」
森田が言った。二人はギョッとした。
「そうすれば、恥ずかしい所が見えないですむぜ」
男の一人が言った。
「け、圭子。こ、これは悪い夢だと思って我慢しましょう」
悦子が言った。
「そ、そうね」
圭子が声を震わせて相槌を打った。二人はピッタリと体をくっつけて抱きしめあった。お互い相手の背中に手を回して。
「よし。じゃあ、二人でキスしあいな。ディープキスだぞ。いいと言うまでするんだぞ」
森田が言った。
「け、圭子。こ、これは悪い夢だと思って我慢しましょう」
悦子が言った。
「そ、そうね」
圭子が声を震わせて相槌を打った。二人の女はそっと口唇を触れ合わせた。
「おい。ディープキスだぞ。舌を絡め合って、唾液を吸いあうんだ」
森田が命令的な口調で言った。二人は、捨て鉢になったように、唇を強く合わせた。二人が、唾液を吸い合っていることは、喉仏がヒクヒク動いているのでわかった。
10分くらいした。
「よし。もう、いいだろう」
森田が言った。二人は唇を離した。二人の顔は、羞恥と酩酊で、ほんのり紅潮していた。二人は、お互いの目が合わないよう視線をそらした。
「ご、ごめんね。圭子」
悦子が言った。
「い、いいの」
圭子が言った。
「ふふ。二人とも少し、心境が変わったようだな。よし。今度は乳首の擦りっこだ。お互いの乳首を擦りあったり、乳房を押しつけあったりするんだ。これも、いいと言うまでやるんだぞ」
森田が言った。
「圭子。我慢してね。これは悪い夢だと思って」
悦子が言った。
「ええ」
圭子が返事した。二人は、お互いの肩に手をかけた。
そして、お互いそっと胸を近づけた。二人の乳首が触れ合った。二人は相手の肩をつかみながら、乳首を擦り合わせた。二人の乳首は、まるで、じゃれあう動物のように、弾き合ったり、押し合ったりした。だんだん二人の乳首が大きく尖り出した。二人の呼吸はハアハアと荒くなってきた。
「け、圭子。わ、私、何だか変な気持ちになってきちゃった。な、何だか凄く気持ちが良くなっちゃったの」
悦子が虚ろな目つきでハアハアと息を荒くしながら言った。
「わ、私も。悦子」
圭子が相槌を打った。二人は、しばらく、もどかしげに乳首を擦り合わせていたが、次には森田に言われるともなく、乳房を擦り合わせた。二人は乳房を押しつけたり、擦り合ったりさせた。二人の乳房はだんだん大きくなっていった。まるで生き物のように、お互いの二つの乳房が、意志を持っている生き物のように相手の乳房を揉み合っているようだった。時々、乳首が触れ合うと、二人は、
「ああっ」
と苦しげに喘いだ。
「け、圭子。中途半端な気持ちでいると、かえって辛いわ。いっそのこと、開き直って、行き着くとこまで行きましょう」
悦子が提案した。
「ええ。そうしましょう」
圭子が相槌を打った。二人は、いっそう激しく乳房を押しつけ合った。二人の顔は鼻先が触れ合わんばかりに近づいている。
「よし。またキスをしな」
森田が言った。
二人の目と目が合った。暗黙の了解を二人は感じとっているように見えた。二人は、そっと顔を近づけていった。二人の乳房はピッタリと密着して、平べったく押し潰されている。二人の唇が触れ合うと、二人は、男達に見られているのも忘れて、無我夢中でお互いの口を貪り合った。お互い、両手を相手の背中に回して、ガッチリと抱きしめ合っている。しばしして、二人は唇を離して、ハアハアと大きく深呼吸した。二人は恥じらいがちにお互いの顔を見つめ合った。
「圭子。好き」
悦子が言った。
「悦子。私も好き」
圭子が言った。二人は再び、尖って大きくなった乳首や乳房を擦り合わせ出した。二人は、これでもか、これでもかとさかんに乳房を押しつけ合った。そして、唇をピッタリと合わせてお互いの口を貪り合った。
「ああー。圭子。好きー」
悦子が大声で叫んだ。
「私も好きよ。悦子」
圭子も大声で叫んだ。二人はもう一心同体だった。男達は二人の本物のレズショーを、口をポカンと開けて眺めていた。
「ふふふ。おい。悦子。圭子。胸だけじゃなく、アソコもお互い愛撫しあいな。女同士なら、どこが感じやすいか、男よりよく知っているだろう」
森田が言った。
言われて、悦子はそっと、圭子を抱いていた右手を下に降ろして行った。そしてアソコに手を当てて、しばしアソコの肉を揉んだり撫でたりした。ややたって悦子は中指を圭子のアソコの割れ目に入れて、ゆっくり動かし出した。
「ああー」
圭子はプルプル体を振るわせ出した。圭子も右手を降ろして、悦子のアソコを触り出した。この苦しい快感に対処する一番の方法は、相手を、自分がされている以上に責めることである。圭子も中指を悦子のアソコの割れ目に入れて、ゆっくり動かし出した。
「ああー」
悦子は苦しげに眉を寄せて、大きな喘ぎ声を出した。
悦子は中指を立てて圭子の女の穴に入れ、ゆっくりと指を動かし出した。
「ああー」
圭子はプルプル体を振るわせた。悦子に負けてなるものかと、圭子も中指を立てて悦子の穴に入れ、ゆっくりと指を動かし出した。
「ああー」
悦子もプルプル体を振るわせた。確かに男より女同士の方が、感じる急所を知っている。男は女の反応だけを頼りに、手探りで、わけもわからず女の性感帯を探すしか方法がない。しかし女は感じる場所や、刺激を高めるやり方を自分の体によって実感として知っているから、男よりはるかに愛撫の仕方が上手いのである。二人のアソコがクチャクチャ音を立て出した。アソコからネバネバした液体が出始めた。
「あ、ああー。か、感じるー」
悦子が叫んだ。
「あ、ああー。感じちゃうー」
圭子も体を震わせながら叫んだ。二人は指の蠕動をいっそう速めていった。
「ああー。いくー」
ついに悦子が叫んだ。
「ああー。いくー」
圭子も叫んだ。二人は、
「ああー」
と、ことさら大きな声を出して全身をガクガクさせた。まるで痙攣したかのようだった。二人は同時にいった。
「ふふ。二人ともいったな」
森田がニヤリと笑った。
二人はガックリと床に座り込んで、ハアハアと荒い呼吸をした。
男達は、勃起したマラをズボンの上からさすりながら、二人の愛撫を無心に眺めていた。
だんだんと二人の呼吸が落ち着いてきた。
「よし。今度は毛の剃りっこだ。二人でお互いのアソコの毛を剃りあいな」
森田は言って、一人の男に目配せした。目配せされた男は、ホクホクした顔つきで、洗面器を持ってきた。洗面器の中には、ハサミ、剃刀、ボディーソープ、タオルが入っていた。
「よし。この机の上に乗って仰向けに寝て、アソコの毛をきれいに剃りあうんだ」
森田が言った。その机は、六人がけの大きな実験机だった。
「さあ。はじめな」
森田が言った。悦子と圭子の二人は困惑した顔を見合わせた。机の上に仰向けに寝て、毛を剃るとなれば、足を大きく開かねばならず、アソコを男子達にもろに見られてしまう。
「わ、私が先に剃られるわ」
悦子が言った。
「い、いえ。私が先になるわ」
圭子が言った。お互いを庇い合おうとする健気な気持ちである。
「じゃあ、ジャンケンで決めましょう」
「ええ」
二人はジャンケンした。
「じゃんけんぽん」
悦子がチョキを出し、圭子がグーを出した。
「ま、負けたわ。私から先に剃られるわ」
そう言って悦子は机の上に乗り、仰向けに寝た。
「ほら。早く剃りな」
森田が急かした。圭子は躊躇いがちに机の上の悦子を見た。
「いいの。圭子。遠慮しないで剃って」
丸裸で机の上に仰向けに寝ている悦子が促した。
「わ、わかったわ」
圭子はハサミをとると、悦子の恥毛をつまんで、ジョキジョキと切り出した。おおかた切りおわった。芝を刈り取られた後のように、盛り上がった恥丘と、女の割れ目の全貌がはっきりと丸見えになった。しかし、まだ坊主刈りのように、短く刈られた毛が低く残っている。一人の男が、洗面器を持って水道に行き、洗面器を水で満たした。そして、また机にもどってきて、洗面器を机の上に置いた。
「ほら。剃刀できれいに剃りあげな」
男が言った。
「悦子。ごめんね。膝を立てて、足を大きく開いて」
圭子に言われて悦子は、膝を立てて、足を大きく開いた。毛の無くなったアソコの割れ目が丸見えになった。
「おおっ。すげー」
男子達は思わず、身を乗り出して一斉に目を見張った。
「は、恥ずかしいわ」
悦子は顔を真っ赤にして言った。足先がプルプル震えている。圭子は、洗面器の水をすくって、悦子のアソコを湿らせた。そしてボディーソープを塗った。
「ご、ごめんね。悦子」
そう言って、圭子は、剃刀で短くなった毛を、剃り出した。剃ると、その部分はつるつるになった。
「一本の剃り残しもないようにするんだぞ」
森田が声をかけた。圭子は、言われたように、丁寧に剃ってから、タオルで拭いた。まだ剃り残っている毛があるので、圭子は水とボディーソープを、そこにつけては、残っている毛を剃った。完全にきれいに剃り上げると、圭子は丁寧にタオルで拭いた。男子達は、身を乗り出して一斉に悦子のそこを見つめた。そこは毛が全て剃らてれツルツルになっていた。悦子の割れ目からは白っぽい液体が出ていた。
「おおっ。すげー。愛液が出てるよ。こんな風にみんなに見られて感じてるんだな」
「そうだよ。女には、みんな露出願望があるんだ。夏になると、女はみんな、ピチピチのビキニを着るだろう。女は男に自分の体を見られたいんだよ」
森田が言った。
「え、悦子。おわったわ」
圭子が声をかけると、悦子は、急いで足を閉じた。
「ああっ」
悦子はきれいに剃られた自分のアソコを見て思わず赤面した。
「じゃあ、今度は私を剃って」
圭子が言った。悦子は机から降りると、今度は圭子が机の上に乗って、仰向けになった。悦子が先に剃られて、みなに見られているので、後の圭子は、それほど動じなかった。悦子も圭子のアソコの毛をきれいに剃り上げた。
悦子は、剃り上げた所をタオルで拭いた。そして、
「おわったわ」
と圭子に知らせた。圭子は、開いていた足を閉じて、机から降りた。二人は、毛のなくなったアソコを恥ずかしそうに手で隠した。
「ふふ。何で毛を剃ったか、わかるか」
森田が聞いた。二人は紅潮した顔を見合わせた。二人は、わからず眉をしかめて黙っている。
「ふふ。レズショーをやりやすくするためさ。悦子。圭子。お前達は、この机の上に乗って69をするんだ」
森田がしたり顔で言った。
「ええー」
二人は顔を見合わせて真っ赤になった。だが、男達に囲まれていて逃げられるものではない。それにもう二人は他人ではない。レズショーをやると約束したのである。
「け、圭子。あ、諦めてやりましょう」
悦子が言った。
「そ、そうね。悦子」
圭子が相槌を打った。
「じゃ、じゃあ、私が下になるわ」
圭子はそう言って、机の上に乗って仰向けに寝た。
「さ、さあ。悦子。来て」
圭子が言った。
「じゃ、じゃあ、乗るわね」
そう言って悦子は机の上に乗った。そして圭子と反対向きに、悦子の上に跨って四つん這いになった。圭子の顔の真上には、悦子の、きれいに剃られたアソコがある。悦子の顔の下には、圭子のきれいに剃られたアソコがある。男達は二人の乗っている机の回りを取り囲んだ。四つん這いの悦子は、尻の穴までポッカリ男達に晒している。
「ふふふ。悦子。尻の穴が丸見えだぜ」
森田が揶揄すると、悦子は顔を真っ赤にして、
「ああー」
と叫んだ。必死で尻の穴を窄めようとしたので尻の穴がヒクヒク動いた。
「さあ。69でレズショーを始めな」
森田が命令した。
「け、圭子。約束した以上、仕方がないわ。やり合いましょう」
悦子が言った。
「そ、そうね」
圭子が相槌を打った。
「け、圭子。もう、こうなったら、中途半端じゃなく、何もかも忘れて、徹底的にやりあいましょう。中途半端な気持ちでいると、かえって辛いわ。いっそのこと、開き直って、行き着くとこまで行きましょう」
悦子が言った。
「そ、そうね。私達、もう他人じゃないんだから」
圭子が言った。悦子の目の前には圭子のつるつるになった丘がある。圭子は膝を立てて足を開いた。
「圭子。すごく形のいい太腿ね。私、いつも、うらやましく思ってたの」
そう言って悦子は、圭子の太腿のあちこちに接吻した。
「ああっ」
圭子は太腿に接吻されて小さな喘ぎ声を出した。圭子の真上には、悦子の股間の全てが見える。
「悦子。あなたのお尻も大きくてすごく形がいいわ」
そう言って、圭子は両手で悦子の大きな尻を撫でた。
「圭子。毛がなくなって、つるつるになって、すっきりしたわね」
そう言って、悦子は圭子のつるつるになった女の恥肉を撫でたり、つまんだりと色々と弄くった。
「毛がないと、すごく感触がいいわ」
そう言って悦子は、毛のなくなった圭子のアソコをさかんにキスした。そして舌でペロペロ舐め出した。
「ああー」
悦子にアソコをキスされて、恥ずかしいやら気持ちいいやらで、圭子は喘ぎ声を出した。圭子も手を伸ばして悦子の毛のなくなったアソコを触った。圭子の方が下なので、寝たままで両手を自由に使える。圭子は車体の下から上を見上げながら車の底を修理する自動車修理工のような体勢で、悦子の股間を色々と、弄くった。アソコの肉をつまんだり、大きな柔らかい悦子の尻に指先を軽やかに這わせたり、ただでさえ開いている尻の割れ目をことさらグイと開いたり、尻の割れ目をすーと指でなぞったりした。尻の割れ目をなぞられた時、悦子は、
「あっ」
と叫んで、反射的に尻の穴をキュッと窄めようとした。
「どうしたの。悦子」
圭子が聞いた。
「そ、そうやられると、感じちゃうの」
悦子が言った。
「悦子の一番の性感帯は、肛門なのね」
圭子が言った。
「違うわよ。そんな所、触れられたの生まれて初めてだもの。誰だって感じちゃうわ」
圭子は、ふふふ、と笑った。まるで相手の弱点を知って得意になっているようだった。圭子は、悦子の大きな尻を軽やかな手つきで、指を這わせた。そして、時々、すーと尻の割れ目を指でなぞった。
「ああー」
悦子は尻の割れ目をなぞられる度に悲鳴を上げた。圭子は、ふふふ、と悪戯っぽく笑った。
「け、圭子。わ、私も遠慮しないわよ」
悦子はそう言って、圭子の女の割れ目に舌を入れて舐め出した。
「ああっ。悦子。やめて。そんなこと」
圭子は、激しく首を振って言った。だが、悦子は圭子の言うことなど聞かず、唇で小陰唇を挟んだり、クリトリスをペロペロ舐めたりした。圭子は、
「ああー」
と羞恥の声を上げた。悦子は四つん這いで膝を立てていて、圭子は寝ているため、口が悦子のアソコにとどかない。だが手は自由に動かせる。圭子も悦子の小陰唇を開いて、中指を入れた。
「ああっ」
と悦子が声を出した。圭子はゆっくり指を動かし出した。そして、首を起こして、圭子も悦子のアソコを舐めた。
「ああっ」
悦子が苦しげな声を出した。圭子は、再び首を降ろして、右手の中指を悦子の割れ目の穴に入れた。舐めた後だったので、濡れていて、指はヌルリと容易に入った。圭子は、穴に入れた指をゆっくり動かしながら、左手で、悦子の尻の割れ目をすーとなぞった。
「ああー」
敏感な所を二箇所、同時に圭子に責められて、悦子は、眉を寄せて苦しげな喘ぎ声を出した。悦子も負けてなるものかと、中指を圭子の穴に入れ、ゆっくりと動かし出した。
「ああー」
圭子も眉を寄せ、苦しげな喘ぎ声を出した。女同士なので、どこをどう刺激すれば感じるかは知っている。だんだんクチャクチャという音がし出して、ネバネバした白っぽい液体が出始めた。二人は愛撫をいっそう強めていった。
「ああー。い、いくー」
悦子が叫んだ。
「ああー。い、いくー」
圭子が叫んだ。二人は、
「ああー」
とことさら大きな声を出して全身をガクガクさせた。まるで痙攣したかのようだった。
二人は同時にいった。悦子はガックリと倒れ伏して、ハアハアと荒い呼吸をした。
「ふふ。早くも二回もいったな」
森田がしたり顔で言った。男達はみな、呆気に取られた顔していた。
「女は男と違って、射精がないから、何度でもいくことが出来るんだ」
森田が得意顔で説明した。
悦子は圭子の体の上に倒れ伏し、虚脱したようにグッタリとなった。二人はしばし、ハアハアと荒い呼吸をしていた。

だんだん二人は呼吸が元に戻って落ち着いてきた。二人は机の上で、グッタリしている。
「よし。もう、いいだろう」
森田は男達に目配せした。男達はタオルを水に湿らせてグッタリと脱力している悦子と圭子の汗だくになった体を拭き、濡れたアソコも拭いた。そして、人形のように、二人にパンティーを履かせ、ブラジャーをつけた。二人は人形のように男達のなすがままに身を任せていた。服を着せられると二人は、ゆっくり起き上がって机の上に横座りになった。
「ふふ。よかったな。レズの関係になれて」
森田が皮肉っぽく言った。
「レズは、一度やると、病みつきになるというからな。ほどほどにしときな」
森田は、そんなことを言った。
「おい。お前達、レズをする時は、オレ達に知らせな。オレ達が見ていてやるよ。お前達も、人に見られていた方が興奮するだろう」
森田が言った。二人は黙って紅潮した顔をそむけた。
「ところで純を実験台にすると、最初に言い出したのは誰だ」
二人は顔を見合わせた。
「そ、それは京子よ。京子のお姉さんが、マッサージ店で回春マッサージをしているから、そこに純君を行くように誘ったの。それで純君が行って、二度目に京子が、お姉さんの代わりに裸の純君をマッサージして、それを弱みにして、純君を奴隷にしちゃったの」
「じゃあ、主犯は、京子だな」
「そうよ。私達は京子に誘われて仕方なく手伝ったのよ」
「この前、京子を実験台にした時、今日、お前達を理科室で弄ぶ、と京子に知らせてやったんだぜ。京子から聞かなかったのか」
「き、聞かないわ」
「京子が自分一人が犠牲になると言ったら、お前達二人は見逃してやると京子に言ったけど、京子は言わなかったぜ。京子はお前達を地獄の道連れにしたんだ」
二人は不快そうな顔を見合わせた。
「そうだったの。今日、何だか、京子の様子がおかしいと思ったわ。でも、京子もずるいわ。私達を地獄の道連れにしようなんて。言い出したのは京子なのに」
悦子がふくれっ面で言った。
「そうよ。友達を思いやる気持ちがあれば、言ってくれてもよさそうなものだわ」
圭子が言った。二人の不満は京子に向かった。
「じゃあ、明日の放課後、京子をここに連れてきな。お前達も二人きりより、京子もレズの関係にさせたいだろう」
森田が言った。二人は顔を見合わせた。
「そ、そうね。京子が主犯だもの」
悦子が言った。
「友情を裏切った罪が京子はあるわ」
圭子が言った。
森田は、ふふふ、と笑った。
「じゃあ、今度は京子を連れてきな」
森田は言った。
「よし。じゃあ、今日はこれで終わりだ」
森田が男達に声をかけた。男達はゾロゾロと理科室を出て行った。

   ☆   ☆   ☆

翌日の学校である。京子は、おどおどした様子で教室に入ってきた。キョロキョロ教室を見回した。悦子と圭子と目が合うと、あわてて目を避けて急いで自分の席に着いた。すぐに悦子と圭子がやって来た。
「おはよう。京子」
悦子と圭子が京子に元気良く挨拶した。
「お、おはよう。悦子。圭子」
京子は、おどおどした口調で挨拶した。
「あ、あの・・・」
京子がもどかしそうに二人に話しかけた。
「なあに。京子」
悦子が元気に聞き返した。
「あ、あの。昨日、何かあった?」
京子が聞いた。
「なんのこと?」
悦子が首を傾げて聞いた。
「理科室には行った?」
京子が聞いた。
「昨日、京子が、理科室は鬼門だって言ってくれたじゃない」
悦子が元気良く答えた。
「そ、そう。それは良かったわ」
京子は、ほっとしたような表情で言った。京子は、キョロキョロと男子生徒達を見た。皆、三々五々、お喋りしていて、誰も京子を見ていない。京子は、ほっとした。
ジリジリジリー。
始業のベルが鳴った。皆、急いで自分の席に着いた。

   ☆   ☆   ☆

その日の放課後になった。
悦子と圭子が京子の所にやって来た。
「ねえ。京子。ちょっと用があるんだけど、付き合ってくれない」
悦子が言った。
「いいわよ。何の用」
京子は答えた。
「ちょっと、ここでは言えないわ。理科室に来てくれない」
悦子が言った。
「わかったわ」
悦子と圭子と京子の三人は理科室に行った。入るや否や、京子は机の上にピョンと乗った。
「なあに。用って。今度、どんなことをして純君を弄ぶかの相談?」
京子はウキウキしながら聞いた。
「京子。あなた、昨日、純君を、もう弄んじゃいけないって、言ったじゃない。どういう気の変わりよう」
京子はキョトンとした顔つきで二人を見た。
「それは、人間の心っていうものは、変わるものじゃない」
京子は笑いながら言った。
「京子。でも、あなた、ちょっと朝令暮改がはやすぎるわ」
悦子が言った。
「そうよ。京子。あなた。ちょっと軽率すぎるわ」
圭子が言った。
その時、戸がガラリと開いて男子生徒達がわらわらと入ってきた。京子は吃驚した。
「な、何。一体どういうことなの?」
京子があわてて聞いた。
「ふふ。悦子。説明してやれ」
森田がニヤリと笑って言った。
「京子。昨日の放課後、私達、男の子達に、ここに呼び出されちゃったの。そして、裸にされて、男の子たちの前で恥ずかしいことをやらされちゃったの」
「ええー」
京子は真っ青になった。
「だって、あなた達、昨日は何もなかった、って言ったじゃない」
京子は焦って言った。
「そんなこと、言ってないわ」
「だって理科室には行ってないって言ったじゃない?」
「そんなことも言ってないわ」
二人は京子をつめたくあしらった。
「京子。あなた、昨日、私達が男の子に弄ばれるの、知ってたのね」
悦子が言い寄った。
「そ、それは・・・」
「知ってたなら、言ってくれてもいいじゃない。私達、友達でしょ」
圭子が不貞腐れた顔で言った。
「あなた。自分一人が犠牲になるなら、私達は見逃す、って男の子たちにせまられたそうじゃない」
「そ、それは・・・」
「私達は、共犯だって男の子たちに脅かされたのよ。でも、言い出したのは、あなたで、私達はあなたに誘われて、仕方なくやったのよ。あなたは私達を地獄の道連れにしたんだわ。少なくとも私が、あなたの立場だったら、私は自分一人で責任をとるわ。私達、浜辺の公園で沈む夕日に向かって永遠の友情を誓い合ったじゃない。あれはウソだったの」
「だ、だから、昨日、理科室には行っちゃだめ、って硬く言ったじゃない」
京子は必死で訴えた。
「そんなこと、言ってないわ。あなたは、風水がどうのこうのって、言っただけじゃない。それじゃあ、意味がわかるわけがないわ」
悦子が責めるように言った。
「結局、あなたは、私達も地獄の道連れにしたかったんだわ」
圭子が口を尖らせて言った。
「それに、純君の実験だって、昨日は、絶対ダメって、言ったのに、今日はもう、当然のごとく楽しみにしてるじゃない。あなた、ちょっと、どころか、そうとう、ずるいわ」
「ご、ごめんなさい」
京子は声を震わせてペコペコ頭を下げた。
「私達、昨日、何されたか、わかる?」
「わ、わからないわ」
「私と圭子はレズショーをやらされたのよ」
「ええー」
京子は吃驚して目を見張った。
「私と圭子は、もう他人の仲じゃなくなっちゃったのよ」
そう言って悦子は圭子と手をつないだ。京子の膝はガクガクしている。
「それでね。京子も、私達とレズの仲になってもらうことに決めたの」
悦子が言った。
「え、遠慮するわ。わ、私、そういう趣味ないの」
京子は、たじろいで後ずさりした。

「私達だって、初めは躊躇ったわ。でも、ある一線を越えると、何でもなくなるわ」
悦子が言った。
「私達、喜びも悲しみも分かち合う運命共同体になるって、誓い合ったじゃない」
悦子が言った。京子はたじろいで後ずさりした。だが男達と女二人に取り囲まれているので、とても逃げれるものではない。
「じゃあ、京子。着ている物を脱いで裸になりなさい」
悦子が言った。そう言われても京子は躊躇ってモジモジしている。
「ほら。京子。はやく脱ぎな」
森田が急かした。
「自分で脱げないなら、私達が脱がしてあげるわよ」
圭子が言った。
「い、いいわ。自分で脱ぐわ」
京子は焦って言った。京子はブルブル手を震わせながらセーラー服を脱いだ。そして、スカートのチャックも外してスカートも脱いだ。京子はブラジャーとパンティーだけになった。しかし、それ以上は手が動かなかった。男達が目を皿のようにして下着姿の京子を熱い視線で見つめているからである。京子は恥ずかしそうにブラジャーとパンティーに手を当てた。
「京子。それも脱いで」
悦子が言った。
「・・・・」
そう言われても京子は決断できず、躊躇っている。
「一人だけ裸になるのが恥ずかしいのね」
悦子が言った。
「わかったわ。それじゃあ、私達も裸になるわ。そうすれは恥ずかしくないでしょ」
圭子が言った。
悦子と圭子の二人は教壇の前に来た。悦子は後ろを振り返って男達を見た。
「助平君。さあ、私を脱がして」
悦子が助平に言った。
「ああ」
助平はホクホクした顔つきで悦子の所にやって来た。そして悦子のセーラー服を首から抜きとった。悦子は佇立したままで、助平に脱がされるままになっている。助平は、悦子のスカートを降ろした。悦子はブラジャーとパンティーだけになった。助平はニヤリと笑って、悦子のブラジャーの上から乳首の辺りをコリコリさせた。
「あ、あん」
悦子は、小さな喘ぎ声を出した。助平は、ふふふ、と笑って、悦子のブラジャーのホックをホクホクして顔つきで外して抜きとった。悦子の豊満な乳房が顕になった。
「は、恥ずかしいわ」
そう言って悦子は、露出した乳房を両手で覆った。助平は後ろから屈むと悦子のパンティーをゆっくり降ろしていった。アソコの毛は剃られて、割れ目がクッキリ見えた。助平は次に圭子の服も脱がせて全裸にした。悦子のアソコの毛も、剃られていて無い。京子はそれを見て驚いている。
「私達、昨日、お互いの毛を剃りあったの」
悦子が言った。全裸の悦子と圭子の二人は京子の前に来た。
「さあ。私達も裸になったんだから恥ずかしくないでしょ」
そう言って、二人は京子の服を脱がそうとした。
「や、やめて」
京子は往生際わるく抵抗した。
「仕方がないな」
森田は男達に向かって目配せした。数人の男が京子に近づいてきて、京子を取り押さえた。そして京子のブラジャーとパンティーも脱がした。男達は、丸裸になった京子の両腕を背中に捻り上げた。
「ああっ」
京子は悲鳴を上げた。京子は逃げることが出来なくなってしまった丸裸の体をもどかしそうに、くねらせた。それにつれて京子の豊満な乳房が揺れた。
「京子。もう、あきらめなさいよ」
そう言って、悦子は、京子の肩をガッシリつかんだ。圭子は、屈み込み、京子が動かないように、京子の太腿をヒシッと抱きしめた。悦子は、京子に接吻しようと顔を近づけた。一瞬、悦子と京子の唇が触れ合った。しかし京子は直ぐに唇を離した。
「や、やめてー」
京子は叫んだ。
「なかなか素直になれないのね」
悦子は、ふくれっ面で京子をしげしげと見た。京子のアソコのふさふさした毛が目にとまった。
「これが、ちょっと、わずらわしいわね」
そう言って、悦子は京子のアソコの毛をつまんだ。
「これ。剃っちゃいましょう。そうすれば、京子も、きっと素直になれるわ」
悦子はそう言って森田を見た。
「よし。わかった」
森田は元気よく言った。悦子と圭子は、丸裸の京子を、理科室の真ん中の大きな机に、腕をつかんで連れて行った。
「さあ。この机の上に乗って」
悦子が京子の肩を突いた。
「の、乗せて、どうするの?」
京子は、全裸の体をプルプル震わせながら言った。その時、二人の男が机の所にやって来た。一人は水で満たされた洗面器を持ってきて、机の上に置いた。もう一人は、ハサミ、剃刀、ボディーソープ、タオルを持ってきて、机の上に置いた。京子はそれを見て、真っ青になった。
「わかったでしょう。この上であなたの毛を剃るの。さあ、乗って」
悦子は落ち着いた口調で言った。
「嫌っ。嫌っ。そんなこと」
京子は机の元に屈み込んでしまった。京子を机の上に乗せるには女の手にはあまった。
「仕方ないわね。手伝って」
悦子は森田の方を見た。屈強な男が四人、やって来た。
「さあ。乗るんだ」
そう言って、四人の男は、屈んでいる京子の手足をつかんで、持ち上げて机の上に乗せてしまった。だが京子は、太腿をピッチリ閉じて縮こまっている。
「さあ。京子。もう諦めて、仰向けに寝て足を大きく開いて」
悦子が諭した。だが京子は、頑なに従おうとしない。
「仕方ないわね」
悦子は四人の男を見た。四人の男はニヤリと笑って、机の両側から、京子の両手と両足をそれぞれ、つかむと、力任せにグイと開いた。閉じていた京子の脚が大きく開かれた。
「ああー」
京子は大声で叫んだ。京子のアソコが丸見えになった。
男達がわらわらと寄ってきた。
「おおっ。すげー」
久しぶりに見る京子のアソコに男達は歓声を上げた。
「京子。じゃあ、剃るわよ。動くと怪我をしちゃうから、じっとしていてね」
悦子はハサミをとると、悦子の恥毛をつまんで、ジョキジョキ切り出した。京子は四人の男に手足を押さえられて身動き出来ない。京子もようやく観念したらしく、抵抗しなくなった。

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卍(まんじ)(小説)(3)

2020-07-07 08:12:23 | 小説
しばしして、おおかたの毛が切りおわった。芝を刈り取られた後のように、京子の盛り上がった恥丘と、女の割れ目の全貌がはっきりと丸見えになった。しかし、まだ坊主刈りのように、短く刈られた毛が低く残っている。
「京子。これから、剃刀できれいに剃り上げるから、じっとしていてね」
悦子が言った。
「も、もう。好きにして」
とうとう京子は声を震わせて、捨て鉢な口調で言った。悦子は京子のアソコを洗面器の水で湿らせた。そしてボディーソープを念入りに塗った。
「じゃあ、京子。剃るわよ。動かないでね」
そう言って、悦子は剃刀を京子のアソコに当てた。その時、
「ああっ」
と悦子は、声を張り上げた。一人の男が、悦子の尻に手を触れたのである。悦子は、振り返って後ろを見た。一人の男が、悦子の尻にしがみついていた。
「な、何をするの」
「お、おれ。お前の裸を見ているうちに、もう我慢出来なくなっちゃったんだ」
そう言って男は悦子の尻に顔をつけた。
「お、おれも我慢の限界だよ」
「オレもだよ」
男達は口々に言って、ハアハアと興奮した荒いをしながら、悦子と圭子に近づいて、二人の尻を触ったり、胸に手を当てたり、ツルツルのアソコを触ったりし出した。
「ま、待って。今、剃刀を持ってるから危ないわ。剃りおわってからにして」
悦子が言った。そう言っても男達は、もうザーメンが溜まりすぎて限界なのだろう。悦子と圭子から離れようとしなかった。
「わ、わかったよ。じゃあ、手を触れておくだけにするよ。それならいいだろう」
悦子は困惑して眉を寄せた。
「仕方がないわね。じゃあ、触るだけにしておいて」
「そ、そうするよ」
男達の手はピタリと貼りついているだけになった。悦子は、やれやれといった顔で机に向き直って、京子のアソコを剃刀で剃り出した。ソケイ部から割れ目の方に向かって、坊主刈りになっている京子のアソコを剃っていった。一剃りした所だけが、つるつるの肌となって、ボディーソープの泡の中から、くっきりと現われた。悦子は、剃刀を剃った所の隣に当てて剃っていった。ちょうど半分、剃った頃だった。
「ああっ」
悦子は、声を出し、あわてて剃るのをやめた。悦子の胸を触っていた男が悦子の乳房を揉み出したのである。
「や、やめて。ちょっと待って。剃刀を扱っているから危ないわ」
悦子が言った。
「お、おれ。もう我慢できないんだ」
悦子の胸を揉んでいる男は言った。
「結婚したての夫婦では、女が台所で料理しているのを見ると、夫はどうしようもなくムラムラしてくるって、聞いたけど、本当だな」
京子の尻を触っている男が言った。
「その時、女はどうするんだ」
一人の男が聞いた。
「夫はムラムラを抑えられないから、妻は耐えながら料理を続けるんだって」
悦子のアソコを触っている男が言った。
「女もそうされると、すごく興奮するらしいぜ」
男の一人が言った。
「そういうわけだ。だから、お前も我慢して、弄ばれながら、京子のアソコを剃りな。すぐに終わるだろ」
そう言って、男は悦子の割れ目に指を入れ出した。
「ああっ」
悦子は反射的に声を出した。
「わ、わかったわ。で、でも、そっとにしてね」
そう言って悦子は、剃刀を京子のアソコに当てて、剃り始めた。
「ああっ」
悦子は、声を出し、体を震わせた。アソコを触っている男が、悦子の穴に入れた指をゆっくり動かし出したのである。悦子の胸を触っていた男も、悦子の乳房を揉み出した。悦子はハアハアと喘いで体をプルプル震わせながら、必死で男達の悪戯に耐えて、京子の毛を剃った。やっと剃りおわった。
「お、終わったわ」
悦子が言った。
悦子はタオルで京子のアソコを丁寧に拭いた。悦子と圭子を触っていた男達は、やったとばかり、ハアハアと息を荒くしながら悦子と圭子の体を揉み始めた。
「え、悦子。昨日は、お前達のレズショーを見ているだけで、触れなかったから、もう我慢が出来ないんだ」
そう言って男達は、悦子と圭子に皆で襲いかかろうとした。
「待って。今、京子の気持ちが解れてきた所だから、京子と肉体の関係をしっかり作りたいの。その後で好きな事させてあげるわ」
そう言って悦子は男達の手を払いのけた。
「わ、わかったよ」
男達は少し残念そうに言って、悦子と圭子から離れた。
「さあ。京子。見て御覧なさい。アソコの毛がなくなって、すっきりしたわよ」
悦子はそう言って、京子の顔を起こした。そして、机の上にあった手鏡をとって、剃り上げて、つるつるになった京子のアソコが見えるような角度にした。
「い、嫌っ」
京子は鏡の中に自分の、毛を剃られたアソコを見ると、真っ赤になった顔をそらした。京子は、俎板の鯉のように、四人の男に手足を押さえられて机の上に仰向けになっている。悦子と圭子の二人は京子の体を触り出した。
「い、嫌っ」
京子は抵抗したが、四人の男達に手足を押さえられているので、どうすることも出来ない。
京子は顔を真っ赤にして、口をキュッと閉じて黙っていた。悦子は、きれいに剃り上げられた京子のアソコの穴に指を入れて動かし出した。圭子は、京子の乳房を揉んだ。
「ああー」
京子は、苦しげに眉根を寄せて、苦しげな喘ぎ声を出した。悦子は京子の小陰唇を引っ張ったり、拡げたりした。悦子はクリトリスを刺激した。
「ああー」
京子は苦しげな喘ぎ声を出した。

悦子と圭子の二人は、机の上に乗せられて、四人の男に手足を押さえられている京子をさんざん弄んだ。抵抗する気力も無くなったのだろう。京子は、ダランと力を抜いて二人に、されるがままになっていた。悦子が京子の唇に接吻しても京子は抵抗しようとしなかった。京子のアソコからは白濁液が少し出ていた。悦子は京子の体を起こした。
「さあ。京子。机から降りて」
悦子が言った。京子の手足を押さえていた男達は京子の手足を離した。京子は机から降りた。
悦子は京子の正面に立った。圭子は、京子の後ろに回って座り、京子が動けないように太腿を抱きしめた。

京子は頬を赤くして正面の悦子を見た。悦子は、京子の肩をつかんだ。
「京子。乳首の擦りっこをしましょう。すごく気持ちがよくなるのよ」
悦子が言った。
悦子は、そっと胸を近づけた。二人の乳首が触れ合った。
「ああっ」
京子が苦しげに眉根を寄せて叫んだ。
「どうしたの」
悦子が聞いた。
「か、感じちゃう」
京子が言った。
「我慢して。すぐに気持ちよくなるから」
そう言って悦子は京子の肩をつかみながら、乳首を擦り合わせた。二人の乳首は、まるで、じゃれあう動物のように、弾き合ったり、押し合ったりした。だんだん二人の乳首が大きく尖り出した。二人はハアハアと呼吸が荒くなってきた。
「え、悦子。わ、私、何だか変な気持ちになってきちゃった。な、何だか凄く気持ちが良くなっちゃったわ」
京子が虚ろな目つきでハアハアと息を荒くしながら言った。
「わ、私もよ。京子」
悦子が言った。二人は、しばらく、もどかしげに乳首を擦り合わせていた。
「京子。今度は乳房を擦り合わせましょう」
悦子が言った。
「ええ」
京子が答えた。二人は乳房を擦り合わせた。二人は乳房を押しつけたり、擦り合ったりさせた。まるで、お互いの乳房が相手の乳房を揉み合っているようだった。時々、乳首が触れ合うと、二人は、
「ああっ」
と苦しげに喘いだ。
京子と悦子の二人の顔は目と鼻の先である。 二人の目と目が合った。暗黙の了解を二人は感じとった。二人は、そっと顔を近づけていった。二人の乳房はピッタリと密着して、平べったく押し潰されてた。二人は、お互いに唇を近づけていった。二人の唇が触れ合った。二人は無我夢中でお互いの口を貪り合った。悦子は、両手を京子の背中に回して、ガッチリと京子を抱きしめている。しばしして、二人は唇を離して、ハアハアと大きく深呼吸した。二人は恥じらいがちにお互いの顔を見つめ合った。
「京子。好き」
悦子が言った。
「悦子。私も好きよ」
京子が言った。二人は再び、尖って大きくなった乳首や乳房を擦り合わせ出した。二人は、これでもか、これでもかとさかんに乳房を押しつけ合った。そして、唇をピッタリと合わせてお互いの口を貪り合った。
「ああー。京子。好きー」
悦子が大声で叫んだ。
「私も好きよ。悦子」
京子も大声で叫んだ。二人はもう一心同体だった。
圭子は京子の後ろで座って、京子が逃げないように太腿を抱きしめていたが、それは、もはや不要の行為だった。抱きしめていたのは別の目的だった。圭子は、京子の大きな柔らかい尻に頬をピッタリとくっつけていた。
「圭子。京子の下を気持ちよくしてあげて」
悦子が言った。
「わかったわ」
圭子は京子のアソコを、触り出した。
「京子。もっと足を開いて」
圭子が言った。言われて京子は閉じていた足を開いた。
圭子は京子の女の穴に中指を入れた。京子のアソコは、もうじっとりと濡れていたので、指はスルっと入った。圭子は、ゆっくりと、穴に入れた中指を上下に動かし出した。
「ああー」
京子が眉根を寄せて、大きく喘いだ。京子のアソコがクチャクチャ音を立て出した。白い粘っこい液体が出始めた。
「ああー」
京子は体をプルプル震わせて、叫んだ。

京子はハアハアと苦しそうに喘ぎながら、自分も右手を下に降ろし、正面の悦子のアソコに手を当てて、しばしアソコの肉を揉んだり撫でたりした。そして中指を悦子のアソコの割れ目に入れて、ゆっくり動かし出した。
「ああー」
悦子はプルプル体を震わせて、喘ぎ声を出した。
京子も中指を立てて悦子の女の穴に入れ、ゆっくりと指を動かし出した。悦子のアソコもクチャクチャと音を立て出した。悦子のアソコからも白濁液が出てきた。
圭子は、後ろから一心に京子のアソコに入れた指を動かしている。
「け、圭子。もっと激しくやって」
京子が後ろの圭子に言った。
「ええ。わかったわ」
圭子は、指の蠕動を速めていった。
「ああー」
京子は、圭子の責めの辛さのやりきれなさを悦子にぶつけるように、悦子の女の穴に入れた指の蠕動を速めていった。京子と悦子は、お互い抱き合って、乳房を押しつけながら、お互いの口を吸い合った。
「ああー。いくー」
ついに京子が叫んだ。
「ああー。いくー」
悦子も叫んだ。二人は、
「ああー」
とことさら大きな声を出して全身をガクガクさせた。まるで痙攣したかのようだった。二人は同時にいった。二人は、しばしハアハアと荒い呼吸をした。

呼吸が落ち着いてくると、今度は、悦子と圭子が入れ替わった。圭子は京子と向かい合って、キスをし、乳首を擦り合った。悦子は京子の背後で、圭子がしたように、京子のアソコに指を入れた。京子と圭子も一緒にいった。これで、三人は同性愛の関係になった。

   ☆   ☆   ☆

三人は疲れからグッタリと床に座り込んだ。
しばしの時間がたった。女三人はゆっくりと起き上がり出した。
「おい。悦子。お前達だけで楽しんでるのを見せつけられて、オレ達はもう我慢の限界なんだ。さっき、後でやらせてやると言ったから、やらせてくれ」
男達はそう言って女三人に近づいてきた。
「さあ。三人とも立ち上がるんた」
男達に手をつかまれて京子と悦子と圭子の三人は立ち上がらせられた。森田がやって来た。森田は三人は体を外側に向けた三角形のかたちに立たせた。
京子の左に悦子を立たせ、京子の右には圭子を立たせた。そして圭子の右肩を悦子の左肩にくっつけた。
「な、何をするの」
京子は言った。
「ふふ。面白いことさ」
森田はそう言って京子の右腕をつかんで背後に回し、左隣にいる悦子の左手を背後で握らせた。
「さあ。京子。悦子の左手をしっかりつかむんだ」
森田に言われて京子は悦子の左手をつかんだ。森田は、今度は京子の左腕をつかんで背後に回し、右隣にいる圭子の右手を背後で握らせた。
「さあ。京子。圭子の右手をしっかりつかむんだ」
森田に言われて京子は圭子の右手をつかんだ。京子は、背中で両腕を交差させて、両隣にいる二人の、遠い方の手を背後で握る形になった。男達は、それを三人にやらせた。
これで三人が、それぞれ、背中で腕を交差させて、両隣の女の遠い方の手を握る状態になった。三人は体を外に向けた三角形になった。背中で両隣の女とお互い遠い方の手を握り合っているので、三人の体はピッタリとくっついている。森田はニヤリと笑って、握り合っている三人の手首をそれぞれ縄でカッチリと縛った。まず京子の右手と悦子の左手の手首を縛り、次に京子の左手と圭子の右手の手首を縛った。そして最後に悦子の右手と圭子の左手の手首を縛った。これでもう三人は自由が利かなくなった。女三人は、丸裸の体を男達に向けて曝け出している。
「は、恥ずかしいわ」
男達に取り囲まれて、丸裸をじっくり見られて女達は、太腿をピッタリ閉じて言った。
「森田君。こんなことしてどうするの?」
京子が聞いた。
「こうやって三人で手をしっかりつないでいれば、何をされても耐えられるだろ。そうすればお前達の友情の絆も強くなるぜ」
森田がニヤリと笑って言った。
「ふふふ。それじゃあ、好きなことをさせてもらうぜ」
男達が言った。
男達はわらわらと、三人の前にやって来た。男達は、それぞれ自分の好きな女の前に行った。女達は太腿をピッチリ閉じた。
「すげー。こんなに間近に女の裸を見れるなんて、夢のようだ」
京子の正面にいた男が京子の間近に近づいて言った。男は、いやらしい目つきで、京子の胸や、臍や、アソコをしげしげと見つめた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は、か細い声で言って、太腿をピッチリ閉じて、腰を引いた。
「ふふ。京子。お前のアソコも毛がなくなって、つるつるになって、さっぱりしたじゃないか。割れ目が丸見えだぜ」
京子の正面の男が言った。女は、揶揄される度にピクッと体を震わせた。三人は手をギュっと握り合った。
「しっかり手を握り合うことで恥ずかしさに耐えましょう」
京子が言った。
「ええ。三人一緒だから怖くないわ」
悦子が言った。それは他の二人に言うのと同時に、自分に対しても言い聞かしているような口調だった。
「そ、そうね」
圭子も言った。
三人はまさに一心同体だった。一人が、別の女の片手をギュッと握ると、握られた女は、もう一人の女の手をギュッと握りしめた。それがまた最初の女に返ってきた。まるで、電気回路のスイッチが入って、電流が流れ出しているかの様だった。

男の一人がハアハアと息を荒くしながら、京子の体に手を伸ばそうとした。
「待て」
森田が制した。
「どうしてだ」
男が森田に聞いた。
「いきなり触らないで、まず女達の裸をじっくり観賞するんだ。そうして、いっぱいザーメンを溜めておくんだ。そして後で思いっきり出すんだ」
森田が言った。
「な、なるほどな。わかったよ」
男は、手を引っ込めて、ハアハアと息を荒くしながら、ズボンの上からビンビンに勃起したマラを扱きながら、女達の裸を舐めるように見つめた。男達は、まず裸の女達の体を隅々まで、じっくり観賞しようと、ビンビンに勃起したマラをズボンの上から扱きながら、食い入るように、女の裸の体に目をやった。女達は羞恥に太腿をピッチリ閉じて腰を引いた。
「しかし、三人ともいいプロポーションだな」
一人が言った。
「おっぱいは悦子が一番大きそうだな」
一人が言った。悦子の肩がピクッと震えた。
「でも形は圭子の方がいいぜ」
別の男が言った。
「そうかな。オレは京子のおっぱいの方がいいと思うけどな。弾力があって。この前は、すごく揉みがいがあったぜ」
別の男が言った。
「でも、おっぱいって、脂肪と乳腺という柔らかい組織だけなんだろ。それが胸の上にくっついているだけだろ。何で垂れてこないんだろう」
ある男が言った。
「それはだな。乳房の中にはクーパー靭帯というのがあって、乳房をテント状に吊り上げているんだよ」
森田が説明した。
「ふーん。なるほどな」
男達は感心したように女達の乳房を見た。
「太腿は京子が一番、スラリとしてて美脚だな」
「ウエストは圭子が一番よく、くびれてるな」
男達は口々に女の体の品評をし出した。女達は、しっかり手を握りしめ合うことで男達に裸をまじまじと見られる屈辱に耐えようとした。
「乳首の形は京子が一番いいな」
「そうだな。糸でくくっても外れなさそうだな」
「糸でくくっても外れない乳首だと、面白いことが色々できるからな」
「その点、糸でくれない乳首は面白くないな」
男達は好き勝手なことを言い合った。女達は真っ赤になった。助平が京子の前にやって来た。そして、ポケットから鉛筆を取り出して、京子の乳首の先を突いた。
「ああっ。やめてっ」
京子が叫んだ。
「おい。女を触るのはまだだぞ。もっとじっくり観賞するんだ」
森田が叱るように言った。
「鉛筆でつついているだけだよ。手で触っていないから、これは触っているとは言えないよ」
助平が言った。
「なるほど。そうかもな」
森田はそう言って助平の行為を大目に見た。
「ふふ。こうやって京子の乳首を刺激して、勃起させるんだ。勃起したら糸でくくっても、外れないかどうか、試してやる」
そう言って、助平は京子の両方の乳首を鉛筆で突いた。
「や、やめてっ」
京子は肩を震わせて言った。しかし、両手を交差されて、悦子と圭子にガッチリとつなぎあわされている以上、身動きすることは出来ない。助平は、それをいいことに、鉛筆の先で、京子の乳首を突いた。心地よい刺激を与えて乳首を勃起させるのが目的だったので、突く、というより、鉛筆の先を、触れるか触れないかの程度で触れ合わせているだけである。京子の乳首はだんだん大きくなっていった。助平は、さらに鉛筆で、京子の豊満な乳房を突いた。鉛筆の先が京子の柔らかい乳房にめり込んだ。
「ああっ」
京子は声を出して胸を揺すった。しかし意地悪な鉛筆は、執拗に京子の乳房についてまわった。京子は、後ろ手に縛られて、鉛筆で乳房を弄ばれるという屈辱に、なす術もなく耐えるしかなかった。それは見ている男達の性欲を激しく刺激した。
「おれも」
「おれも」
と言って、男達は悦子と圭子の前に立って、助平と同じように鉛筆で女達の乳首を突き出した。
「ああー」
悦子と圭子は、恥ずかしさと、屈辱と、もどかしさで、声を出した。三人は屈辱に耐えようと、ギュッと、お互いの手を握り締めた。京子の乳首は勃起している。悦子と圭子の乳首も同様に、勃起し出した。助平は、
「ふふふ」
と笑って、ポケットから絹糸を取り出した。
「な、何をするの」
京子は、声を震わせて言った。
「ふふ。お前の乳首も勃起して大きくなったことだし、絹糸でくくっても、外れないかどうか試してみるのよ」
そう言って、助平は京子の勃起した右の乳首の根元を絹糸で縛った。乳首の根元がくびれて、糸はしっかりと乳首にとりつけることが出来た。右の乳首を縛ると、今度は左の乳首を縛った。
「ふふ。しっかりと、とりつけることが出来たぜ。どれ。引っ張っても、はずれないかな?」
そう言って、助平は、京子の両方の乳首にとりつけた糸をクイと引っ張った。糸は、はずれず、乳首につられて、大きな乳房がせり上がってきた。
「ああー。やめてー」
京子は、乳首に糸を結びつけられて、引っ張られるという、この上ない屈辱に、顔を真っ赤にして叫んだ。助平は、かなりの力で引っ張った。乳房が円錐形になって、糸がピンと張った。
「すげー。完全に糸を乳首に結びつけることが出来るよ。これなら、色々と、悪戯したり、折檻したり出来るな」
助平が言った。
「将来、結婚して、浮気とかしたら、夫にこうやって折檻されるだろうな」
そう言って、助平は、面白そうに、京子の乳首に結びつけた糸を引っ張った。
「ふふ。この糸に重りをつけて体を柱に縛りつけておけば、いい仕置きになるな」
助平は、そんなことを言いながら京子の乳首の糸を引っ張った。隣の悦子の正面にいた男も、悦子の勃起した乳首を絹糸で縛った。糸を引っ張ってみたが、悦子の乳首の糸も外れなかった。圭子の乳首にも糸は結びつけることが出来て、引っ張っても、外れなかった。男達は、エーイと、掛け声をかけてそれぞれ、三人の乳首にとりつけた糸を引っ張った。
「ああー」
女達は、屈辱のため、そろって苦しい声を出した。
「は、恥ずかしい」
「く、口惜しい」
「み、みじめだわ」
女達は、顔を真っ赤にして、口々に屈辱の心境を言った。
「京子。どうだ。今の気持ちは」
森田が聞いた。
「み、みじめだわ。は、恥ずかしいわ」
京子は体をプルプル震わせて言った。
「じゃあ、恥ずかしくないようにしてやろうか」
森田がしたり顔で言った。
「な、何をするの?」
京子が聞いた。
森田は、ふふふ、と笑った。
「恥ずかしい所は三ヶ所だろう。それなら、そこを隠せば恥ずかしくなくなるだろう」
そう言って、森田は、ガムテープを男達に渡した。
「ほら。これを切って、恥ずかしい三ヶ所に貼りつければ、恥ずかしくなくなるだろう」
男達はニヤリと笑った。
「なるほど。二プレスか」
男達はニヤリと笑った。そして、ハサミで、ガムテープを小さく切った。男達は、女達の乳首の糸を外して、代わりに、乳首とアソコに、小さく切ったガムテープを貼った。女の恥ずかしい三ヶ所は確かに隠された。しかし、その姿は、裸より、ずっとエロチックだった。
「ふふ。恥ずかしい所が見えなくなったから、もう恥ずかしくないだろう」
森田が言った。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を真っ赤にして言った。
「ふふ。ストリップショーの女みたいだな」
一人が言った。男達は、しばし、小さく切られたガムテープを、女の恥ずかしい三ヶ所に貼りつけられている、三人の女を、ストリップショーを見るように、しげしげと眺めた。

「おい。京子。スリーサイズはいくつだよ?」
一人が聞いた。京子の体がピクンと震えた。
「し、知りません」
京子は首を振った。
「知らないわけがないだろう。自分の体だぜ。ブラジャーやスカート買う時、自分のバストやウェストのサイズを測るんだろう」
一人が言った。京子は黙っている。
「あっそうか。成長期だから、どんどん大きくなって変わっていくんだよな」
一人が言った。
「それじゃあ、オレ達が測ってやろうぜ」
森田が言った。彼はメジャーを出して、助平に渡した。
「ほら。スリーサイズを測ってやりな」
言われて助平は、ホクホクした顔つきで、京子の前に立った。
「スリーサイズを正確に測るからガムテープは外すぜ」
助平はニヤリと笑って言った。
「や、やめてー」
京子が大声で言った。だが助平は、容赦せず京子の乳首の二つのガムテープをとった。
「ついでにこれもとるぜ」
そう言って助平は京子のアソコに貼ってあるガムテープもとった。京子は丸裸になった。助平は、京子の胸に巻尺を巻いて、バストを測った。測ると、大きな声で、「バスト××cm」と言って、開いたノートに、その値を書いた。そして、次はウェスト、最後にヒップを測った。京子が終わると、次は、悦子のスリーサイズを測り、最後に、圭子のスリーサイズを測った。さらに男達は、ノギスで、女達の乳首の大きさを測った。
「じゃあ、お前達のもとるぜ」
男達はそう言っての悦子と圭子のアソコに貼ってあるガムテープもとった。女達は丸裸にされて、膝をピッチリ閉じ合わせて、腰を引いてモジモジしている。
「ふふ。アソコもよく調べてみたいな」
一人が言った。
「でも膝をピッチリ閉じてしまっているから、測りにくいぜ」
「どうやったら膝を開かせることが出来るかな?」
「ふふふ。いい方法があるぜ」
助平がニヤリと笑って言った。
「どんな方法だ」
助平は答えず、三人の女のパンティーをもって来た。助平はニヤリと笑いながら、京子の左足にパンティーの片方の穴を通した。そして、京子の隣の左にいる悦子の右足に、もう片方のパンティーの穴を通した。そしてスルスルと引き上げて、膝の上で離した。パンティーは弾力によって縮まろうとする。結果、二人の隣り合った女の膝が引っ張られた。助平は同様に、京子の右足と、京子の右隣にいる圭子の左足にパンティーを通して膝の上まで上げて離した。最後に、悦子の左足と、悦子の左隣にいる圭子の右足にパンティーを通して膝の上まで上げて離した。これで女達は、パンティーによって隣の女の膝と膝を結びつけられた形になった。パンティーの弾力によって、閉じていた女達の足が開かされていった。
「ああー。な、何てことをー」
京子は、真っ赤になって叫んだ。だが両隣にいる女の、膝と膝に通されたパンティーが縮もうとしているため、足が開かされてしまう。
「ふふ。よく見えるぜ」
男達はそう言って、女のアソコに顔を間近に近づけた。女達は真っ赤になった。男達は、鼻先を女のアソコに近づけてクンクンと鼻を鳴らした。
「なんか、かわった匂いがするぜ」
「それが女の匂いだよ。女は風呂に入っても、アソコの中はあまり石鹸できれいに洗わないんだ」
「どうして?」
「女の穴の中は敏感な粘膜で酸性で、石鹸はアルカリ性だから、刺激が強すぎるんだよ」
「ふーん。女って、不潔なんだな。オレなんか、風呂に入ったら、毎回、マラの皮を剥いて、石鹸で、恥垢をきれいに洗ってるぜ」
「しかし、いい眺めだな」
男達は感心したように言った。

男達は、後ろ手に縛られて、パンティーで足をつながれた女達を、しばし、しげしげと眺めた。男達は顔を低くして、下から女の割れ目をじっくりと見上げた。
「すげー。丸見えだよ」
男達は女の羞恥心を煽るように、ことさら驚いたように言った。女達は、体をピクンと震わせて、足を閉じようとした。しかし、隣の女と膝がパンティーでつながっているため、引っ張られて閉じられない。それに、自分が足を閉じようとすると、隣の女の足を開かせることになるので、友情から、それは出来なかった。

男達は、ハアハアと息を荒くしながらビンビンに勃起したマラを扱き出した。
「お、おれ。もう我慢できないよ」
「おれも」
「おれも」
男達はもう我慢の限界だった。
「よし。もう観賞するのはこれくらいでいいだろう。思う存分、触りまくって、好きなことをしな」
森田が言った。

「よし」
男達はまってましたとばかり、女達にとびかかった。男達は、ハアハアと息を荒くしながら、女達の胸を揉んだり、アソコを揉んだりした。
「い、嫌っ」
女達は、身を捩って避けようとしたが、手をお互いに縛られて、パンティーで膝をつながれているため、どうしようもない。手をしっかり握り合って男達の攻撃に耐えた。男達は、嫌がる女達に、
「好きだー」
と言って、強引にキスした。女達は口をギュッと閉じたが男達は、強引に舌を入れて歯や歯茎をペロペロ舐めた。
そしてアソコの穴に中指を入れて、ゆっくり動かし出した。
「ああっ。やめてー」
女達は、嫌がったが、だんだん、クチャクチャと音がし出して、トロリとした白濁液が出始めた。
「も、もう我慢できない」
男達はそう言って、服を脱ぎ出した。上着を脱いだ。そしてズボンを脱ぎ、パンツを脱いだ。男達は丸裸になった。マラは天狗の鼻のように、激しく怒張して、そそり立っていた。男達は、裸で女達に抱きついた。そして、そそり立ったマラを女のアソコに押しつけた。
「ああー」
女達は、男のマラがアソコに触れると、思わず声を出した。男達は、キスしたり、胸を揉んだりしながら、マラを女のアソコに擦りつけた。男達の息はハアハアと荒くなっていった。
「も、もう限界たー」
男達は、そう言って、マラを握りしめて扱き出した。
「ああー。で、出るー」
男達は、ひときわ大きな声で叫んだ。男達はマラの先を女のアソコに向けた。ピュッ、ピュッ。と、勢いよく精液が放出された。精液は女のアソコにくっついた。一人が射精すると、待っていた次の男に代わった。こうして、男達全員は、裸の女のアソコにザーメンを放出した。それぞれ自分の好きな女に。



平成23年3月13日(日)

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秋子 (小説)

2020-07-07 07:52:19 | 小説
秋子

 秋子はマゾである。それは生まれついての性癖だった。それを秋子は夢想の自涜で慰めていた。秋子は、月一回、ある本屋へ出かけていった。そこは裏通りの小さな本屋だった。そこに月一回のSM雑誌の発売日に、秋子はそれを買いに行った。秋子はその小説を読むのが好きだった。秋子はすぐには買わない。しばらく立ち読みしてから買うのである。書店のおやじはもう六十を越しているであろう。禿げた頭に白髪が少しある。チョッキを羽織り、老眼鏡をかけている。老人は秋子が立ち読みしているのをじっと眼鏡の奥から眺めている。万引きに対する警戒心とも違う。いくら老人とはいえ、毎月、秋子が買いに来ることは知っているだろう。かりに忘れたとしても、秋子が手にしているのは月刊のSM小説である。この老人にSM小説を立ち読みしているのを見つめられるのは、秋子にとって被虐的な官能だった。あの老人は何も親しく話しかけてこない。それはきっと秋子を視姦しているに違いない。そもそもSM小説を取り寄せているのもきっと自分のため、とも思われてくる。
ある時、SM小説がなかった。売り切れたのかと思って初めて老人に小声で聞いてみた。
「あ、あのSM秘小説ありますか」
すると老人は棚の下からそっとそれを差し出した。秋子以外の客に買われないように、そっと隠しておいたのだ。それ以来、秋子の官能はますます激しくなった。客の少ない店だったので。秋子はその書店に行く時、超ミニをはいて行ったり。極力、肌の露出したセクシーな服装で行った。時には、薄いブラウスやTシャツに、ノーパンやノーブラで行ったりした。秋子は黙読のスピードが速かった。秋子はSM小説を読みながら、すぐに蓬頭垢面の男にいたぶられる女に感情移入した。読みながら老人の視線にも、それを妄想した。あの老人は何も言わない。しかし無口な男は例外なくムッツリスケベだ。きっと、あの老人は、自分を裸にして縛ることを想像しているに違いない。老人の視線は秋子の起伏に飛んだ肉体を舐めまわすようでもある。視線はいつも胸と尻である。秋子はほとんど確信した。秋子も媚態を示した。本を探す振りをして、腰を曲げ、わざとスカートがめくれるようにしたり、ブラウスのボタンを胸元が見えるまで、はずしたりした。腰を曲げる時、老人の熱い視線を感じる。もう間違いない。老人は秋子を視姦しているのだ。老人の熱い視線を浴びて立ち読みして、レジにそれを出す時、秋子はもうクラクラしている。本は裏にして出す。秋子は五千円出す事に決めていた。老人がおつりの三千六百八十円手渡させるため。老人は無言のうちにおつりを渡すが、受け取る秋子の手はプルプル震えている。老人は紙幣と硬貨を、ゆっくり渡す。秋子はえもいわれぬ淫卑なスキンシップを感じてしまう。家に帰って、ベッドで寝転んで小説を読む。グラビアの写真も実にいやらしい。秋子はそれに感情移入する。丸裸で柱に縛られた美しい女を蓬頭后面の老人が、いやらしく筆でくすぐっている。秋子はそれにすぐに感情移入する。丸裸で縛られている美女が自分で、それを筆でくすぐる老人が書店の老人となる。秋子はさまざまな奇態な姿に縛められ、老人に、いやらしい事をされることを想像した。つい、パンティーの中へ手がいってしまう。秋子は何度も老人に縛られることを想像した。丸裸になって、写真のような奇態なポーズをしてみたりした。秋子の妄想の自涜はどんどん激しくなっていった。

ある時、それは真夏のある日だった。秋子はその書店に行った。超ミニにTシャツで。いつものように立ち読みして、レジに出した時、秋子は官能の悩みの激しさにクラリとよろめいて倒れてしまった。老人は秋子の傍らに行って屈み床に倒れた秋子を抱き起こした。
「大丈夫ですかいの」
「え、ええ」
秋子は顔を赤らめて言った。
「今日は特に暑い日だて。暑い中をまた歩いて、日射病で倒れるとようない。少し、家で休んでいきんしゃい」
「え、ええ」
言われるまま、秋子は家に上がった。老人は麦茶を盆に載せて持ってきた。秋子は遠慮がちに一口飲んだ。老人は秋子をじっと見つめている。老人はいやらしい目つきで秋子のミニスカートの奥の方に視線を向けている。秋子は思わずスカートをそっと押さえた。老人は薄ら笑いしながら。写真集を秋子の前に差し出した。SM写真集だった。老人は一項一項めくってみせた。秋子は、恐ろしさと妄想が現実だったことにおののいた。しかし、それは甘美な酩酊でもあった。
「ふふ。あんた。こういう風にされたいんやろ。わしをスケベな老人にして、妄想にふけっていたんじゃろ。わしに、この写真のように縛られることを想像してたんやろ」
秋子は言葉が出なかった。
「ふふ。わしもあんたの思うとおり、あんたを裸にして縛る想像をして楽しんでおったわ」もう秋子は蜘蛛の巣にかかった蝶だった。老人は麻縄を持ってくるとそれを秋子の前にドサリと落とした。
「さあ。裸になりんしゃい。あんたの夢をかなえてやるけん」
秋子は頬を紅潮させTシャツを脱いだ。ブラジャーをつけていなかったため豊満な乳房が露わになった。スカートも腰を浮かせて脱いだ。パンティーも脱いで丸裸になった。そこの毛はきれいに剃られていた。老人はそれを見て、
「ふふふ」
と笑った。秋子は胸と秘部を覆いながら座り込んだ。秋子は丸裸で見下されることに甘美な陶酔を感じていた。老人は秋子の後ろに回って、胸と秘所を隠している秋子の手を後ろに捩じ上げた。
「あっ」
秋子は反射的に声を漏らした。老人は秋子を後ろ手に縛った。そして、その縄尻を前に回し、乳房の上下に二巻きずつ縛った。乳房がきつい縄の縛めによって縄の間からはじけ出た。
「さあ。立ちんしゃい。腰縄をしてやるけん」
老人に立つように言われて秋子はヨロヨロと立ち上がった。老人は縄を二つに折って秋子のくびれた腰にしっかりとくくって腰縄をつくった。そして、その縄尻を秋子の女の谷間に通し、後ろに回し、しっかりと尻の割れ目に食い込ませ、グイと引き絞って、横に走る腰縄に結びつけた。縄が女の敏感な所に食い込む感覚に秋子は、
「ああー」
と声を洩らした。
「ふふ。縄が食い込んで気持ちいいじゃろ。しかし、この縄は女の秘所を隠す役目もするからの。どんな格好をしても、恥ずかしい所は手で隠さずとも見えぬからの。心置きなく好きなポーズをとりんしゃい。まだ、あんたは羞恥心を捨てきれんでいるからの」
老人は等身大の姿見の鏡を秋子に向けた。秋子は胸縄と縄褌で縛められた自分を見て赤面した。が、まさに自分が夢にまで見た、みじめ極まりない姿になれたことに被虐の快感を感じていた。秋子は力無くクナクナと座り込んだ。が、意地悪な縄褌はきびしく食い込んだままついてまわる。
「さあ。うつ伏せになって、膝を立てて尻を上げんしゃい」
言われるまま、秋子はうつ伏せになって、膝を立てた。秋子は顔を畳につけ尻だけ高々と上げているというみじめ極まりない格好になった。後ろ手に縛められているため、上半身の体重が顔と肩にかかって、顔が押しつぶされる。
「ふふ。乳房が押しつぶされて、綺麗に見えるわ。それに尻も丸見えじゃ。しかし、恥ずかしい所はしっかり縄に隠されて見えんから、安心してもっと股を開きんしゃい」
老人に言われるまま秋子は脚を開いた。体はすべて丸見えでも、食い込み縄のため、恥ずかしい所は隠されると思うと秋子は意地悪な食い込み縄に感謝する思いだった。
(どんな恥ずかしいポーズをしても、恥ずかしい所は見られないんだわ)
そう思うと気持ちが大胆になって、
(さあ。もっと見て。秋子の恥ずかしい姿をうんと見て)
と心の中で叫んで、脚を開いた。老人はしばらく尻を高々と上げた秋子の恥ずかしい姿を見ていた。
「この姿のまま、股の縄を解いて浣腸するのもいいものじゃが、どうするかの」
「こ、こわいわ。許して」
「ふふ。わかった」
その代わり、と言って老人は熊の毛で突き出た尻や恥ずかしい所をスッとなぞった。
「ひいー」
秋子は悲鳴を上げた。
「ふふ。かわいいの。つらさと恥ずかしさには、こうやって耐えるんじゃ」
そう言って老人は秋子の背中で縛められている手を掴むと親指を残りの四指で握らせた。
「ほれ。力を込めて親指をしっかり握ってみんしゃれ。物を握る力が、つらさを逃がし、隠しているという気持ちが恥ずかしさを弱めてくれる」
言われて秋子は親指を残りの四指でギュッと握った。老人の言ったとおりだった。秋子はこの後、ずっと親指を握り続けようと思った。しばしたった。
「もう疲れたじゃろ。その苦しい姿勢は、もうやめて、正座しんしゃい」
言われて秋子は手の使えない苦しい姿勢から体を捩じらせて上半身を起こし腿をピッチリ閉じて正座した。背後には大黒柱がある。正面の鏡には裸の体を縄で縛められている、みじめな自分の姿が写っている。乳房が縄でいじめられているようで恥ずかしい。谷間に食い込む縄も少しの体の動きによって、意地悪く敏感なところをこすってくる。
「ふふ。これは反省のポーズじゃよ。さっきのは屈辱のポーズじゃ。今までわしを挑発した自分をしっかり反省しんしゃい」
そう言って老人は垂れている乳房を毛筆でスッとなぞった。
「ああん」
動くと股縄が敏感な所をズイと刺激する。
「ふふ。これで髪を縛って、吊るす、という責めもある。やってみるかの」
「いえ。許して下さい」
秋子は顔を紅潮させ首を振った。
「そうか。じゃあ、このまま柱に背をもたれんしゃい。あんたも疲れたじゃろ」
秋子は背後の大黒柱に寄りかかった。
「ふふ。柱を背に立たせて縛るのが縛りの基本なのじゃがの。まあ、今日はよかろう。これからは、この柱はお前さんの柔肌のぬくもりを思うさま吸い取る責め柱じゃ。これからが楽しみじゃの」
「さあ、そう脚を閉じてばかりおらんで、大きく開いてみんしゃれ」
言われて秋子は脚を大きくM字に開いた。鏡に、恥ずかしい姿が写る。何もかも全てが丸見えだが、股縄が割れ目にしっかり食い込んで、割れ目の奥は見えない。老人は女の部分のあたりをを筆でスッと刷いた。
「ああー」
みじめさと恥ずかしさのため、恥ずかしい肉が膨らんでいき、あたかも肉が縄をしっかり挟んでいるかのごとくになった。
「ふふ。被虐の快感に我を忘れて酔うがいい」
老人はしばし大黒柱を背に大きく足をM字に開いている秋子を薄ら笑いで眺めていた。
「こんどは片足吊りをしてみるかな」
「いいわ。やって」
ほとんど叫ぶように秋子は言った。老人は秋子を大黒柱からはずして畳の上に仰向けに寝かせた。
老人は秋子の右足首を縄で縛った。そして天井の梁にかけて、ゆっくりと引き上げていった。片足が引き上げられていき、ついに一直線にまでなった。秋子は仰向けに畳の上に寝て、片足を高々と吊られているというみじめ極まりない格好になった。老人は、
「ふふふ」
と笑った。
「ふふ。これは片足吊りのポーズじゃ。簡単な縛りじゃが、これでは大の男でも抜けられはせぬ。その上、恥ずかしい所は縄がなければ丸見えじゃ。縄に縛られている事に感謝しんしゃれ」
それは確かに抜けられぬ、この上ない恥ずかしいポーズだった。
「ふふ。乳房も尻も秘所も縄が無ければ丸見えじゃ。どうじゃな。今の気持ちは」
「ああっ。いいわっ。見て。私の恥ずかしい所を。見て。私の体を隅々まで」
秋子は被虐の喜悦の悲鳴を上げた。
「ふふ。縄があるから恥ずかしい所は見えんよ。どうじゃね。股の縄の感触は」
「いいわっ。このいやらしい感じ、最高だわ」
「ふふ。このまま肉に洗濯バサミをつけたり、蝋燭を垂らしたり、顔や乳房を足で踏んだりする事も出来るが、どうじゃな」
「い、いいわ。何をして下さってもいいわ。メチャクチャにして。私を生きたまま恥の地獄に落として」
老人は、ふふ、と余裕の笑いをした。
「ふふ。今日は何もせぬがよかろう。このまま被虐の法悦境にしばし何もかも忘れて浸るがよい」
しばしの時間がたった。
「ふふ。この屈辱縄をとったら、全てが丸見えになるが、どうするかの」
「とって。お願い。そして私の恥ずかしい所を見て。私のすべてを見て」
秋子は叫んだ。秋子のアソコはじっとりと濡れ、縄もその粘液が浸み込んでいる。
「ふふ。今日はすべて見るのはやめておこう。そのかわり、縄は解こう」
そう言って老人は秋子のパンティーをそっと、秘所の上に載せた。そして屈辱縄を解いた。
「ふふ。どうじゃな。今の気持ちは」
「ああっ。いいわっ」
「そうじゃろ。パンティーは、ただ載っているだけで、手で除ければ恥ずかしい所は丸見えじゃ。いつ見られるか、わからない恐怖感が被虐心を煽るんじゃよ」
「そ、そうよ。その通りよ。この恐怖感が最高」
「よし。足も疲れてきたことじゃろう。今日はこのくらいにしておこう」
そう言って老人は梁の縄を少しずつ下ろしてゆき、足が床につくと足首の縄を解いた。そして後ろ手の縛めも解いた。秋子はしばし、我を忘れて裸のまま横向きに瞑目していた。ツクツクホウシが鳴き出した。老人に揺り動かされて秋子は起きた。老人は秋子に下着と服を渡した。
「シャワーを浴びてきんしゃれ。わしは覗きはせんから安心しんしゃれ」
「ありがとう」
秋子は服を胸に抱えて浴室に行きシャワーを浴びた。そして服を着て戻ってきた。
「ふふ。どうじゃったな。今日は」
「最高に気持ちよかったわ」
「ならばまた来るかの」
「はい」
「よし。じゃあ、今度はどんな縛りをされて、何をされたいか、考えてくるがよかろう。縛りも無数。責めも無数じゃ。蟹縛り、胡坐縛り、狸縛り、海老縛り、吊るし縛り、机上縛り、椅子縛り、大股開き。責めも、棒つつき、蝋燭、剃毛、擽り、顔踏み、浣腸、虫責め、錘吊るし、梯子責め・・・と無数じゃ。今度は仲間を呼んできて多数の男に取り囲まれて、見られ、責められるというのも、一人に増していいものじゃ。ただし勇気がいるがの。無理じいはせん。わしはあんたの素性も住所も聞かん。また本だけ買いに来るのもよかろう」
「いえ、必ず来ます」
「まあ、無理せんでもええ。あんたはここの住所と電話番号は知っておるのじゃから、あらかじめ手紙なりと、してほしい責めと日にちを知らせてくれれば、抜かりなく用意しておこう」
「どうしてそんなに親切にしてくれるんですか」
「わしはあんたが来るかどうか、分からないのも、楽しみじゃからよ。世の中、すべて分かってしまっては面白うはない。見捨てられるもよし。この道では嫉妬も不安も喜びなのじゃ。ただ、あんたのため、本はちゃんととっておこう」
「有難う。私も一度だけ楽しませといて、捨てるなんてのも面白いわね」
「ふふ。それがあるからあんたを少しでも気を損ねることは出来ないのじゃ」
秋子は微笑して本を小脇に抱え、帰っていった。
「複数の男の人の前で晒し者になりたい。日にちは・・・。秋子」
という手紙が老人の所に来たのは二日後の事であった。

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M嬢の物語 (小説)(1)

2020-07-07 07:43:12 | 小説
M嬢の物語
(1)
その年、私は大学を卒業して、ある都内の会社に入社しました。元来口ベタである上にドモリがあり、特に女の人の前ではどもってしまうのです。おなじ課で、私より一年先輩の優子さんは何故だか私に親切にしてくれるのです。分からないことを教えてくれたり。昼、一人で自分の席で弁当を食べていると、いきなり私の隣の席について、
「はい。これ。どうぞ。」
と言って、お茶を入れてもって来たりするのです。私があせって、
「ど、どうもありがとうございます。」
というと、彼女は
「純さんてまじめでえらいわね。」
と言って、クスッと微笑んだりします。私には、どうして彼女が私に好意をもってくれるのか、わかりません。きっと私が無口で内気だからでしょう。ある時、彼女が私のところにやってきて、
「今晩、いっしょにお食事しませんか。」
と言いました。レストランで私がうつむいて食べているのを彼女はニッコリ笑ってみながら、食べていました。私は内心、明るくてきれいな彼女に好感をもっていたのですが、彼女は私をどう思っているのか分らず、ともかく食事に誘ってくれたりするのですから、私に好意をもってくれていることは間違いなさそうと思うのですが、女性が男に本気で恋したら、もっとそれは、切なさ、や、恥じらいから遠慮した言い方になる、のでは。そうでないのは、友達のような感覚、彼氏ができるまでの一時的なつきあい、私の内気さを、からかい半分のような気持ちなのかもしれません。本命の彼氏ができるまでのタイクツしのぎ、なのかもしれません。私は自分自信を顧みても、どこにも自分が女性に好意をもたれる理由を見つけられません。女の心をとろけさせるような美形でもないし、性格も臆病でクライ。彼女の口ぶり、からも私に対する「恋愛」の感情は感じられません。もしかすると、彼女は私に親しくすることで、私の、彼女に対する「思慕」を募らせて、私が真剣な「告白」をしたとき、みなで笑いものにするコンタンなのかもしれません。そんなことになったら、私の弱い神経ではとても耐えられない。それで私は、彼女に告白できぬまま、彼女が持ち出す話題にあたりさわりのない相槌を打つだけでした。でも、少なくとも私にも一つ、女の好意を引く点があるのかもしれません。それは私があまりに内気なため、対等な男女関係がもてないため、相手の女性に、この男なら安全だ、と思われる点、ではないかと思います。この男ならテキトーに付き合って、ふってもしつこく付き合いを強要する、ことなどなさそうだ、とみえる点は私の唯一の長所かもしれません。実際私は引っ込み思案で、恋したことは何度もありますが、すべて、心の中での片思いでした。そんな悶々とした気持ちの中での、ある日のこと、彼女に誘われて、彼女の車で、レストランへ向かっている時でした。
「あっ。そうそう。レストランもいいけど、今日は私の手料理はどう。」
と言いました。私が小さな声で、「はい。」と言うと、彼女は元気よく、ハンドルを自宅のマンションの方へと向けました。
   ☆   ☆   ☆
彼女の部屋に入り、食卓につくと、私はただただ緊張のあまり、赤面して、膝をカタカタさせていました。女性が自分の部屋へ男性を招く、そして男がそれを諒解する、しかも、付き合っている間柄で。これはもう、双方合意の諒解です。普通の男ならいきなり女をおしたおす場面でしょう。しかし、私にはそういうワイルドな男性らしさが全くない。もしかすると、「レイプされた」といって訴えないかわりに慰謝料を要求する気なのかもしれないと思っていました。彼女がつくってくれたピザを食べ終わると、私はまた、もとのように、うつむいていました。ちょっとここまでいくと被害妄想的だと自分でも思っています。しかし、ともかく私が彼女に諒解を求めて、彼女が拒絶したら、これまた私は、その恥ずかしさ、に、耐える勇気もありません。そんな私の不安を見透かしているかのように彼女は、
「大丈夫よ。純さん。考えすぎよ。私がそんな性悪な女にみえる?」
と言ってクスクス笑います。彼女はさらに続けて言います。
「もう、かくしごとはやめにして本心を言うわ。確かに私は純さんの、しつこくなさそうな性格に目をつけて、いつでも別れられる、一時の付き合い友達にできると思ったことは事実なの。普通の男の人にこんなことをヌケヌケと言ったら、おこる人も多いわね。ごめんなさい。でも、もう一つ、別の理由があるの。」
と言った後、彼女から朗らかな様子が消え、まるで今までの私の態度のように、
「あ、あの…。」
と口唇をピクピクと恐怖に震わせながら、切り出そうとしますが、なかなか切り出せず、それが彼女をますます赤面させていきます。しかしとうとう彼女は思い切りをつけて、「ある別の理由」を語り出しました。
「わ、私、実はマゾなんです。」
と言って彼女は赤面して続けました。
「これはもう物こごろつく頃からあって、生まれつきのものなんです。子供の頃から私の性的な夢想は、いつも、裸にされて、縛られて、みじめの極地にされることでした。中学になってはじめてSMという言葉を知って自分はマゾなんだな、と思い知らされました。古本屋で勇気を出してSM雑誌を買って家でそっと項をめくった時には自分だけの夢想と思っていたものが、現実に行われている、と知ってとてもショックを受けました。引出しの中に隠しておいたのですが、学校から帰ってそれをみる度に、だんだん羨望が募っていきました。私も彼女たちと同じようにされたい、と。でも私は中学生で、世間のことはまだ全然分りませんでしたし、そんな写真が全国にわたって、万一知人に知られたら、とてもとても私には耐えられるものではありません。本当に発狂してしまうかもしれません。二十歳を過ぎてもプライベートなSMプレイというのも、したい、と思いながらも出来ませんでした。というのは、たとえ遊びであっても、いじめられることは、こわかったんです。演技であっても、あらっぽく女性をいじめて快感を感じられる人っていうのは、いくらプレーの中だけ、といっても、そういう心があるからでしょう。ワガママで無神経な男にいじめられっぱなしっていうの、いやなんです。人をいじめて満足してるような無神経な男の人はイヤなんです。でも私のマゾの度合いは、とても強くて、激しいくらい強くて、うんとうんと惨い、いじめをされたくてしかたがないんです。それで…。」
といって彼女は頬を赤らめて、
「失礼で、申し訳ないんですけど、純さんに目をつけたんです。純さんならやさしそうだし。人をいじめることに快感を感じるような性格でもなさそうだし。私、純さんにうんと酷くいじめられたいんです。どうでしょうか。私をいじめてくださらない。こんな下心をもって近づいてきた悪い女をこらしめると思って。」
と言いました。私は正直なところ、今までわからずに悩まされてきた彼女の心を知れてほっとしました。また私が、彼女の異常な性欲をマンゾクさせるための道具のような役割、というのが、私に対する彼女の思い、というようなことが分っても、別に腹が立つどころか、むしろ無上にうれしく思いました。何はともあれ、彼女は私を選んでくれたのですから。しかもそれは私の「人格」に対してであり、私にとっては、片思いの女性の傍にいられる、ということだけで無上の幸福なのですから。彼女は私に、
「純さん。いい? 私をいじめてくれる? それともイヤ? そんな変なことするのイヤ?」
と聞きます。私自身はSMの心理というものはよく分らず、心の内に、あこがれている人をみると、ただただ矮小化してしまい、ムチ打ったり、虐めたりすることなど想像ですら恥ずかしくて出来ません。想像の絵画の中に、私という人物を入れることなど、臆病な私にはとても出来ません。ビキニ姿を想像するだけで、頭がボーとなり、下腹部が膨隆してきます。なのでSなどというおそろしい心はとてももちあわせていないことは、間違いありません。むしろ、恋する人に仕えることや、その人の持ち物を想像すると、いいようなく興奮するのですから、M的な心理はわかります。しかし、優子さんのような激しい自虐的な心理は理解できません。恋した時に、誰にでもおこるような軽いMの心理は、分ります。が、自己破壊的な、はげしいMの心理というものは分りません。しかし、ともかく彼女と付き合ってもらえるのであれば、何でもありません。私は小声で「は、はい。」と言って小さくうなづきました。すると彼女は、
「わー。うれしー。夢実現!!」
といって、跳び上がってよろこびました。
「もうこれで一人で悩まなくてすむー!!」
といって目をパチクリさせて、神仏に感謝するかのごとく手を組んだりするようなよろこび具合です。彼女は、
「ねえ。みてみて。」
といって私の手を引いて、隣の部屋に私を連れて行きました。そこには何やら拷問用の木馬らしきものがあります。
「これ。私がつくったの。休日、裸になって、手を後ろで組んで、木馬に跨って、悪漢につかまって責められる想像にふけってたの。でも一人での想像じゃ、やっぱりむなしくって。それに一人じゃ自分で自分を縛ることも出来ないし…。でも、これからは純さんに本当に縛られて、想像じゃない、本当の木馬責めにかけてもらえるのね。」
と彼女はうれしそうな口調で言います。私は思わず、彼女が裸になって一人、木馬にのっている姿を想像して勃起しました。また、今まで激しい性欲を一人むなしく自慰していた彼女が何ともかわいそうにも思われました。彼女は、それ以外にもくすぐり責め用の毛筆、麻縄、鼻輪、などの小道具を並べて見せて、自分で毛筆で脇をくすぐってみたり、鼻輪をつけて、紐でひっぱってみたりして、あらん限りの方法で自分をみじめにしていたことを話しました。
「私をいじめてくれる人がほしい。でもこわい。本当にやさしい人で、思いきり私をいじめてくれる人っていないかしら、ってずっと待ち焦がれていたの。」
「それで、純さんをはじめてみた時、ついドキンとしちゃったの。この人には本当のやさしさがある。この人になら身を任せられるって。でも、もしかすると私の変な願望を話したら、気味悪がってしまうんじゃないかって、不安もあったの。私、今日ほど幸せな日、生まれてはじめて!!」
「純さんにいじめ抜かれることを想像すると、もうワクワクしちゃってるの。」
彼女は一方的にしゃべった後、
「ねえ。純さん。こんな私を知って嫌いになった? 嫌いになったら、今からでもあきらめるわ。私、最初に、私をいじめてくださらないって頼んだ時、純さんが嫌そうな顔でなく、肯いてくれたことだけで十分過ぎるくらいうれしいの。もし、こんな変なこと、嫌だったら、今まで通りの普通のお付き合いでもいいわ。これからは純さんにいじめられることを想像して出来るから、ずっとマンゾクできるわ。」
「ねえ。純さん。こんな私、嫌いになった? 遠慮なさらなくていいのよ。」
私は答えました。
「とんでもありません。私をそこまで信頼して下さっていたなんて、私の方こそ無上の幸せです。でも私は気が小さいから、優子さんをいじめることなんて出来るだろうかって心配してます。」
というと彼女は、
「うれしー。ありがとう。本当にありがとう。」
と言ってギュッと私の手を握りしめます。
「これから私、純さんのドレイです。うんといじめぬいて下さい。泣き叫んでゆるしを乞うてもかまわずいじめ抜いて下さい。」
「そ、そんなこと言われても、憧れの優子さんに、はたしてそんなことができるかどうか。」
と私がためらいのコトバを言うと、
「いいの。私の命はもう純さんのものです。」
と言って、
「責め、の本もありますから参考にして下さい。純さんも気に入ってくれる責め方もあると思います。今度お会いする時には、竹や乗馬ムチ、とか、滑車、とか、もっと、責め、の道具をそろえておきます。」
彼女は子供のようにウキウキしています。彼女は、責め、の相手を見つけて有頂天のようでしたが、何を私がしてもいい、というなら、いじめないで、マッサージしたり、優しく髪を撫でたりするというのでもいいんだよな、とも思っていました。玄関で、
「今日は本当にどうもありがとうございました。」
と、先に言ったのは私の方です。玄関に向かう途中、先手をとろうと心の中で準備していたからです。
   ☆   ☆   ☆
その日から、私の心は上がりきっていました。
翌週の昼休み、私は始めて自分の方から声をかけて彼女を社内の喫茶店に誘いました。私がヘドモドして、
「この前はありがとうございました。」
と微笑みかけると、彼女は、
「いやです。私、気が変わったんです。もうあなたとの付き合いはおしまいにして下さい。」
と、ピシャリといって、レジをもって立ち上がると、私をのこしたまま、立ち去って行きました。私はガクゼンとしました。夢が一夜にして崩れ去ったような。しかし、ことが、ことですし、彼女のためらいの強い性格から、嫌気がさしてしまったことも十分わかり得ることです。気が変わると、最高の快感が最悪の嫌悪感に変わってしまうことは十分察しがつきます。その夜、勤務が終わると私はトボトボと家路へ向かいました。すると、後ろから車が小さな軋り音を立てて止まりました。彼女の白のカリーナでした。彼女はドアを開けると、「乗って。」と言います。その口調は昼間とは違う、きわめて明るいものでした。私が入ると彼女は人が変わったような陽気な口調で語り出しました。
「へへ。純さん。ゴメンなさい。昼の時のこと、全くのウソ、お芝居なの。あの日から気が変わったことなんか一度もないわ。でも、あんまりうれしすぎて。会社でも親しくするのって月並みすぎて、これから会社では、どういう顔で接しようかなって思って。会社でも親しくする、と、緊張がなくなっちゃうでしょ。だから会社ではあくまでビジネスとしての付き合いとして、二人きりの時は豹変した関係、というようなジキル博士とハイド氏のような、二面性にしたほうが面白い、と思ったの。いきなりおどかしちゃって御免なさい。こんな悪い女、お仕置きしようって気持ち、うんと起こして。」
私は天国に上り詰めたり、地獄に落とされたり、何か彼女に翻弄されているような気持ちになり、今、言っていることも彼女の本心かな、と思いました。もしかすると本当はイヤ気がさしたことがあったのかもしれないし、少し積極的になった私をピシャリと拒否して、私の出方を見ようという考えがあったのかもしれない、とも思いました。立場の弱い女性にはそれは当然のことのようにも思います。黙っている私をみて、それを察したのか、彼女は、
「へへ。純さん。ごめんなさい。ウソは言いません。いきなり純さんをおどかして、その反応をみてみたいという気持ちはありました。でも純さんがどうでるかは100%の確信で予想できていました。それを実感してみたかっただけなんです。不安感から、試してみたい、という気持ちはありませんでした。それと、純さんがしょげてさびしそうに帰る姿をみたくって。」
「いいです。優子さんがまた付き合って下さると言って下さっただけで十分幸せです。イヤになったらいつでもすてて下さい。」
「ごめんなさい。純さんて本当に控えめな方なんですね。今度の土曜、きっと来てくださいね。楽しみに待っています。」
と言いました。私が車から降りると彼女は勢いよく車を走らせました。
   ☆   ☆   ☆
 土曜になり、私は約束通り彼女のマンションへ行きました。どうなるものかとそれまで私は内心ヒヤヒヤしっぱなしでした。彼女がつくってくれた食事を食べながら彼女は言います。
「ふふ。こうして普通に向き合って会話しているのに、これから私だけ裸にされてみじめにされるのね。ゾクゾクしちゃうわ。」
彼女は食事がすむと、
「ちょっと待ってて。」
と言って隣室へ行きました。戻ってきた彼女をみて、私は真っ赤になりました。彼女は露出度の高いセクシーなハイレグの下着姿で来たからです。海で女が男を挑発するような。私は海に一人行くことがありましたが、何度、彼女達の姿に悩まされたことかしれません。
「さあ。純さん。私を吊るして。そしてムチ打って。」
と言って、彼女は天井につけられた滑車の下に立ち、立ち縛りにされて、鞭打たれることを要求します。しかし、私にはとてもそんなことをする勇気はもてません。彼女のビキニ姿をみているだけでビンビンに勃起して、それだけでもう十分マンゾクでした。私が黙っていると、
「私に恥をかかさないで。おねがい。」
と、ひれ伏すような口調で言います。しかし私がためらって決断できないでいると、彼女は強い、皮肉っぽい口調で、
「そう。やっぱりダメなのね。こんな変なこと。じゃあ、もうお付き合いも終わりですね。」
と言います。彼女にふられてしまうのでは大変なので、
「わ、わかりました。いたします。」
と私はあわてて言いました。
「ふふ。」
と彼女は笑いました。
「ふふ。きりふだね。」
と言います。確かにそのセリフは彼女にとって決定的に有利な、そして私にとって決定的に不利な「切り札」のセリフです。
「純さん。座って。はらばいになって。」
と言います。私は彼女に命じられることは、むしろうれしいので、「はい」と言って、どうするのかギモンに思っていると、
「手をだして。」
と言います。どうするのかな、と思っていると彼女は玄関からハイヒールをもって来て履き、いきなり私の手の甲を、ヒールで踏みつけてきたのです。しかも体重を全部のせて。私は痛み、に、こらえきれず、
「ああー。」
と悲鳴を上げました。
「私をいじめてくれないバツよ。」
と言います。これは女王様とM男の図です。しかし、無上にしたっている彼女にされているのですから。苦痛の中に私は快感さえ感じていました。Mの快感とはこういうものなのか、と思いました。しかし、彼女はMを強く訴えたのに、こういうサディスティックなこともためらうことなく楽しんでいる様子が感じられ、Sの性格もあわせもっているのかもしれない。と思いました。もしかすると彼女はMなのではなくSで、私をいたぶりたい、というのが本当の彼女の願望で、Mを装って私に近づいてきたのかもしれない、とも思いました。すると彼女がみせた木馬や、責めの道具は、すべて私に向けられることになるのかもしれない。彼女が訴えた激しい責めがすべて実は私に向けられることになるのかもしれない。しかし、私はそれでも一向にかまわない、という心境になっていました。今の彼女のヒールの本気の痛みを受けても快感さえ起こったのですから。彼女は私をだましたのだ。でもかまわない。しかし、私が彼女の責めにどこまで耐えられるか、耐えられなくなったら、ひたすらひれ伏して許しを乞おう。と思っていると、彼女は予想に反し、
「ゴメンなさい。純さん。いきなりひどいことをしちゃって。」
と言ってヒールをおろしました。
「私、純さんをいじめたい、なんて思っていません。でもやさしい純さんのことだから、私を本気でいじめてって言ってもきっとすくんでしまうと思ったの。だからこうして純さんをシゲキとして少しいじめて、私を本気でいじめる口実と感情を起こさせたい、と思ったの。私の本性はMです。安心して。」
「いえ。いいです。今、踏まれて気づいたんです。私がいじめられる方があってるって。本気で踏まれて、快感が起こったのですから。」
「そういう純さんだから安心して身を任せられるんです。今のいたずらを本気にしないでね。」
「でも、切り札のセリフは本当かもしれないわ。」
と言って彼女は、
「ふふふ。」
と笑いました。私は何か少し彼女に対する躊躇の気持ちに、踏ん切りがついたような思いでした。いきなり踏みつけることで彼女に対する私の煮え切らない気持ちを捨てさせようとした彼女の作戦通りなのです。私も少し彼女に笑顔をつくって話せるような気持ちになってきました。
「では、優子さんをいじめたらその後、仕返しに今のように私もいじめ返してください。それならば何とかできる様な気がしてきました。」
と言いました。
彼女は座って立て膝になり、手で前を覆いながら、自らパンティーを抜きとってしまいました。そして同様にブラジャーもはずし、覆うもの何一つない丸裸になりました。彼女は両手を後ろにまわすと、
「さあ。純さん。縛って。」
と言って背中で手首を重ね合わせます。私は彼女に言われるまま、彼女の手首を縛り、縄尻をとりました。彼女は覆うもの一枚ない丸裸という格好で手を後ろで縛られたまま、立膝で何とか下を見られないように立て膝で脚を寄り合わせています。女は男と違って、裸で手を縛られても、脚をピッタリ閉じて、重ね合わすことで最も恥ずかしい部分をかろうじて隠すことができます。しかし、お尻までは隠せません。覆うもの何一つない丸裸という屈辱的な姿勢になっても、それでも最恥の部分は死守しようと力んでピッタリと脚を寄り合わせている姿。それはなんとも言いようなく艶かしく、私は頭に血が上り、モヤモヤした気分になってきました。
「おねがい。みないで。」
と彼女は言ったりします。彼女自身の、彼女の想像の性欲のイメージの自分を満足させるための哀願のコトバだと思いますが、私をモヤモヤした気分にさせるため、もあるかもしれません。実際私はモヤモヤしてしまっているのです。私は子供の頃から、単なる女のヌード写真をみても勃起したことはありません。むしろきわどい水着姿に興奮します。それと、最も興奮させられるイメージというのは、女性が裸にされて縛られて、必死で男の淫靡な視腺から身を守ろうと、むなしい、あがき、をしている図でした。私の性向として、女性をムチ打ったり、責めたりすることには、とてもこわくて想像でも出来ませんでした。恥ずかしがって困っている女性の姿が最も私をシゲキしました。テレビの時代物でも、女性が縛られて、悪役に縄尻をとられて歩かされている場面を見ると何とも下半身がムズムズしてきてしまうのです。私が悪代官になって、女性を裸にしたい、という欲求もありましたが、それ以上に、縄尻をとられて、おびえている女性の姿態と、困惑した表情に無上のエロティックな美しさを感じてしまうのです。
彼女はハードな責めを願望しましたが、そういうソフトなMの願望もあるに違いありません。
「純さん。さあ。私をどうか立たせて、部屋の中を引き回して下さい。」
と言って彼女はゆっくりと立ちあがりました。1mくらいの感覚で縄尻をとると、彼女は引き回されているかのように、シズシズとゆっくり歩き出しました。背中の真中で華奢な手が縛められ、その下ではムッチリした豊満な尻が歩くたびに左右にプルプルとゆれますが、その尻を見られたくない心理もあるためでしょう、ピッチリと尻を閉じあわそうとして力んでいるため左右の肉が、押し合わされて、谷間の割れ目がよけい、くっきりと強調されて見えます。彼女は、
「あん。」
と言って、わざとか本当か、つまずいて、そのまますくんでしまいます。そのときピンと縄尻の手応えが伝わり、何か私は彼女の演技のうまさに引き込まれ、彼女を引き回す悪代官の嗜虐的な快感のようなものが徐々に生まれてきました。
私は自分の官能の欲求が、困惑している女性が放つ美、に、懊悩する、受身から、行為者の能動的なものへと少し変わっているのに気づきました。私の臆病な性格に、加虐心を起こさせようとの彼女の意図に見事に私はかかってしまいました。彼女はうずくまったまま、
「あん。ゆるして。」
と言って泣きそうな、おびえた顔をこちらに向けます。立ち往生、ならぬ、座ったままでいるわけにもいかず、私は、
「さあ。立って。」
と言って、彼女の縄尻をグイと引きました。彼女の巧みな演技で刺激されていなければ、「立って。」という命令的なコトバは言えなかったでしょう。「立って下さい。」とも言えず、彼女が自分の意志で立つまで座りこんでしまったでしょう。こうして私はだんだん彼女の演技に引き込まれていくようになりました。私に命じられて、彼女は、
「はい。」
と言って、ソロソロと立ちあがりました。部屋を一回りして、はじめの場所に戻ってくると、彼女は再び座りこんで脚を寄り合わせ、ピッチリ閉じて、体を震わせて、裸の縛めの屈辱に耐える姿をつくっています。彼女の媚態は私にとって強力な強精剤となってしまい、私は彼女に飛びついて、むしゃぶりつきたいくらい、私の一部は、はちきれんばかりに怒張し、みなぎっていました。彼女の傍らには、さっき彼女が自ら脱いだセクシーなハイレグの下着があります。私の本能を押さえる理性は限界を超していました。私はそのことを表明するようにことさら声を大に、
「もう。がまんできない。」
と言って彼女のパンティーをとると餓えた野獣が肉をあさるように彼女の、特に女の部分が当たるところに鼻を押し当てて、一心にむさぼり嗅ぎました。彼女は、
「いや。」
と言って顔を赤らめて、首を振ります。つい、「いや。」というコトバが彼女の口から出たので、私は少し躊躇しそうになると、彼女は、
「いいのよ。本気にしないで。何をしてもいいのよ。また、この部屋にある物は何でも、自由に使って下さいね。」
と言います。私は安心すると同時に、再び、押さえられない興奮に襲われ出しました。私は再び彼女のパンティーに鼻を当てました。彼女は、
「ねえ。純さん。私、少しおなか空いてしまって何か食べたいの。でも手が使えないから自分ではなにも出来ないわ。何か食べさせて下さらない。」
と言うので私は食卓にあったコーンポタージュスープをレンジで温めて、もって来ました。彼女の傍らに座ると一瞬、食事のために彼女の縛めを解こうかという気が起こりましたが、それを彼女は察したらしく、
「うん。縛られたままじゃ飲めないわ。食べさせて下さらない。」
と鼻にかかったあまい声で、ねだるように言います。私がスープをスプーンですくって、彼女の口元までもっていくと彼女は口を大きく開けます。私はこぼれないように注意して口の中にスープをそそぎこみました。ゴクリと飲みこむのをみると何とも彼女が生きた人形のように思われてきて、愉快な気分になります。彼女は、
「もっと。」
とねだるので、
「はい。口を大きく開けてアーンして。」
と言ってスープを飲ませました。
「ねえ。吊るして下さらない。」
と彼女が言います。もう私は彼女の要求に躊躇する心境はなくなりました。彼女は両手首を頭の上で縛ってほしい、と言うので、いったん後ろ手の縄を解き、頭の上で両手首をはずれないようしっかり縛りました。そして彼女に言われて、洗面所からヤカンを持ってきて、結び目に水をかけました。水を含んだ縄は収縮して固くなり、自力ではまずはずすことが出来ない状態となりました。天井を見ると梁に滑車がとりつけられてあります。
「あれに縄のあまりを通して、つま先立ちにして下さい。」
と言います。私が滑車に縄のあまりを通して、引き上げていくと、否応なく、だんだん彼女は立たされていきます。両腕がピンと張るようになって腋下が丸見えになり、形のいい胸があらわになります。もともと胸の隠しはありませんでしたが、後ろ手で縛められても女性にとっては胸も恥部の一つですから、前かがみになって、肩で覆うようにします。見えてもあらわ、からは守れる。精神的には隠している、という心理が起こります。しかし、吊るすと背はピンと張らされ、胸は隠しようなく、全貌があらわになってしまいます。尻も前の最も恥ずかしい所も同じです。つま先立ちの立ち縛り責め、は、苦痛と同時に、いや、それ以上に女にとって耐えがたい羞恥責めでもあります。彼女は、
「ああ。おねがい。みないで。」
と言って腿を寄り合わせようとします。全裸で立ち晒しになっても、最後まで最も恥ずかしい所は隠そうとする女の抵抗の姿はなんとも艶めかしく、いじらしくみえます。隠す覆いが全くなくなっても脚の寄り合わせによって、かろうじてギリギリ最後の秘所だけは隠せるところに女の体の構造の苦しさ、つらさ、が、あります。
「ああ。純さん。恥ずかしくて、みじめだわ。でもこのみじめさ、がたまらないの。冷蔵庫に、飲み物やおつまみがありますから、どうか、みじめな私をとっくりと笑って下さい。」
彼女に言われるまま、私は冷蔵庫へ行きました。酒は飲めないのでジュースと、つまみ、をもって来ました。彼女は前面を避けようと、側面に向けようとしたりしますが、側面では、ヒップにつづく美しい下肢の姿がまちうけていて、それを見られるのも、これまた恥ずかしく、結局、特定のポーズを固定してしまうことは全裸を見られることに対する抵抗のあきらめ、であり、見られたくないという気持ちがある以上絶えず一定のポーズから逃げるように、体をモジつかせなくてはなりません。その姿は一層かえって逆に女性を艶めかしい、苦しい、恥じらいのショーにしてしまいます。彼女はとうとう脚の疲れに耐えきれなくなって、
「ああ。純さん。おねがい。」
と哀願的な口調で言いました。
「何でしょうか。」
と私が聞くと、彼女は顔を真っ赤にして、
「ああ。純さん。どうか何か、身につけるものを。贅沢はもうしません。どうかお慈悲を。箪笥の中にバタフライがありますから、せめてそれを…つけることをお許し下さい。」 
と身をくねらせて言います。
「はい。」
と言って私は箪笥の中を探すと、女の最低限の所を隠すだけのハート形の小さなピンクのバタフライがありました。その覆いには腰に取り付けておくために三方に糸がついているだけでした。これではお尻も丸見えで、本当に女の最低限だけを隠すことしか出来ない覆いです。私がそれを彼女に取り付けると、彼女は、
「ありがとうございます。お慈悲を下さって。」
と言って、
「さらに要求するあつかましさをお許し下さいましょうか。」
と言います。
「何でしょうか。」
と聞くと、彼女は真っ赤にした顔をそむけ、
「ど、どうか。胸にも。箪笥に、小さいビキニのブラジャーがありますので。どうか、それもお慈悲で。」
と言います。引出しを開けると、確かにそれらしきものがありました。しかしそれはブラジャーというにはあまりにも、胸を隠す部分が小さく、ほんの乳首だけを隠すような、胸のバタフライとでもいうような物でした。私はそれも彼女に取り付けました。彼女は上下の最低限を隠せた安心感から、ほっとして、
「ありがとうございます。」
と深く頭を下げました。彼女はもう、最低限を隠す必要がなくなって、私の正面を向いて、うつむいています。後ろからみれば、お尻は丸見えで全裸同様です。私はただでさえ女性のビキニ姿に最も興奮する上に、最低限のバタフライの姿になった彼女に、かえって欲情を制止できなくなり、見栄も外聞も忘れ、彼女の腰に抱きついて、
「ああ。優子さん。好きです。もうガマンできません。」
と大声で言いました。彼女のつま先立ちがつらそうなので、私は、縄の張りを少し緩め、踵が床について、疲れないようにしました。私はむさぼるように彼女の体のあちこちにキスしました。
「純様。つま先立ちを許してくださってありがとうございます。どうぞ遠慮なさらず、好きなように責めなぶって下さい。」
と丁寧な口調で言いますがとてもそんなことできず、返答に窮していると、
「隣の部屋に乗馬ムチがありますから、思う存分ムチ打って下さい。」
と言います。が、
「そ、そんなこと、できません。」
と言うと、
「それならば、くすぐり抜いていじめて下さい。この前お見せした毛筆が二本、ガペンも隣の部屋にありますので、くすぐり抜いていじめて下さい。」
と言います。私はくすぐり責めならば、痛みも、キズもつかないし、それならばやってみようと思いました。しかし、くすぐり責め、は、触覚の敏感な人にとっては大変つらい責め、であり、江戸時代には立派な拷問法の一つです。彼女は、
「純さん。立ったまま責めるのはお疲れになるでしょう。椅子をもって来てどうぞそれに腰掛けて責めて下さい。」
と言います。私は椅子をもって来ました。
「どうすればいいのでしょうか。」
と私がとまどっていると、彼女は、
「好きなようになさって下さい。両方の脇の下をくすぐって下さい。そこが一番つらいんです。私が耐えられなくなって、許しを求めても、泣き叫んでも無視して下さい。」
と言います。
彼女に言われたように、私は隣の部屋から、毛筆などの小道具を持って来ましたが、どのようにしたらいいのか分らず、躊躇していると、彼女は、
「さあ。いじめてください。やさしい純さんの心を、もてあそんだり、ヒールで踏んだりした悪い女です。」
と言います。が、どうしても、思いきりがつかないでいると、彼女はそれを察したかのように、
「鼻の穴を洗濯バサミで挟んで牛のように鼻輪をして下さい。そうすれば、きっと純さんもフンギリがついて、いじめれる心境になれると思います。」
と言います。私は、おそるおそる彼女の鼻の穴に、洗濯バサミをを入れて、そっと手を離しました。洗濯バサミのバネの力で、キュッと彼女の鼻がはさまれました。私はこれは、うまい手だな、と思いました。いきなり、「ムチで打って。」と言われても、すくんでしまったでしょうが、洗濯バサミなら、私の意志と別に、独立して彼女を、いたぶりの状態に出来るのですから。そして、これは、痛さと同じに、みじめ、に、おとしめる責めでもあります。鼻は顔の中でも気品をあらわす個所であり、その鼻に洗濯バサミをとりつけると、美しい女性が、あたかも鼻輪をとりつけられた家畜のようになった様な気もしてきます。彼女は首を振って、
「ああ。みじめだわ。こんな姿、恥ずかしくって、とても人には見せられないわ。でも、そのみじめさがいいの。手を縛られているから、自分ではどうにもできないわ。裸同然の格好にされて、こんなことされているなんて、友達がみたら、どんなに笑うことかしら。」
とか、
「今までは、自分でとれたけれど、今は自分ではとれないもの。うれしい。」
などと喜びの告白をします。心なしか、彼女の目に涙さえ浮かんでいるようにも思えました。私は思わず彼女の均整のとれた体を我を忘れて食い入るように見つめていました。女性にとって最羞の部分である、秘部と乳首を小さなハート形のバタフライを貼りつけてあるだけで、全裸と変わりなく、むしろその小さな覆いは全裸より一層男を挑発し、悩ませる覆いであり、彼女も見られていることを意識してか、秘部に視線が固定するのを恐れて脚をモジつかせます。紐だけで繋がれたバタフライは、自分の意志で身に着けている覆いというより、加虐者の意地悪なフザケによっと取りつけられた覆いであり、それは、かえって被虐者をもてあそんでいる道具にすぎず、豊満な胸、といい、キュッとしまった腰のくびれといい、その下に続くしなやかな脚線といい、あまりに美しく、この世にこれ以上、美しい形、というものがあるだろうかと、美しい芸術品を鑑賞するように、しばし陶然として、ボーと見惚れていましたが、いつしか私は我を忘れて彼女の前に屈み込み、ピッタリと、男を惹きつける色香を発散している女の最も女である部分にくっついたバタフライに、吸い寄せられるように、その部分を固唾を呑んで凝視していました。それをみて彼女は紅潮して首を振り私の視線を払おうと脚を左右に振ります。するとそれはクネクネとした一層男を挑発させる腰の動きに見えてきて、私は一層見入ってしまっていました。後ろに廻るとお尻は丸見えで、バタフライを繋ぎ止めておくための糸の一つは、割れ目に食い込んでいるように見え、糸の褌をはいているようにも見え、それもかえって、みじめさをつくるだけに見えます。糸でもかろうじて覆いであり、それにすがろうとする気持ちがかえって女性を苦しめて、臀筋に力を入れてピタリと閉じ合わせ、もどかしそうに尻を左右に振ります。
「あん。いや。そんなに見ないで。」
と、鼻にかかった声で言います。尻は大きく、弾力があって、視線から避けようとしても、避けようがなく、こればかりは見られることを諦めるしかなく、それが女性を苦しめます。「ああ。みじめだわ。こんな姿、人が見たらなんて言うかしら。こんなみじめな目にあうなんて死にたいくらい恥ずかしいわ。でもそれがいいの。純さん。みじめな私をうんと笑って下さい。」
と言って尻をモジつかせます。私は耐えられず、
「ああ。優子さん。好きです。」
と言って、彼女の弾力のある尻にしがみつきました。
「ああ。いや。」
と言うのもかまわず、そのムッチリした二つの肉の盛り上がりに顔を推しつけると、柔らかい弾力が戻ってきます。私は耐えられなくなって、前に廻り、腰をしっかり掴んで、顔を谷間にうずめるようにバタフライに鼻先を強く押し当てました。
「ああっ。いやっ。おねがい。」
と彼女は激しく首を振りますが私はもう無我夢中でそこを貪り嗅ぎました。すると彼女に特有の色香がむっと嗅覚に伝わってきました。しばししてやっと落ち着きを取り戻し、私は彼女の腰から顔を離しました。すると彼女もほっと一息ついて落ち着いた表情になりました。
「鼻の洗濯バサミ、痛いでしょう。とります。」
と私が言うと、
「ええ。少し。でもいいんです。こうされていることがうれしいんですから。純さん。みじめな晒し者の私を笑ってください。」
私は立ち上がって彼女の洗濯バサミをとりました。
「ああ。純さん。お慈悲をありがとうございます。」
と彼女は言います。我を忘れて均整のとれた彼女の体をじっと眺めていると、彼女は顔を赤くして、
「ああ。純さん。そんなに見ちゃいや。恥ずかしいわ。でも幸せ。私、子供の頃から、ずっとこうされたかったの。うんと困らせて。私、子供の頃から、テレビでもマンガでも、多くの人に寄ってたかって、どうしようもなく、いじめ抜かれ、笑われている場面を見ると、いじめられてる子がすごくうらやましかったの。なぜだか分らないわ。純さんはなぜだか分りますか?」
「いえ。わかりません。」
「こんな変な女、嫌いになった?」
「いえ。とんでもありません。一層好きになってしまいました。」
「私のこの変な性格、人に言わないでくださいね。」
「いいませんとも。」
と私は誓うように、声に力を込めて言いました。
「純さん。」
「はい。なんですか。」
「私、恥ずかしい告白を全部してしまったわ。でも純さんは恥ずかしがって警戒しているわ。純さんも何をしてくださってもいいのよ。私も誰にも言わないわ。」
私が黙っていると彼女は、
「おねがい。私に恥をかかせないで。」
と言います。私が躊躇していると彼女は、
「ごめんなさい。無理な注文をしてしまって。一方的に私の妄想の世界に引きずり込んでしまって、それを聞いて下さって、それだけでも十分幸せなのに、無理矢理、純さんの告白を要求するなんて。私、ワガママ過ぎるわね。純さんには純さんの立場がありますものね。ごめんなさい。今の要求は取り消しますので忘れて下さい。」
さらに彼女は語を次ぎました。
「ごめんなさい。気になさらないで。一方的に見られる、というのもすごくみじめでうれしいんです。」
(2)
 私は確かに彼女の言う通りだと思いました。確かに一方的に彼女に恥をかかせてしまうというのはずるい。精神的にも肉体的にも、恥をかいているのは彼女だけであって、自分は彼女に要求された、という口実で、うまい汁だけ吸っているというのは、ひきょうだ。という気持ちが強く起こってきました。私は立ち上がり、彼女の背後に廻って、肩を掴みました。
「ごめんなさい。優子さん。一方的に恥をかかせてしまって。確かに優子さんの言う通りです。女の人に一方的に恥をかかせっぱなしにするなんて男として最低です。僕の告白も聞いて下さい。」
と言って私は話し出しました。
「僕も優子さんをはじめて見た時から心臓がドキンと高鳴りました。親しくしてくれるにつれ、思慕は一層つのりました。何度も寝苦しい夜を過ごしました。僕の優子さんに対する夢想は、せいぜい、優子さんのビキニ姿どまりです。僕は気が弱いので、女性を犯すことは、想像でも、とても出来ません。優子さんが身に着けている物がほしい、と、悩まされていました。優子さんに踏まれた時は、優子さんにいじめられたい、とも思うようにもなりました。僕は、子供の頃から、困っている女性の姿を見ると、すごく興奮してしまう性格があるんです。でも、自分が手をかけたいという気持ちはありませんでした。その場面に興奮してしまうんです。でも優子さんの、演技も混じっていると思いますが、困っている姿、を見ているうちにだんだん優子さんのような人になら、自分も悪代官になって、女の人を困らせたい、という気持ちが起こってきました。」
「ありがとう。」
と彼女は言いました。
「優子さん。それじゃ、いじめあいっこにしませんか。一方的にいじめる、というのはどうも出来にくい。それでは私の気がすみません。私が優子さんをいじめたら、その後、優子さんがマンゾク出来るだけ、私をいじめる、というのはどうでしょうか。」
「ありがとう。純さんてやさしいんですね。でも、そうしなくてもいいの。双方の合意があって、双方とも快感を得ている、といっても、いじめている人の方がずっと多く搾取していることは間違いないと私は思います。いじめる人には、肉体的なキズはつきませんが、いじめられる人には傷痕がつきますもの。でも純さんの場合は、私がいじめられることに、私が一方的に快感を得ているだけですもの。貸借関係はありません。私が受け取っている分の方がずっと多いんですもの。気になさらないで。」
「それは違います。私は優子さんから快感を貪ってしまいました。僕の気がすみません。」
というと彼女は、
「じゃあ。私もちょっと純さんをいじめちゃおうかしら。」
といって、「ふふ。」と笑いました。私は、
「はい。そうしてください。」
と言いました。私は心にフンギリがついた思いがしました。もしかすると私は、このような関係にしようとした彼女の最初からの計算に、まんまとひっかかってしまったのかもしれません。でももう運命共同体です。もう心をすべて明かしてしまった以上、ためらい、も、消えてしまいました。彼女は笑って、
「ふふ。純さんの秘密きいちゃった。人に言っちゃおうかしら。私ってけっこう口が軽いかもしれないわよ。」
などと言います。
「そんな事されたんじゃたまらない。それじゃあ、責めますよ。覚悟してください。」
と言うと、彼女は、「はい。」とカンネンした口調で言いました。私は毛筆を二本とると、彼女の背後に立ち、両脇をそっとくすぐり始めました。両手首を縛られて吊るされているのですからこれでは逃げようがありません。彼女は触覚が敏感とみえて、毛筆が触れたとたんに、「あっ。」と言って、身震いして必死に毛筆から逃げようとします。彼女がどれほどつらがっているかは、頭の上で縛められた手をギュッと握りしめ、足指を力強く、挟んだりして、何とか、つらさ、を、そちらに逃がそうとしている様子でわかります。
「お、おねがい。純さん。ゆるして。」
私はかまわず、くすぐりつづけました。だんだん拷問者の快感が私に起こってきました。私は責めるのに良い口実を思いつきました。そしてそれは本当に私に分っていなく、知りたい事実なのです。私は一時、くすぐりの筆を休めました。
「優子さん。本当は私をいじめたいと言う気持ちもあったんでしょう。」
と言うと彼女は、
「いえ。決してそんな気持ちはありません。私がいじめられたかっただけです。」
「それにしては、いきなりヒールで踏む、というのはおかしいじゃありませんか。事実、結局、いじめあいっこという条件になってしまっているじゃありませんか。優子さんは、最初からこういう関係にしようと思ってたんですね。」
「いえ。決してそんなことありません。」
「いえ。信じられません。何か、僕はだまされてしまったような気がしてます。本当のことを言ってください。白状するまで責めつづけますよ。」
と言って、私は再び毛筆を彼女の両脇に当てました。彼女は身を震わせて、
「ああ。ゆるしてください。」
と全身をゆすって訴えます。だんだん彼女の息は荒くなっていきました。私の口調は、だんだん拷問者の強気な口調になることに抵抗を感じなくなり始めました。
「さあ。白状して下さい。」
と私は責めつづけます。
「純さん。」
「なんですか。」
「お、おねがいがあるの。」
「なんですか。」
と、私は言いました。彼女は頬を赤くして、言いづらそうな困惑した表情を作っていましたが、おそるおそる、ためらいがちに口を開きました。
「あ、あの。尿意がしてきたんです。」
本当かどうか分りませんが、彼女は脚をピッチリつけ、足踏みするように下肢をモジモジさせています。演技かもしれませんが、もしかすると本当かもしれない。くすぐりの、もどかしい刺激は反射的に尿意を起こさせることは生理的にも事実なのですから。尿意があるというのを無理に続けるわけにはいきません。もらしてしまって床が濡れてしまってはかわいそうです。
「おねがい。耐えられない。」
と、彼女は、油汗を流しながら、身をよじります。
「わかりました。じゃあ、今、縄尻を解きますので。」
と言って、つなぎ止めてある縄尻を外そうとしました。すると彼女はあわてて、
「あっ。まって。」
と言って制し、
「ごめんなさい。本当は尿意は起こってないの。どうぞ責めつづけてください。」
と言います。私はまんまと彼女にいっぱい食わされた自分を自覚して恥じるとともに、私より一枚上手な彼女に舌を巻きました。人間は、分らないところに魅力があります。一体彼女の本心は何なのか。人を翻弄しているのか、それとも誠実なのか。現に私は彼女に翻弄されているようなものですが、しかし同時に私は翻弄されていることに、うれしさも感じていました。そして彼女の本心を言わせるために責めてみたいという気持ちが本気で起こりました。すべて彼女の念入りな計算に、まんまと私がはまっているのかもしれません。しかし、彼女には誠実な性格があることも間違いない、とも確信しています。そもそも、いじめられたい、と思う感性は、人をいじめてよろこぶ無神経な感性とは正反対の、弱く、美しい感性です。どっちが翻弄されているのか分らない。しかし私はもう細かく考えることをやめようと思いました。これほど魅力のある謎の人に翻弄されていることは無上にうれしいのですから。私が彼女の心を揣摩憶測するより、私は私の思いに忠実になれば、それでいいのだ、と思いました。私は彼女の肩を掴んで抱きしめました。彼女は肩をゆすって、
「あん。純さん。私は悪い女です。やさしくしないで、いじめてください。」
と言います。
「優子さん。私はあなたの心の底は分らない。責め、を利用してあなたの本心を聞き出そうかとも思いました。私はまんまとあなたの思惑にはまってしまったのかもしれない。でも、それはもうどうでもよくなりました。あなたのような魅力的な人に翻弄されるのなら無上の幸せです。」
そう言ってさらに私は、
「では私も手加減しませんよ。好きなことをさせてもらいますよ。」
と言うと彼女は、
「はい。」
と小さく肯きました。私は後ろから両手で彼女の胸を掴みました。掴むというよりは、手で彼女の胸をブラジャーのように覆ったという程度です。彼女の胸のふくらみの感触を私はしばし、我を忘れて浸っていました。私にとっては、憧れの優子さんにこんなことが出来るとは夢のような思いでした。こんな機会をまたもつことが出来るのか、もしかするとこれが最後かもしれない。慎重な私はそんな心配も起こってきて、一生この感触を覚えておこうとじっと手をのせていました。彼女の胸の感触がかえってきます。彼女の両手は頭の上でピンと縛められているので、抵抗できません。私は自分が何か女性の部屋に忍び込んで、おびえる女性を縛り上げ、強姦している悪漢になったような気がしてきました。会社では体にピタリとフィットする制服のスーツ姿しか見ることができませんでしたが、はたして彼女も夏、海水浴場に行ったりするのだろうか、行くとすればどんな水着を着るんだろうか、セクシーな水着で男を挑発しようなんていたずらな心も持っているのだろうか、私はいつも会社で彼女をみる度にそんな事が気になっていました。しかし、私は床につくと、彼女がセクシーな水着を着て、胸を揺らしながら、天真爛漫の笑顔で、真夏の太陽のもと、波打際をかけていく姿が勝手に浮かんできて夢精してしまったこともあります。女性の胸は男の側から見れば、男を悩ませ、ひきつける魅力の房です。しかし、女性の側からすればそう単純ではない。女性に矛盾した二重の感覚を与える器官です。一つは男の視点に一致した男を挑発し、引きつけ、悩ましてやろうという天性のアクセサリーです。しかし、もう一つ、それとは正反対の否定的な一面も持っているはずです。それは女性が自分の意志で身につけている、いつでも着脱できるアクセサリーではなく、造物主によって押しつけられたアクセサリーであり、人間として行動する時、絶えず気にしていなくてはならない、厄介なものでもあるはずです。そもそも生物学的にも、女性の胸は自分の子供に栄養を与えるために存在する器官であるのに、男に乱暴に揉まれることにもその目的とプライドを持っているのですから、女とはかわいそうな存在です。私がそんなことを考えながら、彼女の胸を触っていると、彼女は、
「あん。純さん。恥ずかしいわ。ゆるして。」
と言います。
「だめです。優子さんは悪い痴漢にあってるんです。」
私はだんだん興奮してきて、息が荒くなってきました。しかし、もう彼女に性格を軽蔑されようとも、自分の思いをすべてさらけ出してやろうという開き直りの心境になっていました。私は片手を胸から離し、みぞおち、からヘソ、へと、体の上をゆっくりと下のほうに手を這わせていきました。この鈍行の目的地は、女性なら分るはずです。彼女は、
「ああっ。いやっ。」
と言いながら目的地に手が達することを何とか避けようと、腰の向きを変えようと身をくねらせています。しかし頭の上で手首を縛られて吊るされている以上、何をされても逃げる事は出来ません。目的地に達すると私は女の部分に胸と同じように手をピッタリと当てました。手のブラジャーと手のパンティーで覆っているようなかたちです。彼女のぬくもりが伝わってきます。
「どうです。痴漢に襲われている気分は?」
「い、言えません。」
「言ってください。言ってくれなければずっとこのままですよ。最も僕はずっとこのままの方がいいですけど。」
彼女がいくら腰を引いても私はピッタリと手をくっつけて離しませんでした。彼女も、ついに腰を引く抵抗を諦めました。ジーンと彼女のぬくもりが伝わってきます。
「優子さんは痴漢にあったことはありますか。」
「あ、ありません。で、でも…。」
「でも何です?」
私はもう心の内を知られることに抵抗を感じない心境になっていたので、むしろことさら本心を言ってやりたいという開き直りの心境になっていました。
「僕は電車の中で痴漢してみたいと思ったことはありません。もちろん、きれいな女性を見ると頭がクラクラしてしまうことは何度もありました。が、女性に訴えられて、社会的ハメツになることを思うと、とても気の小さい僕にはそんな勇気はありません。僕には女性が、美の化身に見えることもあれば、夜叉に見えることもあるんです。僕には痴漢する人の気持ちが分りません。勇気があるというのか、自制心がないのか。女性に手を捩じ上げられて、衆目に晒されることを想像すると、恐ろしくってとても痴漢などしたいという欲求なんか起こりませんでした。ただ、ギューギューずめの満員電車で、女性と体が触れると不可抗力であることをいいことに女性の体の柔らかいぬくもりを感じていたことは何回もあります。」
と私は彼女に後ろから抱きついたまま言いました。
「でもこうして痴漢のようなことをしているとすごく興奮してしまっているのですから、僕にも痴漢願望というものはあったんですね。それを優子さんが目覚めさせてしまったんでしょう。」
「もう僕は痴漢になりきります。」
そう言って私は彼女の乳首をキュッと掴んでみたり、腰のくびれをなぞってみたり、臍のごまをとろうとしたり、しなやかな脚を念入りに触ったり、揉んだりしました。そしてお尻の割れ目をスッとなぞってみたりしました。彼女は、
「あっ。いやっ。」
と言って、腰を前に突き出そうとしたので、私は待ってましたとばかり彼女の秘部に右手を当てました。彼女はあわてて腰を引きました。そのため閉じられていた尻の割れ目がパックリ開きました。今度は逃げられないよう左手を尻の割れ目にピタリと当てがって、逃げ場をなくしました。こういった行為は、私の心に秘めていたいやらしい欲望を彼女に行為で告白しているようなもので、彼女より私のほうがずっと恥ずかしい気持ちです。ずっとそのままの状態を続けていると彼女は耐えきれなくなって、
「恥ずかしいわ。」
と顔を赤くして言いました。
「どんなところがですか?」
と聞くと彼女は赤くなった顔をそむけました。
「痴漢にあったことはあるんですか。」
私は女性の痴漢に対する心理を聞きたい探求心から、やや、真面目な口調で聞きました。彼女は首を振って否定しました。
「純さん。私が恥ずかしいのは、はじめてでもありますけど、真面目な純さんにさわられているということがずっと恥ずかしいんです。痴漢にあったことはありません。でも満員電車で男の人と体が触れると複雑な心境でした。」
と私は告白しました。下を見るとピンク色のペディキュアの施されている彼女の美しい足指が目に止まりました。私は思わず責めの手を離し、彼女の足元に屈み込みました。
「美しい足ですね。ペディキュアがよく似合っていますよ。僕、女の人の足にすごく魅力を感じるんです。夏、サンダルでペディキュアのぬられた女性の素足を見ると、モヤモヤした気持ちになってしまうんです。」
私がじっとペディキュアの施された彼女のきれいな足指を見ていると彼女は顔を赤くして、
「あん。そんなに見ないで。」
と言ってもどかしそうに足をモジつかせました。
「でも見てほしいからペディキュアをするんでしょう。」
「い、いじわる言わないで。」
そう言って彼女はもどかしそうに足をモジつかせました。私は逃げようとする彼女の足首を掴んで、丹念に検査するように足指の股を一本一本広げてみたり、イヤ、イヤ、という彼女の制止を無視して、鼻を近づけてクンクンと匂いをかいでみたりしました。私は彼女の薬指を口そっとに含みました。彼女は反射的に、
「あっ。純さん。いや。そんなこと。」
と言いますが、私はかまわず、薬指から小指へと全部の指を、そして一方が終わると、もう一方の足へと同じことをしました。そして足を元に戻しました。彼女の立ちっぱなしの体重を支えている足がかわいそうに思えてきます。ある、不埒ないたずらが私の心の中で思いつかれました。
「優子さん。」
「は、はい。何ですか。」
「優子さんの美しい静止した姿を見ているうちに何か優子さんが美しい人形のように見えてきてしまいました。女の子の人形って、着せ替えて遊ぶものでしょう。」
「そ、そうですわね。」
と彼女はおそるおそるの口調でやむを得ずの同調の相槌を打ちました。
「僕、優子さんの水着姿がむしょうに見たくなってしまったんです。水着に着せ替えてもいいですか。」
彼女はコクリと肯きました。
「は、はい。私は純さんの奴隷ですもの。拒否する資格なんてありませんわ。」
「水着はどこにありますか。」
「引出しの下の段の中にあります。」
引出しを開けると幾組かの水着がありました。私はピンク色のビキニを取り出して、彼女の傍らに寄りました。
「じゃあ、ビキニを着けるためにバタフライをとらせていただきます。」
「は、はい。純様。で、でも。恥ずかしいんです。どうかお慈悲を。で、できれば後ろから、お、お願いします。」
と、消え入りそうな声で言いました。そういえば私は彼女の体つきは目に焼きつくくらい十分にみてしまいましたが、決定的な羞恥の部分は、まだ見ていませんでした。
「はい。そうします。見ませんよ。」
そう言って私は彼女の上下のバタフライを取り外しました。覆うもの一枚ない全裸になった彼女は、
「あっ。いやっ。恥ずかしい。」
と言って脚を寄せ合わせました。前は見られていなくても、脱がされるという行為は女性にとってこの上なく恥ずかしいものです。前に気まぐれで廻られたら、見られてしまうのですから。
「ふふ。困っている優子さんってとってもかわいいです。見てみたいな。でも約束は約束だからな。」
と言ってじらせたりします。
「そうだ。鏡台を前に置けばいいんだ。」
私はそんなことを一人言のように行って無防備の姿の彼女の時間を長引かせようとします。今までつけていたかろうじての覆いのバタフライでも覆いは覆いであり、それを体につけておく糸は、裸同然でも体を隠す衣類を身につけているという感覚を起こします。しかし、今は完全な全裸で、しかも立ち縛りの状態です。恥ずかしくないわけはありません。後ろからでも、あらわになった胸の輪郭が脇の下から、くっきり見えます。私はしばし、我を忘れて、彼女の全裸の後姿に見惚れてしまいました。
「お、おねがい。純さん。」
「何ですか。」
「お、おねがいです。」
と言って彼女は身を震わせました。彼女の、お願い、とは、聞かずとも分ります。しかしそれを口に出すのも恥ずかしいことは十分わかります。脱がされるのも恥ずかしいが、身につけさせられるのも恥ずかしい。他人による着脱は、もてあそばれている、みじめな感覚しか起こしません。私が行動を起こさないので、ついに彼女は耐えきれなくなったとみえ、
「ビ、ビキニを身につけさせてください。」
と声を震わせて言いました。私はビキニのブラジャーをできるだけ、彼女の肌に触れないように後ろからつけました。胸を覆い隠せて彼女は少しほっとした様子です。ある不埒な考えが私に起こり、私は座り込みました。しばししても行動を起こさない私に彼女は不安を感じ出し、
「み、水着をつけさせて下さい。」
と声を震わせて言いました。私はそらとぼけて、
「水着はつけたじゃありませんか。」
と開き直るように言うと、彼女は顔を真っ赤にして、
「し、下もお願いします。」
と消え入るような小さな声で言いました。
「上だけちゃんとつけて下がないのって面白い格好ですね。少し鑑賞させてもらおうかな。」
と意地悪を言うと、
「お、お願い。どうか下も。」
と、彼女はお尻をプルプル震わせて言うので、私は足をつかみ、片足ずつ水着を通して引き上げていき、ピチンと腰の位置で離しました。ビキニは尻の下がかなり露出されている挑発的な水着でした。しかし恥という観念は社会の共通意識によって造られるものなので、そこには恥ずかしさはさほど生まれず、彼女は完全な衣類をまとえた安心感からほっとした表情で、
「ありがとうございます。」
と言って、もう安全領域に入れた安心感から困惑の震えはなくなりました。他人によってつけられた屈辱は、いったん身につけてしまえばもうなくなり、かえって彼女は心なしか自分の水着姿を自慢するかのごときポーズをとっている感が見えました。彼女の顔から屈辱が消え栄光がもどりました。私は前に廻りました。縛められているとはいえ彼女に、もはや困惑はありませんでした。むしろ女の体の稜線がつくりだす美を見せつけて誇るプライドを満喫しているような様子です。私は思わず唾を飲んで、
「き、きれいだ。優子さん。美しすぎる。」
と言いました。彼女は小さく「ふふふ。」とゆとりの笑いをもらしました。
「優子さん。」
「何ですか。」
「優子さんは毎年、夏、海に行くんですか。」
「…。」
彼女は少し答えることを躊躇している様子です。
「どこの海へ、何の目的で行くんですか。」
と私が再度聞いても彼女は黙っています。
「言わないなら言うまで責めますよ。」
私は毛筆をとって彼女の背後に廻り、毛筆の先を無防備の両脇に当てました。触れたとたん、彼女は、
「あっ。」
と言って、
「お、おねがい。ゆるして。」
と言って体をプルプル震わせました。
「言えばやめます。言わなければいつまでも続けます。」
私は丹念に、最もくすぐったい腋下の窪みの所を執拗に擽りつづけました。彼女はとうとう耐えきれず、
「わ、わかりました。言います。言いますから、ゆるしてください。」
彼女はハアハアと一息ついた後、荒い呼吸がもとにおさまると、私の聞いた二つの質問に答えました。
「海は毎年行きます。出来るだけ遠いところへ。目的は体を焼く、というより裸に近い姿を多くの人に公然と見られたかったからです。」
「悪い人だ。そういう女の人の挑発的な姿がどれだけ男を悩ませていることか。そのことが気になって勉強が手につかず、第一志望を落としてしまった受験生だっているんですよ。」
「ご、ごめんなさい。」
「少しお仕置きしておきましょう。」
と言って私は再び毛筆を彼女の腋につけてゆっくりと刷きました。
ある不埒ないたずらのアイデアが浮かびました。
「優子さん。水着を着ていると海に来ているような感覚が起こりませんか。」
「ええ。少し。」
「じゃあ、ここは海水浴場です。優子さんは誰かに日焼け用オイルをぬってもらったことはありますか。」
「い、いえ。」
と彼女は顔を赤らめて言いました。
「じゃあ、僕が体中くまなくぬらせていただきます。」
「そ、そんな。」

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M嬢の物語 (小説)(2)

2020-07-07 07:40:47 | 小説
水着のある箪笥の引出しを開けた時、コパトーンがあったので、私はそれを持ってきました。彼女のためらいを無視して私はコパトーンをたっぷり掌にぬって、彼女にぬり始めました。足首から腿へ。じっくり時間をかけて。私はオイルをぬるという口実に名を借りて、じっくり彼女の体を隅々まで、その感触を感じ取っていました。しなやかな腿からはゴムマリのような弾力が返ってきて、オイルを塗ることが、ただ触ることより、いっそう感触の記憶を頭に定着させ、私はエステティシャン、や、マッサージ師の微妙な役得とはこういうものなのだな、と思いながら丹念に塗り込んでいきました。下肢の前面を塗り終わると私は後ろに廻りました。
「安心して下さい。塗り残しの部分がないよう、くまなく塗りますから。」
そう言って半分近く露出されている彼女のお尻に堂々と触れていきました。
「あっ。い、いや。」
彼女の制止を無視して、尻の部分を塗り終わると、そのまま這い上がって行って背中をくまなくぬり、背後が終わると私は再び前に廻りました。今度は彼女の上半身を塗ろうと、良くくびれたウエストから腹全体へとくまなく塗り込んでいきました。
「縦長のかわいいお臍ですね。お臍の穴にもちゃんと塗りますから安心して下さい。」
などと表面は真面目な口調で臍の穴に執拗に塗り込んでいきました。
「あっ。い、いや。くすぐったい。ゆ、ゆるして。」
「だって塗り残しができたら良くないじゃありませんか。」
ブラジャーの境界線いっぱいまで塗ろうとするので手の甲が豊満な乳房の感触に触れるのを避け得ず、さらに腋下の窪みにまで丹念に塗りました。
「あ、ああ。くすぐったい。ゆ、ゆるして。」
私はオイルを塗るという口実で公然と彼女の脇の下を素手でくすぐる意図も含めて、ゆっくり塗り込んでいきました。彼女は耐えられなくなって、
「ああ。純さん。おねがい。ゆるして。」
と髪を振り乱して声を大にして言います。もうほとんど全身にくまなく塗ったので私はオイル塗りをやめ、彼女の真正面でドッカと座りこみました。私は彼女の体の感触の余韻に浸りながらあらためて彼女のビキニ姿に見入っていました。ビキニ姿を誇るつもりだったのが、隅々まで体をもてあそばれ、彼女はみじめそうな表情で、ガックリ首を落としています。しかし、塗られたオイルのため、体がテカテカ光り、私は何か美しい人魚の像を手入れしたような気分でした。しばしの間、私は彼女を美しい彫像を鑑賞するように我を忘れて見入っていました。これほどまじまじと女性の体を目前に見たことは始めてだったので、私は女性の体とは何と美しい形なのかとあらためて思い知らされたような気分でした。
「ごめんなさい。優子さん。いたずらしちゃって。今、拭きます。」
と言ってタオルのある場所を聞き、オイルを丁寧に拭き取り、もう数度タオルを水で絞って、完全にオイルを拭き取りました。私は彼女のビキニ姿をこうまで、まじまじと見る機会が今後あるだろうかという気持ちに襲われて、恥も外聞も忘れ、食い入るように、女の部分を見入っていました。すると彼女は私の視線がそこに固定しているのに気づき、
「あん。恥ずかしい。あんまり見つめないで。」
と言って脚を寄り合わせます。
「すみません。あんまり美しいもので。でも、ビキニって男に見られたいために着るんでしょ。」
「い、いじわるゆわないで。」
彼女にそう言われて私は視線を床に落とすと、彼女が脱いだ下着が目に止まりました。ある不埒なイタズラを思いつきました。
「優子さん。」
「何ですか。」
「せっかくつけた水着で申し訳ありませんが下着につけ替えさせてもらってもよろしいでしょうか。」
「私は純さんのドレイです。純さんの言うことにはさからう資格なんてありません。」
「それじゃあ。」
と言って、私は彼女の下着をとって彼女の背後に廻りました。私はビキニを外して再び彼女を裸にしました。彼女は着せ替え人形のようにおとなしく、されるがままになっています。私は下着をブラジャーから着ける意地悪をしないで、パンティーを先につけ、次いでブラジャーをつけました。彼女はほっと一安心したような様子でした。前に廻って彼女をみつめても、彼女は視線をそらそうとはせず、私の行為をやさしさ、と思ったのか、やっと落ち着いたというような様子でした。私が微笑むと彼女も僅かに微笑しました。
「やっぱり純さんてやさしいんですね。」
「そうみえますか。前は僕もそう思っていました。でも今はそんなにやさしい人間じゃないように思えてきました。むしろ意地悪な人間なのかもしれない。」
彼女はキョトンとしています。
「どうして僕が下着に替えさせたか分りますか。」
彼女は黙っています。私は彼女の後ろに廻って屈み、パンティーのゴムに両手をかけました。
「こうするためですよ。」
と言って私は彼女のパンティーをグイと引きおろしました。そして膝と尻の中間の中途半端なところで放置しました。安全に隠されていたお尻が丸出しになりました。
「ああ。いや。」
と言って、彼女は反射的に膝をピッタリ閉じ、腰を引きました。彼女は最羞の前を隠すため、必死で腰を引こうとしますが、そうすると尻の割れ目が開かれてしまうため、どうすることも出来ない、といった様子でプルプルと尻を震わせながら困惑しています。胸はブラジャーで隠されているのに下は丸見えで、パンティーは自分の意志で引き上げることは出来ず、この上なくみじめな格好です。
「ああ。純さん。おねがいです。」
「何のおねがいですか。」
私はそらとぼけた返答をしました。
「パ、パンティーを。」
「パンティーをどうするんですか。」
「パ、パンティーを元に戻して下さい。」
「ごめんなさい。優子さん。僕は優子さんのこの姿が見たくてこうしたんです。」
「お、おねがい。純さん。パンティーをはかせてください。」
と言って彼女は油汗を流しながら必死で腰を屈めようとしています。
「あんまり腰を屈めるとお尻の割れ目が開いちゃいますよ。」
「ああ。いじわる言わないで。ああ。みじめだわ。こんな格好、死にたいほど恥ずかしいわ。」
「でも優子さんの困ってる姿、とっても美しいや。美しいものを美しいままにしておくことは良いことなんじゃないかなー。」
私はそらとぼけて一人言のように言いました。
「ムチ打って。好きなだけムチ打って下さい。その代りどうかお慈悲でパンティーだけは元に戻して下さい。」
「こんなきれいな柔らかい肌、鞭打つことなんてとても出来ません。それより優子さんのこの姿が一番美しいや。じゃあ、しばらくとっくり鑑賞させてもらいます。」
と言って私はドッカと腰を下ろしました。彼女は私に対して横向きになって視腺から身を守ろうとしています。
「横向き、もきれいだ。いや、横向きが一番きれいなのかもしれない。」
などと私が揶揄的な独り言を言うと彼女はパンティーを中途半端に下ろされているという、惨めな姿をみられている屈辱に耐えようと、必死で腰を引いて、全身をプルプル震わせながら、
「た、耐えます。みじめですけど純さんの命令には逆らえませんもの。」
と声を震わせて言います。
「でも優子さんは、こうされることが嫌なだけじゃなくて、気持ちよさも感じるんじゃないですか。僕にはよく分りませんけど。」
彼女は顔を真っ赤にして、
「い、いや。いじめないで。」
と言いました。私は立ち上がって彼女のパンティーを引き上げて元に戻しました。
「あ、ありがとうございます。」
私は黙って再び座りました。しばしたって羞恥の気持ちが消えると、安心感から笑顔も生まれたらしく、
「やっぱり純さんてやさしいんですね。」
と笑顔を私に向けました。彼女の下着姿もいいものだな、と私は思ってしばし眺めていましたが、時計を見るともう九時をまわっていました。彼女は笑顔を向けていますが、いいかげん長時間立ったままで吊るされているのですから疲れているのは間違いありません。彼女も長年の願望がかなって、うれしいのだろうと思いますが、気分が乗ってきた私を慮ってくれているに違いありません。
「優子さん。疲れたでしょう。もうこのくらいにしておきましょう。」
と言って、私は吊りを解き、手首の縛めも解きました。彼女はお礼を言うと、
「純さん。すみませんが、ちょっと後ろを向いていて。」
と言いました。私が後ろを向くとゴソゴソと音がします。
「もういいわ。」
と言われて振り返ると、彼女は白のブラウスにアイボリーホワイトのタイトスカート姿で微笑んでいました。私は一瞬、「うっ」と喉をつまらせて、何ともいえない気持ちになりました。エロティックな感情は日常が非日常に移るとき起こりますが、その逆に非日常が日常に戻ったときにも起こるものだとつくづく思いました。普段着姿の彼女を見ると今までずっと裸近い姿だった彼女とが、頭の中で比較されてしまい、自分が、かくも美しい人に、本能のまま、はしたない事をしてしまったことがいやおうなく思い出されてしまいます。そして、もう手が出せないことに、ちょっぴり寂しさを感じるとともに、それと反対に、手が出せないことが女性の魅力だと思うと、何とももどかしい快感が起こりました。また、彼女も私にそういう気持ちを起こさせようとの魂胆があって、私に後ろを向かせている間に普段着を着て、いきなり日常に戻った姿を見せつけたのに違いありません。実際、彼女からは美の持ち主の優越感を見せつけて楽しんでいるような様子が感じられます。彼女に促されて私たちは食卓に向かい合わせに座りました。
「純さん。ありがとう。モヤモヤした欲求が解消して、とてもすっきりしました。」
私は恥ずかしさに耐えきれず、彼女の足元に土下座して、床に頭をつけ、
「ごめんなさい。ひどい事をしちゃって。お願いです。どうか存分にけって下さい。」
と叫びました。彼女は私の手をとって元の椅子に座らせ、朗らかな口調で、
「いいのよ。私が頼んだことじゃない。純さんが謝る理由なんてどこにもないわ。」
「で、でも、それでは僕の気がすみません。さっきのようにヒールで思いきり踏んでください。」
「そんなことできるわけないわ。純さんの性格に合わない、私の一方的な要求を一生懸命して下さったのに。お礼を言うのは私の方だわ。つかれたでしょう。」
「い、いえ。」
私はヘドモドして答えました。
「また、いじめてくださいね。ストレス解消として、何をなさってくださってもいいのよ。」
「で、でも・・・。」
私がためらっていると彼女は思い出したように、
「あっ。そうそう。こんなことしてることが万一、会社にわかって噂になったら、いやだから会社ではあまり親しくしないで、付き合いのない関係のように、装ってもいいかしら?」
「ええ。もちろんです。」
彼女はチーズケーキと紅茶をだしてくれたので、私はあわててそれを食べると、お礼を言って彼女のアパートを出ました。
 私は夢心地でアパートに帰りました。もう夢じゃない、自分はもう彼女と深いつながりを持てたんだ、と思うと床に就いても彼女との夢のような一連の遊戯が浮かんできてなかなか寝付くことができませんでした。
   ☆   ☆   ☆
翌週の月曜から再び会社での勤めが始まりました。会社では彼女が言ったとおり、彼女は私に事務的に接するだけです。よもや私たちがプライベートではあんな事をしていると思いつく人はいない、彼女の隠れた秘密を知っているのは私だけ、と思うと何か愉快な気分になりました。確かに彼女が言ったとおり会社では事務的に接する二面性をつくっておいた方が面白い、と言う彼女の言葉通りだと思いました。昼休みも社員食堂で一緒に食事するという事も、私の隣に来て笑顔で話しかけるという事もなくなりました。何しろ事が事ですから、会社で親しくして、人に少しでも二人の関係を感づかれることを恐れる彼女の気持ちはわかります。
しかし、しばしするうちに私は何か言いようのない寂しさを感じるようになりました。昼休みなど、彼女は同僚の女友達と屈託ない笑顔で笑い合っています。同僚の女友達だけでなく、彼女は男の同僚とも、誰とも親しく付き合うことが出来ます。しかし私は元来内気で、人付き合いが苦手なため、友達も少なく、昼休みなど一人でポツンとしてしまうことが多いのです。そんな時、友達と屈託なく笑っている彼女がとてもうらやましく見えてきて、そんな時はとてもさびしい気持ちになります。彼女の誰とでも話せる外交的な明るい性格の前では、彼女の裸を触ったことなどに少しの自慢の気持ちも起こりません。もし彼女が私との付き合いを拒否すればもう私は彼女に指一本触れることも出来なくなるのです。私は彼女のオナニーの道具のようなものです。もしかすると彼女は私をこのような惨めな立場にするために、公私を分ける二面性にしたのかもしれません。いたずらな性格もある彼女のことですからもしかするとそうなのかもしれません。会社で私に惨めさを感じさせて優越感に浸る意地悪をしようという気持ちがあるのかもしれません。しかしそれでも私はかまいませんでした。たとえ彼女のオナニーの道具でも、手も届かないと思っていた彼女とあんなに親しくなる機会を一度でも持てたのですから。
   ☆   ☆   ☆
 そんな状態で数日過ごしました。そんなある日、仕事が終わってトボトボとアパートへ向かっている時でした。後ろから彼女の白のカリーナが軋り音を立てて止まりました。彼女はドアを開け、私を車の中に入れました。彼女は屈託ない笑顔で言いました。
「へへ。純さん。さびしい思いをさせちゃって御免なさい。私、悪意で純さんをさびしがらせようなどと計画してませんでした。でも純さんがさびしそうにしてるのを見ると何かちょっぴりうれしい気持ちが起こってしまいました。私って悪い性格なのね。本心では私、純さんを弄ぼうなんて気持ちありません。だって純さんしか心を許せる人いませんもの。会社でも少しは個人的に話す機会もつくろうと思います。でも純さんがさびしそうにしてる姿、とてもかわいかったでした。ごめんなさい。今度の土曜、また来て下さいね。待ってます。」
そう言って彼女は私を降ろすと勢いよく車を飛ばしました。
私は彼女の隠し事のない本心を聞けて飛び上がりたいほどうれしい気持ちでした。
(3)
 約束の土曜になり、彼女のアパートへ行くと、彼女は満面の笑顔で私を迎え入れてくれました。彼女の用意してくれた料理を、食卓に着いて、向かい合わせに食べていると、彼女はワクワクした様子で、
「うれしい。今、こうやって対等にしているけど、これから私だけ裸にされて、みじめのどん底に落とされるのね。そう思うとゾクゾクしちゃうわ。」
と、喜びの内にも少し不安と緊張の混ざった口調で言います。彼女のこういう性格は、前回で十分わかっていたので、黙って料理を食べていましたが、ことさら喜びの表明をしたことに思わず私はクスッと笑ってしまいました。彼女も緊張が解けたのか、身を乗り出して、
「ねえ。純さん。この前はお手柔らかだったけど、今度はもっと徹底的に、情け容赦なくいじめ抜いて。一人暮らしの女のアパートに忍び込んだ強盗になったつもりで、うんと乱暴して。物をこわしたり、殴ったり蹴ったりして下さってもかまわないわ。いえ、むしろそうしてほしいの。」
と言いますが、私はたじろいで、
「で、でも、いくらなんでもそんな事は・・・。」
と尻込みしていると彼女は椅子から立って床にうつ伏せになって、
「さあ。純さん。私を踏んで。」
と催促します。私はやむを得ず立ち上がって、彼女の肩にそっと足をのせました。が、何もしないでいると、彼女は物足りないもどかしさを訴えるように、
「純さん。もっと体重をのせて、力いっぱい踏みつけて。」
と、叱るような強い口調で訴えます。私はのせていた足に少し体重を加えてみました。が、そうすると柔らかい、華奢な、ちょっとでも荒く扱うと壊れそうな女性の体の感触が伝わってきて、私はそれ以上、体重をのせることに耐えられず、彼女の元にペタリと座り込んで、
「ごめんなさい。優子さん。僕にはとてもそんなこと出来ません。」
と何度も頭を下げました。彼女はゆっくり起き上がると、穏やかな笑顔で、
「いいのよ。純さん。無理な注文をしちゃってごめんなさい。」
と慰めるように言いました。彼女はしばし何かを悩んでいるらしく、口唇を噛んで手をモジモジさせていましたが、ついに決断がついたらしく、それじゃあ、と言って立ち上がり、洗面所から石鹸や泡だて器、タオルなどを洗面器に入れて持って来て、私の前にトンと置きました。そして隣の部屋から一冊の本を持って来て私の前に置きました。
それはSM写真集でした。彼女は手を震わせながら、おそるおそるある項を開き、私に見せました。
「こ、こうしてほしいんです。」
と言って彼女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまいました。その写真を見て私はびっくりしました。何と全裸の女性が片足を吊り上げられている写真です。手は後ろで縛られて拘束され、秘部は泡立てられた石鹸が塗られていて隠されています。そしてその横で男が剃刀を持って、女の毛を剃ろうと待ち構えています。私があっけにとられていると、彼女は彼女は顔を真っ赤にして、
「こ、この写真のようにしてください。」
と言います。私はあせって、
「い、いいんですか。こんなことして。」
と聞き返しましたが、彼女は、
「押し入り強盗なら、このくらいのこと平気でするでしょ。」
と紅潮した顔を床に向けて言いました。
ただでさえ全裸で片足を吊り上げられる、という姿を見られるだけでもこの上ない恥ずかしい事なのに、その姿のまま、人に毛を剃られるなどということは普通の神経の女性にはとても耐えられるものではないはずです。私は彼女の裸姿は前回十分見て知っていますが、彼女の決定的な部分はまだ見ていませんでした。このようなことをすれば彼女の決定的な部分をまじかに見てしまうことになります。当然それは彼女もわかっているはずです。何か彼女は自分を極限状態に追い詰めるようなことばかりしますが、私には彼女にそうさせようとする衝動がいったい何なのかまったくわかりません。私としては彼女の決定的な部分は見ないほうが緊張感があっていいと思っていました。しかしともかく、彼女の言うことは何でも聞くと約束した以上、しないわけにはいきません。彼女は服を脱いで全裸になると、天井の梁に取り付けられている滑車の下に座り、
「さ、さあ。写真の様にしてください。」
と言って両手を後ろに回しました。私が彼女を後ろ手に縛ると、彼女は床に横たえました。
「さ、さあ、足を縛ってください。」
と言われて、私は彼女の片足を縛り、縄尻を滑車に通しました。
彼女に言われて、もう片方の脚は足首と膝を縛りました。彼女はピクピクと全身を震わせています。
「こ、こわいわ。」
「じゃあ、やめましょうか。」
「い、いえ。純さんにお任せした身ですもの。」
「では。」
と言って、私は縄尻をゆっくり引き上げていきました。
「ああー。」
と、つらそうな声を上げ、後ろ手に縛られた背後で、親指を隠すようにぎュと握りしめています。女性の秘所をせめても威容をもって隠そうと叢生している茂み。その下の女の最も恥ずかしい部分もはや全貌があらわになっていきます。
「ああ。みないで。」
と彼女は赤面した顔を横にそむけて言います。でもこれはどうしても避けられないので止むを得ません。
「できるだけみないようにします。」
と言って私は剃毛にかかりました。まず毛をハサミで大雑把にジョキジョキ切っていきました。そして刷毛を水にぬらし、石鹸で泡立てて、お尻の穴の周りまで丁寧に湿らせて、床屋のように一度蒸しタオルを載せ、再びシャボンをつけ、ショリショリと剃っていきました。
「あ、ああ。みじめだわ。」
彼女の艶のある長い黒髪が床の上に開扇状にこぼれ、睫毛をフルフル震わせています。視線を戻して私は彼女の羞恥の意味を解しました。石鹸の泡とは別の、粘りけのある液体が、いつの間にか、涌き出た泉のように女の窪地を満たし、ついに溢れて一筋の水路をつくっていました。
「純さん。何か言ってください。笑って。言葉で笑いものにしてください。純さんがどう思っているか、わからないとこわいんです。」
私が黙っていると彼女は耐えられなくなったような口調で、
「純さん。私のグロテスクな所を見てゲンメツしてしまったのね。いいです。私を笑って。蹴って。そして捨ててください。」
と涙がかった口調で言いました。私は黙って、かまわず仕事を続けていきました。ついに全部きれいに剃り終えると、私は丁寧にシャボンを拭き取り、毛を剃られて全貌があらわになっている女の最も羞恥の部分にタオルをのせて、そこを見えないようにしました。私は彼女の耳元に口を近づけてささやきかけるように、
「ゲンメツなんかしていません。優子さんの体は、どこも美しいです。それに僕は忘れっぽいから見たものはすぐに忘れてしまいます。」
「あ、ありがとう。ウソでもうれしいわ。」
「ウソじゃありません。優子さんも疑い深いですね。」
タオルで秘部だけ覆われた姿は全裸以上にエロティックで、狂おしいほど欲情をかきたてさせます。
私はこれをいい機会に彼女の体をくまなくうっとりと髪の先から足の先まで見惚れていました。腰までとどくつややかな髪が開扇状にばらけ、口は屈辱に耐えようとキュッと真一文字に閉じられ、睫毛が微かにピクピク震えています。美しく整った形の下顎から喉仏。その下ではいやでも男の注目を惹いてしまう二つのたわわに実った房がペタリと体に貼り付き、それは思わず触れてその弾力を確かめてみたくなる感情を起こします。それは、「こぶとりじいさん」の話しのように、女を困らすためにむりやり意地の悪い鬼に取り付けられた、瘤のようにもみえ、その下では雨だれによって、穿たれたような縦長のヘソ。見事にくびれたウエストがあり、その下では実用の些細な動作まで困らせるほどの分量で肉付けされた豊満な尻が華奢なつくりの胴から反発するようにもりあがっています。
私が彼女に見惚れていると、
「純さん。な、なにを考えているの。」
「いえ。あまりにも優子さんの体が美しいものでつい見とれていました。」
彼女は顔を赤くして、
「い、いや。あんまり見ないで。は、恥ずかしいわ。」
「ふふ。優子さん。猟師が仕掛けた罠にはまったエモノのようだ。」
私は彼女が自由を奪われているのをいいことに、彼女の足の指を開いてみたり、しなやかな脚を足の先から付け根の方へとゆっくり手を這わせてみたりしていました。そのたび彼女は、
「い、いや。恥ずかしいわ。」
といって顔をそむけます。
「優子さんの体、くまなく調べてみたいな。でも優子さんが、いや、ということはしませんよ。」
というと彼女は声を震わせて、
「い、いえ。は、恥ずかしいですけど、私の命は純さんのものですもの。なさりたいことは何なりとなさって下さい。私は必死で耐えます。」
恥ずかしさ、から目をそらして体の自由を奪われている彼女が、何をしてもいい、人形のように思えてきて、私は、あることを思いついて洗面所から歯ブラシや歯磨き粉とコップ、水、洗面器、を持ってきました。私は歯磨き粉を歯ブラシにつけて、目をつぶっている彼女に、
「優子さん。口を大きく開けて下さい。」
「な、何をなさるの。」
「歯ミガキです。」
「えっ。」と、驚いた彼女にかまわず、私は歯ブラシを彼女の口の中へ入れ、片手で顎を掴み、奥の方から磨きだしました。口が開いて、歯並びのいい前歯がみえます。
「きれいな歯ですね。まるで真珠か、美しい貝殻のようだ。」
私は丹念に全部をみがきおえると、
「はい。クチュクチュして。」
と言って、彼女の口にコップをあてがいました。彼女は言われたまま、クチュクチュ音をさせて、口の中をゆすぎました。
この時、ある子供じみた、いたずらに私は内心で苦笑していました。
てっきり吐き捨てる洗面器をあてがってもらえると思っていた彼女の顔を私は、何もしないで黙ってみていました。時間がたっても洗面器があてがわれないので、私の意地悪に気づいた彼女は目をパッチリ開いて、救助を求めるように私をみながら眉を寄せて、苦しげな表情で鼻から「んーんー」と苦しげな訴えをしています。歯磨き粉でゆすいだ水をのむのは何とも気持ちが悪いものですし、かといって床に吐き捨てるわけにもいきません。
こらえていると唾液がたまってきてどんどん苦しくなっていきます。
もう限界だ、と見えたところで彼女の口に洗面器をあてがいました。
彼女は、ゲホゲホッと咽びながら勢いよく吐き出しました。
「ごめんなさい。優子さん。つい、イタズラしたくなっちゃって。」
と、照れ笑いしながら言うと、彼女は、「フー」と、息を取り戻し、
「あー。苦しかった。でも純さんが自分の意志でいじめてくれてうれしかったわ。今みたいに私をもっともっと、どうしようもないように追いつめて、困らせていじめてほしいの。ありがとう。」
「もうニ、三回ゆすぎましょう。一回だけじゃ気持ち悪いでしょ。」
と言って、二回目の水を彼女の口にあてがいました。彼女はチラと私を不安げな眼差しで一瞥しました。私は笑って、
「ダイジョーブですよ。もう意地悪はしませんから。」
と言うと彼女は私を信じて安心して口をゆすぎました。ゆすぎ終わったころあいをみて、私は彼女の口に洗面器をあてがいました。彼女は口をゆすいだ水をその中に吐き出しました。
「胸、恥ずかしいでしょう。」
と言って、私は箪笥からブラジャーを取り出して彼女の胸の上に載せて彼女の乳房を隠しました。私は出来ることなら、されるがままの人形の状態の彼女を傍らでずっと見守っていたく思いました。
もうこんなチャンスはめったにないかもしれないし。で、彼女の髪をとかしたり、二の腕を揉んだり、体を拭いたりしました。
「純さん。私を踏んで。竹で叩いて。」
「そんなこと出来ませんよ。」
「純さん。強盗がそんなやさしくする? 悪人がそんなやさしくする?」
彼女は少し寂しげな口調で言いました。彼女の言葉には真剣に訴えるような切実さ、がこもっていました。
「純さんが私の頼みを聞いて下さっただけで、もう十分うれしいんですけど…。」
と言って彼女は語り出しました。
「純さんには分らないかもしれないですけど、私、もっと本当の拷問のように嬲られ尽されたいんです。なぜそんな衝動がおこるのか私にもわからないんですけど、本当なんです。子供の頃からテレビでも、悪者につかまっておびえている人質ってとってもうらやましかったんです。その後どうされるかと思うと。夢想はどんどん膨らんで、三、四人のサングラスをかけた角刈りのヤクザに捕まえられ、丸裸にされて縛られ、土足で踏みつけられ、ありとあらゆる意地悪な拷問にかけられたかったんです。私が泣き叫んでも容赦なく平手打ちされて。純さんにもそれを期待してたんですけど、純さんはやさしいから、やっぱり無理ね。」
とさびしそうに語りました。私はそれをすりかわすように、腕組して、考え深げに頭を垂れ、
「ウーン。わからないなー。確かに悪者に捕まっておびえている女性の顔ってとても哀愁的な魅力を僕も感じます。でも悪に本当に嬲られたいって気持ちは僕にはわからないな。」
と言いました。
   ☆   ☆   ☆
翌週になり、再び会社勤めの生活が始まりました。数日の間は、彼女と二人きりで過ごした無常に心地のいい遊戯の一つ一つが、自然と思い出されてきて、夢心地のような気持ちでした。彼女を陰ではかくまで自由に弄んでいる事を会社の誰も知らない、と思うと痛快でした。もし私たち二人の関係を知ったら、どんなに仰天することか。彼女が同僚と屈託なく笑っているのを見ると、その笑顔からは想像もつかない、美しい悪魔的な性癖を持っていると思うと、何か女の謎に翻弄されているようで、その神秘性のため、よけい彼女がキラキラ輝いて見えます。
 しかし日が経つにつれ、だんだん私は再び寂しさを感じるようになりました。しょせん私は彼女の性欲を満足させるための道具であり、彼女が声をかけてくれなければ私は一人きりなのです。私はそれでも一向にかまいませんが。
 私の方から彼女に話しかけたり、あの不埒な遊戯をまたやろう、と提案する自由はあります。彼女も本心から喜んで応じてくれる可能性は十分あるでしょう。しかし彼女が了解しても、あれは極度に神経の緊張を強いるものです。私は気が小さくて、神経質で、気を使ってしまう性格のため、彼女に少しでも気を使わせることを恐れて、あの遊戯は、私の方からは決して持ち出さないで、彼女の欲求が耐えられないほどつのって、彼女の方から私に持ちかけてきた時だけ応じようと思いました。そもそも私がそういう性格だからこそ彼女は私を選んでくれたのですから。夢心地が消え、一人でポツンとしていると、消極的な性格の私には過去の楽しかった事も悲観的な見方に塗り替えられて思い出されてきます。前回、彼女が、「強盗がそんなにやさしくする?」と、寂しげに訴えたのを私は真剣に受け止めて考えようとせず、「うーん。わからないなー。」などと適当にすりかわしてしまったことが妙に気にかかりだしました。私は何か気にかかることにとらわれると、他のことは手につかなくなって、その事ばかりとことん考え込んでしまう性格です。一日考え抜いた末、ついに私は無意識の内に誤魔化しつづけていた自己欺瞞の正体をはっきりと掴み取りました。それはこうです。
彼女をむごくいじめることが出来ないのは、彼女に対する思いやり、と私は思い続けていましたが、その実、その裏には自分は善でありたい、自分を悪にはしたくない、彼女に自分をこの上ない善人のように見せておきたいという打算があった事。自分は善人なんかではない。自分だって人と同じように悪い心は持っているのに、気が小さいから実行できないだけのずるい人間ではないか。.前回、彼女が
「強盗ゴッコをして。」
といった時、私が躊躇していた時、
「強盗がそんなやさしくする?」
「悪人がそんなにやさしくする?」
と、寂しげな口調で言った彼女の訴えを真剣に聞いていなかった自分を恥じました。私は自分が悪人になりたくなさに、真剣でなかった。しかし彼女は真剣だった。彼女は真剣に心の病の救済を求めていたのに、私は自分にとらわれていた。私は、「いじめられる女性」に、美を感じ、それに踏み込んではならない、という、自分の理屈を優先させ、「暴虐的にいじめられる女」になりたいという彼女の願望を楽観視していたのだ。私は、彼女に最初、「いじめてほしい。」といわれた時、それを引き受けたではないか。彼女は恥をしのんで告白した。私はそれに従う義務がある。彼女の真剣な訴えを私は真剣に受け止めていなかった。軽くみていたじゃないか。そんな、さまざまな自分を責める思いが次々と連想されてきました。
そんなことで沈みがちでいた、ある日の昼休みのこと。
いきなり、彼女にぽんと肩を叩かれました。
「純さん。どうしたの? 元気ないわね。」
彼女の天真爛漫な笑顔があります。私が黙っていると彼女は、屈託ない調子で、
「よかったら、お昼、外でいっしょにしませんか。」
と言います。私は彼女に手を引かれるように、外へ出ました。会社の前の車道を渡り、ある大きなビルの地下の静かな喫茶店に入りました。彼女はサンドイッチと紅茶に決めたので私も彼女と同じものにしました。
「純さん。何か悩んでいるの?」
「いえ。」
彼女はしばし私を黙って見つめていましたが、
「いいのよ。いいたくなければ。無理に聞き出すの悪いもの。」
と言って、おだやかに微笑んで紅茶を一口飲みました。彼女の温かさ、が伝わってくるようです。私は勇気を奮い起こし、自分の心の内をのべ、彼女に対して不誠実であったことをわびました。
「いいのよ。純さんには十分感謝しているんですもの。純さんが疲れない範囲でいいのよ。自分の性格に合わないことを演じるのってすごく疲れちゃうわ。やさしい純さんに、本気で悪になりきって、なんて言った私の頼みの方が自分勝手すぎたわ。無理な注文をしちゃって困らせちゃってごめんなさい。」
「いえ。優子さん。僕は優子さんに感謝しているくらいなんです。僕は自分のずるさに気づかされました。悪い心は人と同じように持っているくせに、自分はそれに手をそめずに人には善人で通すというのは、ずるい、と気づかされたんです。優子さんが勇気を出してカラを破ったように、僕もカラを破ろうと思います。それに女の優子さんが勇気を出してカラを破ったのに、男の僕がカラから抜け出す勇気を持てないでウジウジしているのって、男として情けない、とも思いました。」
彼女はスプーンでクルクル紅茶をかき混ぜていましたが、
「純さんて考えが深いんですね。」
と言って微笑して紅茶をすすりました。
「でも、うれしいわ。そこまで私のことを考えていてくれたなんて。そういう誠実な純さんだから身を任せたいって思うの。でも何だか純さんにわるいわ。一方的に私の妄想に巻き込んでしまって。純さんのマイペースを掻き乱してしまうのは、わるいわ。やりたくない役をやるのってストレスがたまるでしょうから、あまり無理なさらなくて、できる範囲でいいです。」
「いえ。僕は固く決心しました。どんな役でも演じきってみせます。」
「ありがとう。うれしいわ。じゃあ、どうしようかしら。」
と言って彼女はしばし目の玉を天井に向けて、考えていましたが、思いついたようにパッと視線を戻し、
「じゃあ。この前と同じように強盗ゴッコでいいかしら。」
というので私は、
「それじゃあ僕は強盗になりきります。優子さんも覚悟しておいて下さい。」
と力強く答えました。彼女は笑顔を私に向け、
「うれしい。ワクワクするわ。じゃあ、今週の土曜、楽しみに待ってます。私も強盗に入られておびえる女になりきります。」
と言って目をパチクリさせました。私は心を鬼にして凶悪な強盗になりきろうと決意を新たにしました。
時計を見ると昼休みの時間も残り少なくなっていました。彼女はレジをみて、財布を取り出そうとしましたので、私はそれを取り上げて、黙って彼女の腕をグイと掴み上げてレジへ行き、支払いをしました。男らしさとはこういうものなのだなと私ははじめて感じました。
「ありがとう。純さん。」
と彼女はニコッと微笑みましたが、私はムスッとした表情で、うるさそうに一瞥して、背広の前をはだけ、肩で風切るようにズンズン歩きました。彼女は腕を私の腕に絡ませてきて、
「わー。純さんて逞しいわー。頼もしいわー。どこまでもついて行きたい。」
と言って身を寄せてきました。正直言って私はこういう風に女性と歩くのははじめてでした。でも何か自分が本当に男らしくなったような気分がしてきました。
   ☆   ☆   ☆
約束の土曜日になりました。
私はサングラスに髪形はオールバックにし、ギンギラのヤクザっぽい身なりで彼女の家へ行きました。彼女は私を見ると、
「あっ。純さんですね。私のためにわざわざヤクザっぽい格好をしてきてくれたんですね。ありがとう。どうぞあがって。」
私は何も言わずズンズン上がるといきなり彼女の腕を後ろにねじ上げ、
「おい。金を出せ。」
「出さないときれいなお顔に傷がつくぜ。」
と、ポケットから取り出したナイフで彼女の頬をぴちゃぴちゃ叩きました。
「お、お金はありません。」
彼女は震える声で言います。
「そんなことはねえだろ。キャッシュカードと、暗証番号を教えろ。」
「お金はそんなにありません。それに大切な人との結婚資金なんです。」
私はピシリと容赦なく彼女の頬を平手打ちしました。
「そんな事俺の知ったことじゃねえ。俺は今、指名手配で追われているんだ。当分ここに住まわせてもらうぜ。」
と、ドスのきいた声で言いました。
「おめえは当分かりの女房ってとこだな。」
私は床にあった一本鞭を拾い上げると威嚇するようにピシリと床をたたき、
「おい。俺は腹が減っているんだ。何か作りやがれ。」
と恫喝的な口調で怒鳴りつけました。彼女は、
「は、はい。」
と言って台所へ行き、おかずの野菜をトントン切りだしました。私はそっと背後から忍び寄って、両脇から手を通していきなり彼女の胸をムンズとつかみ、荒々しく揉み始めました。彼女は、
「ああー。」
と言って、包丁の動きを止めました。刃物を扱っているので集中できずに手がすべる危険を恐れたからでしょう。
「ふふ。料理を続けるんだ。」
私は胸をジワジワと揉みつづけながら命じると彼女は、
「は、はい。」
と言って、「あっ。あっ。」と、時々うめきながら、時々仕事の手が止まりそうになりながらも苦しげに料理を続けました。私は片方の手でスカートをたくし上げ、手をそろそろ這い入れて、女の部分にピッタリとあてがいました。彼女は、「ああー。」と言って、脚をピッタリ閉じ、くなくなと倒れそうになりました。
「料理を続けるんだ。」
と叱りつけて、立たせたままにし、スカートの中に入れた手を気味の悪い節足動物が這いまわっているような運動に似せて怖がらせながら、彼女のピッチリ閉じた太腿や尻などの感触を思う存分楽しみました。彼女が耐え切れなくなり、
「ああー。」
と言って手を止めそうになると刺激を一時止め、
「料理をつづけるんだ。」
と命じました。私はだんだん興奮してきて、
「一度これがやってみたかったんだ。」
と息を荒くして言いました。
料理ができたので彼女は恐る恐るそれをテーブルにのせました。私は遠慮なく食卓に着くと、
「うまい。うまい。」
と言いながらバクバク食べました。立っている彼女に、
「おい。お前も座りな。」
と向き合わせに座らせました。料理は二人分ありましたが私は彼女に分けてやらなかったので、彼女は一人でポツンとしています。
食事がすんでタバコを一服すると、おびえている彼女に、
「素っ裸になりな。」
と命じました。彼女は、
「え。」
と、聞き漏らしたコトバをもう一度たずねるように小さく言ったので私は彼女に怒鳴りつけるように大きく、
「素っ裸になれ、と言ってるんだ。女を人質にしたら逃げられないようにするために素っ裸にするのは常識だろう。」
と言って、鞭でピシリと床を叩いて威嚇しました。
「ゆ、許して。それだれは。」
おびえる彼女のブラウスの胸元を掴んで遠慮なくピシリと頬を平手打ちし、ナイフを頬にピシャピシャ当ててから、ブラウスの胸元に刃をあて、
「手間を取らすんじゃねえ。脱がねえんなら、引き裂くまでだぜ。」
と脅すと彼女は、か細い声で、
「はい。」
と言って、服を脱ぎだしました。女性が怯えながら一枚、一枚、服を脱いでいく姿は何とも扇情的で、ブラウスから、スカート、ブラジャーへと、覆いが自らの手で抜き取られていきます。最後の一枚になると彼女は、
「お願い。これだけは許して。」
と哀願しますが、私は彼女の頬をピシリと平手打ちし、艶やかな髪を荒々しくムズと掴み、「手間を取らせるんじゃねえ。脱がねえんなら、髪を切っちまうぞ。」
とナイフの峰を、掴んだ髪にあてがいました。彼女はあきらめて最後の一枚をためらいがちに脱ぎ下ろしました。
脱ぎ終えると彼女は、くなくなと屈み込んでしまいました。彼女は見られないように、胸と秘部をピッタリ押さえています。私は彼女の前に立つと威嚇的にムチをピチピチ体にあてて、
「俺は女にゃ恨み骨髄なんだ。俺がこうなっちまったのも女に騙されたのがもとなんだ。女なんて男を騙すことしか考えてねえ性悪な動物だ。お前だってそうだろう。たっぷり折檻してやるから楽しみにしてろ。」
と吐き捨てるように言いいました。
「こ、こわいわ。」
とおびえて震えている彼女をムチでピシリと床を叩いて威嚇しながらテーブルまで歩かせました。
「そら。その上にのりな。」
「の、のせてどうしようというのです。」
と彼女は胸と秘部を手で覆いながら聞き返しました。
「別にどうもしねえよ。裸の女がテーブルの上にのっちゃいけねえって法はねえだろ。とっとと載りな。」
言われて彼女は恐る恐るテーブルに載って、さっきと同じように胸と秘部をピッタリ手で隠しながら立て膝でじっと屈辱に耐えています。
「どうだ。料理を載せるテーブルの上に素っ裸で載ってる気分は。うれしいか。」
「み、みじめだわ。は、恥ずかしいわ。」
「ほら。手を後ろに回して組みな。そして踏ん張ってウンコする格好するんだ。」
彼女は、「えっ。」と驚きの声を上げた後、悲しげな声で、
「お、お願い。そんなことだけは。許して。」
なかなか行動に移せない彼女の尻をピシャリと平手打ちして、
「ほら。そんなに見られたくねえなら恥ずかしい所はちゃんと隠させてやるから。」
と言って、私は彼女の両手をグイと後ろで握らせて、花のいけてあった花瓶を彼女の秘部の前に置き、両膝をグイと力いっぱい開きました。秘所は花瓶で隠されていて、かろうじて見えませんが、それは全裸以上に逆説的なエロスを生み出しています。
「あ、ああ。みじめだわ。こんな姿、死にたいほどみじめだわ。」
何とか隠そうと、花瓶にくっつくほどに女の部分を密着させて尻を蒟蒻のようにフルフル震わせています。
「ふ。熱烈に寄りつかれて、花瓶が赤くなって火照っているぜ。」
「い、いや。」
と彼女は羞恥心から激しく首を振りました。
「まるで、ガマガエルだな。でっかい尻で踏ん張って。大和撫子は恥じらいの心が無くちゃいけねえぜ。」
などと言って揶揄すると、
「お、お願い。も、もう許して。」
と訴える彼女を無視して、彼女の肩に陶器の皿をのせました。
「な、何をするの?」
と言う彼女を無視して、
「いいか。落とすなよ。落としたら皿がガッシャーンだぜ。10分我慢できたらおろしてやる。」
そう言って私は身動きが取れないのをいいことに両手を後ろで組んでいるために、あらわになっている彼女の両方の乳首を引っ張りました。彼女は眉を寄せ、
「ああー。」
と、苦しげな声を出しながらプルプル体を小刻みに震わせながらも皿を落とさないよう、必死で背筋を伸ばして体を保っています。彼女は身動きの取れない不自由な体を弄ばれながらも10分耐え抜きました。私が不満そうに10分経ったことを伝えると彼女は安心したようにほっと一息つきました。
「ふん。このままこのテーブルに縛りつけて女体盛り、をするってのも面白いけれど勘弁してやらあ。ほら。降りな。」
と言って肩の上の皿を下ろしました。彼女は秘所を押さえながらテーブルを降りると床にうずくまりました。
「ほら。運動して腹が減っただろう。エサをやるから四つん這いになりな。」
躊躇している様子が少しでもみられると、私はムチでピシャリと床をたたいて威嚇しました。彼女はやむを得ず、観念して犬のように四つん這いになりました。私は彼女の前に皿をおいて、イヌにエサをやるように牛乳をそれに注ぎました。
「ほら。イヌのように手を使わずに舌でペチャペチャ舐めな。」
言われて彼女は美しい長い黒髪を床に散しながら、イヌのように舌を出して皿の中の牛乳を掬っています。
「自分が作ったゴーカな料理にはありつけず、イヌのような格好で牛乳一杯とはみじめなもんだな。」
と私は惨めな姿の彼女を揶揄しました。
「ほら。もっとイヌらしく足を開きな。」
と言うと彼女は命令に素直に従って少し足を開きました。一瞬私は、無言で四つん這いで牛乳をすくっている彼女が本当に美しい雌犬になったような錯覚におちいりました。
「さあて。そろそろ拷問にかかるとするか。」
と言って彼女の両手を掴んでグイと後ろにねじ上げ、高手小手に縛り上げようとすると彼女は、
「な、なぜ私を拷問するのですか?」
と激しく聞き返しました。私はフンと不満げな表情のまま、答えようとせず、両手を背後に回し、手首を縛り上げてから縄のあまりを前へ廻し、豊かで形のいい乳房の上下を二巻三巻、強く締め上げてから彼女にさめた視線を向け、
「お前もどうせ男をダマしたことがあるんだろう。」
と言って彼女の顎を掴んでグイと上げました。
「い、いえ。そんなことありません。」
彼女は悲しそうな視線をそらして否定します。
「フン。嘘をつくな。女なんて心の中じゃあ、男をいいように利用しようとしか考えてないんだ。特にお前のような、小奇麗な女はな。だから本心を吐かすのよ。白状するまであらゆる方法で責めてやる。」
彼女はイヤイヤをするように激しく首を振りました。
「お前も気の強い女だ。だがどこまで耐えられるかな。ふふふ。」
私は後ろ手縛りの縄尻のあまりを天井の梁に取り付けられた滑車に通してグイグイ引っ張って彼女を立たせ、縄を固定し彼女を立ち縛りにすると、両足首をそれぞれ縄で縛り、グイと無理やり引っ張って脚を開かせました。そして股の間に椅子を置いて、その上に胴の太い蝋燭を立て、それに点火しました。炎は女の肌の最も弱い所へ向いています。黙々と休むことなく垂直に吹き上げるように放射されつづける炎の熱は、炙るように女の柔肌を過熱しつづけます。
彼女は、「あっ。」「あっ。」と、叫び声を上げつま先立ちになり、
「あついー。」
と言って炎から逃げようと必死で腰を引いています。彼女は下肢からつづく尻をプルプル震わせて、ポロポロ涙をこぼしながら、
「ゆ、許してください。」
と、哀しげな目を私に向けてひたすら哀れみを乞いつづけます。
彼女の身をよじっている苦しみの姿をみていると、私の中に加虐的な欲情が起こっているのに気づかされました。不思議にも残酷な気持ちはありませんでした。つま先立ちのため、ただでさえ長い脚がスラリと強調され、そのピクピク小刻みに震えているしなやかな脚からつづく均整のとれた体、悲哀、苦悩の表情、そのすべてが無上の「美」に見えてきたのです。加虐的行為の観照者とはなり得ても、行為者にはなり得ない、という私の確信がゆらいだのを私は感じました。彼女のあまりにも美しい悪魔的感性が、私の中にあった小さな加虐心を増幅させ、膨張させてしまったのでしょう。しばし茫然と我を忘れて、みていた私を現実が引き戻しました。彼女は火責めの熱さ、に耐えきれなくなって、とうとう恥を忘れ、生理的な手段で消火活動を行いだしました。ねらいを定めて放出された流水によって炎は消されましたが、一度開放された水門は閉じる抵抗力をもてず、消火後も虚しく、みじめに椅子から床へと水滴を滴らせています。それは彼女の心境の涙のようにもみえました。私は蝋燭の載せてある椅子をとりのぞき両方の足首の縛めも解きました。彼女はグッタリと自失したようにうなだれています。
「あーあ。びちゃびちゃにしやがって。恥知らずなやつだ。」
言われても彼女は黙って俯いています。
「ふふふ。何だ。前は。つるつるじゃないか。よく見えるぜ。」
そんなヤクザっぽい揶揄をかけても私は何の違和感も感じませんでした。
「よーし。前に鏡を置いてやる。」
と言って私は等身大の鏡を持って来て、彼女の前に置くと。グッタリうなだれている彼女の顎をつかんでグイと鏡のほうに向かせ、
「みるんだ。」
と恫喝的な口調で命じました。彼女はチラと自分のみじめな裸の縛めの姿を鏡の中にみると、自失から現実に気が戻り、
「いや。恥ずかしいわ。おねがい。許して。」
と激しく身もだえします。私は長い一本鞭を持って彼女の後ろに立ち、調教師が猛獣を従わせるため威嚇するようにピシリと床をたたきました。
「ふふ。火責めにはその手があったな。じゃあ鞭打ち責めといくぜ。永遠に終わりのない鞭打ちだ。」
と脅しつけました。彼女は、
「こ、こわいわ。」
と言ってこれから受ける責めにおびえて体を縮めて全身を小刻みにプルプル震わせています。私は痛快さに心の中で笑いました。
おびえる人間を威嚇することは何と楽しいことなんだろう。
拷問者の気まぐれにおびえている人間は何と滑稽なんだろう。
そして何と悲哀の美しさの魅力があるのだろう。
私は容赦なく後ろから彼女を鞭打ちだしました。
ムチは彼女の体に絡まるように巻きついた後、先端に近づくにつれ、遠心力によって速力を増し、最後にピシリときびしい一撃を加えます。そのたび彼女は、
「ああー。」
と言って顔をのけぞらせます。彼女の肌にはどんどん線状の赤いミミズ腫れが刻まれていきます。彼女は目からポロポロ涙を流し、
「許して。許して。」
と叫びつづけます。容赦ない呵責の鞭がピシリときびしく振り下ろされると、「ああー。」と苦痛の悲鳴を上げてキリキリと舞い踊ります。拷問者の気まぐれな意志におびえて、絶えず小刻みに体を震わせて時々、拷問者の哀れみを乞う弱々しい目を向けながら耐えている姿は悩ましいほどの哀愁の美しさを醸し出しています。
だからといって手加減する気は起こりませんでした。容赦なくいじめれば、いじめるほど、彼女は魅力的に美しくなっていくのですから。
いじめることの甘美な快感の魔力に駆り立てられるように、私は憑かれたように彼女の許し乞いの叫びなど無視して、無我夢中で鞭打ちつづけました。私はもう身も心も本当の拷問者になっていました。
「止めてほしかったら言うんだ。男を騙したことがあるかどうかを。」
と言いながら私は鞭打ちつづけました。
「い、言います。言いますからどうかお許しください。」
私が鞭打ちを休めると彼女はしばらくハアハア呼吸を取り戻していました。私はもう加虐心でいっぱいでした。
「言うんだ。」
と言って尻をピシリと思いきり一打ちしました。「あっ。」と悲鳴が上がり、反射的にキュッと尻に力が入って割れ目の閉じ合わせが強まります。
「お、男の人をだましたことはあります。」
「どんな風に。」
「テレクラで呼び出しといてすっぽかしたり。世の中って女に有利に出来てますから、そういう機会はいくらでもありました。」
「よし。正直に白状したからもう鞭打ちは許してやる。」
「あ、ありがとうございます。」
すべての縛めを解くと彼女は、くたくたと床に倒れるように伏してしまいました。よほどこの責めはつらくて、疲れ果ててしまったたのでしょう。彼女は眠ってしまったかのごとく、目をつぶって微動だにしません。私はもう、責め、も、演技も、もうこれで終わりだなと思いました。彼女の無言の休息も、もう終わりにしてほしいとの意志表示に違いありません。憑かれたような、激しい無我夢中の、役になりきった演技が終わりになって興奮が冷めて我にかえると、弱々しい柔肌に激しい鞭打ちの跡を残して人事不省のように黙って倒れている彼女が、あらためて、一刻も早く救急手当てをしなければならない患者のように見えてきて、私はとんでもない事をしてしまった自分に後悔しながら、あたふたしました。
「優子さん。ごめんなさい。さんざんひどい事をしちゃって。もう終わりにしましょう。」
彼女は目を閉じたまま柔らかい微笑を浮かべて、
「はい。」
と返事しました。ベッドに彼女を運ぼうと、彼女を抱き上げようとすると彼女は、
「あっ。待って。」
と言って制し、
「ダイジョーブです。起きられます。」
と言って上半身を起こしました。彼女は裸のまま、ベッドに行くとパタリと倒れ伏すと、
「ゴメンなさい。純さん。少し休ませて。」
と言って目をつぶってスヤスヤと心地よい寝息をたてています。
(4)
 私は彼女に布団をかけ、彼女の下着や服を持ってきて、ベッドの元に置きました。私は雑巾を持って来て蝋燭責めの時に濡れてしまった椅子や床を拭いて、ちらかっている縄や蝋燭を片付けて、部屋を元の状態にしました。私は椅子に腰掛けて、すまない事をしてしまったと、後悔していましたが、ほどなく彼女は目を覚ますと、いつもの快活な声で私を呼びました。
「もういいわ。純さん。ちょっと手をかしてくださらない。」
言われて行くと彼女がブラジャーのホックを後ろではめようとしているところでした。私がホックをはめると、彼女は、
「ありがとうございます。」
と言ってスカートを手にとり、片足をくぐらせました。言い知れぬ官能が私を襲いました。何故かは分りません。本来の姿にもどってしまって、もう裸がみれない未練、の、さみしさ、のせいか、イヌのようにまでして裸にしてさんざん拷問にかけていたのにもうそれは出来ず、手が届かない、今まで通りの、女性という「美」を見せつけられるだけの、くやしさ、のせいか、そんな気持ちからだろうと思います。私は元の気の小さい男にもどり、間違っても「もう一度脱いで」などと言う勇気はありません。私はあくまで彼女が求めてきた時だけ彼女の願望に応じようとの固い決意をしていました。彼女に「もう一度脱いで」と言えば、彼女は笑って私の要求に答えてくれるでしょうが、私の気の小さい性格から、とてもそんなことは言い出せません。彼女はスタスタと歩いてテーブルにつきました。拷問をうけた後とはとても思えず、さっきの疲労も、もう完全に回復して、全く何事もなかったかのようです。
「純さんも来て。」
と明るい声で言われて、私はコソコソと向かいの席につきましたが、彼女の顔を見ることも出来ないほど恥ずかしい思いで、俯いていました。手もとどかない美しい優子さんに、抱いていたいやらしい心の欲求を見られて、見下げられている様なみじめさでいっぱいでした。彼女はニコニコ笑って、
「純さん。ありがとう。モヤモヤした欲求が解消して、とてもすっきりしました。」
私は申し訳なさに耐えきれず、彼女の足元に土下座して、床に頭をつけ、
「ごめんなさい。ひどい事をしちゃって。お願いです。どうか存分にけって下さい。」
と叫びました。彼女は私の手をとって元の椅子に座らせ、朗らかな口調で、
「いいのよ。私が頼んだことじゃない。純さんが謝る理由なんてどこにもないわ。」
「で、でも、それでは僕の気がすみません。いつかのようにヒールで思いきり踏んでください。」
「そんなことできるわけないわ。純さんの性格に合わない、私の一方的な要求を一生懸命して下さったのに。お礼を言うのは私の方だわ。つかれたでしょう。」
「い、いえ。」
「私はちょっと疲れたかもしれないけど、純さんの精神的な疲れの方がずっと大きいと思うわ。お料理の味、どうでしたか。」
「お、おいしかったです。」
私は彼女の手作りの料理を食べておきながら、彼女には四つん這いにして牛乳を舐めさせてしまった事を思い出して消え入りたいほど恥ずかしい思いになりました。だからといって、彼女の作った料理を、「どうぞ食べて下さい」と言うわけにもいかず。
「優子さん。ムチの跡、大丈夫ですか。」
「ええ。二週間くらいすれば、跡形もなく元通りに消えるわ。」
「二週間もかかるんですか。」
「ええ。あのムチってけっこう痛いものよ。純さんは打たれたことがないから感覚が分らないんだわ。でも、手加減して、とも、言いにくかったし。」
「ごめんなさい。」
彼女は笑いながら、
「いいのよ。いちいち謝らなくても。」
「いえ。白状します。はじめは確かに演技だけでした。でもだんだん優子さんを本当にいじめたいという気持ちになってしまったんです。」
「それも私のせいだわ。私が純さんの心を刺激してしまったからだわ。気になさらないで。」
「ともかく僕の気がすまないんです。何か、どんな方法でもマンゾク出来るだけ僕をいじめ返してください。」
彼女は少し困った様子で天井を見ていましたが、やや経ってて、パッと顔を戻し、
「また私をいじめに来て下さる?」
「は、はい。」
「じゃあ、その時ちょっといじめちゃおうかしら。」
と言って「ふふふ」と笑いました。
「は、はい。存分になさってください。」
その後少しくつろいだ会話をしてから私は彼女の笑顔に見送られながら、彼女のアパートを出ました。
   ☆   ☆   ☆
 翌週になり再び会社勤めの生活が始まりました。先週のプレイ以来、私はずっと不安と後悔に悩みつづけました。プレイの時、私はサディストになりきって暴虐の限りを尽くしました。いくら彼女の方から望んだ事とはいえ、普通の女性なら、あんなことをしてしまっては、もう付き合いはおしまいです。彼女は私が意志を持って彼女をいじめることを望み、私は私の本能に従った意志で彼女をいじめました。彼女も私がためらいを捨てた時の私の姿を彼女なりにイメージしていたはずです。はたして私が本能のままとった行動が彼女の期待に合っていたのか、それとも期待とはぜんぜん違って幻滅してしまったのか、私には知る由もありません。彼女は暴虐的になぶられたい欲求はありながらも、そんな事が出来ない私だからこそ、私に好意を持ってくれているのです。それに私自身、女性に対してあんな乱暴を平気で行える人間であったことに気づかされて、ずっと自己嫌悪に陥っていました。また彼女もプレイの時は被虐の快感に酔っていたでしょうが、プレイが終わってさめてしまった後に、あれほどの暴力的陵辱がはたして心地よい快感として思い出されるでしょうか。
 私は我を忘れてサディズムの快感を貪り尽くしてしまいましたが、嵐が去って平常の気持ちに戻った時には、彼女には痛々しい鞭の跡だけしか残らなかったのではないでしょうか。そしてその鞭の跡を見るたびに私に対する幻滅と嫌悪感が起こったのではないでしょうか。こんな考えは気の小さい私だからこそ起こってしまう取り越し苦労の気があるかもしれませんが、いったい虐められっぱなしで何とも思わない人間などいるでしょうか。彼女も性的には被虐心が強くても、それから離れれば喜怒哀楽の感情は他の人と何ら変わりのない良識的な一人の女性です。私は本能のまま行動してしまった事を悔やみました。何より貸し借りの関係がついていないことがすっきりしませんでした。今は彼女を一方的にいじめてしまった、借り、の立場ですので今度のプレイでは彼女に十分に満足できるだけ、徹底的に虐められて、ともかく早く借りを返したい気持ちでいっぱいでした。
それと彼女の本心を知りたい気持ちでいっぱいでした。
会社での昼休み、彼女に誘われて社外のビルの喫茶店に入ってテーブルに着くと私は人目も構わず土下座して、
「ごめんなさい。この前はひどいことをしちゃって。この次はうんと私を気の済むまでいじめて下さい。」
と床に頭をこすりつけて謝りました。彼女は驚いて私の手をとって立たせ、テーブルに着かせました。私が心の内をすべて語ると彼女はクスクス笑って、
「純さん。考えすぎよ。純さんの考え、全部はずれてるわ。鞭の跡を見る度に私は本当に拷問を受けたんだと実感できてうれしくて仕方なかったわ。」
私は彼女は小さいことにこだわらないおおらかな性格なんだと思い知らされました。そして自分を基準にして人を見ていたあさはかさに気づかされました。
「でもそういう風に謝ってしまう性格だから純さんが好き、ということだけはあたってるわ。」
私は彼女に見捨てられずにすんだ事がうれしくてほっとしました。私は強気の口調で、
「とにかく今度は僕を気の済むまでいじめて下さい。優子さんが何と言おうと僕の気持ちがすっきりしないんです。それに次の時は僕をいじめると約束したじゃありませんか。」
と、問い詰めるように言いました。彼女はしばし迷っていましたが、ポソッと、
「今週もいじめられる事を楽しみにしていたんだけど・・・そこまで言うなら仕方がないわ。」
と、あっさりした口調で言いました。
   ☆   ☆   ☆

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M嬢の物語 (小説)(3)

2020-07-07 07:38:29 | 小説
 約束の土曜になり、私は彼女のアパートへ行きました。今日はうんと彼女にじめられて、借り、を返せると思うと晴れ晴れした気持ちになります。どうせ弱々しい女のすること、しかも彼女はやさしい性格で、根っからのMで、主体的にキビしい拷問など出来ず、竦んでしまって、ママゴトのような責めになるだろうと思うと、何かくすぐったさを感じました。私はあらかじめ、責め、のメニューを考えておきました。彼女が同情して、「もういいわ。」と言っても、「いえ。これだけでは私の気がすみません。もっとつづけて下さい。」と言って、つづけさせ、十分、貸し借り、を清算できたと思うまで私がリードして彼女に責めさせようと思いました。私は責めに耐え抜く雄々しさを示せることにうれしさも感じていました。私のイメージは天体を支えるヘラクレス、岩盤につながれたプロメテウス、権力者の拷問に耐え抜く殉教者などの勇者の姿でした。私もその勇者の一人に加われると思うと何か心地よい気持ちでした。
 しかし現実はそれとはかけ離れたものになってしまいました。
チャイムを押すと彼女の明るい声が返ってきて、笑顔で私を向かい入れてくれました。彼女は何かウキウキした様子です。彼女はおおらかで、私と違い積極的な強い意志を持った性格です。そういえば以前、私の手をヒールで踏みつけたり、私を無視して困らせてみたりと、イタズラな面も持っています。今まで彼女は、ずっとMの役だったので、彼女のSなど想像すらしていませんでしたが、人間とはそんな単純なものであるはずがありません。彼女がSの役になった時、はたしてどう変わるのか、それが全くわからないことに私は少し不安を感じ出しました。彼女はずっとMの役ばかりやって、Sの役はやらなかっただけで、それはSが出来ないという証明にはなりません。私は彼女がSの立場になった時、どうなるかは全く考えてもみなかった、というより、私の勝手なイメージを作り上げてしまっていたことに気づきました。もしかすると彼女のこだわりのない積極的な性格からすると、わりとSもかなり平気で出来るのではないか、という不安が起こってきました。食事の最中も、
「今日は私が純さんをいじめる番ね。」
と、屈託ない口調で笑いながら言います。そんな笑顔の彼女を見ると、私の不安はいっそう募っていき、握っていたナイフとフォークはピクピク震えてきました。相手が絶対的に弱いものだという前提が崩れると、持ち前の臆病な心がフツフツと起こってきて、私は射竦められた小禽のようにおびえの気持ちでいっぱいになってしまいました。食事がおわると彼女は、
「それじゃあ責めさせてもらおうかしら」
と言って、彼女は、
「ふふふ」
と笑いました。私は、
「はい」
と緊張して答えました。彼女に、
「じゃあ服を脱いで」
と言われて私は服を脱いでいきました。黒のビキニのサポーターパンツ一枚になるとそれ以上脱ぐことにためらいを感じて、私は隆起した、その部分を両手で必死におさえていました。
「わあ。黒のビキニだわ。黒のビキニって男の人がもっともセックスアピールする時のだわ。私のために準備してくれたのね。うれしい」
彼女は私をじっと見ながら続けます。
「でもそれも脱いでくれなきゃ裸とは言えないわ。脱いで」
私は逆の立場に立たされて裸になって、見られることのつらさを知りました。
「こ、これは許してください」
私は彼女に哀願しました。
「どうして?」
「は、恥ずかしいんです」
「女が裸をみられることを恥ずかしがるのは分るけど男の人は裸になるのを恥ずかしがったりはしないわ。わけを聞かせて」
彼女は予想していたのとは違う、強気な命令的な口調で言いました。
「い、言えません。許してください」
私が困惑していると彼女はスッと立ち上がって、私の脱いだ服を取り上げてしまいました。
「女の人の裸は美しいですけど男の裸は美しくなくて、みっともないだけです」
「でも約束を守るってこと大事なことじゃないかしら。私だって純さんにさんざんはずかしめられたわ」
彼女はちょっと考えた後、言いました。
「わかったわ。じゃあ、しっかり隠せるものをあげるわ。だから脱いで」
「あ、ありがとうございます」
私は後ろを向いてビキニパンツを脱ぎました。
「こっちを向いて」
と言われて私は、
「はい」
と答え、隆起した部分を必死で押さえていました。彼女は「あっ」という私にかまわずビキニパンツを取り上げてしまいました。「ふふ」と彼女は笑っています。
「どうしてそんなに恥ずかしがるの」
「そ、それは、あこがれの優子さんだからです」
「お世辞はいいわ」
「い、いじめないで下さい」
「何をされてもいいと言ったのに何でそんなにいやがるの」
「そ、それは。サポーターは履いたままで、ムチ打たれたりとか、竹で叩かれたり、とか男にふさわしい責めだと思ったからです」
「そういう早とちりしちゃうと、長い人生で人に騙されちゃうわよ。世の中には悪い人がいっぱいいるんだから」
「ずっとこうしているのもいいわね。そうしようかしら」
「さ、さっきビキニを脱ぐかわりに覆うものをかしてくださると言ったじゃないですか」
「そうね。約束は約束ね」
と言って彼女はポイと私に手に隠していたものを投げました。
「あっ」
と私は声をだしました。それは女のパンティーでした。優子さんのでしょう。
「こ、これはパンティーじゃありませんか」
「そうよ。私のパンティーよ。それは覆い隠せるものじゃなくって?」
私が戸惑っていると、
「履きたくないのならいいわよ。どっちにする」
私は迷ったあげく、裸でいるよりは、と、後ろを向いてソロソロとそれを身につけました。男が女のパンティーを履くなんてみっともないものです。優子さんは私をみじめのどん底に落とそうとしているのだ。優子さんはSの性的嗜好も、かなり強くもっているのだ、と鈍感な私は今になってやっと気づきました。履いて私は「あっ」と叫びました。それは以前優子さんに履かせたビキニのようにお尻が半分近くみえてしまうようなものだったからです。だからといって一度履いたものを脱ぐことも出来にくいものです。私は隆起した部分を必死に手で押さえていました。
「純さん。後ろを向いて」
と言われて、後ろを向くと彼女はグイと手を後ろに回し、縛り上げました。
「さあ。立って。部屋を一周しましょう」
私はおそるおそる立ち、彼女に縄尻をとられ、部屋を一回りしました。女のパンティーを履き、縄尻を取られて歩かされるなんてみっともないものです。
部屋をまわり終わると彼女は縄尻を滑車に通し、私を立ち縛りにしました。
彼女は椅子に座って困惑している私を楽しそうに見つめています。
「どう。女の子になった気分は。」
「誰にも言わないわ。純さんも心も裸になっちゃいなさいよ。いい子でいると疲れるわよ。」
「女の下着をつけて興奮するなんて、純さんて本当は女装趣味があるんでしょう。」
私が膝をモジつかせていると彼女はそんな揶揄の言葉を投げかけます。私には女装趣味はありません。私はデパートでも女性の下着売り場の前を通っただけで興奮してしまうくらい女性の下着に対する拝物的な欲求を強く持っています。しかしそれはあくまで女性の付属物、代替物として惹かれるのです。私には女装趣味の男の心理が分かりません。分からないというより嫌悪を感じつづけていました。私には男性的なたくましさが生来ないため、女を征服する対象とはみなせず、女性は崇拝の対象でした。崇拝が昂じて崇拝の対象である女そのものになりたいという女性化願望は当然のごとく起こりました。指をくわえて美を崇めているのもいいが、美そのものになれたらどんなに幸せなことか。自慰自涜する時、私の精神は完全に女になっています。しかしこれはあくまで想像の中だけでの性転換であって、それは醜悪なものとは思いません。しかし女の下着を実際に履くなどという事は醜悪で、嫌悪感しか感じませんでした。もし私が女のような美しい容貌で女の下着を履いてもグロテスクでないなら私は女装趣味を受け入れられたかもしれません。いや、きっとそうしたと思います。しかし私の顔はとてもそんな女装姿が絵になるような美形ではなく、女装などしたらグロテスクなだけです。物事をすべて、美、という価値観から見る私にはとても出来るものではありませんでした。男の女装趣味は、それが似合って、美になるような、まれな柔和な優男がすればいいのであって、そのような容色に生まれつかなかった男は想像の中でだけ女になって楽しめばいいのだ、と思っていました。美形でないのに自分の女性化願望にまかせて女装するような男は、美、という観念が欠けているのだ、と軽蔑していました。
しかし嫌悪していたはずの女装が彼女の巧妙な言葉の誘導で少しずつ揺らぎ始めました。
彼女は後ろ手に縛められて、立っている私の背後から手を廻して胸にピッタリあてがってゆっくりじらすように揉みながら、
「どう。女の子になった気分は。」
とか、
「誰にも言わないわ。純さんて女装趣味があるんでしょ。誰にも言わないから本心を白状しちゃいなさいよ。」
などと悪魔の誘惑を耳元でささやきます。私は必死に首を振って、
「そ、そんなものありません。」
「じゃあ、どうしてパンティーを履いて興奮しているの。むくむくよ。ほら。」
と言って隆起した部分に手をあてがいました。私は、
「ああー。」
と声をあげ、歯をカチカチ噛み鳴らして必死で耐えていましたが、彼女は面白がってますます責めを強めていきます。女性にこんな風に弄ばれれば男なら誰だって興奮してしまいます、などと言っても弁解などすればするほど猜疑心を強めてしまいます。もう何も言うまい、黙って耐えようと思って無言でうなだれていると、彼女はますます嵩にかかって、
「そう。そんなにパンティー履くのがいやなら脱ぎましょうね。無理に履かせてしまってごめんなさい。」
と言ってパンティーをさげ始めました。
「あっ。」
と私が叫び声を上げた時にはもうすでに遅く、尻が丸出しになり、私は必死でそれ以上、下げられないよう膝をより合わせました。
「どうしたの。パンティー履くのいやなんでしょ。」
彼女は空とぼけて言います。もともと責めは覚悟していた私です。
たとえ彼女の方から頼んだ事とはいえ、一方的に彼女をいじめるというのは、どうも気持ちがすっきりしない。それで、いじめた分、いじめ返されることに私は貸し借りの清算を心待ちに思っていました。しかしそのいじめは、ブリーフは、履いたままで鞭打たれたり、命令に服従したりと、男にふさわしい責めだと思っていました。そして天体を支えるヘラクレスのように責めに絶える雄々しさを憧れの女性の前で示して見せてやる、ということに、うれしささえ少なからず予期していました。しかし彼女のいじめとは予想していたものとは全然違う、心を徹底的になぶる羞恥責めです。これからどうなるのか、彼女がどんなことをするのか、自分が自分でなくなってしまうような、恐ろしさにおののいて、私は身動き出来なくなってすくんでしまいました。彼女は続けて言います。
「どうしたの。パンティー履きたくないんでしょ。」
「お、お願いです。」
「なあに。」
「パ、パンティーを・・・。」
恥ずかしくてその先を言うことが出来ないでいると、
「なあに。パンティーをどうするの。はっきり言ってくれなきゃ分からないわ。」
と言って彼女は含み笑いして、
「でも困ってる純さんて女の子みたいでかわいいわ。ずっとこうしているのもいいわね。」
などといって椅子に座って紅茶を飲み始めます。私は惨めな姿をさらしつづけることに耐えられなくなって、声を振るわせながら、
「パ、パンティーをあげてください。」
と声を震わせて言いました。すると彼女は、
「あげるってどうするの。箪笥の中のパンティーを箪笥の上に載せること。それとも誰か人にあげてっていうの。もっと分かりやすく、はっきりと具体的に言って。」
「パ、パンティーを元のように履かせてください。」
言うと彼女は、してやったりという得意顔で椅子からぴょんと飛び降り、
「わー。やっぱり純さんはパンティーを履きたいのね。やっぱり女装趣味があるんじゃない。恥ずかしくて言えなかったのね。」
と彼女は手をたたいて喜び、パンティーを引き上げました。強制的に言わさせられたとはいえ、惨めなものです。ガックリうなだれていた私の後ろに彼女は廻って、
「ふふふ。純さんが女装趣味があるなんて知らなかったわ。純さんは電車の中で痴漢にあっている女の子よ。本当はこうやって女の子みたいにいじめられたいんでしょ。正直に本心を白状しちゃいなさいよ。」
と言って、痴漢のようにパンティーの辺りを、誘惑するような手つきで巧みに手を這わせたり、胸を揉んだり乳首をキュとつまんだりします。彼女の巧みな誘惑の愛撫が私の心に悪魔の官能を起こし、私の男の部分はびんびんに隆起していました。私は歯をカチカチ噛み鳴らしながら、首を振り、必死で耐えながら、
「優子さん。お願いです。やめてください。」
と首を振りながら叫びました。しかし、彼女は聞く耳を持たず、巧みな愛撫を続けながら、
「純さん。何をしてもいいと言ったじゃない。」
と、うそぶきます。
「ム、ムチ打ってください。好きなだけムチ打ってください。そ、そのかわり、こんなことだけはやめてください。」
と言いますが、彼女は嵩にかかった口調で、
「あーら。何をしてもいい、と言って、条件なんかつけなかったじゃない。約束を守るってこと大切なことじゃないかしら。」
と、突っぱねます。
「純さんが本心を白状するまでずっと続けるわ。」
と言って巧みな愛撫をつづけます。彼女は時々、私の耳元に口を近づけて、
「誰にも言わないわよ。」
とか、
「白状すると楽になるわよ。」
などと悪魔のささやきかけをします。私の頭は彼女の誘惑の愛撫が起こす悪魔の官能でいっぱいで、冷静に考える思考力も麻痺していました。私はもうただ、彼女のしている、じらし責めから逃れたい一心で、もう自分が自分でなくなってもかまわない、という自暴自棄的な気持ちになって、彼女に屈する覚悟をしました。
「わ、わかりました。優子さん。言います。言いますから、どうかもう許してください。」
「そう。じゃ、言って。でもウソっぽかったらダメよ。」
と言って、手の動きを止めました。私には女装趣味はありませんでしたし、女性化願望も精神的なものでした。しかし今は違っています。これは彼女の誘導尋問ですが、もうどうでもよくなっていました。私は検察官の尋問を受けている容疑者がラクになりたさにウソの自白をしてしまう心理をつくづく実感しました。
「私は優子さんの言うとおり、女装趣味があります。一人でいる時は女の下着をつけて興奮していました。私は身も心も女の子になりたいと、ずっと思っていました。夢を叶えて下さった優子さんに感謝しています。どうか、私を女の子のように責めてください。」
と言うと彼女は手をたたいて笑い、
「わー。やっぱりそうだったのね。思ってた通りだったわ。わかったわ。純さんを女の子のようにやさしく虐めてあげるわ。」
と言って彼女は私にアイシャドーをしたり、足に赤いペディキュアをつけたりします。無理に言わせられたとはいえ、彼女の責めに負けてしまった以上、もう恥も体裁もどうでもよくなり、私はもう本当に彼女に女の子のように責められたい、という願望がふつふつとわいてきました。
彼女は再び、私の後ろに廻って痴漢のように体をもてあそび出しました。
「優子さん。」
「なあに。」
「そんなお手柔らかなのじゃなく、もっと徹底的に、めちゃくちゃにして下さい。」
と言うと彼女は「ふふふ。」と笑い、
「わかったわ。じゃ、ちょっと待ってて。」
と言って隣の部屋へ行きました。しばしして戻ってきた彼女を見てびっくりしました。彼女は本格的な黒い皮の女王様ルックで戻ってきたからです。Tバックの、露出度のきわめて激しいハイレグで、一見するときわめて男の欲情をそそるセクシーな姿ですが、ピッチリと体に密着して、わずかに秘部だけ覆っているだけのその衣装は、丈夫な皮の光沢が、厳重な鎧のような感じを呈し、男の侵入を許さない絶対者のような威厳で無言のうちに男を威嚇しているように見えます。目には仮面舞踏会の時するようなアイマスクをし、手にはこの前私がムチ打った一本鞭を握っています。アイマスクで表情が見えないため、彼女が何を考えているのかわからず、それがいっそう恐怖心をつのらせます。彼女はMなのに、こういう女王様ルックも持っているとはどういうことなのでしょうか。彼女もMなだけではなく、男を奴隷にしていじめたいという女王様願望も有るのかもしれません。彼女は、「ふふふ。」と笑い、私の後ろに回ってピシリと床をたたいて威嚇しました。私は恐怖に身をすくませました。彼女は一本鞭で遠慮なく私をムチ打ち出しました。私は激痛のため、見栄も外聞も忘れ、
「ああー。」
と苦痛の叫びを上げ、タップダンスのように足踏みしながら首を激しく振りました。ムチは痛いものだとは思っていましたが、一本鞭がこれほど痛いものだとは知りませんでした。しかし私は最前までは、これをこそ望んでいたのです。前回、彼女を徹底的にいじめてしまった、一方的な借りを、逆に彼女に徹底的にいじめられることによって返せることを心待ちにしていたのです。私はさらに、それを口実に彼女に男らしさを示せるまたとない機械になることにワクワクさえしていました。どんなに容赦なく鞭打たれ続けても黙って耐え続ける姿を見せることによって、一見小心で臆病に見えても、どんな苦難にも耐えぬける強い精神力も持っていることを誇示できるまたとない機会だと思っていたのです。私のイメージは、黒いビキニのサポーター一枚で、天体を支えるヘラクレスのように、黙々と責めに耐え抜く勇者の姿でした。そして、とうとう彼女が根を上げない私に根負けし、同情し、「純さん。痛かったでしょう。ごめんなさい。もうはずします。」と言って縛めを解いても私は平然と何も無かったように、「いえ。大丈夫です。」と答える。
そんなシナリオを無意識のうちに描いていました。
しかし現実は予想とはかけ離れた惨めなものになってしまいました。私は彼女の巧みな愛撫責めに屈してしまいました。一度敗北を認めた以上、もう元へは戻せません。一度屈してしまった後に撤回を求めるなど女々しい悪あがきをする人間だと侮蔑の目で見られるだけです。むしろ一度屈してしまった以上、約束通り行動する方が、せめてもいさぎよさ、を示せます。それにもう私の頭は混乱して、捨て鉢な気持ちも加わって、誰にも知られないことをいいことに心身ともに女の子になりきって、その喜びを味わいつくしたい気持ちでいっぱいになっていました。私は女物のパンティーを履き、身も心も女になりきって、体を震わせながら、
「ああ。優子さん。お願いです。許してください。」
と、泣きながら何度も憐れみを乞いつづけました。私は嬲られる女の心になりきって、何度も哀れみを乞う弱々しい目を向けました。しかし彼女は無言で容赦なくムチ打ち続けるだけなので、私は耐え切れなくなって、
「優子さん。何か言ってください。優子さんが何も言ってくれないとこわいんです。」
と、泣き叫びながら言いました。すると彼女の休む暇なく続いていた呵責の鞭はスッと止まりました。彼女は前に廻って泣き崩れた私の顔を黙って見詰めました。節穴のように小さくくりぬかれたアイマスクの覗き穴から見える表情のわからない不気味な目はいいようのない恐怖感を放っています。彼女がムチ打ちを止めてくれたことに対し、ペコペコ頭を下げ、涙を流しながら、
「あ、ありがとうございます。お許しくださって。」
と言うと、彼女は、「ふふふ。」と笑い、私の頬をやさしく撫でて、
「ふふ。弱虫ちゃんね。」
と言って椅子に座って膝組みし、タバコを取り出して一服しました。彼女はパンティーを履いて恐怖におびえている惨めな姿の私をさも楽しそうに眺めまわしています。黒い女王様ルックに身を包んで、厳しい拷問をしたことなど忘れているかの様なくつろいだ様子の彼女を見ていると、彼女が本格的な女王様のように見えてきます。もしかすると彼女はMだけでなく、強いS、女王様願望の欲求も持っているのかもしれません。しかし彼女の本心を知る由はありません。しかし私はパンティー一枚で彼女の前に惨めにうなだれている自分を思っても抵抗を感じませんでした。気の小さい私には彼女をいじめるより、こうやって虐められている方が合っているんだと何かほっとした気持ちさえありました。しばし黙ってみじめな姿の私を楽しげに見て、タバコを吸いながら一休止していた彼女は、タバコを揉み消すと、ついと立ち上がり、
「さあ。一休みしたからまた始めましょう。」
と、さも当然のように非情に言いました。私はギョッとして、
「ま、まだつづけるんですか。」
と、驚きと恐怖で聞き返しましたが、彼女はそっけない口調で、
「そうよ。当然じゃない。」
と言って私の後ろに廻りました。私は恐怖に耐え切れず、
「お、お願いです。優子さん。どうか鞭打ちだけは、これ以上はお許しください。うんと満足いくまでみじめにして下さい。ですがムチ打ちだけはどうか許してください。」
そう強く訴える私を無視して彼女は私の後ろから容赦なくムチ打ち出しました。激しい痛みに加え、いつ終わりになるのかわらない恐怖感で私はバタバタ足を踏み鳴らし、泣き叫びながら許しを乞う叫びをつづけました。が、私が足をバタバタ踏み鳴らすので、彼女は、「ちょっとこれが邪魔ね。」
と言って私の足元に屈み込んで両足首を縛り、動けないようにして再び遠慮容赦なくムチ打ちだしました。

かなりの鞭打ちがつづいた後、情けをかけてくれたのか、一休みとろうと思ったのか、宙を飛び交っていた鞭の動きが止まりました。私が恐怖におびえる弱々しい視線を彼女に向けると、彼女は私の顎をグイとつかみ、彼女の方に振り向かせ、
「ふふ。純さん。私、本当は純さんをこうして奴隷にしたかったの。私はMの願望が強いけど、純さんを見た時からこうして純さんをいじめ抜いて従わせたいと思ってたの。これから一生、私の奴隷として従うなら許してあげるわ。どう?」
「は、はい。」
私は涙の中に答えました。
「これからは優子さん、じゃなく、優子女王様と呼んで、私の言う事は何でも聞くのよ。」「は、はい。」
私が弱々しく答えると彼女は私の頬をピシャリと平手打ちし、
「はい、じゃなく、はい。優子女王様でしょ。」
と、厳しく叱りつけます。
「はい。優子女王様。」
と私は弱々しく言いました。
「じゃあ、ちゃんと今、奴隷になる宣言をして。そうしたら縄を解いてあげるわ。」
「な、何と言えばいいのでしょうか。優子女王様。」
「それは自分で考えて。それくらい自分で考えられるでしょ。」
私はしばし考えた後、恐る恐る口を開いて奴隷の宣言のコトバを言いました。
「私はこれから一生、優子女王様の忠実な奴隷として、優子女王様の言う事にはすべて従います。」
彼女は、
「上出来。上出来。じゃ、縄を解いてあげるわ。」
と言って、足首と手首の縛めを解きました。私はムチ打ちの疲れからクナクナと力なく座り込んでしまいました。私は少し休みたいと思いましたが、彼女は縄のついた首輪を私の首にはめ、
「さあ。四つん這いになって。」
と命令します。私が犬のように四つん這いになると、
「純さんは犬よ。お散歩しましょうね。」
とムチで尻を撫でながら促します。私は縄尻を取られたまま、四つん這いで部屋を一周しました。彼女は四つん這いになっている私の背中にドンとのると、
「ふふふ。来週もまた来るのよ。たっぷり虐めてあげるわ。」
と言って、首輪の縄をグイと引きました。その後、犬のように皿に盛られた料理を四つん這いのまま食べたり、彼女の命令に従って、足指をぺろぺろ舐めたりと、さんざんみじめな目にあいました。
   ☆   ☆   ☆
 翌週になり私は寂しい思いで会社に出勤しました。もともと彼女のような明るい性格の、美しい女性を、無口で内気な性格の私が自由にいじめる何ていう事は分不相応な夢のような事だという引っかかりは持っていました。彼女が計算家で、まんまと彼女の計画にかかってしまったことは確かにさびしい事でした。しかしこうなる事が私にはふさわしいのだという思いもありました。私はフワフワした夢から覚めて現実へはっきり戻れたことに気が休まる思いでした。それに私は彼女の奴隷になっても悔いはありません。私は彼女にだまされたわけですが、彼女は根本的には真面目で明るい、魅力的な女性なのです。私は彼女が好きで、たとえ奴隷になっても彼女と関係を持てることが十分嬉しいのです。ただ彼女が私をどう思っているのかは、気にかかりました。彼女は私に少しでも好意を持ってくれているのだろうか。人を奴隷にして、いじめたいという気持ちに、はたして愛が少しでも在るのだろうか。彼女にとって私は便利な小間使いで、ストレスを解消できる何の愛もない単なる道具なのではないか。そう思うと寂しさを感じずにはいられませんでした。
彼女にとって私は、何の想いもない、単なる道具なのか、それともほんの少しでも私に好意を持ってくれているのか、それだけは今度会ったら勇気を出して聞いてみようと思いま
した。
   ☆   ☆   ☆
 約束の土曜になり私は陰鬱な気持ちで彼女のアパートへ行きました。チャイムを押すと、
「あっ。純さんですね。今開けます。」
と、予想に反した明るい声が返ってきました。私はSMに関する作法というものを知らないので、いったん奴隷となった以上、対等な挨拶などというものは無く、会ったときから絶対服従するものだと思っていたのでちょっと戸惑いました。ドアが開くと、さわやかな白のブラウスにフレアースカート姿の彼女が笑顔で迎え入れてくれたので、また拍子抜けしてしまいました。私はてっきり彼女は女王様ルックで、アイマスクをしているものだと思っていました。
彼女に手を曳かれてテーブルの前まで来ると、私は恐怖心からあわてて土下座して、
「優子女王様。今日もよろしく御調教よろしくお願い致します。」
と床に頭をこすり付けんばかりにして精一杯心を込めた、恭しい口調で言いました。
こうやって心を込めて絶対服従の意思を示せば、ハードな拷問にも少しは手加減してくれる情けが入ってくれるのではと、そればかりを祈るような思いでした。
彼女は黙って私の手をとって立たせ、テーブルに向かい合わせに着きました。テーブルには手をかけて作った料理が二人分、用意されています。彼女は私を見ると、「ふふふ。」と笑い、照れくさそうに話し出しました。
「純さん。一週間いじめちゃってゴメンなさい。私、純さんを奴隷にする気なんて全く無いわ。私が純さんに絶対服従する奴隷だわ。私は大雑把な性格だから、こんなイタズラも平気でやっちゃうけど、純さんはデリケートな性格だから恐怖感におびえているだろうことは十分察しがついたわ。本当に悪い事をしちゃって、すまないな、と思っていたけど、一週間だけ辛い思いをさせて、今日一気に喜ばせてあげたいと思ったの。本当にゴメンなさい。今日はその仕返しでうんといじめて。」
そう言って彼女は立ち上がり、縄や首輪を持って来て、床に置き、着ていた服を全部脱いで丸裸になり、腰を下ろして立て膝の姿勢になると、両手を後ろに回して手首を重ね合わせ、
「さあ、縛って。そしてうんといじめてください。」
と言いました。私は彼女を力強く抱きしめて、
「ああ。優子さん。好きです。世界一好きです。」
と泣きながら大声で叫びました。

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少年と二人の女 (小説)(上)

2020-07-07 06:36:17 | 小説
少年と二人の女

夏休みになった。純は夏が好きだった。純は今年こそはクロールで泳げるようになろうと、毎日、プールに自転車で行った。海が見える市営プールである。純は平泳ぎで50mは、泳げたが、クロールでは、どうしても50m泳げなかった。純はどうしても美しいクロールで、泳げるようになりたかったのである。
大きな更衣室で海水パンツに着替えてプールサイドに出た。
昼近くに、プールから戻って、更衣室で着替えた。ここには、カーテンの仕切りのボックスも当然あるが、なかには、仕切りの外で着替える人もいる。純は恥ずかしがり屋なので、着替えは、いつもカーテンの仕切りの中でした。海水パンツ一枚になり、更衣室に出た。純は思わずドキンとした。男子更衣室の右は監視所につながっていたが、監視所から女の監視員が出てきたのだ。彼女は短いジーパンにTシャツという格好だった。更衣室では着替えている裸の男達もいる。サッと通り抜けたが、ちょっとうつむき加減で紅潮した彼女の心はわかった。男が女の更衣室を通る事は出来ない。そんな事をしたら女達は、その男を奇異の目で見るだろう。しかし逆は必ずしもいえない。男は女の裸を見てはならないが、女が男の裸を見てはならない、という事は社会通念ではない。それを利用して、彼女はさりげなく、更衣室にいる裸の男達を見ているのだろう。
「女の人にもエッチな人がいて、あの女の人は男の裸を見たがっているんだ」
敏感な純は彼女の心を瞬時に感じとった。同時に興奮して心臓がドキドキした。
純は彼女に裸を見られたい願望が起こった。

   ☆   ☆   ☆

翌日、プールへ行った時、純は、今までのようにカーテンの仕切りに入らず、更衣室のテーブルの前で上着とズボンをゆっくり脱いだ。彼女が監視室から出てきた。彼女はモップで濡れた更衣室の床を拭き出した。純はドキドキしながらランニングシャツを脱ぎ、パンツを脱いだ。彼女に丸裸を見られていると思うと、純のおちんちんは激しく勃起した。純は、ゆっくり海水パンツを履き、何事もなかったかのようにプールへ出た。

泳ぎおわって、純は更衣室に、もどった。更衣室には純しかいない。彼女はモップで更衣室の床を拭いていた。純は海水パンツを脱いで裸になって、タオルで体を拭くと、裸のまま、洗面所の洗面器で海水パンツをわざと時間をかけて洗った。彼女が近くまできた。純は、おちんちんを見られている事に興奮した。純は裸のまま海水パンツを洗いおえると、机にもどって、荷物をカバンにしまい、服を着てプールを出た。

家に戻ると純は、彼女の事が気になって気になって仕方がなくなった。彼女に裸を見られることは、非常な甘美な快感であった。

   ☆   ☆   ☆

数日後、純は胸をドキドキさせながらプールに行った。少し曇り空で雨が降りそうだったが、純にはそんな事どうでもよかった。むしろ、客が少なくなる事が嬉しかった。交差点を渡るとプールの門が閉まっていた。「本日休業」と看板が出ている。そういうば今日は特別休館日だった事を純は思い出した。

ちょっと残念に思いながら、純は踵を返して歩き出した。すると駐車場に止まっていた赤い車が純の方にやってきて真横に止まった。窓が開いて女性が顔を出した。あの女性だった。
「残念だったね。ボク」
女は笑顔で言った。純ははじめて声をかけられてドギマギした。顔は真っ赤になった。
「は、はい」
「私は水質検査のために来て、もうそれも終わったから、これから家に帰るの。ボクはこれから、どうするの」
「い、家に帰ります」
「よかったら送っていってあげるわ。乗らない」
そう言って女は助手席のドアを開けた。
「で、でも悪いです」
「いいわよ。遠慮しないで乗りなさいよ」
「は、はい」
純は女の強気の態度に気圧されて、車に乗った。助手席にチョコンと座った。女は直ぐに助手席のドアを閉めてロックし、純にシートベルトをつけた。
「さあ。いくわよ」
そう言って女はエンジンをかけ、いきおいよく車を出した。道路沿いに夏の海が一望される。ビーチは海水浴客達でいっぱいだった。
「ボク。名前は」
「岡田純です」
「いい名前ね。私は佐藤京子。よろしくね」
「よ、よろしく」
道路沿いに夏の海が一望される。ビーチは海水浴客達でいっぱいだった。
「純君は海では泳がないの」
「は、はい」
「どうして」
「あ、あまり泳げないんで」
「そんな事ないわよ。海は体が浮きやすいから、プールで泳ぐより楽よ」
純は黙っていた。純が海で泳がないのは、友達がいなく、海水浴場に入るのが恥ずかしかったからである。京子は、ニコッ、と笑った。
交差点で信号が赤になった。純の家の方へ行くには左折である。
「純君の家は、真っ直ぐ。それとも左?」
京子が聞いた。
「ひ、左です」
純は小さな声で答えた。
信号が青になった。京子は左折せず直進した。
「あっ」
純は咄嗟に声を出した。
「あ、あの。今の所、左なんです」
「ごめんね。ちょっと買う物があるから、信号の先のコンビニに寄りたいの。いい」
「はい」
そう言うと京子は道沿いのコンビニに車を入れた。すぐに京子はコンビニから出てきた。
「ねえ、純君。よかったら私の家に寄ってかない」
「は、はい」
純は緊張して答えた。純は気が小さいので車の中では黙っていた。海沿いの道から離れて、車は路地に入っていった。周りに家の無い一軒家に着いて車は止まった。
「さあ。純君。降りて」
言われて純は車から降りた。
「ここ私の家なの。さあ。入って」
京子の後について純は、その家に入った。
京子が食卓の椅子を引いたので純は座った。京子はニコリと笑って向かい合って座り、純をじっと見た。
純は恥ずかしくなってうつむいた。
「純君」
「は、はい」
「これは私の想像なんだけど、純君は、裸を見られたくないような仕草をしながら、本当は私に裸を見られる事に興奮していたんじゃないの」
「は、はい。そうです」
純は真っ赤になって言った。京子はニコッと笑った。
「やっぱりね。大体わかったわよ。だって私が近づくと、体が震えてたもん」
京子はさらにつづけた。
「純君はおとなしいからウブで、優しいからマゾなのよ」
純は顔を真っ赤にして黙っている。
「ねえ。純君。純君の夢を叶えてあげるわ。私が見ててあげるから、ここで服を脱いでみない」
「は、はい」
もう純は心まで見透かされているので、躊躇いはなかった。京子は、足を交差させて、余裕の表情で椅子に座っている。純は立ち上がって、服を脱ぎ出した。上着を脱ぎ、ズボンを脱いだ。パンツ一枚になって、いよいよこれから、それも脱ごうとする時、純はチラッと京子の方を見た。京子は余裕の表情で、足を組んで、見世物を見るように純を見つめている。純は、いつも京子に自分の心を知られていたのだと思うと、急に羞恥の念が起こってきた。純は、いつものように、腰を引いてゆっくりとパンツを下げていった。なるべく、おちんちんが見られないように。とうとう純は丸裸になった。一方の京子はブラウスに短めのスカートを履いている。自分だけ裸になって見下されている事に、純は恥ずかしくなり、思わず、おちんちんを両手で隠した。
「どう。純君。今の気分は」
「は、恥ずかしいです」
「恥ずかしいだけ?」
「は、恥ずかしいですけど、何か気持ちいいです」
「ふふ。やっぱり純君はマゾなのね」
京子は近くにあるカバンを開けて本を取り出し、あるページを開いて裸の純の前に置いた。純は真っ赤になった。それはSM写真集で、裸の女が緊縛されている写真だったからである。純は興奮で真っ赤になった。純のマラは、激しく勃起した。
「ふふ。純君。興奮してるのね」
京子は笑いながら言った。
「ふふ。純君は、おとなしくてマゾだから、こういう風に、みじめな姿の女の人に感情移入して、興奮しているんでしょ」
「そ、そうです」
「純君は本当は女の子に生まれたかったんでしょ」
「そ、そうです」
純は、もう隠す必要がなくなって、躊躇せずに言った。
「そして、こういう写真の女の人のように、裸になって、恥ずかしい姿を人に見られたいと思っているんでしょ」
「そ、そうです」
「わかったわ。じゃあ、純君の夢を叶えてあげるわ。じゃあ、私の前では、純君は女の子になりきっちゃいなさい。うんと恥ずかしくしてあげるから」
「は、はい」
純は震える声で言った。純は口が裂けても、そんな自分の本心など人に言えない。そんな事をしたら、自分の人格が崩壊してしまう。しかし、今は、京子と二人だけである。他に人はいない。そういう自分の秘密が密室の中で十分、守られている条件があったから純は、京子の提案を受けいれる事が出来たのである。勿論、決断するには大変な勇気が要った。
「さあ。純君。その写真のように、座って膝を立てて大きく足を開いて」
その写真は、後ろ手に縛られた女がM字に足を大きく開いている写真だった。純は言われたように、床にペタンと座り込んだ。だが足は恥ずかしくて開けない。
「純君。手を後ろに回して」
京子が言った。
「はい」
純は言われたように手を背中に回して、背中で両手を握りしめた。もう手で純は激しく勃起した物を隠す事が出来ない。純は勃起した物を京子に見られないように、必死で膝を閉じ合わせた。
「ふふ。いちいち縛るのは面倒だから、縛らないわよ。さあ、純君。足を大きく開いて」
「は、恥ずかしいです。京子さん」
足を開いては勃起したマラをもろに見られてしまう。そんな事をするのを受け入れられるほど、純は大人ではなかった。まだウブだった。そんな事を受け入れたら自分の人格が崩壊してしまうような気がして、純は足を開けなかった。京子はバスタオルを持ってきた。
「さあ。純君。恥ずかしい所は、これで隠してあげるわ。だから足を開いて」
そう言って京子は純の、おちんちんの上にバスタオルをのせた。
「さあ。これで足を開いても恥ずかしい所は見えないわよ。さあ。足を開いて」
京子が言った。確かにこれなら恥ずかしい所は足を開いても隠される。純は、少しずつ足を開いていった。ついに足はM字になった。何も無ければ、丸見えだが、股間にタオルがのっているため、恥ずかしい所は隠されている。しかしそれは自分が身につけている物ではなく、京子のお情けによって置かれた物である。京子の意志一つで簡単にとられてしまうのである。京子が意地悪をして、タオルをとろうとしたら、純は京子に許しを請うしかないのである。そんな事を思うと純は恥ずかしさと被虐の興奮のため、純のマラはムクムクと勃起していき、タオルを押し上げていった。タオルは、あたかもテントを張ったかのようにせり上がった。
「ふふ。純君。どんな気持ち」
「は、恥ずかしいです」
純は顔を真っ赤にして言った。
「それだけ?」
京子は執拗に聞いた。純は黙っている。
「でも、おちんちんがこんなに勃起してるわよ。凄く興奮してるからでしょ。どうして興奮するの。はっきり言って。言わないと、タオルとっちゃうわよ」
京子は悪戯っぽい口調で言った。そんな事を言われて純の被虐の興奮は一層、激しくなっていった。
「は、はい。言います」
純は焦って言った。もう純は、どうにでもなれ、という捨て鉢な気持ちになっていた。
「僕は、マゾで京子さんの前で、こんなみじめな姿にされている事が嬉しくって興奮しているんです」
純は言った。言った事で、もう純には躊躇いの気持ちは完全になくなった。
「ふふ。そうだと思ったわ。じゃあ、純君は私の奴隷になる?」
「は、はい。なります」
「じゃあ、犬になって、四つん這いで私の足元に来なさい」
「は、はい」
言われて純は背中で組んでいた手を離し、両手を床について、四つん這いになって、京子の足元の所まで歩いた。目の前には、京子の形のいい素足がある。
「さあ。純君。純君は犬よ。足をお舐めなさい」
そう言って京子は、素足を純の鼻先に突きつけた。
「は、はい」
純の目の前には京子の形のいい足指があった。
純は目の前の京子の足の指を、四つん這いのまま、手を使わず、舌でペロペロと舐めた。はじめは抵抗もあったが、だんだん慣れてきた。
「ふふ。純君。指の付け根までしっかり舐めて」
京子が笑って言った。
「は、はい」
純は京子に言われたように足指をしっかり口に含み、ゆっくりと付け根まで舐めた。
「純君。どんな味?」
「ちょっと酸っぱいです」
「ふふ。昨日の夜、シャワーを浴びた後から、洗っていないの。汚いわよ」
「いえ。京子さんの足なら、何でもないです。むしろ、嬉しいです」
そう言って純は一心に京子の足指を舐めた。
「ふふ。純君のこんな姿、純君のお父さんとお母さんが見たら、どう思うかしら」
京子は笑って言った。
「ああっ」
純は咄嗟に真っ赤になった。自分のみじめな姿を母親と父親に見られる事が頭に浮かんで、急に羞恥の念が起こったのである。
「京子さん」
「なあに」
「お願いです。そういう事は言わないで下さい」
「わかったわ。言わないわ」
「有難うございます。言わないでくれれば何でもします」
純は貪るように京子の足指を舐めた。
「ちょっと待って」
そう言って京子は立ち上がった。そして台所から皿を持ってきて純の目の前に置いた。
「さあ。純君。お腹が減ったでしょう。お食事よ」
そう言って京子は純の目の前に皿に、炊飯器から御飯を出して皿に盛った。京子は、純の様子を見ながら笑っていた。京子は笑いながら、御飯にふりかけをかけた。そして、そっと、皿の御飯に足をのせて、足指でグチャグチャに御飯を踏み潰した。
「ふふ。さあ、純君。どうする。食べる?食べたくないなら食べないでいいわよ」
純はチラリと京子を見た。
「食べます」
そう言って、純は京子によって踏み潰された御飯を無我夢中で食べた。
「どう。吐き気がしそう?」
「いえ。おいしいです。京子さんの足の裏の汗が浸み込んでいると思うと、余計、おいしいです」
そう言いながら純は一心に御飯を食べた。
「ふふ。そうじゃないかと思ったわ」
ようやく純は御飯を食べ終わった。純は犬のように舌を出して皿をペロペロ舐めた。
「はい。純君。残さずよく食べたわね。おりこうさん。じゃあ、ご褒美にマッサージしてあげるわ」
そう言って京子は床に薄い敷き布団を敷いた。
「さあ。純君。この上にうつ伏せに寝て」
言われて純は敷布団の上に、うつ伏せに寝た。京子は大きなタオルを裸の純の上に掛けた。そして、純のマッサージを始めた。脹脛から太腿、背骨、肩と京子は揉んでいった。
「どう」
「気持ちいいです」
純は京子のマッサージに身をゆだねた。タオルがあるため、かろうじて恥ずかしさから救われた。
しばし京子は一心に純の体をマッサージした。しばしして無言のうちにマッサージが止まった。そしてそーっとタオルの下の方が捲り上げられて、フワリと背中の方に、のせられた
「ああっ」
純は、思わず声を出した。タオルの覆いがとられ腰から下の尻が、京子に丸見えになっていると思うと、恥ずかしくなったからである。しかも上半身は、今まで通りタオルで覆われている。尻だけ丸出しになった姿が何ともアンバランスでみじめで恥ずかしかった。京子の触れるか触れないかの微妙な感覚の指が純の尻や足の上をすっと掠った。
「ああっ。何をするんですか。京子さん」
純は思わず言った。
「ふふ。純君。これは回春マッサージというものなの。じっとしていて」
京子の繊細な指の先が純の体の上をすーと這い回った。ほんの僅か触れている感触が何ともいえず、激しく純を興奮させた。
「ああー」
純は、丸出しの尻を見られてる恥ずかしさと、指の苦しい感触のため、声を上げた。
「ふふ。どう。純君」
「は、恥ずかしいです。それに、くすぐったくて辛いです」
「純君。これはマッサージなのよ。もう何も考えないで、力を抜いてごらんなさい。気持ちよくなるから」
「は、はい」
京子に言われて、純は、恥ずかしさを忘れて京子に身を任せた。すると、くすぐったくて辛かった、京子の指の感触がだんだん気持ちよくなってきた。
「純君。気持ちいい?」
「は、はい」
「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるわ」
そう言うや、京子は純の足首をムズとつかんで足を開かせた。足を開かされたことによって、閉じ合わさっていた尻の割れ目が開いた。そして京子が開かれた足の間に入ってきた。京子の目の前には純の尻がある。尻の割れ目をもろに見られていると思うと、純は恥ずかしくて死にたいほどだった。再び、京子は軽やかに指先を純の尻や太腿の上に這わせた。京子がどんな顔で純の開かれた尻の割れ目を見ているかと想像すると純は恥ずかしくなった。
ニヤニヤ笑って純の尻の割れ目をじっくり見ている顔つきが想像される。その時である。
「ひいー」
純は悲鳴を上げた。京子が、いきなり純の尻の割れ目を指でスッとなぞったからである。純にとって、それは飛び上がらんばかりの激しい刺激だった。
「ああっ。京子さん。何をするんですか」
「ふふ。これも回春マッサージなのよ。力を抜いて」
京子は笑いながら言った。足が大きく開かれて、その間に京子がいるので純は足を閉じる事は出来ない。いつまた京子が尻の割れ目をなぞるかと思うと、純は耐えられない思いになった。純は京子の攻撃にそなえて、両手で布団をギュッと握った。京子の指は純の尻の肉の上を軽やかに動いていたが、時々、尻の割れ目を押し広げたり、すーっと割れ目に沿って下降していったりした。指が尻の穴に触れた時、純は、
「ひー」
と叫び声を上げた。もう尻の穴も京子に丸見えである。京子に尻の穴まで見られていると思うと純は、たまらなく恥ずかしくなった。
「純君。どう」
「は、恥ずかしいです」
「気持ちいい?」
「は、はい」
「そう。じゃ、もっと気持ちよくしてあげるわ。純君。膝を立てて」
「は、はい」
純は京子に言われたように膝を立てた。腕を立てようと肘を伸ばそうとすると京子がそれを制した。
「手は伸ばさないで。顔は布団につけたままでいいわ」
京子が言った。ので純は、伸ばしかけた肘を縮めて、顔を布団につけた。
「あ、ああー」
純は思わず叫んだ。顔を床につけたため、尻だけ高々と持ち上がってしまっている。膝が開かれているため、尻の割れ目もパックリと開いて、その下の、おちんちんも見られてしまっている。こんな屈辱的な姿はなかった。それはSM写真の女の人の屈辱の基本姿勢だった。京子がそれを、まじまじと見ていると思うと、純は恥ずかしさに耐えられなくなったのである。
「どうしたの。純君」
「は、恥ずかしいです。京子さん」
「我慢して。マッサージのためだから」
そう言って京子は、尻を突き出している純の尻を指先で巧みに撫で出した。
「ああー」
純は、恥ずかしさに耐えられず、時々、声を出した。その度、京子は、
「ふふふ」
と笑った。京子は、パックリ開かれた純の尻の割れ目をなぞったり、爪ですーっと撫でたりした。そのうち、京子の指は純の脇腹や、おちんちんの回りを這い出した。純は、布団をギュッと握って、くすぐったさと恥ずかしさに耐えた。ことさら、その勃起した部分を避けている、わざとらしさ、もどかしさ、が余計、純を興奮させた。純の、おちんちんは、カチンカチンに激しく勃起した。
「ふふふ。純君。どう。気持ちは」
「は、恥ずかしいです」
「でも、おちんちんが勃起しているわよ。感じちゃってるんでしょう。純君はマゾだから、本当はこうされる事が嬉しいんでしょう。どうなの」
「は、はい。僕はマゾで、本当は、こうやって、みじめになる事が嬉しいんです」
純は、もうどうとでもなれ、という捨て鉢な気分になって、自分の今の思いを言った。
「ふふふ。やっぱりね」
京子は余裕の口調で言った。京子は純の玉袋をいじりだした。
「ああー」
純は思わず声を出した。興奮してプルプル体を震わせている純にかまわず、京子は純の玉袋をそっと掌で包み、袋の中の玉を弄ぶように、ゆっくりと揉んだ。
「ふふ。純君。気持ちいい?」
「は、はい」
「男の人の玉袋って、何かみじめね。プラプラとぶら下がってて。そして、その中にプニョプニョした玉が入ってるんだもの。まるで、弄るために、あるみたい」
そんな事を言いなから、京子は純の玉の感触を楽しむように、純の玉袋をゆっくりと揉んだ。
京子は純の尻の割れ目をグイと開いた。ただでさえ、丸見えの尻の割れ目が、余計、割りさかれた。
「ふふふ。純君。お尻の穴が丸見えよ」
京子は、ことさら純の羞恥心を煽るように言った。純は、瞬時に顔が真っ赤になって、尻の穴を窄めようとした。が、膝を開かされている上、京子に尻を割りさかれているため、どうしようもない。純の尻の穴はヒクヒク動いた。
「ふふ。純君。窄めようとしたってダメよ。お尻の穴がヒクヒク動いているわよ」
京子は笑いながら意地悪く言った。ふっと京子が窄まった純の尻の穴に息を吹きかけた。「ああー」
純は咄嗟に悲鳴を上げた。反射的に純の尻の穴は窄まった。京子にもろに尻の穴を見ている事が実感されて純は、あらためて恥ずかしくなった。京子は玉袋を揉みながら、ビンビンに勃起した純の棒を撫でた。それは京子に撫でられて、余計、激しく勃起した。京子は、玉と棒と尻の穴を、思うさま弄んだ。もう純は、弄ばれるまま、弄ばれつくしたい、という開き直りの気持ちになっていた。
「ふふ。純君。どう。今の気持ちは?」
「み、みじめです」
「それだけ?」
「き、気持ちいいです」
「そうよね。純君はマゾなんだから。純君は、SM写真の、裸にされて縛られて弄ばれているマゾの女の人に感情移入してたんでしょう」
「そ、そうです」
「じゃあ、夢が叶って嬉しいでしょう」
「は、はい。幸せです」
京子は、しばし丸出しになった純の玉と棒と尻の割れ目に思うさま手を這わせた。
「純君。顔に上半身の体重がかかって辛いでしょう。手を伸ばして四つん這いになって」
「はい」
純は肘を伸ばして両腕をピンとつっかえ棒のように立て、四つん這いになった。今までは尻だけ高々と上げた屈辱的な姿勢だった。もしその姿勢で手を背中で縛れば、まさにSM写真の女の屈辱的な姿である。今度は丸裸の四つん這いで、まさに犬のようである。純は犬のようになったみじめさを感じた。
「ふふ。純君。どう。今の気持ちは」
「は、恥ずかしいです」
「動いちゃダメよ。気持ちよくしてあげるから」
「はい」
純は犬の像のように、手と膝にグッと力を入れて、突っ張って銅像のようになろうと思った。それが純に出来る唯一の忍耐の方法だった。つまり自分の肉体から精神を切り離そうとした。だが京子は、まるでペットショップで、犬を買う人が、飼う犬を選定するように、純の顔や髪の毛や腕、腹、脚などを丹念に調べるように念入りに触った。
「ふふふ。純君。どう。今の気持ちは?」
「まるで犬になったみたいです」
「そうよ。純君は犬よ。私、この犬、気に入ったわ。飼うわ。いいでしょ。純君」
「あ、ありがとうございます。京子さんのような素敵な人に飼われるなら幸せです」
「その代わり私の言う事はちゃんと聞かなくちゃダメよ」
「はい。何でも言う事をききます」
そんな事を言って京子は純の鼻を摘んだり、耳を引っ張ったりした。
「じゃあ、気持ちよくしてあげるわ」
そう言って京子は銅像のように、四つん這いでじっとしている純の体にまた、指先を這わせ出した。京子の指先が純の脇腹や腹、背中などを、すーっと這い回った。純は、くすぐったさに、体をプルプル震わせながら黙って耐えた。だが京子は執拗に純を責める。首筋や乳首など感じやすい所を京子は執拗に責めた。純は体をプルプル震わせながら黙って耐えた。もう純は我慢の限界だった。京子は、それでも、くすぐり責めをやめない。京子は、一番くすぐったい腋の下の窪みに手を這わせ出した。
「ああっ」
純は、とうとう耐えられずに声を出した。
「どうしたの」
京子がとぼけた口調で聞いた。
「く、くすぐったくて辛いです」
「そう。でも純君は、忠実な飼い犬なんだから、どんな事でも我慢しなくちゃダメよ」
そう言って京子は笑いながら純の腋の下をくすぐった。純は腕を突っ張っているので、腋の下を隠す事は出来ない。さっきの尻や太腿の指の接触は、快感だったが、これはもう、耐えられないほど辛い責めだった。
「京子さん。お願いです。許して下さい」
純は、とうとう我慢できず、京子に哀願した。
「ダメ。純君は、私の忠実な飼い犬で、私の言う事は何でも聞く、って言ったばかりじゃないの。我慢しなさい」
京子は厳しい口調で言って、腋の下のくすぐりを続けた。
「お願いです。許して下さい。もう耐えられないんです」
純は瞳を潤ませながら京子に向かって言った。
だが京子は、くすぐり続ける。
「ああー」
純はとうとう体を揺すりはじめた。全身がガクガクしている。
「京子さん。もう許して下さい。もう耐えられないんです」
純は瞳を潤ませながら京子に向かって言った。
「何が耐えられないの?」
京子は爪で純の脇腹を撫でながら言った。
「あ、あの。くすぐったくて、オシッコが出ちゃいそうなんです」
純は言って真っ赤になった。
「そうだったの。なら、もっと早く言いなさい。じゃあ、四つん這いのまま、こっちへいらっしゃい」
そう言って、京子は立ち上がって歩き出した。純は四つん這いのまま、這って、京子のあとについて行った。京子は風呂場の戸を開けた。
「さあ。お入り」
京子に言われて純は、這って風呂場に入った。風呂場にはマットレスが敷いてあった。純はその上に四つん這いになった。
「さあ。もうこれで、いざという時も、これで安心よ」
京子はそう言うと、しゃがみ込んで、再び純の脇腹や、首筋、腋の下などをくすぐり出した。京子は、くすぐり責めを一層、激しくした。
「ああー。もうガマン出来ないー」
純は体を激しく揺すって叫んだ。
「出そう?」
「はい」
純は情けない顔つきで京子に訴えた。
「じゃあ、耐えられなくなったら、出しなさい。ちゃんと犬のように、片足を上げてするのよ」
「は、はい」
そう言うと京子は、再び、くすぐり責めを一層、激しくした。
「ああー。もうガマン出来ないー」
純は、さっと片足を犬のように上げた。京子は、それでも笑いながらくすぐり続けている。
「ひいー」
純は叫んだ。とうとう堰を切ったようにシャーと小水が放出された。京子は、犬のような格好で小水を放出している純を笑って見ながら、さらにくすぐり続けた。勢いよく出た小水は、だんだんジョロジョロと細い流れになっていき、ついに出きってしまうと、放水はとまった。京子は笑って、くすぐりを止めた。
「どうだった。純君?」
純は真っ赤になって黙っている。
「正直に言いなさい」
京子が強気の口調で言った。
「き、気持ちよかったです」
純は顔を真っ赤にして言った。
「飼い主に、オシッコが出るまで愛撫させるんだから。まったく世話が焼けるわね」
京子はあきれた顔つきで言った。
「ご、ごめんなさい」
純は情けない顔つきで言った。京子はシャワーをとって栓をひねり、純のしたオシッコを洗い流した。
「さあ。純君。足を開きなさい」
京子に言われて純は四つん這いの膝を広げた。京子は純の尻の割れ目やおちんちんにシャワーをかけた。そして、バスタオルで、濡れた所を拭いた。純は犬同様である。
「あ、ありがとうございます」
純は恥ずかしそうに言った。
「さあ。純君。元の所に戻るわよ」
「はい」
風呂場から出る京子のあとを追って純は四つん這いで、ノソノソと歩いた。純は再び、布団の上で四つん這いになった。
「あー。疲れちゃった。ちょっと一休みするわ」
そう言って京子は四つん這いの純の背中に跨った。
「純君。重い?」
そう言って京子は腰を揺すった。
「い、いえ。重くありません」
そう言いながらも純の細い腕はピクピク震えていた。
「純君。どう。こうやって馬乗りにされる気分は」
「気持ちいいです」
「どんな風に?」
純は答えない。顔を真っ赤にしている。
「答えないと、こうしちゃうわよ」
そう言って京子は、純の両方の腋の下をコチョコチョとくすぐった。
「ああっ。許して下さい。答えます」
純は、あわてて言った。
「あ、あの。京子さんの柔らかいお尻の感触が背中に伝わってきて、気持ちいいです」
言って純は真っ赤になった。
「嫌ねえ。純君ったら。エッチな事ばかり考えて」
そう言って京子は、片手を伸ばし、純の玉袋をそっと掴んだ。
「ああっ」
純は反射的に声を出した。
「この中にある二つのプニュプニュした物が、純君にエッチな事ばかり考えさせるんでしょう」
そう言って京子は、二つの胡桃を掌の中で転がすように、純の二つの玉を掌の中で転がした。
「ああっ」
純は、玉を弄られて思わず叫んだ。京子が背中に乗っているため、逃げようがない。京子は、ふふふ、と笑いながら、純の玉を揉んだり、尻の割れ目をすっと、なぞったりした。さらに、純が動けないのをいい事に、腋の下を、コチョコチョとくすぐった。
「あ、ああー。京子さん。そこは許して下さい」
純は突っ張った両手をプルプル震わせながら言った。
「ふふふ。いいじゃない。もう、オシッコも出しきって、もれる心配もないでしょう」
そう言いながら京子は純の首筋や脇腹、腋の下などを、くすぐった。
「ああー」
くすぐられる度に純は、声を出した。京子の体の重みと、くすぐりの辛さのため、とうとう耐えられなくなって、純は地盤沈下のようにグシャっと潰れてしまった。
「ご、ごめんなさい。京子さん」
純はうつ伏せの姿勢で背中の京子に言った。
「ふふふ。ごめんね。悪戯しちゃって」
京子は、うつ伏せになった純に馬乗りしながら言った。
「でも、仕方ないわよね。ずっと四つん這いだったんだもの。疲れちゃったでしょう。私も少し疲れちゃったわ。じゃあ、交代しましょう。純君。休ませてくれない?」
「はい」
京子は純の背中から降りた。純は脇にどいた。京子は布団の上に、どっとうつ伏せに体を投げ出した。
純は思わずゴクリと唾を呑んだ。美しい女の体が布団の上に横たわっているのである。京子は全く無防備という様子だった。
「純君。今度は私をマッサージしてくれない」
京子はうつ伏せに寝て言った。
「は、はい」
純は緊張した口調で答えた。そして、うつ伏せに寝ている京子のマッサージを始めた。純は、エッシ、エッシと力を入れながら、京子の脹脛を揉んでいった。太腿に移ると、ミニスカートの短い裾から大きな尻を覆うパンティーがかすかに見えた。純は興奮して勃起した。京子は、うつ伏せで目を瞑っているので、純は見えない。それをいい事に純は京子のスカートの中をそっと覗いた。
「ふふふ。純君。スカート覗いているでしょう。手つきで分かるわよ」
京子が目を瞑ったまま言った。
「ご、ごめんなさい。京子さん」
純はあわてて目をそらした。そして再び、一生懸命マッサージした。柔らかい女の体に触れるのは、これが初めてだったので、しかも自分は裸なので、純は興奮しっぱなしだった。スラリと伸びた脚、太腿、大きな尻、華奢な腕、繊細な手の指。それらが一体となって美しい女の体が出来あがっていた。
「純君。エッチな事したい?」
京子が聞いた。
「い、いいえ」
純は、焦って答えた。
「いいわよ。純君。何をしても」
京子は笑いながら言った。
「ほ、本当に何でもしていいんですか」
「ええ。いいわよ」
純はゴクリと唾を呑み込んだ。
「ああ。好きです。京子さん」
純は、叫んで飛びつくように京子の尻に抱きついた。
「ああっ。柔らかい。温かい」
純は京子の尻に顔を埋めながら言った。
「ふふ。純君は甘えん坊なのね」
「は、はい。そうです」
純は感激したように京子のスカートの上から京子の尻を触ったり揉んだりした。
「いいわよ。純君。もっと好きなことして。私を裸にしちゃってもいいわよ」
「い、いえ。そんな事とても出来ません」
「どうして」
「こうする方が興奮するんです」
そう言って純は、さかんに京子の体を服の上から隈なく触りまくった。純は京子の足を掴むと、もう耐えられないといった様子で京子の足の裏をペロペロ舐めだした。
「ああー。京子さん。好きです」
と言いながら。
「ふふ。純君。なんで足を舐めるの。汚いわよ」
「ここが一番好きなんです。汚くなんかないです。僕には女の人の足が一番、好きなんです」
「どうして。普通の男の子だったら、そんな事しないわよ」
「僕には京子さんほど、きれいな女の人は勿体なくて申し訳ないからです」
「純君って、可哀相なマゾなのね。でも私、容赦しないわよ。純君をうんと虐めちゃうから」
「はい。京子さんに虐められるのなら幸せです」
京子は仰向けになった。純は耐えられないといったような様子で京子に飛びついた。
「ああ。京子さん。好きです」
純は顔を京子の胸に埋めた。
「どうして純君は、足なんかに興奮するの」
純は黙っている。
「純君。学校に好きな子はいる?」
「います。でも片思いです」
「その子に彼氏はいるの?」
「いません」
「じゃあ、どうして告白しないの?」
「好き、と告白して断わられる事が怖いんです」
「純君は意気地なしなのね」
「はい。そうです」
京子は同情的な顔で純を見た。
「そんなウジウジした性格じゃ、いつまでたっても彼女なんか出来ないわよ」
言われても純は黙っている。
「よし。私が純君を、勇気のある男の子に鍛えてあげる」
「ど、どんな事をするんですか」
「それは、まかしといて。このままじゃ純君は一生、一人ぼっちで老人になっちゃうわ」
「わ、わかりました。僕もそんな人生、嫌です。京子さん。僕を逞しい男に鍛えて下さい」
そう言って純は京子にペコリと頭を下げた。
「わかったわ。じゃあ、また明日、会ってくれる?」
「はい」
「じゃあ、純君。服着て」
「はい」
純はパンツを履いて、ズボンとTシャツも着た。裸だった事がもう、当たり前のような感覚になっていたので、パンツに足をくぐらした時、はじめて、今まで裸だった事に羞恥の感覚が起こってきた。だが、ズボンとシャツを着てしまうと、直ぐに恥ずかしさは無くなった。
「純君の携帯、かして」
「はい」
純は京子に自分の携帯を渡した。京子はピピピッと携帯を操作して純に返した。
「はい。私の携帯のメールアドレスを入れといたわ」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、駅まで送るわ」
「ありがとうございます」
京子は純を車に乗せて最寄の駅まで送った。

   ☆   ☆   ☆

その晩は、今日の刺激的な体験のため、純は布団に入っても、なかなか寝つけなかった。逞しい男に鍛えるとは、具体的にどういう事をするんだろう、きっと腕立て伏せとか、縄跳びとかでスパルタ的に鍛えるんだろうと純は思った。そんな事を考えているうちに、睡魔が襲ってきて純は眠った。

   ☆   ☆   ☆

翌日は雨だった。純は、9時頃、起きて食事し、家を出て京子の家に向かった。純がチャイムを押すと、戸がガラリと開いて京子が出てきた。
「いらっしゃい。純君」
京子は嬉しそうな顔で純を家に入れた。
「純君は朝御飯は食べた?」
「い、いえ」
「じゃあ、食べて」
純は京子の作った料理を食べた。
「さあ。純君。行きましょう」
食べおわると、さっそく京子が言った。
「ど、何処へ行くんですか」
「だから、昨日も言ったでしょう。純君を勇気のある男の子に鍛えてあげるわ」
そう言って京子は純を車に乗せた。車は走り出した。純の知らない道である。
「ど、何処へ行くんですか」
純は不安になってきた。
「純君。××の町に行く事はある?」
「いえ。一度もないです」
「そう。それはよかったわ」
京子はそう言っただけで、何処に行くのかの質問には答えなかった。しばしして、ある町のスーパーに着いた。屋上の駐車場に車を止めてスーパーに入った。京子は純を女性の下着売り場に連れて行った。純は真っ赤になった。純はウブなので、女性の下着売り場を通ると頭がクラクラして、ビンビンに勃起してしまうのである。レジにはきれいな女の店員がいた。
「さあ。純君。彼女にこう言うのよ。『僕の好きな人にパンティーをプレゼントしたいのですが、どんなのがいいか、教えて下さい』ってね」
京子はレジの女を指差して言った。純は真っ赤になった。
「そ、そんなの恥ずかしいです」
「だから、その恥ずかしさを克服する事が、鍛えることなのよ。私がついているじゃない。それと買うパンティーは大人物よ。わかった」
念を押すように京子が言った。
「わ、わかりました」
「それと私が携帯でメールを送るから、着信音が鳴ったら、それに書いてある事を言いなさい」
「は、はい」
純は訳がわからないまま、レジの店員の所に向かった。とりどりのパンティーやブラジャーの間を通っているうちに、純はもう頭がクラクラしていた。ビンビンに勃起して、射精してしまいそうになるほどだった。純はヨロヨロとよろめきながら、レジの女性の所に行った。女性は純に気づくとニコッと微笑んだ。
「いらっしゃいませー」
女性はペコリと頭を下げ満面の笑顔で純に挨拶した。
「何を、お探しでしょうか?」
女性が聞いた。
「あ、あの・・・」
と純は顔を真っ赤にして、口ごもった。女性は、穏やかな笑顔でニコニコしている。純は、もうどうとでもなれ、といった捨て鉢な気持ちになって、京子に言われた事を目をつぶって、喚くように言った。
「ぼ、僕の好きな人にパンティーをプレゼントしたいのですが、どんなのがいいか、教えて下さい」
純は言って、そっと目を開けた。レジの女性は落ち着いてニコニコしている。
「はい。わかりました。同級生の彼女にプレゼントするのかな。それじゃ、中学生用ね」
店員はホクホクして言った。
「ち、違います。大人用です」
言って純は真っ赤になった。店員は、ふふふ、と笑った。
「わかったわ。それじゃあ一緒に探しましょう」
店員はそう言って、目ぼしいパンティーをとっては、
「これなんか、どうかしら。フリルがついていて、かわいいわよ」
そう言って店員はフリルのついたパンティーを取って、純に見せた。その時、ピピッと携帯のメールの着信音が鳴った。そっと開けてみると、それにはこう書かれてあった。
<僕が世界一愛する人へのプレゼントなので、うんとセクシーなのにして下さい。あなたが選んで下さい>
純は真っ赤になって、その文を読んだ。
「ぼ、僕が世界一愛する人へのプレゼントなので、うんとセクシーなのにして下さい。あなたが選んで下さい」
店員は、腹を抱えて笑った。
「わかったわ。じゃ、これなんかどうかしら」
そう言って黒いハイレグカットのパンティーを店員は差し出した。その時、またピピッと携帯のメールの着信音が鳴った。そっと開けてみると、それにはこう書かれてあった。
<それでいいです。プレゼントするので包んで下さい>
純は、真っ赤になって言った。
「そ、それでいいです。プレゼントするので包んで下さい」
店員はニコッと笑った。
「はい。わかりました」
店員はパンティーをレジに持って行き、プレゼント用の紙につつんで純に渡した。
「これなら、きっと彼女も喜ぶわよ。はい。1500円です」
純は、ポケットから財布を取り出して、1500円を震える手で渡した。
「どうもありがとうございましたー」
店員が微笑して言った。その時、ピピッと携帯のメールの着信音が鳴った。そっと開けてみると、それにはこう書かれてあった。
<僕の好きな人というのは、あなたなんです。前からずっと好きだったんです。どうか受けとって下さい。と言って店員に包みを差し出す>
純は真っ赤になって、もう捨て鉢な気持ちになって、その通りに言った。
「僕の好きな人というのは、あなたなんです。前からずっと好きだったんです。どうか受けとって下さい」
そう言って純は真っ赤になって包みを差し出した。女店員は、一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったようにあっけにとられていたが、直ぐにニコリと笑った。
「ありがとう。嬉しいわ。ありがたく頂きます。どうもありがとう」
店員は、包みを受け取った。
少年が焦って、その場から逃げ出そうとすると、女の店員が呼び止めた。
「ねえ。ボク。ちょっと待って」
そう言って店員はレジから出てきて純の手を掴んだ。女の店員は笑顔で純を見ている。純は、焦りと恥ずかしさと、不安で真っ赤になってドギマギしている。
「順子―。ちょっとレジ見てて」
店員は大きな声で言った。商品のチェックをしていた別の女店員が、振り向いて走ってきた。
「どうしたの。玲子。何の用?」
玲子の所に来た店員が聞いた。
「ちょっと、この子がね、スーパーの中で落し物しちゃった、って言うから、一緒に探してあげようと思うの。その間、レジを見てて」
そう言って、包みを渡された店員は、純の頭を撫でた。
「ああ。そうなの。わかったわ」
玲子に呼ばれた順子という店員は、レジのボックスの中に入った。
「さあ。ボク。行きましょう」
そう言って店員は純の手を引いて歩き出した。
「ど、どこへ行くんですか?」
純は不安になって聞いた。だが店員は黙って純の手を握って歩いていった。店員は純を連れて女子トイレに入った。
「な、何をするんですか」
純は震えながら、真っ赤になって聞いた。女店員は後ろ手で戸を閉めるとは、ニコッと笑って両手を純の肩にかけた。そして、しゃがんで、目線を純と同じ高さにして、純をじっと見た。
「ボク。私が好きなの」
「え、ええ」
乗りかかった船で、純はそう言った。というより、この場合、この状況で、純にそれ以外に他に言う言葉があるだろうか。それに、実際、純は、はじめて会ったこの女店員が一目見た時から好きになってしまったのである。だからそれは純の本心でもある。
「ボク。名前は何というの」
「純です」
「私、ボクのこと気づかなかったわ。でもとっても嬉しいわ。私は黒木玲子。よろしくね」
女はそう言って、いきなり純の唇に自分の唇を合わせた。純は真っ赤になった。女は純の頭を掴むと、引き寄せて口と口を合わせ、純の口の中に舌を入れてきた。
「さあ。ボクも舌を私の口の中に入れて」
初めてのキスに純は真っ赤になった。純は言われたように、恐る恐るそっと舌を出した。女はうっとりした表情で、舌を伸ばして、純の舌と合わせると、さかんに舌と舌を絡めあった。キスは初めてなので純はボーとなっていた。女は貪るように純の舌を弄った。歯や頬の内側など口中に隈なく舌を伸ばす。女は純の頭をしっかり押さえて離さない。純の口中からは次から次へと、とめどなく唾液が出てきた。女はコニッと笑って純の唾液を啜った。それでも唾液は、とどまる事を知らず出つづけた。女は、それを全部飲み込んだ。
「プハー」
いいかげん長くキスして疲れたのだろう。女は純から口を離し、大きく呼吸した。そしてじっと純を見つめた。そしてニコッと笑った。
「嬉しいわ。ボクのような可愛い子に好かれていたなんて。さあ。ここを揉んで」
そう言って女は、しゃがみ込んだまま、純の両手をつかんで、自分の豊満な胸に当てた。
「さあ。揉んで」
玲子は言った。
「あ、あの。こんな事しては、いけないんじゃないでしょうか」
純は怖れながら手をプルプル震わせながら聞いた。
「いいの。だって私がいいって言ってるじゃないの。それとも純君は本当は私が嫌いなの?それとも、あの告白は悪戯だったの?」
「ち、違います。僕は本当にお姉さんが好きなんです」
玲子はニコッと笑った。
「嬉しい。じゃあ揉んで。女は好きな男の子にならエッチな事をされれたがるものなのよ」
そう言われて純は恐る恐る玲子の胸を服の上から、ゆっくり揉み始めた。だが純の震える手つきは、恐る恐るで、服の上から触れているだけのほんの申し訳程度である。
「あん。じれったいわ。純君は私の事、本当に好きなの」
玲子はもどかしそうな口調で言った。そして純をじっと見つめた。
「は、はい」
「じゃあ、ちゃんと揉んで」
「は、はい」
純の頭は興奮より、ただただ緊張だけだった。玲子の機嫌を損ねないように、純は力、といっても子供の力だからたいしたものではないが、を入れて一生懸命、制服の上から玲子の胸を揉んだ。豊満で柔らかい玲子の胸を揉んでいる内に純もだんだん興奮してきた。
「ああん。いいわっ。気持ちいいっ」
玲子は、淫らに半開きに口を開きアハンと上擦った口調で喘いだ。女が興奮すると我を忘れて言葉がなくなる。玲子は、純に注文せず、純に胸を揉ませるのに任せた。純も興奮してきて、もはや躊躇いは無くなり、積極的になって柔らかくてエッチな玲子の胸の感触を楽しむように、たっぷり揉んだ。もう純は激しくビンビンに勃起していた。玲子も純も気が投合していた。沈黙のまま、しばし玲子は純に胸を任せていた。
「さあ。純君。今度はお尻を触って」
そう言って玲子はスックと立ち上がって後ろを向き両手を壁につけた。
「さあ。純君。触って」
純の目の前には制服の膝までの紺のタイトスカートに覆われた大きな尻がムッチリ盛り上がっている。
「さあ。純君。触って。うんとエッチな事して」
純は目をパチクリさせた。純はゴクリと唾を飲み込んだ。
「ああっ。玲子さん。好きです」
純は叫ぶように言うや玲子の尻にしがみついた。純が女の体で一番惹かれるのは尻だった。つまり純は、甘えん坊なのである。純は女の尻に頬っぺたを押しつけるようにくっつけ、ガッシリと両手で玲子の腰をタックルのように前に回して抱きしめた。
「ああっ。幸せです。玲子さん」
純は、あられもない告白をして、しばらく玲子の尻にスカート越しに、その柔らかい弾力のある肉を枕のようにしてピッタリと顔を尻にくっつけた。玲子は首を後ろに回して、尻にしがみついている純を見て、ふふふ、と笑った。純がじっとしているので玲子はハワイアンダンスのように腰をゆっくり揺らした。純は手をほどいて顔を離した。純が手を離すと玲子も腰の動きを止めた。純は目の前にある玲子の大きな尻をじっと見つめていたが、そっと手を伸ばして触ると、尻の感触を確かめるように、ゆっくり触ったり、撫でたりした。
「ああっ。柔らかい。最高の感触です。玲子さん」
純は興奮して上擦った口調で言った。
「純君」
「はい。何でしょうか」
「スカートの中に手を入れて触ってもいいわよ」
純は一瞬、ためらったが、小さく、
「はい」
と言って、スカートの中に手を忍ばせた。
「ああっ。柔らかい。温かい」
純は太腿に触れると、思わず声を出して言って、太腿を抱きしめた。そうなのである。純は母親の愛情を受けずに育ったため、やさしさに飢えているのである。太腿の次は、玲子に言われたようにパンティーの上から尻を触った。あまりにも柔らかくて温かくて、また、こんな事をするのは生まれて初めてなので、純は興奮してハアハアと息を荒くした。マラはビンビンに勃起している。特にパンティーの縁の部分に純は興奮した。しかしスカートの中で触っているので、実際のパンティーや尻は見えない。まるで痴漢のようである。しかし見えないという事は余計、純の想像力を掻き立てて、純を興奮させた。
「ふふ。いいわよ。純君。私、一度、かわいい小さな男の子に痴漢されたいと思っていたの」
純の思いを察している事を知らしめるかのように玲子が機先を制するように言った。純の手がピクンと震えた。だが、もう純は捨て鉢になって、どんなに軽蔑されてもかまわないという心境になっていたので、思うさま玲子の尻を触りまくった。ちょうど見えない福引きの箱の中を手探りでかき回すように。
「純君」
「は、はい。何でしょうか」
純の手がピクンと動いた。
「ここも触って」
そう言って玲子は純の手を掴んで、前に持っていき、女の盛り上がりの部分に当てた。
「ここも触って」
純は真っ赤になって心臓の鼓動がドキドキと速くなった。
「は、はい」
純は蚊の泣くようなか細い声で言った。女の其処を触るのは生まれて初めてである。触るという事は、自分の人格を相手に知られてしまう事である。純は恥ずかしがり屋なので、なかなかそれが出来ない。其処に当てられているのは玲子の意志による誘導で純の意志ではない。しかし、何かをする事は出来ない。しかし、かといって離す事も出来ない。離すと恥ずかしがっている事がわかってしまって、それも出来ないからである。純は蛇ににらまれた蛙のように、其処に触れている手を石のようにじっとさせていた。
「あん。純君。お尻のように、うんと触って」
純が何もしないので玲子がじれったそうな口調で言った。
「は、はい」
純はあわてて返事をした。玲子の要求という口実が出来た。ので純は其処を触りだした。女の盛り上がりの肉がパンティーによってピッチリ収められていて、摘もうとすると、プニュッと程よい弾力があって気持ちいい。何回か揉んでいるうちに、だんだん純も心の抵抗がなくなってきて、積極的に触るようになった。純は蕩けるような酩酊の感覚で、其処を揉んだ。もう一方の手で太腿や尻を触りながら。
「ああー。か、感じちゃうー」
玲子は苦しげな喘ぎ声を出した。玲子の体はプルプル振るえ、弱々しい内股気味になっていた。玲子は胸の前で両手を交叉させ、胸を押さえ、純の責めに耐えた。
その玲子の仕草は純の性欲を激しく刺激した。純はパンティーの縁のゴムを摘み上げて離し、ピチンと音をさせたり、女の部分をパンティーの上から指でスーとなぞってみたり、太腿を指先でスーと膝の上から女の部分へゆっくり這わせたりした。その度に玲子の太腿はピクンと震えた。純は友達がおらず、いつも一人でそんな事ばっかり想像していたので、初めてとはいえ、そういう事が上手いのである。気のせいか玲子の女の部分が膨らんできたように見えた。
「じゅ、純君」
玲子の口調は震えていた。
「は、はい。何でしょうか。玲子さん」
純は淡白に答えた。
「あ、あの。お願いがあるんだけど聞いてくれる」
「は、はい」
「パ、パンティーの中に手を入れて直接、触ってくれない」
「は、はい。わかりました」
純はパンティーの縁から手を入れて直接、女の部分を触った。よくパンティーの縁を引き絞ってTバックのように尻や前を露出させる人がいるが、純はそれが趣が無いと思っていて嫌いだった。そのため、そんな事はしなかった。それよりパンティーの形はそのままで、中に指を入れてモソモソ這わせるのが趣味だった。そのため、そうやった。純は、生まれて初めて触る女の部分に、激しく興奮しながら触った。純は女の割れ目を探り当てた。其処は湿っていた。純は女の割れ目に指を入れた。其処はヌルヌルともっと粘っこい液体でベタついていた。純は其処に指を当てて前後に動かした。もう一方の手は後ろからパンティーの縁の中にいれ、尻を触ったり、コチョコチョくすぐったり、尻の割れ目に指を入れて、割れ目を指先でなぞったりした。前の割れ目は、相変わらず、指で前後になぞりながら。純はスケベなので、こういう事は上手かった。
「あ、ああー。感じちゃうー」
玲子は下肢をプルプル震わせながら、苦しげな口調で喘ぎ声を洩らした。玲子の女の割れ目からは、ネバネバした液体がどんどん出てきて、純が割れ目をなぞる度にクチャクチャ音を立てるようになった。
「玲子さん。パンティーが濡れちゃいます」
純は玲子の下着が濡れる事を心配して言った。
「い、いいの。大丈夫。それより、後ろの方に穴があるでしょ。そこに指を入れて」
純は割れ目の後ろの方をまさぐった。穴があった。純は指を立てて穴の中に指を入れた。ベチャベチャに濡れているので、それが潤滑油となって、指は容易に入った。入ると直ぐにキュッと指は締めつけられた。それは玲子の意志で締めつけているのか、それとも何かが入ると反射的に締めつけようとするものなのかは、純には、初めてなので、どっちなのか分からなかった。そもそもまだ学校の授業でも習っていない。ので分かりようがない。穴の中は、外より、もっとヌルヌルしていた。純はまるで秘境のジャングルに足を踏み入れた探検家のように指で穴の中をあちこち触った。
「あ、ああー。そ、そこ。感じちゃうー」
玲子は髪を振り乱して苦しげに言った。
「ゴ、ゴメンなさい」
純は、女にとって辛い所を触ったのだと思って、あわてて指を離した。
「い、いいの。大丈夫。お願い。もっと其処をうんと触って」
玲子は苦しげに眉を寄せた顔を純に向けて言った。
「つらくないんですか」
純は恐る恐る聞いた。
「大丈夫。つらいような叫び声を上げちゃうかもしれないけど、構わないでうんと刺激して」
玲子は顔を赤くして純に言った。
「わ、わかりました」
純はわからないまま、京子に言われた所を念入りに指先で刺激した。
「あ、ああー。い、いいわー」
玲子は髪を振り乱して叫んだ。純は玲子がとてもつらい思いなのだろうと思って一旦、指を動かすのを止めた。そうすると玲子は、落ち着きを取り戻し、荒かった呼吸がだんだん、落ち着いてきた。やはり、触られるとつらい所なのだと純は確信した。しかし、玲子が、
「つらいような叫び声を上げちゃうかもしれないけど、構わないでうんと刺激して」
と言っているし、
「いいー」
と叫んだので、つらいけど気持ちがいいのだろうと思って、玲子の息が落ち着くと、また指先で其処をコチョコチョと押したり擦ったりした。すると玲子は直ぐに、プルプルと体を震わせながら、
「あっ。ああー」
と苦しげな喘ぎ声を上げ始めた。まるでスイッチを押すと動き出す人形のようである。そんな事を何回か繰り返した。純も何か訳のわからないまま面白くなってきた。
「純君」
「はい」
「今度は指を出そうとしたり、入れようとしたりして、上下に動かして」
「はい」
純は元気よく答えた。そして玲子に言われたようにゆっくり、穴に入れている指を前後に動かし出した。
「あっ。ああっ」
また玲子が苦しげな喘ぎ声をあげ出した。しかし、これも前のと同じで、辛いけど気持ちがいいんだろうと思って、玲子の反応に構わず、自分の意志で指を往復運動させ、そして時々、休んだ。そうする事が玲子が一番、望んでる事だと思ったからである。玲子は、さっきと同じように、まるでスイッチを押すと動き出す人形のようである。動かすと悶え出し、止めると落ち着いてくる。純はまた、そんな事を何回か繰り返した。何回か後に、玲子が、辛そうな、しかし物欲しそうな顔を純に向けた。
「ね、ねえ。純君」
「はい。何ですか」
「今度は休みを入れないで続けてやって」
「大丈夫ですか」
「大丈夫よ」
「はい。わかりました」
純は玲子に言われたように、今度は休みなく、ゆっくりと指を往復させた。
「ああっ」
玲子は喘ぎ声を出し、体は震えだした。休みがなくては、辛いだろうと思って純はゆっくり往復させた。しばしすると玲子はねだるような顔を純に向けた。
「純君」
「はい。何ですか」
「お願い。もっと速く激しくやって」
「大丈夫ですか」
「大丈夫。お願い」
「はい。わかりました」
純は玲子に言われたように、往復運動の速度を速めた。
「ああー」
京子は大きく叫んだ。しかし純は玲子の要望どおり、休まず続けた。このまま、どうなるのか、純には分からなかった。
「純君」
「はい」
「もっと速く、もっと激しく、やって」
玲子は何かを必死で求めるように命令的な口調で言った。
「はい」
純は返事して、玲子に言われたように、速く激しく往復させた。手加減はしなかった。玲子は、
「ああー」
と悶えて苦しんでいるように見えるが、それを望んだのは玲子である。玲子は、とうとう全身がガクガク震え出した。
「ああー。いくー。お願い。純君。もっと激しくやって」
玲子が叫んだ。純は、分からないまま、ますます速く激しく指を往復させた。
「ああー。いくー」
玲子は、ひときわ激しい叫び声を上げた。玲子の体は激しく痙攣した。何かが玲子に起こったのだと純は感じた。そのため純は指の往復を止めた。そして指も抜いた。玲子は、ハアハアと激しく肩で呼吸していたが、だんだん落ち着いてきて、ついに平常の呼吸に戻った。玲子は純に見られないよう背を向けると、トイレットペーハーを少し切り取り、女の濡れた所を拭いた。さらに玲子はトイレットペーパーを少し切り取って、純に振り向いた。玲子はニコッと笑って純を見た。
「純君。手を出して」
純は手を差し出した。
「純君。ありがとう。いっちゃったわ。すごく気持ちよかったわ」
玲子はベトベトになった純の指をトイレットペーパーで丁寧に拭いた。
純には、このベトベトした液体が何だかわからなかった。
「玲子さん。このネバネバした液体は何ですか」
純に聞かれて玲子は恥ずかしそうに顔を赤くした。
「女はエッチな気持ちになるとアソコが濡れちゃうの。ゴメンね。純君の手を濡らしちゃって」
純の手を拭きおわると玲子は純の手を握った。
「純君。ありがとう。気持ちよかったわ。お礼に今度は純君を気持ちよくさせてあげるわ」
そう言うと玲子はしゃがみ込んだ。玲子は純のズボンのベルトを緩め、チャックを外して、ズボンを降ろした。そしてパンツも降ろした。いきなりズボンとパンツを脱がされて、純は恥ずかしさで真っ赤になった。丸出しにされた、おちんちんは玲子に見られて、恥ずかしさのため、直ぐにビンビンに硬く勃起した。天狗の鼻のようにそそり立ったそれを見られている事が恥ずかしく、純は真っ赤になった。が、小心な純は玲子のする事に対して何もする事が出来ず、精神的に呪縛にかかったかのように、じっとしていた。丸出しのおちんちんは、ますます勃起した。
「ああっ。玲子さん。何をするんですか」
純は真っ赤になった顔で聞いた。
「ふふふ。こんなに大きくなっちゃって。私を好きなのね。ありがとう。嬉しいわ」
そう言って玲子は純の股間に顔を近づけ、そっと口を開けて、そそり立ったおちんちんを口に含んだ。
「ああっ」
純は死にそうなほど驚いた。
「ああっ。玲子さん。何をするんですか」
純は焦って言った。玲子は口に入れたおちんちんを一先ず離した。
「気持ちよくしてあげるわ。じっとしていて」
玲子は笑顔で言った。
「や、やめて下さい。そんな所、汚いです」
純は焦って言った。玲子はニコッと笑った。
「汚くなんかないわ。大人の男と女では皆やってることなの。安心して」
そう言って玲子は再び、純のおちんちんを口に含んだ。そして、ゆっくりと口を往復させ始めた。
「ああっ」
女におちんちんを舐められる事など生まれて初めてなので、純は何がなんだか分からなくて頭が混乱していた。ただ、いつもオシッコをしている汚い所をきれいな女の人が舐めているのが不思議で、可哀相に思った。女の裸は「美」だが、男の裸、ましてや、おちんちんなど汚いだけだと思っていた。大人の男と女がそんな事をしていると思うと、何か嫌な気持ちになった。女はきっと、男の命令で仕方なくそんな事を嫌々しているんだろうと思った。だが玲子の顔には嫌がっている様子は見られない。むしろ恍惚としてうっとりしているような感じである。純は疑問に思いながら変な事をしている玲子を見た。純と視線が合うと玲子はニコッと笑った。そしておちんちんから口を離した。
「どう。気持ちいい?」
「わ、わかりません。そんな所、汚くて玲子さんに悪いです」
「汚くなんかないわ。何も考えないで私に任せて。必ず気持ちよくしてあげるから」
そう言って玲子は再び純のおちんちんを口に入れた。純は、京子に言われたように、あまり考えないことにした。京子は今度は口の中で舌を出して、純のおちんちんの色々な所を舐め出した。気持ちよくはないが何か不思議な気持ちになった。玲子は、しばし舌で舐めた後、口を離した。そして今度は両手を後ろに回して、尻を指先ですーと撫でたり、尻の割れ目に指を入れたりした。
「ああっ」
純は思わず声を出した。だが玲子はニコニコ笑いながら、純の尻の丘を撫でたり尻を割り開いて、尻の割れ目をすーと指でなぞったりした。
「ああー」
純は思わず声を出した。
「どう。気持ちいい?」
「は、はい。くすぐったいですが、気持ちいいです」
純は正直に答えた。
「そう。それはよかったわ」
そう言って玲子は尻を触りながら、脇腹や背中を爪先で、触れるか触れないかの程度で、すーと撫でたり、腋の下をコチョコチョくすぐったりした。
「どう。純君。気持ちいい?」
「は、はい。死にそうなほど、くすぐったいですけど気持ちいいです」
玲子はニコッと笑った。
「我慢してね。くすぐったさが気持ちよくなるんだから」
そう言って京子は爪先を純の尻や背中や太腿に、すーと這わせた。純は口を閉じて眉をしかめ、手をギュッと握りしめ、くすぐったさに耐えた。玲子は繊細な手で純の玉袋をそっと包むと、ゆっくりと玉を掌の中で揉み始めた。残りの片手で純の体をくすぐりながら。だんだん純は気持ちよくなってきた。玉を揉まれる感覚も何か気持ちがいい。
「どう。純君。気持ちいい?」
「は、はい」
純は自分の気持ちを正直に答えた。
「そう。それは良かったわ。私も弾力のあるプニュプニュした玉を揉む感覚が気持ちがいいわ」
そう言って玲子は片手で玉を揉みながら、片手で尻や太腿の内側をすーと撫でた。しばらくそうした後、玲子はまた純の玉袋を口に含んだ。
「ああっ」
思わず純は声を出した。玲子は舌で玉を転がしたり、少し歯を立てたりした。手で純の尻や太腿を撫でながら。
「どう。純君。気持ちいい?」
玲子が口を離して聞いた。
「は、はい。気持ちいいです」
「そう。それは良かったわ」
「でも、噛んだりしないで下さいね。怖いんです」
「大丈夫よ。噛んだりなんかしないから。でも、そうされてしまうかもしれない恐怖感がスリルがあって気持ちいいでしょ」
そう言って玲子は、また玉袋を口に含んで舌で玉を転がしたり、舐めたりした。時々、少し歯を立てながら。手で太腿や尻の割れ目を撫でながら。純は、はじめは、おぞましいと思っていたこの行為に慣れてきて、気持ちが良くなってきた。しばし玉をしゃぶっていた玲子は、口を離し、今度はおちんちんを口に含み、舌で舐めたり、前後にゆっくり往復させ出した。手で太腿の内側や尻の割れ目などの敏感な所を、爪先でそーと撫でながら。もはや純はためらいなく、気持ちよくなっていた。純は身も心も玲子に任せた。はじめは大人の男女がこんな事をするのは汚いと思っていた嫌悪感も薄れて、大人がそんなことをするのも少し理解できた。玲子は一心に口に含んだおちんちんを、ゆっくり往復させている。純は、だんだん自信がついてきて、玲子の美しい黒髪を撫でたり、柔らかい二の腕や華奢な肩を触った。それは柔らかくて気持ちが良かった。玲子は純と視線が合うとニコッと微笑んだ。何か純は大人になったような気がした。女はこうする事が嫌ではなく、かえって好きなんだとも思えるようになった。純はちょっと王様になったような気分になった。
「ああ。玲子さん。汚い所を舐めさせてしまって申し訳ないですけど、気持ちいいです」
純はため息まじりに言った。
「ふふ。純君も大人になったのね」
玲子は、そんな事を言って、また純のおちんちんを口に含んで往復させた。その表情は、嫌がるどころか、むしろ我を忘れて楽しんでいるようだった。
「玲子さん」
「なあに」
「そんな汚い所を舐めるのが気持ちいいんですか」
純は直截的な質問をした。
「ええ。気持ちいいわ。純君にはまだ分からないでしょうけど。特に純君のように若くてピチピチで身も心もきれいな、おちんちんは最高だわ」
玲子もあられもなく答えた。そしてまた純のおちんちんを口に含んだ。もはや純に躊躇いはなくなっていた。純はおちんちんを舐められる快感に身も心もゆだねた。その間、純は玲子の髪をやさしく撫でた。かなりの時間、京子は舐めつづけたが、ようやく口を離した。

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少年と二人の女 (小説)(下)

2020-07-07 06:34:26 | 小説
「じゃあ、時間も無いから、これでおわりにするわ」
そう言って京子は純のパンツをあげて履かし、ズボンもあげて履かせた。
「どう。気持ちよかった」
「え、ええ。とても。でも、やっぱり玲子さんに悪いです」
「そういう、やさしい純君って好き」
そう言って玲子は純の背中に手を回して純を抱きしめた。純は最高に幸せだった。玲子も嬉しそうだった。しばしの抱擁の後、玲子は純の両肩に手をのせて純をじっと見た。
「純君。いつから私のことを見てたの」
「そ、それは・・・半年くらい前からです」
純はとっさのデタラメを言った。
「ふーん。全然気づかなかったわ」
「・・・だって、気づかれないよう、男子用の下着売り場から、そっと見てたんですから・・・」
「ふーん。そうなの。全然、気づかなかったわ。店員はね、万引きしてる人がいないか、無意識の内に周囲をさりげなく見回す習慣があるから、普通なら気づくはずなのに・・・。私って鈍感なのかしら」
「ち、違います。一ヶ月に一回か二回くらいの割り合いでしか来ませんでしたから・・・」
「ふーん。そうなの。それじゃあ仕方ないわね。よかったわ。私が鈍感じゃなくて」
純はほっとした。だがそれも束の間。
「でも、どうして今日、あんな大胆な事を言う決断をしたの」
「そ、それは・・・」
と言って純は一瞬、言葉に詰まった。
「それは、学校で担任の先生に、お前は内気すぎるから、もっと積極的にならないと内申書の性格で、内気、と書かなきゃならないから進学に不利だぞ、と言われたんです」
純は苦し紛れの理屈を言った。
「ふーん。そうなの。じゃあ、私は純君の進学のために内申書の成績を良くするための練習なのね」
玲子はさびしそうな口調で言った。
「ち、違います」
「どうして」
「確かに、練習という意味もありますけれど、好きな人にじゃなきゃ、あんな事、言いません」
「確かにそうね」
玲子は納得したようにニッコリ笑った。
「純君。携帯もってる?」
「はい」
純はズボンのポケットから携帯を取り出した。
「ちょっと貸して」
玲子が言ったので純は携帯を京子に渡した。玲子は携帯をピピピッと操作して、純に返した。
「はい。メールアドレスと住所を入れといたわ。純君は勉強熱心そうで遊びに夢中にならないように電話番号は入れなかったわ。また、私に会いたくなったら、いつでもメールしてね。お店は忙しいから、これからは、お店で会うことは、あまり出来ないわ」
「あ、ありがとうございます。京子さん」
純は礼を言って携帯をズボンのポケットに入れた。
「じゃあ残念だけどもう出ましょう」
「はい」
「ちょっと待ってて。人がいないか見るから」
そう言って玲子はトイレを出た。そして直ぐに戻ってきた。
「大丈夫。誰もいないわ。まず私が先に出るわ。人が来ないように見張ってるから、純君を呼ぶわ。純さん、て言うわ。そしたら、急いで出てきて」
「はい」
玲子は、直ぐにトイレを出た。
「純さーん」
玲子が呼ぶ声がした。女子トイレから男が出てくるのを人に見られたら大変である。純は急いで女子トイレを出た。外には誰もいなかった。玲子がニコニコ笑っている。
「じゃあ、私、仕事があるから、ここでお別れね。私に会いたくなったらいつでもメールしてきてね」
そう言って玲子は手を振って、急いで小走りにレジの所に戻って行った。
純はほっとして、京子のいた所に戻った。京子はいない。純は携帯を取り出した。メールが一通、来ていた。京子からのメールだった。
「なかなか帰ってこないので、三階の喫茶店にいます」
と書いてあった。
純は礼儀正しい性格だったので急いで、玲子にお礼のメールを書いて送った。それには、こう書いた。
「玲子さん。今日はどうもありがとうございました。またお会いしたいです。純」
純は急いで三階に上がった。喫茶店で京子が窓際の席に一人で座ってポカンと外を見ていた。純は喫茶店に入って急いで京子のテーブルに向かい合わせに座った。
「おかえり。随分、長かったわね」
「は、はい」
「純君。何か食べる?」
「い、いえ。いいです」
京子がアイスティーだったので、純もアイスティーを注文した。
「どうだった。ちゃんと、メールに書いたように店員に愛の告白をした?」
「は、はい。恥ずかしいけど、ちゃんとメールに書いてあるように言いました」
「そしたら相手は何て言った?」
「ありがとう。嬉しいわって言って受けとってくれました」
「そう。それは良かったじゃない」
京子はストローでアイスティーを掻き回した。
「自信ついたでしょ」
「はい。少し。でも、怒られました」
「何て」
「あんな事、私だからいいけど、もうしちゃダメよ、って注意されました」
「ふーん。でも、随分、長い時間だったけど、何をしていたの」
「・・・えーとですね。私だからいいけど、真面目な人だと叱る人もいて、叱られると、よけい自信がなくなっちゃうから、十分考えてから行動しなさいって、いうような事を長々と説教されてしまったんです」
純はウソをついた。玲子と仲良くなったと言うと、京子に嫉妬されると思ったからである。
「ふーん」
京子はストローでアイスティーを掻き回しながら聞き流すように言った。半信半疑の顔つきである。確かに、長めの説教といっても長すぎる。説教にそんなに時間がかかるわけはない。
「じゃあ、行きましょう」
「は、はい」
純は、急いでアイスティーをゴクゴク全部、飲んだ。そして京子と喫茶店を出た。二人は車に乗った。そして京子の運転で、京子の家に向かった。純は内心、ウキウキしていた。スーパーの店員の玲子の方が京子より美しく、好きになってしまったからである。それを察してか京子は何か不機嫌そうだった。帰りの車の中でも純に話しかけてこなかった。
京子の家に着いた。京子と純は家に入った。二人は向き合って食卓についた。京子はじっと純の顔を見た。その時、ピピッと携帯にメールが来た音がした。しまった、マナーモードにしておけばよかったと思った。メールが来た以上、直ぐに開けて見ないのは不自然である。純はポケットから携帯を取り出してメールを開いた。玲子からだった。それにはこう書いてあった。
「純君。メールありがとう。今日は楽しかったわ。また会いたいわ。 玲子」
純はドキンとした。玲子の方が、京子よりきれいだし、甘えられると思うとホクホク嬉しくなった。純の心はもう京子から玲子に移っていた。
「純君。携帯、見せて」
純が携帯をポケットに仕舞おうとすると京子が、それを制した。
「えっ」
と、純は焦ったが、見せない理由もなく、見せないのは、不自然である。京子は純から奪いとるように携帯をとった。純は焦った。さっき玲子に送った「今日はどうもありがとうございました。またお会いしたいです」という純のメールもある。京子は、眉を寄せて携帯を見ていたが、携帯を片手に純に疑問に満ちた目を向けた。少し不機嫌そうである。
「純君。さっき言った事ウソでしょ。一体、何があったの」
京子は問い詰めるように言った。
「い、いえ、その・・・」
純は答えられない。
「純君。着てる物を全部、脱ぎなさい」
京子は厳しい口調で言った。
「は、はい」
純は京子の厳しい口調に怯えながら着てる物を全部脱ぎ、裸になった。おちんちんを手で隠しながら。
「純君。本当は何があったの。言いなさい」
京子は厳しい口調で問い詰めた。
「で、ですから、さっきも言ったように、少し、説教されたんです」
純は焦りながら言った。
「ウソだわ。説教されてメールアドレスを教えたり、楽しかったなんて言う?楽しかった、って玲子って人が言ってるけど、説教することが楽しい人なんている?」
「いると思います。誰でも説教されるのは、嫌ですが、説教するのは、いいたい事を言うのだから結構、いい気分なんじゃないでしょうか」
「それにしては、随分、長い時間の説教ね。メールも何か楽しそうな雰囲気ね。そんなに長々と何を話したの。言って御覧なさい」
「そ、それは・・・」
純は言葉につまった。
「純君。四つん這いになりなさい」
京子が強気の口調で命令した。
「は、はい」
言われて純は四つん這いになった。京子がドスンと純の背中の上に乗った。
「ああっ。何をするんですか」
「本当の事をいうまで拷問するわよ」
そう言って京子は両足を浮かせた。京子の体重が純の背中にかかった。
「ウソなんか言ってません。信じて下さい」
純は訴えた。純はどうしても玲子と友達になりたかった。心は京子から離れて玲子に移っていた。京子はそれを感じとって嫉妬しているのだ。
「純君。はっきり言うわ。私は玲子って人に嫉妬しているの。純君はメールで、玲子さんに、また会いたいです、なんて書いているでしょ。もう、私を捨てて、玲子って人と仲良くなるんでしょ。でも私が純君と玲子さんに、話すきっかけをつくってあげたのよ。スーパーで、あの人を見て、大人しくて優しそうな人だと思ったからなのよ」
京子は恩着せがましく言った。
「は、はい。その事は十分、わかっています」
純は突っ張った細い腕をプルプル震わせながら言った。
「私を捨てて、あの人に鞍替えするんでしょう」
そう言って京子は尻を揺すった。
「そ、そんな事、ありません」
純は必死に訴えた。
「じゃあ、あんなに長い時間、一体何をしていたの。彼女は、楽しかったって書いてるけど」
「ゲームセンターで一緒にちょっと遊んだんです」
ショッピングセンターの中にゲームコーナーがあるのを純は見ていたので、そんな出任せを言った。
「ゲームセンターで何をして遊んだの?」
「モ、モグラ叩きです」
「本当ね?」
「はい。本当です」
「これで純君がウソをついている事が完全に証明されたわ。あそこのゲームコーナーには、モグラ叩き、はないのよ」
京子は勝ち誇ったように言った。純は真っ青になった。
「さあ、純君。本当のことを言いなさい」
京子は強気に言うが、純はどうしても言いたくない。それを京子は察したかのような様子である。そして言った。
「しょうがないわね。じゃあ、本当のことを言うまで拷問にかけるわよ」
そう言って京子は純の腋の下をコチョコチョとくすぐった。純は、ああーと叫びながらも必死で耐えた。京子は脇腹を爪先ですーと撫でたり、金玉をつかんで、引っ張ったりした。だが、純は歯を食いしばって耐えた。
「さあ。純君。膝を伸ばしなさい」
言われて純は四つん這いだった膝を伸ばして下肢を一直線にした。だが、あいかわらず京子は純の背中に乗っている。
「さあ。純君。腕立て伏せをしなさい」
京子が命令的な口調で言った。
「ええー」
純は吃驚して思わず声を出した。
「さあ。はじめなさい」
そう言って京子は純の尻をピシャンと叩いた。仕方なく純は京子を背中に乗せたまま腕立て伏せをはじめた。ただでさえ、純は腕立て伏せは20回くらいしか出来ないのに、京子は容赦なく体重をかけて背中に乗っている。純は、京子を乗せたまま腕立て伏せを始めた。京子が乗っているので耐えられないほど重い。
「ほら。もっと、ちゃんと肘を深く曲げなさい」
腕の曲げ具合が少ないので、京子は容赦なく叱って、純の尻をピシャリと叩いた。
「は、はい」
純は恐る恐る言って、深く肘を曲げた。京子が背中に乗っているので肘を伸ばすのが大変である。10回くらいで、純はもう手がガクガクになり、意識が朦朧としてきた。もう限界だった。
「きょ、京子さん。許して下さい。もう耐えられません」
純は全身をガクガク震わせながら言った。
「ダメよ。許して欲しかったら、本当の事を言いなさい」
京子は突き放すように言った。純は仕方なく腕立て伏せをつづけた。だが、もう限界だった。とうとう純はグシャッと潰れてしまった。
「ダメじゃないの。ちゃんと起きなさい」
京子はうつ伏せになっている純の鼻を摘んで言った。
「も、もう出来ません」
純は泣きそうな顔で言った。
「だったら本当の事を言いなさい」
「な、何をですか?」
「とぼけないで。だから、二時間も彼女と、どこで何をしていたかよ」
そう言って京子は純の金玉をグッと握った。
「言わないと強く引っ張っちゃうわよ」
京子は威嚇して、純の金玉をグッと引っ張った。
「ああっ。言います。言いますから、許して下さい」
純は泣きそうな顔で京子に訴えた。
「わかればいいのよ。さあ。本当の事を言いなさい」
京子は純の金玉を握りながら言った。純は弱々しい顔を京子に向けて、京子の顔を窺いながら話し始めた。
「あ、あの。女の店員に女子トイレに連れて行かれました」
「そこで何をしたの?」
「いきなりキスされて、胸を触らされて、おちんちんを舐められました」
純は正直に答えた。
「それで気持ちよかった」
「は、はい」
「また、彼女と会うつもり?」
「わ、わかりません。それは・・・」
「ウソおっしゃい。彼女と別れてすぐに、また会いたいです、ってメール送ってるじゃないの。本当は会いたくて会いたくて仕方ないんでしょ。本当のこと言いなさい」
京子は純の金玉をつねった。
「は、はい。会いたいです」
純はあわてて苦痛に顔を歪めて言った。
「くやしいわ。私がお膳立てしてあげたのに、私は捨てられて、きれいな女店員に乗り換えられちゃうんだから」
その時、ピピピッと純の携帯がなった。京子は純の携帯を開けてみた。玲子からのメールだった。それにはこう書かれてあった。
「純君。明日、××の海水浴場にいかない。玲子」
京子は純を見た。
「純君。どうする。行く?」
「い、行きません」
純は京子の嫉妬を怖れてそう言った。
「いいのよ。行きなさい。行かなきゃダメよ」
そう言って京子は直ぐに返事のメールをこう書いた。
「はい。喜んで行きます。純」
そして京子はそのメールを玲子に送った。

   ☆   ☆   ☆

さて翌日になった。
××の海水浴場にセクシーなビキニ姿の玲子と純が砂浜の上にシートを敷いて座っていた。ビーチバレーをした後の一休みである。
「よー。玲子ー。随分、幼い彼氏じゃないかー」
浜辺にいた三人の男がひやかし半分に声をかけた。
「あら。あなた達、来ていたの。この子はね。私の従兄弟なのよ」
玲子は大きな声で男達に向かって言った。男達は笑いながら三人でビーチバレーをし出した。
「純君。あの男の人達は私の高校の時の同級生なの。ここは私の地元だから、結構、知ってる人に会っちゃうの」
玲子は純にそんな説明をした。
「あ、あの。玲子さん」
純は、恐る恐るの様子で玲子に声をかけた。
「なあに。純君?」
「あ、あの。スイカ割りを、し、しませんか」
純の声はなぜか震えていた。
「いいわ。やろう。じゃあ、スイカ買ってくるわね」
玲子は天真爛漫の笑顔で笑って、海の家に走っていった。玲子はすぐにスイカを買って、戻ってきた。玲子は小さなビニールを敷いて、その上にスイカを乗せた。
「さあ。純君。どっちがやる。私。それとも純君?」
「れ、玲子さんがやって下さい」
純は声を震わせながら言った。
「わかったわ。じゃあ、私がやるわ」
玲子は笑って言った。そうして目隠し用の手拭いを取り出した。
「あ、あの。玲子さん」
「なあに」
「スイカを割っちゃうと、汚くなって食べにくくなりますから、割らないで、目隠しして、スイカを当てるというようにしては、どうでしょうか」
「そうね。その方がいいわね」
「あ、あの。玲子さん」
「なあに」
「でも、それだけだと、ちょっと簡単になっちゃいますから、手を後ろで縛って、足だけで探すというようにしては、どうでしょうか」
「そうね。その方が面白そうね。いいわよ」
こうしてスイカ割りが始まった。純は玲子の目を手拭いで縛って目隠しをした。
「はい。純君。手も縛るんでしょ」
そう言って玲子は両手を背中に回した。純は、玲子の華奢な引き締まった手首を重ね合わせてハンカチで両手首をキュッと縛った。そして純は玲子の体をクルクルと回して方向を分からなくした。
「さあ。はじまり。はじまり」
純は曲馬団の団長のようにおどけた口調で言った。玲子は砂浜をスイカを求めてヨロヨロと歩き始めた。だが波の音で海の方向はわかる。だが、手が使えないで、足だけで探すというのは、かなり困難で、玲子は、かなり歩き回った後、立ち竦んでしまった。
「純君。参った。参った。降参。目隠しをとって」
玲子が言った。その時、砂浜の後ろに身を潜めていた京子がサッと出てきて、玲子の所に小走りに駆けて行った。京子はハサミを持っていた。京子は玲子のビキニの紐を上下ともプツン、プツンと切ってしまった。ビキニが上下ともパサリと落ちた。京子は覆う物何一つない丸裸になった。京子は純にハサミを渡すと、急いで浜辺の後ろの方に戻って行った。玲子は真っ青になった。丸裸で目隠しをして、後ろ手に縛られているので、恥ずかしい所を隠しようがない。ビーチの客達は一斉に玲子に視線を向けた。
「純君。なにをするの。お願い。すぐに目隠しと、ハンカチをとって」
京子は大声で叫んだ。純は、あわてて玲子の目隠しをとり、背中で手首を縛っているハンカチもとった。玲子は自由になると、急いでビキニを拾って身につけようとした。だが、紐が切れている。これではどうしようもない。玲子は純の近くにあるハサミに目を留めた。
「じゅ、純君。ハサミでビキニを切っちゃったのね。ひどいわ」
玲子は、胸と秘部を手で覆いながらシートの所に急いで行った。そしてシートにあるカバンから財布を取り出すと、胸と秘部を両手で隠しながら、急いで海の家に走って行った。
「よー。玲子。凄い格好じゃねえか」
さっきの男三人が丸裸で砂浜を走っている玲子を見て笑いながら揶揄した。玲子は真っ赤になった。ムッチリ閉じ合わさった尻が丸出しになり、ビーチの客達は目を皿のようにして、丸裸の玲子を眺めていた。玲子は急いで、海の家で、ビキニを買って、身につけた。そして、純の所に戻ってきた。
「純君。ひどいわ。悪戯といっても、していいものと、していけないものがあるのよ。純君がそんな子とは知らなかったわ。私、もう恥ずかしくて、街を歩けないわ」
そう言って、玲子は、バッグを持って、踵を返して海水浴場を去ろうとした。
「あ、あの。ち、違うんです」
純が焦って後ろから声を掛けようとしたが、玲子は耳を貸さず、急いでビーチを出て、車で帰ってしまった。
ポツンと純がとり残された。黒いビキニの京子がソロソロと純の元にやってきた。純は恨めしそうな顔で京子を見た。その時、ピピピッと純の携帯が鳴った。それは玲子からのメールだった。それにはこう書いてあった。
「純君。ひどいわ。もう君とは付き合いません。玲子」
京子が携帯を覗き込んだ。
「あーあ。純君。せっかくの彼女にふられちゃったわね」
京子は他人事のような口ぶりで、さも残念そうに言った。全ては京子が仕組んだ計画なのである。
「でも、純君は、女の子と付き合った経験がないでしょ。女の子にふられるのも、いい人生経験なのよ」
京子はもっともらしく言った。京子のビキニ姿も美しかった。純は京子とスイカを食べた。
夕方まで京子とビーチバレーをして遊んだ。京子のセクシーな美しいビキニ姿を見ているうちに純は楽しくなってきた。純は、自分が軽卒な人間だと思った。



平成22年1月21日(木)

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老人とテニスと二人の女 (小説)(上)

2020-07-07 06:18:37 | 小説
老人とテニスと二人の女

あるテニススクールである。どこのテニススクールでもそうだが、ここでは週一回の、ある曜日の、ある時間に、ある特定のコーチについてレッスンを受けることになっていた。週一回で、それを二ヶ月だから合計8回のレッスンである。勿論、何かの用事で、受けれない日が出来てしまったら、振り替えで、他の曜日にレッスンを受ける事が出来る。
京子は、明るい元気なテニス好きな女である。アパートで一人暮らしの大学二年生である。
彼女は性格が明るいので、スクールに入ると直ぐにスクールの全ての生徒と友達になった。晴れわたった青空の元、太陽の日差しを受けながら、心地良い汗をかいてするテニスは、最高の快感だった。
ある時、一人の老人が、そのテニススクールの、京子のクラスに入ってきた。体がヨボヨボで、見るからに、運動など無縁の人生を送ってきた、体力の無さそうな老人だった。元気なコーチは、クラスの皆に老人を紹介した。
「皆さん。新しく入った生徒さんを紹介します。根暗太郎さんです」
コーチはそう言って老人の肩をポンと叩いた。
「ね、根暗太郎です。よろしくお願い致します」
コーチに紹介されて、老人はオドオドと挨拶した。
「私は佐藤京子といいます。よろしく」
老人の隣にいた京子が天真爛漫な笑顔で老人にペコリと頭を下げて挨拶した。レッスンが始まった。老人はテニスは、全く初めてのようで、ストロークもボレーも全然、振り遅れで、空振り、か、ネットかオーバーのどれかだった。その度に老人は、
「すまんのう。すまんのう」
と謝りつづけた。コーチもやれやれといった様子である。見かねたコーチは、大きな声で京子に声を掛けた。
「おーい。京子さん。すまないが根暗さんにテニスの基本を教えてやってくれないか。方法は君にまかせるよ」
コーチとスピードの速いラリーをしていた京子は、ニコッと笑って、
「はい。わかりました」
と答えた。京子は老人の元にパタパタと小走りに駆けて行った。老人は、おどおどしている。
「おじいさん。テニスは初めて?」
「あ、ああ。そうじゃけん」
「じゃあ、私が基本を教えてあげるわ」
「すまんのう。よろしゅうお願いつかわっされ」
そう言って老人は、ペコペコと卑屈に頭を下げた。
「おじいさん。ラケットの握り方は知ってる?」
「い、いや。知らん」
「じゃあ、まずラケットの握り方を、教えるわ」
そう言って京子は、ラケットを体の正面に立てた。
「さあ。おじいさんもやって」
言われて老人も、ラケットを体の正面に立てた。
「次はラケットの面に掌を当てて」
そう言って京子はラケットの面に瑞々しい繊細な指を大きく開いて掌をラケットに当てた。小指には、お洒落な指輪がはまっていた。老人も京子と同じように、干乾びた皺だらけの掌をラケットに当てた。
「そうそう。それで、そのまま手を下の方に下ろしていってグリップを握って」
京子は、ラケットに当てた手を、下ろしていってグリップを握った。老人も、京子の真似をして、手を下ろしていってグリップを握った。
「そう。それでいいわ。これをイースタングリップといって、フォアハンドストロークを打つ時の握り方なの」
「ああ。なるほどのう」
老人は皺だらけの顔をほころばせて納得したように言った。京子はニコッと笑った。
「おじいさん。じゃあ、少し打ち合いましょう」
そう言って京子は、パタパタと小走りに、ネットを越えて、ネットを挟んで老人と向き合った。
「じゃあ、おじいさん。いくわよ。ラケットを早目に引いて、下から掬い上げるようにして打って」
そう言って京子は、ポーンと山なりのゆっくりした球を打った。老人は、急いでボールの方に走って、ワンバウンドしたボールを打ち返そうと、あわてて、ラケットを引いて振った。だが、ボールに近づき過ぎてしまい、その上、振り遅れてしまったため、空振りになってしまった。
「すまん。すまん。お嬢さん」
老人は卑屈に何度もペコペコと頭を下げた。
「いいのよ。気にしないで。おじいさん」
京子は老人を優しく慰めた。そして、籠からボールをとった。老人は、極度の緊張から体がガチガチだった。
「おじいさん。緊張しないで、もっとリラックスして」
京子が、そう言うと老人の体の強張りは少し軽減した。
「はい」
京子は、ポーンと、さっきよりもっと、やさしい山なりのボールを出した。老人は、ミスしてはいけない、という思いでいっぱいだったのだろう。慎重にそーとラケットを振って、ワンバウンドしたボールに当てた。ボールはラケットに上手く当たり、ネットを越えた。
「うまい。うまい。それでいいのよ。おじいさん」
京子は小学生を誉めるような口調で、誉めて、戻ってきたボールを、ポンと当てて返した。京子がやさしいボールを返したので老人は今度もまたボールに当てる事に成功した。
「うまい。うまい」
京子はまた幼稚園児を誉めるような口調で誉めた。ラケットを持っていなかったら手を叩いていただろう。だが、老人はちょっと力みすぎたのだろう。ボールは京子の頭上を高く超えた。京子は猛ダッシュして、ボールを追いかけて、打ち返した。少し速めの返球だったが、老人は、京子とのラリーを続けたい思いで一杯だったのだろう。またしても老人は打ち返した。
「うまいわ。おじいさん」
京子は、また誉めて、返球した。たまにネットする時もあったが、老人は、ぎこちないフォームながら京子とのミニラリーが続くようになった。ネットを越せば、かなり遠くにボールが行っても、京子は全速力で走って、ボールを打ち返した。
「よーし。時間も少なくなってきたから一試合するとするか」
隣で、生徒とスマッシュの練習を指導していたコーチが、大きな声で言った。わらわらと生徒四人がコーチの元に集まってきた。老人も、急いでコーチの元に行った。
「よーし。ちょうど男二人に女二人だから、ミックスダブルスとするか」
コーチは朗らかな口調で言った。
「じゃあ。ジャンケンでペアを決めよう」
コーチに言われて、男二人と女二人はジャンケンをした。京子と老人が勝ってペアになることになった。
「よろしくね。おじいさん」
京子は微笑んでペコリと老人に頭を下げた。
「よ、よろしゅう」
老人は照れて顔を真っ赤にしながら、たどたどしい口調で京子に挨拶した。相手のペアは順子と、若い青年だった。
「ふふ。京子。負けないわよ」
順子が不敵な口調で笑って言って、ラケットの上を地面につけて、グリップを独楽のようにクルクルッと回した。ラケットはクルクルッと独楽のように回ってパタリと地面に倒れた。
「フィッチ」
順子が言った。
「スムース」
京子が元気に答えた。順子が地面のラケットを拾って、グリップの頭を見た。
「やったー。ラフよ」
順子が喜んで言った。
「じゃあ、サービスにするわ」
順子が京子を見て言った。4人はそれぞれの位置についた。順子がサービスで、京子がレシーブについた。老人は、どこにつけばいいのか、わからないといった様子でウロウロしている。
「おじいさーん」
京子が呼んだ。京子に呼ばれて老人は京子の方を見た。
「おじいさん。おじいさんはネット前で構えてて」
京子に言われて老人は、ネット前で構えた。
「いくわよー。京子。今日は負けないわよ」
順子は、高いトスを上げてスピンのかかった猛烈に速いサービスを打った。順子は猛スピートのサービスが得意だった。ボールは猛スピードでコートに入った。普通の人だったら、手も出せないサービスエースになってしまっただろう。しかし京子は打ち返した。だが、打ち返すのがやっとで、オーバーしてしまった。
「15-0」
コーチがカウントした。老人はテニスのルールがわからないと見えてウロウロしている。
「おじいさん。今度は、おじいさんがレシーブなの。後ろの線の所までさがって」
京子に言われて老人はベーススラインまでさがった。順子は、横にずれて、余裕の表情でポンポンと数回、ラケットでボールを地面にバウンドさせた。順子は一瞬、ニヤッと意地悪く笑った。順子はボールをトスアップすると、力の限りのスイングをした。猛スピードのボールが老人に飛んで行った。
「あわわっ」
老人はラケットを引く事すら出来なかった。ワンバウンドしたボールは老人の顔を直撃し、老人は尻餅をついた。
「大丈夫?おじいさん」
京子が倒れた老人に駆け寄った。
「だ、大丈夫じゃよ。すまんの。お嬢さん」
老人は京子にペコペコ頭を下げた。京子が、むくれた顔を順子に向けた。
「ちょっとー。順子。相手は、初心者なのよ。少しは手加減してあげようって優しさは、あなたには無いの?」
順子は冷ややかに微笑した。
「ふふ。京子。甘いわ。勝負は情け無用よ」
その時、枯れ木のようなヨボヨボの老人が立ち上がった。そして京子に顔を向けた。
「いいんじゃ。いいんじゃ。わしなんかに構わず、自由にやっておくれ。しかし迷惑をかけてしまってすまんの。お嬢さん」
老人は卑屈にペコペコ謝った。京子はネットの向こうの順子を憤りの目で見た。
「わかったわ。順子。あなたの人格が。それなら私も手加減しないからね」
順子は、したり顔で横に移動した。
「30-0」
コーチがカウントした。老人は、ベーススラインに仁王立ちした。京子に迷惑をかけないようにと必死なのだろう。
「おじいさん。今度は私がレシーブを受けるの。おじいさんは、さっきのように前に行って。レシーブの時はね、前後に移動するの」
言われて老人は、サービスラインに急いで、駆け足で行った。そして、今度は、ミスしてなるのもかというような気構えで、ラケットを構えた。京子も手に汗握る緊張感で順子のサービスに対して構えた。順子は、余裕の表情でポンポンとラケットでボールを地面に数回バウンドさせた後、ボールを青空の中にトスアップした。ビシーン。猛スピードのサーブがネットを越え、ワンバウンドした。京子は素早い体の回転で、コンパクトにボールにラケットを当てた。ゆっくりしたボールが順子の方のコートに入った。順子は、ニヤリと笑ってクロスではなく、ストレートで老人に猛スピードのボールを打ち返した。
「ああっ」
ちょうど、老人の正面だったので、老人はフォアで打ったらいいのか、バックで打ったらいいのか、分からず、あたふたした。老人の顔に猛スピードのボールが当たって、またも老人は、尻餅をついた。
「じゅ、順子。あ、あなたって人は。相手は、今日、はじめてテニスをした、年齢のいった、おじいさんなのよ」
京子はブルブル震える怒りの拳を握りしめて、順子に言った。だが、順子は黙ったまま余裕の表情で、横に移動した。
「い、いいんじゃ。いいんじゃ。わしが悪いんじゃ。迷惑かけてすまんのう」
そう言って老人は、よっこらしょ、と立ち上がった。
「40-0」
コーチがカウントした。今度は老人がレシーブの番である。老人は、ベースラインにさがった。京子は前衛にネットの前に出た。順子は、ツンとすました顔で横に移動し、ポンポンと数回ラケットでボールを地面に叩いた後、おもむろに構え、ボールをトスアップして、ラケットをビュッと勢いよく振った。ビシッ。ボールは時速130kmを越えるスピードでコートに入った。
「あわわっ」
老人はラケットを引く事すら出来なかった。ワンバウンドしたボールは、またも老人の顔に直撃し、老人はステンと尻餅をついた。
「ゲーム。よし。時間もなくなってきたからこのくらいにしよう」
コーチが言った。京子は倒れている老人の所に行った。老人の眼窩には、ボールが当たった跡が赤く腫れていた。
「おじいさん。大丈夫?」
京子はしゃがみ込んで、老人を抱き起こした。
「大丈夫じゃ。大丈夫じゃ。すまんのう。迷惑かけてしもうて」
老人は京子に支えられながらヨロヨロと立ち上がった。
さっそく次のクラスの生徒達がコートに入りだした。

順子と青年は、談笑しながらスクールの建物に向かっていた。老人もヨロヨロとスクールのクラブハウスに向かった。
順子は女子更衣室に、青年と老人は、男子更衣室に、入った。京子は、アパートでテニスウェアに着替えて、スクールに通っていたので、更衣室は使っていなかった。貴重品とスポーツドリンクの入ったバッグをコートの隅に置いていた。京子は、外のベンチで三人が出てくるのを待った。しばしして順子と青年が、普段着に着替えて出てきた。
「やあ。京子。おまたせー」
スポーツドリンクを飲みながら順子が、京子に呼びかけた。
「おじいさんは?」
京子が聞いた。
「まだ中で着替えてるわよ」
順子が素っ気なく答えた。
「順子。あんな、おじいさんに、どうして手加減してあげなかったの?」
京子は厳しい口調で問い詰めた。
「だってー。あんなダサい、おじいさん。ウザッたいじゃない。下手な人とやると調子、狂っちゃうでしょ」
順子はニヤニヤ笑いながらペロッと舌を出した。
「順子。あなったって、そんな人だったのね」
京子は、怒りに拳を震わせて、怒鳴るように言った。
「京子。お腹へったわね。デニーズに寄ってかない?」
順子が言った。順子と京子と青年は、テニスの後、近くのデニーズに寄って、一緒に昼御飯を食べる事がよくあった。
その時、老人がクラブハウスから出てきた。京子と目が合うと、恥ずかしそうに視線をそらして俯いて、そそくさと帰ろうとした。
「待って。おじいさん」
京子が老人を呼び止めると、老人は呪縛にかかったように立ち止まった。
「ねえ。おじいさん。これから4人で一緒にお食事しませんか?」
老人は卑屈な顔を上げて、三人を見回した。
「わ、わしはいい。遠慮する。用事もあるでの」
老人は卑屈な口調で言った。
「そんな事いわないで行きましょうよ」
京子はまた熱心に誘った。だが老人は手を振った。
「い、いや。わしみたいな年寄りがおったら、むさくるしいじゃろう。皆に迷惑はかけたくはないて」
「そんな事ないわ。おじいさんの昔話、私、聞きたいわ」
京子は執拗に老人に参加を求めた。だが、老人は、手を振って頑なに断わった。
「ほら。京子。おじいさんもああ言ってる事だし、三人で行きましょうよ」
順子が言った。京子はキッと鋭い目つきで順子をにらんだ。そして優しい瞳を老人に向けた。
「おじいさん。家は何処?」
「家は××町じゃよ」
「私も××町のスーパーで買い物したいから、途中まで車で一緒に行きましょう」
「い、いや。ダメじゃよ」
「どうして?」
「わしは車を持ってないんじゃよ」
「ええっ?」
京子は、驚いて声を上げた。
「じゃあ、どうやって、ここまで来たの?」
「バ、バスじゃよ」
「ええー」
京子は、また驚嘆の声を上げた。京子はしばし思案げな顔つきで老人と二人を見つめたが、慇懃な口調で老人に言った。
「あ、あの。おじいさん。よかったら私が車で家まで送るわ。ここはバスの本数が少ないし、暑い中を待つのは大変だわ。どう?」
京子は老人を覗き込むように言った。
「あ、ありがとう。で、でも。い、いいんかね」
老人は、オドオドした口調で聞いた。
「いいわよ。大歓迎だわ」
京子は歓喜に満ちた口調で言った。そして順子に視線を向けた。
「私はおじいさんを家まで送るから食事は一緒に出来ないわ」
「わかったわ。京子。よかったじゃない。素敵な恋人が出来て」
順子は、そんな皮肉めいた冷やかしを言った。
「じゃあ、○君。今日は二人で食事しましょう」
順子は、青年に言った。
「その後、またアレをして、たっぷり楽しみましょう」
順子が思わせ振りに青年にウインクした。
「ええ」
青年もニヤリと笑った。4人は駐車場に向かって歩き出した。
「じゃあ、今日はこれでお別れね。またね。京子」
順子は、そう言うと、赤いスポーツカーに青年を乗せて、車を出した。京子と老人が残された。
「じゃあ、おじいさん。家まで送るわ。さあ、乗って」
そう言って京子は車の助手席のドアを開けた。
「す、すまんのう。お嬢さん」
老人はオドオドした様子で助手席に乗った。京子は運転席に乗って、エンジンをかけた。
「じゃあ、行くわよー」
京子は元気よく言ってアクセルペダルを踏んだ。京子は、恋人を乗せたようなウキウキした気分だった。老人は新品の××のラケットとスポーツバッグを大切そうに膝の上に乗せていた。
「おじいさん。そのラケットは、どこで買ったの?」
京子は隣の老人に話しかけた。
「こ、これかね。これはテニススクールの人が親切にも選んでくれたんじゃ」
老人は答えた。それはプロのトッププレーヤーが使っている5万円のラケットだった。
京子は思った。
『テニススクールの人も不親切だわ。まだテニスを始めたばかりの人に、そんな高額なラケットを勧めるなんて。スーパーのスポーツ用品売り場では、3千円のラケットもあるというのに』
老人の案内で京子は、老人の家に着いた。周りに人気のない、寂しい一軒家だった。
「あ、ありがとうのう。お嬢さん」
老人は車から降りるとヘドモドしなから、何度も頭を下げて礼を言った。
「いえ。何でもないわ。気にしないで」
京子はニコッと笑って言った。
「あ、あの。お嬢さん」
老人は顔を真っ赤にして言った。
「なあに?」
京子は嬉しそうに聞き返した。老人は、自分から話しかけておきながら、言いにくい事なのだろう。しばし顔を真っ赤にして、言おうかどうか、しばし迷っていたが、卑屈に蚊の泣くような声を震わせて、吃り吃り言った。
「お、お嬢さん。あ、ありがとう。お、お礼に、お茶でも飲んでいかんかね?」
老人は言って真っ赤になった。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて、お邪魔させて頂くわ」
京子は満面の笑顔で答えた。京子は車を降りて老人と一緒に家に入った。

   ☆   ☆   ☆

老人の家は古い日本家屋だった。京子は床の間に案内された。京子は大きな座卓の前に、礼儀正しく足を畳んで正座した。
「今、お茶を持ってくるけん。ちょっと、待っていておくれ」
そう言って老人は部屋を出て行った。床板には、「法為有法。限為有限」と、意味の分からない文の書かれた掛軸がかかっていた。しんと静まり返っていて人がいる気配が感じられない。しばしして老人が戻ってきた。盆に、茶と菓子を持って。老人は、盆を机の上に置くと、照れくさそうに座った。老人は、茶を入れて京子にすすめた。
「粗茶で口に合うかどうか分からんが、飲んでおくんなされ」
京子は、
「はい」
と返事して、茶を飲んだ。
「正座は足が疲れるじゃろ。くつろぎんしゃれ」
礼儀正しく正座している京子を慮って、老人が言った。京子はニコッと笑って、足を崩して、横座りになった。
「おじいさん。今日はごめんなさいね。順子が、あんな事したり、言ったりして。厳しく注意しておくわ」
自分がしたわけではないのに、友達のよしみで京子は順子の意地悪を老人に詫びた。
「いや。わしの方が悪いんじゃよ。あんたが、謝ることはないて。皆に迷惑かけてしもうて、本当に申し訳ない」
老人は卑屈にペコペコ頭を下げた。京子は老人のあまりの卑屈な態度をかわいそうに思った。京子は、あたりをキョロキョロ見回した。
「あ、あの。おじいさん。差し出がましい事を聞くのは申し訳ありませんが、奥さんは、買い物か何かで、出かけているのでしょうか?」
老人は俯いて黙っている。
「あ。ご、ごめんなさい。差し出がましい事を聞いてしまって」
京子は、老人がどういう境遇なのか、わからないのに、好奇心から聞いてしまった失礼を謝った。それに対し老人は、寛容に答えた。
「いいんじゃよ。わしは一人暮らしじゃ。昔は女房もいたが、性格が合わんかったけに、離婚してしもうたんじゃ。その別れた女房も5年前に死んでしもうた」
そう言って老人は茶を啜った。
「ご、ごめんなさい。おじいさん。言いたくない事を無理やり聞いてしまって」
京子はペコリと頭を下げた。
「いいんじゃよ」
老人は慰めるように言った。
「そ、それで・・・」
と京子は言いかけて、あわてて口をつぐんだ。老人は、京子が質問しようとした察したかのように、ニッコリ笑った。
「聞きたいのは、子供がいるか、どうかじゃろ」
老人は機先を制するように言った。京子の顔が少し赤くなった。老人は納得したように話し出した。
「わしには娘が一人おるんじゃ。もう20歳になる。しかし、こいつは、子供の頃からチャランポランでの。学校を出ても、就職もせず、遊んでばかりいて、どこに住んでいるやら。音沙汰なしじゃ」
そう言って老人はおもむろに茶を啜った。
「そうだったんですか。根掘り葉掘り、言いたくない事を聞いてしまって申し訳ありません」
京子はペコリと頭を下げた。
「いや。いいんじゃよ」
老人は慰めるように手を振った。
「あ、あの。また失礼な事をきいても、いいでしょうか」
「ああ。いいよ。何でも遠慮せず聞きんしゃい」
「あ、あの。どうしてテニスを始めようと思ったんですか?」
京子はちょっと、不躾な言い方をしてしまったと後悔して赤面した。老人はいなすように笑った。
「それはじゃの。一人というのは、さびしいもんじゃから。わしには趣味もないし、テニスでも趣味にしようかと思ってのう。体力も衰えているから体を動かそうとも思っての」
そう言って老人は茶を飲んで、ふーとため息をついて一呼吸おいた。
「しかし、今日、やってみて、やはり無理だと感じたわ。やめようと思う」
老人は寂しそうに言って俯いた。
「そんな。おじいさん。やめないで」
京子は熱心に訴えた。
「おじいさん。はじめは誰だって出来ないわ。でも、さっき、私と二人でミニラリーしたでしょ。初めてなのに、短時間で、どんどん上手くなったんで、私、びっくりしちゃったわ。試合では負けちゃったけど、順子はもう、三年もテニスをしている上級者だから負けるのは当たり前だわ。順子も、初心者に対して思いやりがないわ。少し手加減、するよう注意しとくわ」
京子はつづけさざまに熱弁をふるった。
「いや。いいんじゃ。若い者は思い切りやりたいじゃろ。それを、わしが邪魔してはわるいわ」
そう言って老人は手を振った。
「じゃあ、スクールの後、私とコートを借りてやりましょう。丁寧に教えてあげるわ」
「いいんかね。わしみたいな下手糞とやっても面白くないじゃろ」
「そんなことないわ。私も、いつか、アルバイトでコーチになりたいとまで思ってるの。絶対、上手くしてあげるわ。上手くなったら、また今日のペアのダブルスの試合で順子を負かしてやりましょう」
何としても老人を引き止めようと京子は熱弁をふるった。老人はしばし黙って目を瞑り、腕組みをしていたが、おもむろに目を開いた。
「わかったわ。あんたが、そこまで熱心に勧めてくれるのなら、その好意を無視するのは失礼じゃ。テニスはつづけるわ」
「本当。よかったわ。嬉しい」
京子は欣喜雀躍とした口調で言って老人の手を握った。

京子は和菓子を食べて、茶をゴクゴクと全部、飲んだ。時計を見ると、もう5時だった。京子は、ふと、老人の食生活は、どうなっているのか、気になった。
「おじいさん。お食事はどうしてるの?」
京子が聞いた。
「わしは料理は作れんし、面倒がり屋じゃけん。コンビニの弁当やカップラーメンだけじゃよ」
「あ、あの。おじいさん」
「なんじゃね」
「台所みても、いいでしょうか」
「ああ。いいとも」
老人が許可したので、京子は床の間を出て、台所へ行ってみた。料理がされている気配がない。ステンレスは、埃をかぶっており、流しには、食べ終わったカップラーメンの容器と、缶ビールの空き缶が、積み重なっていた。何かを温めるために使ったと思われる水の入った鍋が、ガス焜炉の上にのっている。流しも汚れていて、洗っていないようである。冷蔵庫も埃をかぶっていた。開けると、缶ビールが数本、並んであるだけである。床も掃除をしている気配がなく、埃っぽく、換気もしていないのだろう。家の中は澱んだ空気が停留していた。京子は、床の間に戻った。老人はしょんぼりしていた。
「おじいさん」
「なんじゃね」
「今日の晩御飯は、私が鍋焼きうどんをつくるわ。いい?」
「それは、うれしいの」
老人は微笑んだ。
「じゃあ、材料を買ってくるわ」
そう言って京子は、老人の家を出て、車を飛ばして近くのスーパーで、鍋焼きうどんの食材を買って、また、老人の家に戻ってきた。
「おじいさん。鍋焼きうどんの材料を買ってきたわ。つくるから待ってて」
京子は老人に元気よく言った。
「ありがとよ。お嬢さん」
老人はペコペコ頭を下げて礼を言った。京子は台所で、料理して鍋焼きうどんをつくった。すぐに出来た。京子は、台所の隣の食卓に、出来た鍋焼きうどんを用意した。
「おじいさん。出来たわよ」
京子が呼ぶと、老人は、立ち上がって、食卓についた。卓上には、ぐつぐつと鍋が湯気を出して、小さな振動音を出している。その晩は、京子と老人は和やかな雰囲気で、鍋焼きうどんを食べた。

食事が終わると、京子はあとかたずけをして、老人の家を出た。老人は、
「ありがとよ。ありがとよ」
と何度も礼を言った。京子は心地良い思いで車を飛ばした。

   ☆   ☆   ☆

さて、一週間が過ぎた。京子はウキウキした気分でテニススクールに行った。老人が早く来ないかな、との思いで一杯だった。車で迎えに行こうかとも思ったが、それでは、強引に連れてきてしまうような感じになるので、老人が自分の意志で来てくれるのを待つ方が楽しかったのである。京子はテニススクールのクラブハウスで着替えて、コートに出た。順子の車がやって来た。順子は車を駐車場にとめるとラケットを入れたバッグを持ってクラブハウスに入って行った。すぐに順子は、着替えてコートに出てきた。

すぐに、このあいだの青年もスクーターでやってきた。そして、コートにやってきた。順子は、青年を見るとニヤリと笑った。開始時間が近づいているのに、老人が来ないので、京子はだんだん心配になってきた。京子は順子の傍に行った。
「ねえ。順子」
「なあに」
「お願いがあるんだけど・・・」
「なあに」
「試合の時は、おじいさんに、もうちょっと、手加減して欲しいの」
京子は手を合わせて頭をペコペコ下げて言った。だが順子は、ふん、と鼻でせせら笑った。
「いやよ」
順子は無下に断わった。
「どうして」
京子が聞き返した。
「だってー。あんな、じいさん。ダサいじゃん。全然、打てないし。老人にはテニスは合わないわよ。老人はゲートボールでもしてりゃいいのよ」
順子は、茶色く染めた髪を掻き揚げて、ピアスをいじりながら言った。京子は真っ赤になった。
「順子。あなたって、そんな人だったのね。見損なったわ。あなたには、弱い人をいたわる気持ちなんて、かけらも無いのね」
京子は怒鳴るように言った。時間になり、コーチがコートに降りてきた。
「よし。はじめようか」
コーチが言った。
「あ、あの。コーチ」
京子が問いかけた。
「何だね」
「根暗さんは?」
「ああ。根暗さんは、今日は休むと、さっき連絡してきたよ」
それを聞いて京子はがっかりした。レッスンが始まった。いつものように、念入りなストレッチをしてから、レッスンが始まった。今日はスマッシュの練習だった。コーチがロブをあげて、それをスマッシュで打つラリーだった。勿論、京子は上級者だから、コーチの上げるロブは全部、歯切れのいいスマッシュで返した。
「よし。じゃあ、あと残り時間10分だから、最後は試合をしよう」
コーチが腕時計を見て言った。
京子は振り替えの人とペアを組み、順子は、この前の青年とペアを組んだ。京子は、怒りの感情で一杯だったので、ファーストサーブから怒りを込めて全力でボールを打った。順子も、負けじとばかり、全力で戦ったが、京子のペアの振り替えの人は、かなり上手く、結局、京子のペアが勝った。
京子は、口も聞かず順子と別れた。

   ☆   ☆   ☆

レッスンが終わった後、京子は老人のことが心配になって、車をとばして老人の家を訪ねてみた。ピンポーン。京子はチャイムを押した。しばしして、玄関の戸が開いて、老人が出てきた。
「こんにちは。おじいさん」
京子は礼儀正しく頭を下げた。
「ああ。お嬢さんか。どうぞ中へ入りんしゃい」
老人に言われて京子は家に入った。そして、この前と同じように床の間に通された。
「お茶をもってくるけん。待ってておくれ」
そう言って老人は部屋を出て行った。京子は部屋を見回した。しばしして、老人は、すぐに茶に和菓子を持って部屋に戻ってきた。老人が茶を入れて京子に勧めた。京子は茶を飲んだ。
「あ、あの。おじいさん」
「なんじゃね」
「どうして今日、テニススクールに、来なかったんですか?」
老人は黙ってうつむいた。しばし黙っていたが、重たげに口を開いた。
「この前は、お嬢さんが熱心に誘ってくれたんで、行こうと思ったんじゃが・・・。やはりレッスンの日になると、人に迷惑かけるのが悪く思えてきての。足が向かんかったんじゃ」
老人は言って溜め息をついた。
「そうだったの」
京子は寂しそうに頷いた。
「それで、おじいさん。これからテニスはどうするの」
「迷っておるんじゃ。わしは、今まで運動をしたことがないて。自信が無くての。わしには運動は合わんように思うんじゃ」
「そうなの」
京子はがっかりしたような口調で言った。老人は、京子の繊細な指の手をそっと持ち上げた。
「きれいな手じゃの。瑞々しくて。手首もよう引き締まっておる」
老人は、京子の手をじーと見つめながら言った。京子は、恥ずかしくなって赤くなった。
「体の関節も柔らかそうじゃの」
そう言って老人は京子の背後に回って、手首を背中に回した。はじめは右手だけだったが、左手も背中に回した。京子は自分の体の柔らかさを自慢するようにうっとりしていた。その時、老人が、ササッと京子の手首を重ね合わせ、隠し持っていた縄で京子の手首をササッと縛り上げてしまった。
「ああっ。おじいさん。何をするの」
京子は焦って言った。手首の縛めを解こうと、もがいてみたが、ダメだった。老人は、さらに京子の手首を縦と横にカッチリと縛った。老人は、縛りおえると、縄尻を持って、京子の横に戻った。そして、じーと京子を見た。京子は縄を解こうともがいてみたが、手首が引き締まっているため、ダメだった。ついに京子は諦めた。
「お、おじいさん。何をするの」
京子は、恐る恐る聞いた。
「す、すまん。いきなりこんな事をしてしまって」
老人はペコペコと頭を下げて謝った。
「わ、わしには、変態な趣味があっての。あんたのようなきれいな人を見ると縛って、裸にして悪戯したくなってしまうんじゃ」
そう言って老人は、床の間の押し入れの戸を開けた。
「まあ」
京子は吃驚して思わす声を出した。押し入れには、SM写真集が、山のように積まれていたからである。麻縄や色々な小道具もあった。老人は、襖を閉めた。そして、京子の後ろ手の縄尻を大黒柱に縛りつけた。老人は横座りになっている京子の足首も縛り上げた。
「す、すまん。お嬢さん。あんたには、散々、世話になっていながら、こんな事をしてしもうて。しかし、あんたが、あまりにも可愛いもんじゃから、我慢できなくなってしもうたんじゃ」
そう言って老人はペコペコ頭を下げた。老人は、京子をじーと見つめた。京子は恥ずかしくなって顔を赤くした。
「お、おじいさん。わかったわ。私を好きなようにして」
京子は勇気を出して言った。
「そうかい。ありがとうよ」

老人は、大黒柱に縛りつけられて、横座りしている京子のブラウスのボタンを、手を震わせながら上から外していった。そしてボタンを全部、外すとブラウスを大きく開いた。京子の豊満な乳房を収めて、大きく膨らんでいる、フロントホックの白いブラジャーが顕わになった。京子は恥ずかしくなって顔を赤くした。だが、京子は、「やめて」とも言わず黙っていた。相手は、何の楽しみもない可愛そうな一人暮らしの老人である。人もいい。勇気を出して、テニスを始めてみようと思ったが、それも歳のため出来そうもない可愛そうな老人である。やさしい京子は、老人が楽しみを感じてくれるのなら、どんな事をされても耐えようと思ったのである。

老人は、押し入れから箱を持ってきた。老人が、おもむろに開けると、箱の中には、毛筆、割り箸、蝋燭、縄、目隠し、洗濯バサミ、などの小物がいっぱい入っていた。


老人は、毛筆を取り出すと、
「すまんの。お嬢さん」
と言って、京子の首筋や脇腹などをすーと刷いた。触れるか触れないかの微妙な感触が京子を襲った。
「ああー」
京子は、体をくねらせて、悶え声を出した。
「お、おじいさん」
「なんじゃね」
「く、くすぐったいわ」
京子は眉を寄せて苦しげに訴えた。だが老人はニヤニヤ笑いながら、京子を筆でくすぐり続けた。
「ああー。やめてー。おじいさーん」
ついに京子は耐え切れなくなって叫んだ。老人は、毛筆を離して、くすぐるのを止めた。京子はハアハアと肩で荒い息をした。額には珠の汗が滲み出ていた。
「すまなかったの。お嬢さん。しかし、わしは、あんたのような可愛い女子が苦しむのを見るのが一番、興奮するんじゃ。あんたには、すまんが、わしは凄く興奮してしもうて、まるで若返ったみたいな気分じゃ」
老人はニコニコ笑いながら言った。
「わ、わかったわ。おじいさんが楽しくなってくれるのなら、私、何をされても我慢するわ」
京子は言った。
「いや。初めての人に、くすぐり責めは辛いじゃろから、やめておこう」
その代わり、と言って、老人は毛筆を箱にもどした。そして代わりに割り箸を取り出した。老人はニヤニヤ笑いながら、京子の豊満な乳房を収めて、大きく膨らんでいる、フロントホックの白いブラジャーを、割り箸の先で突いた。柔らかいブラジャーに割り箸の先がめり込んで、そこだけブラジャーは窪んだ。老人は、京子の乳房の弾力を楽しむように、ブラジャーのあちこちを、割り箸の先で突いた。
「ふふ。どうじゃね。こうされる気分は」
老人は笑いながら聞いた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を赤くして、顔を反らした。
「ふふ。すまんの。しかし、わしは、こういう悪戯が大好きでの」
そう言って老人は、割り箸で京子の胸を弄んだ。老人はちょうど乳首の所を、割り箸の先で突いたり、撫でたりした。
「ああっ」
乳首がブラジャーに擦れる刺激に京子は思わず声を出した。しかし、それは辛いだけでの感覚ではなかった。京子の乳首は大きくなった。それがブラジャーの上からも見えた。
「ふふ。大きくて形のいい乳首じゃの。根元をタコ糸で縛れば、乳首にタコ糸が結び付けられそうじゃの」
老人はそんな揶揄をした。ブラジャーを割り箸で弄ぶうちに、老人はだんだん息が荒くなっていった。股間の所が勃起しだした。老人は、ハアハア息を荒くしながら股間を擦った。
「お、お嬢さん。わしは、もう興奮して自分が抑えられんようになってしもうた。スカートを外してもいいかね」
老人はハアハアと息を荒くしながら聞いた。
「い、いいわ。おじいさん。好きなようにして」
京子は恥らいながらも素直に許可した。
「す、すまんの」
そう言って老人は京子のスカートのファスナーを外し、スカートを下げて、京子の足先から抜きとった。京子は下半身はパンティーだけとなった。上半身は、後ろ手に縛られ、ブラウスを捲られて開かされ、ブラジャーを顕わにしている、という何ともアンバランスで奇矯な姿になった。京子は恥ずかしそうに顔を赤くして太腿をピッチリ閉じ合わせた。
「ふふ。しなやかでムッチリした美しい太腿じゃの」
老人は、そんな事を言って、京子の体をいやらしい目つきで眺め回した。
「パンティーも降ろしていいかの?」
老人が聞いた。
「い、いいわ。好きなようにして」
その返事には、もうどうなってもいいという捨て鉢な感じがあった。
「それじゃあ、降ろさせてもらうけに」
そう言って老人は京子のパンティーのゴムをつかむと、ゆっくりとパンティーを降ろしていった。京子は思わず、
「あっ」
と叫んでプルプル体を震わせた。だがパンティーが下げられるにしたがって、白桃のような大きな尻が顕わになった。老人はニヤリと笑って、尻が丸出しになった所でパンティーを降ろすのを止め、手を離した。尻は顕わになっているが、正面からは見えない。横から、尻の横の肉が見えるだけである。京子は太腿をピッチリ閉じた。京子は上半身は、後ろ手に縛られ、ブラウスを捲られて開かされ、ブラジャーを顕わにしながら、パンティーを中途半端に降ろされているという何ともアンバランスで奇矯な姿になった。老人はそんな京子の姿を楽しむように、股間をゆっくり擦りながら、じっと京子を眺めている。
「ふふ。どうじゃね。こういう姿にされる気分は」
老人はニヤニヤ笑いながら聞いた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を赤くして言った。
「ふふ。どんなところがじゃね」
「中途半端に脱がされているのが余計、恥ずかしいわ」
「じゃあ、いっそのこと、抜きとってしまった方がいいかね」
老人は意地悪な質問をした。
「え、ええ」
京子は顔を真っ赤にして小さな声で答えた。
「よし」
老人はホクホクした様子で太腿の付け根あたりに引っかかっているパンティーのゴムをつかむと、スルスルと降ろしていき足先から抜きとった。京子は下半身、覆う物が全くなくなった。恥ずかしさのため、見られないよう太腿をピッチリ閉じ合わせた。
「どうじゃね。今の気分は」
「は、恥ずかしいわ」
「ふふ。あんたの両親や友達が、あんたのこんな姿を見たら、びっくりするじゃろな」
老人は、京子をことさら辱めるように言った。
「い、いや。そんなこと言わないで。おじいさん」
京子は父母、友達の顔が頭に浮かんで、急に羞恥の念が襲ってきて顔を真っ赤にして言った。
「すまん。すまん。もう言わんて。ここでは誰にも見られる事がないけに安心しんしゃれ」
老人は頭を掻いて言った。老人は太腿をピッチリ閉じ合わせている京子をじーと見つめた。隙あれば、女の秘部を見てやろうというというように。京子は老人に、そこだけは見られないようピッチリ太腿を閉じ合わせた。しかし不思議なことに、それが真面目な京子にも快感に感じられてきたのである。誰にも知られることなく、しかも相手は人のいい体力のない老人である。
「どうじゃね。今の気分は」
「は、恥ずかしいわ。でも何だか、その恥ずかしさが気持ちいいわ」
京子は頬を赤らめて小さな声で言った。
「ふふ。あんたもついに、被虐の快感を知るようになったの。ここは誰も見ていんけに。安心してうんとマゾの快感を味わうがええ」
そう言って、しばし老人は太腿をピッチリ閉じ合わせている、恥ずかしい姿の京子を黙って眺めた。京子は後ろ手に縛られた手の親指を残りの四つの指でギュッと握りしめた。そして全身を固くして恥ずかしさに耐えた。
「お嬢さん。そう脚をピッチリ閉じていないで、思い切り開いてみてはどうかね」
老人がニヤリと笑いながら言った。
「ええー。そ、そんな」
京子は驚いて、真っ青になって大声で言った。
「ふふ。安心しんしゃれ。恥ずかしい所にはタオルを載せて隠すけに。見られることはないて」
老人は京子を安心させるように言った。京子は、しばし迷って、困惑した顔つきでいた。老人は手拭いを出して京子の前に出した。
「ほれ。これで恥ずかしい所は隠すけに。どうじゃの」
京子はしばしためらっていたが、決断した。
「わ、わかったわ」
京子は言った。老人はニヤリと笑った。
「それじゃあ、足を開きんしゃい」
老人に言われて京子は、横座りの膝を立てた。だが膝はピッチリ閉じている。
「さあ。足を開きんしゃい」
老人はちゅうちょしている京子を促した。
「お、おじいさん」
「なんじゃね」
「あ、足を開いたら、す、直ぐにタオルを載せて下さいね」
京子は顔を真っ赤にして言った。
「ああ。わかっとるとも」
老人は落ち着いた口調で言って、手拭いを持って、待ち構えた。京子は、恐る恐るそっと膝を開いた。
「お、おじいさん。早く載せて」
京子は焦って言った。
「よっしゃ」
老人は、おもむろに、僅かに開かれた京子の膝の間から、手を入れて、京子の恥ずかしい部分の上にタオルを載せた。
「さあ。これで足を開いても、恥ずかしい所は見えんけん。安心して足を開きんしゃい」
言われて京子は足を開いていった。
「ちょっと待ちんしゃれ。いま、いい物を持ってくるけん」
そう言って老人は部屋を出て行った。すぐに老人は戻ってきた。等身大の姿見の鏡を持って。老人は鏡を京子の正面の壁に立てかけた。京子は顔を真っ赤にしてサッと顔を鏡から反らした。ブラウスが捲られ、ブラジャーが丸出しになって、下半身は裸という惨めな姿が鏡にもろに写し出されたからである。
「ふふ。どうじゃね。こうやって自分の姿を見るのは」
老人はえびす顔で聞いた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は顔を真っ赤にして答えた。
「その恥ずかしさが快感になるんじゃ。さあ、もっと足を開きんしゃい」
京子は足を開いていった。それは老人に言われて、というより、京子に起こり始めた怪しい快感を求めてだった。徐々に京子の足は開かれていき、ついに両足がパックリと開ききられた。足はM字の形である。何もなければ女の恥ずかしい部分が丸見えだが、ちょうど其処にタオルが載っているので、其処は隠されている。しかし其処だけ隠されているというのは、余計エロチックだった。
「ふふ。鏡を見て、よう自分の姿を見てみんしゃい」
老人に言われて京子はそっと、鏡を見た。ブラウスをはだけられ、裸の下半身を大きく開いている奇矯きわまりない惨めな姿の自分の姿が、鏡に写っていた。秘部は隠されているが、しかし其処だけ隠されているという姿は、惨め極まりなかった。
「ふふ。どうじゃの。自分の姿を見る気分は」
「は、恥ずかしいわ」
「ふふ。そうじゃろ。花も恥らう美しい女子が、こんな格好を晒しておるんじゃからな。しかし、誰も見ておらんし、わしは誰にも言わん。女子には、みな淫乱な血が流れておる。普段はいつも理性でそれから目を避けているだけじゃ。さあ。もう何もかも忘れて、淫らな自分を解放するがええ」
老人に言われて京子は、そっと鏡を見た。老人以外だれもいないし、誰にも知られることもない。鏡に写っている自分の恥ずかしい姿を見ているうちに、だんだん京子は淫らな気分になっていき、その心地良い気分を貪りつくしたくなってきた。京子は、自分の意志で足をさらに大きく開いていった。ハアハアとだんだん呼吸が荒くなっていった。
「ふふ。どうじゃね。今の気分は」
老人がニヤリと笑って聞いた。
「い、いいわー。き、気持ちいいー」
京子はとうとう、体だけでなく心も裸になって、あられもない告白をした。
「ふふふ。そうじゃろ。もう何もかも忘れて自分に陶酔するがいい」
老人は笑いながら言った。京子は口をだらしなく半開きにし、虚ろになった目で、鏡に写っている自分の姿を見入った。ことさら恥ずかしい所を見てくれとばかりに足を大きく開いた。
「ああー。いいー」
京子は喜悦の叫びを上げた。
「お、おじいさん」
京子はハアハア喘ぎながら言った。
「なんじゃね」
「ブ、ブラジャーのホックを外して」
京子は、あられもない要求をした。
「ああ。いいとも」
老人はニヤリと笑って、京子のブラジャーの肩紐を降ろし、フロントホックを外した。豊満な京子の乳房を締めつけていたブラジャーがプチンと外れて、大きな二つの乳房が顕わになった。もう京子は丸裸同然だった。女の秘部の上にはタオルが載せられていて、其処は隠されて見えないが、それは履いている物ではなく、ただ単に載せられているだけである。老人は、ふふふ、と笑いながら、丸裸の京子の隣に座った。そして、毛筆で京子の乳首をコチョコチョとくすぐり出した。
「ああー」
京子は思わず声を出した。だが老人は念入りに、京子の乳首を毛筆で刷いた。乳首がだんだん大きくなっていった。老人は割り箸をパキンと割って、京子の乳首を摘み、クイと引っ張った。乳首が引っ張られるにつれて、それにつづく乳房も引っ張られてせり上がった。そうしてから、老人はまた、毛筆で丹念に乳首を刷いた。だんだん京子の乳首が固くなって大きくなって尖りだした。京子の呼吸はハアハアと荒くなった。
「ふふ。どうじゃね。こうやって乳首を弄ばれる気分は」
老人は、京子の乳首を毛筆で刷きながら言った。
「い、いいわー。き、気持ちいいー。もうメチャメチャにしてー」
京子は眉を寄せて苦しげな表情で言った。もう京子の全体は珠の汗でいっぱいだった。


老人はニヤリと笑って、裸になった京子の体を毛筆でくすぐり出した。丸出しになった乳房、脇腹、臍の穴、太腿の付け根、などを丹念に刷いた。その度に、京子は、
「ああー」
と苦しげな喘ぎ声を出した。念入りな悪戯がかなりの時間つづいた。
「もう、疲れたじゃろ。今日はこのくらいにしておこう」
そう言って老人は毛筆の悪戯をやめた。老人はすっくと立ち上がると居間を出た。そして、すぐに戻ってきた。水を入れた洗面器とタオルを持って。老人は、洗面器を京子の前に置くと、タオルを水に浸して、湿らせてギュッと絞った。
「全身、汗でぐっしゃりじゃのう。拭いてやるわ」
そう言って老人は濡れタオルで京子の体を拭きはじめた。乳房や太腿の付け根などは特に念入りに拭いた。そして、時々、タオルを洗面器に入れて湿し、ギュッと絞った。全身をタオルで念入りに拭かれる感覚は、全身を触られて弄ばれているような感覚で、京子は恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。老人は、特に京子の乳房や太腿の付け根を念入りに拭いた。まるで揉まれているようだった。
「あん。おじいさん。もういいわ」
京子は恥ずかしくなって言った。老人は京子に言われて拭くのをやめた。
「どれ。服も着させてやろう」
そう言って老人はスカートとパンティーを持って、京子の前に座った。老人は、外れて縮んでいるフロントホックのブラジャーを胸の前に持ってきて、ブラジャーのカップに京子の大きな乳房を収め、フロントホックをつないだ。これで顕わになっていた京子の乳房がブラジャーで隠された。
「さて、今度は下着を履かせてやろう」
そう言って老人は京子のピチピチのパンティーを京子の前に出した。
「あん。おじいさん。下着は自分で履くわ。それより背中の手首の縄を解いて」
京子は、老人に下着を履かされる様子が頭に浮かんで、恥ずかしくなって首を振った。
「まあ、そう遠慮せんと、履かせてやるけに」
老人は、京子のパンティーを広げ、まず右足を通し、次いで左足を通した。そうして下腿から膝、膝から太腿の付け根へとスルスルとパンティーを引き上げていった。そうして、床についている尻も通して、元通りの腰の位置でパンティーの縁のゴムをピチンと音をさせて離した。これで京子はパンティーとブラジャーを身につけさせられた。さらに、老人はスカートも同様に足をくぐらせて太腿の所まで引き上げた。京子はもう老人のなすがままに着せ替え人形になろうと思った。だが、老人は、スカートから手を離した。
「じゃあ、縄を解くけに」
そう言って老人は、京子の背後に廻って、京子の手首の縛めを解いた。京子は、老人の行為の意味が分からなかった。しかし、ともかく後ろ手の縄が解かれたので、京子は完全に自由になった。自由になった京子はあわてて、中腰になってスカートを引き上げ、ホックをとめた。そして、広く捲られているブラウスをあわてて胸の間で閉じ合わせ、ブラウスのボタンを急いではめた。そしてブラウスの裾をスカートの中に急いで入れた。京子は老人が途中で縄を解いた理由を理解した。老人は、京子が、羞恥心から慌てて服を着る様子を見たかったのだ。そしてその通り、老人は京子が慌てて服を着る様子を、さも楽しげにじっと眺めていた。服を着てしまうと京子はほっとした。

「お嬢さん。どうじゃったかの」
老人が聞いた。
「恥ずかしかったわ。でも、凄く興奮しちゃったわ。こんな快感を味わったの、生まれて初めてだわ」
「ふふ。一度、この快感を味わうと病みつきになるて」
「そうなの。私、なんだか怖いわ」
老人はニヤリと笑った。
「ふふ。お嬢さん。家に帰ったら、アソコの毛をきれいに剃るとええ」
「どうして」
老人はニヤリと笑って、箱からある厚みのあるオールカラーの写真集を取り出した。それはSM写真集だった。老人は本を京子の方に向け、おもむろにページを捲っていった。
「まあ」
京子は真っ赤になった。ページをめくる度に、裸の女が、様々な奇態な格好に縛られている姿の写真が出てきたからである。写真の女は後ろ手に縛られ、胸は豊満な乳房を厳しく上下に挟むように縛られ、アソコの毛はきれいに剃られ、縄がアソコの肉に食い込むように取りつけられていた。それはインピ極まりなかった。
「ふふ。どうじゃね。アソコの毛が剃られて無い方がすっきりしているじゃろ。しかも、縄のため、アソコが隠されて、足を大きく開いてもアソコは縄で見られることはないて」
確かにその通りだった。尻の割れ目から女の谷間に食い込んでいる縄は、女の恥ずかしい所をかろうじてギリギリに隠していた。老人は、箱から麻縄をとり出して、SM写真集と一緒に京子に渡した。
「ほれ。麻縄と写真集をあんたにやるけん。今日、家に帰ったら、アソコの毛を剃って、自分でアソコに縄を食い込ませて縛ってみんしゃれ。気持ちようなるて」
「い、いやだわ。おじいさん。変なこと言わないで」
京子は顔を赤らめて言った。だが老人は強引に、縄と写真集を京子のバッグの中に入れた。
「さあ。あんたも疲れたじゃろ。もう今日は帰んしゃれ」
「はい」
京子は素直に返事した。
「家に帰ったら、アソコの毛をきれいに剃って、自分で自分を縛ってみんしゃれ。気持ちようなるて」
老人はニヤニヤ笑って言った。
「いやだわ。おじいさん」
京子は老人の肩をポンと叩いた。
「わしは、今日のあんたの姿が忘れられんわい。あんたが帰ったら、わしはあんたの裸を思い出して、うんと恥ずかしい格好に縛っていじめる事を想像して楽しむけん。今日は寝られそうもないわ」
そう言って老人は京子の手をギュッと握った。
「いやだわ。おじいさん。変なこと言わないで」
京子は顔を赤くして老人の肩をポンと叩いた。そして立ち上がってバッグを持って居間を出た。京子は老人に見送られながら車に乗ってエンジンをかけた。京子は微笑して手を振りながらアクセルベダルを踏んだ。

   ☆   ☆   ☆

京子は家に着いた。京子はクタクタに疲れていたため、すぐにパジャマに着替え、ベッドに横になった。すぐに眠気が襲ってきて、疲れのため、京子は泥のように、ぐっすり眠り込んだ。

   ☆   ☆   ☆

目を覚ますと、もう外は暗くなっていた。ぐっすり眠ったため、疲れもとれて、京子は大きな欠伸をしてウーンと体を伸ばした。しばし布団の中でじっとしていると、きっきの老人の家での痴戯が思い出されてきた。鏡に写った、大きく足を開いた裸の自分の姿、老人に乳首を毛筆や割り箸で弄ばれて興奮した事、全身を毛筆でくすぐられた事、あられもなく、気持ちいいと大声で告白した事、などが鮮明に思い出されてきて京子はだんだん興奮してきた。京子は老人に乳首を毛筆や割り箸でくすぐられた事を思い出して自分の乳首を指でそっと摘んでみた。コリコリ弄んでいる内にだんだん興奮して息が荒くなってきた。
「ああっ」
京子は、小さな喘ぎ声を出した。京子は老人から貰った写真集が気になり出した。それでベッドの横のカバンから、老人が入れたSM写真集を取り出した。開いてみると、そこには、丸裸で縛られて、ありとあらゆる惨めな格好をさせられた女達の写真があった。縛り方は様々だが、後ろ手に縛られ、乳房を挟むように胸を縛られ、そして、アソコの毛はきれいに剃られて、女の谷間に縄を食い込ませるようにして、縛られているのが多かった。それ以外でも、後ろ手に縛られて、うつ伏せで膝を開いて尻を高々と上げている姿、柱を背にして、柱に縛りつけられている姿などの姿の写真が多かった。女の毛は、剃られているものもあったが、剃られていないものもあった。しかし老人が言ったように確かに、きれいに剃られているアソコに縄が食い込んでいる方がエロチックだった。写真を見ているうちに京子はだんだん興奮してきた。胸を揉む手の動きは激しくなり、アソコに手を持っていって其処を揉んだ。
「ああー」
京子は興奮して喘ぎ声を出した。京子はだんだん、自分も写真の女のように、裸にされて縛られてみたいと思うようになった。京子は、ベッドから起き上がった。前には等身大の姿見の鏡が立てかけてある。京子はパジャマを脱いで、ブラジャーを外し、パンティーも脱いで、一糸纏わぬ丸裸になった。そして鏡の前に立った。自分の裸をまじまじと見つめるのは、恥ずかしく、京子は乳房と秘部を手で覆った。京子は、柱に縛られている女の写真を見ながら、自分も写真の女のように、背中に柱があることを想像して、両手を後ろに廻して手首を重ね合わせてみた。二つの豊満な乳房が丸出しになり、京子は、恥ずかしくなって膝を重ね合わせて女の部分を隠そうとした。丸裸にされても見られないように隠そうとする動作は何とも言えない蕩けるような甘美な快感があった。京子は、だんだん興奮してきて、床にうつ伏せになって、尻を高々と上げてみたり、床に横に寝て片足を高々と上げてみたり、と色々なポーズをとってみた。京子は、いっそう興奮していった。なにしろ、鏡の前でこんな事をするのは生まれて初めてなのである。京子は、今日、老人にされたように、鏡の前に座って、両手を後ろに回し、足を大きくM字に開いてみた。全てが丸見えである。老人に、自分がこんな格好を晒したかと思うと、京子はあらためて恥ずかしくなった。それで、床の上にある、脱いだパンティーをとって、女の部分の上に載せて隠した。それで再び、両手を後ろに組んで、足をM字に大きく開いてみた。パンティーが載っているため、アソコは隠されて見えない。しかし、その方が丸裸よりかえってエロチックだった。京子はもう激しい興奮でメロメロになっていた。ハアハアと息も荒くなってきた。一休みしようと、京子は足を閉じて、裸のまま、SM写真集をめくってみた。確かに、毛が生えているより、きれいに剃ってしまってある方がエロチックだった。
京子は、自分も毛を剃ってしまおうと思った。


京子は立ち上がった。そして、ビニールとハサミを持ってきた。京子は、ビニールを鏡の前の床の上に敷くと、その上に座って足を広げた。そして恥毛を摘み上げると、ハサミでジョキジョキと切っていった。其処の毛を切るのは生まれて初めてで、京子はドキドキした。京子は一人で、鏡の前で、丸裸になって、こんな事をしている自分が恥ずかしくなってきた。恥毛の大部分が無くなった。アソコは芝刈りをした後のようになった。京子は、裸のまま風呂場へ行き、洗面器にお湯を入れた。そして、ボディーソープと剃刀を持って、鏡の前に戻ってきた。京子はビニールの横に湯の入った洗面器と、ボディーソープと剃刀を置いた。そしてビニールの上に座った。京子はボディーソープを洗面器の湯の中に垂らして、かき混ぜて泡立てた。そして、股を開き、洗面器の泡立った湯をすくって、アソコを湿らせた。そして、剃刀で恥毛を剃っていった。アソコの毛はハサミで切って、坊主刈りのようになっているので、簡単に剃れた。アソコが乾いてくると、その都度、洗面器の湯をすくって湿らせた。そして、また剃っていった。とうとう全部、きれいに剃れた。京子は洗面器やボディーソープなどを持って、風呂場へ行った。そして、シャワーでアソコをきれいに流した。そしてタオルで体を拭いて、寝室に戻ってきた。京子は鏡の前に立ち、毛のなくなった自分の体を見た。アソコの毛が剃られ、まるで子供の時のようである。何とも言えない恥ずかしい気持ちになった。京子は、バッグから老人に渡された麻縄をとり出してみた。そして、写真にあるように、縛ってみた。縄を二つに畳んで二本にした。そして、まず、くびれた腰の上をベルトのように、巻いて臍の所でキュッと結び合わせた。そして、その結び目をクルリと背中の方へ持っていった。そして、縄の余りを尻の割れ目に食い込ませてから、前に持っていき、閉じ合わさっている女の肉を開いて、二本の縄をしっかりとアソコの割れ目の間に食い込ませ、キュッと引っ張って、臍の前の所で、横向きの腰縄にカッチリと結びつけた。これで完全な股縄が出来上がった。京子は股縄をした自分の裸を鏡で見た。二本の縄は女のアソコに食い込んで、実にいやらしく見える。踵を返して後ろを向くと、縄は尻の割れ目にしっかりと食い込んで、ムッチリした尻の肉が縄を飲み込んでしまっているかのようで、尻はピッチリ閉じ合わされて縄は見えず、尻の割れ目の上のあたりから縄が現れて、腰縄にカッチリと結び付いている。まるで相撲取りのようである。ほの暗い快感が京子に起こってきた。いやらしいものではあるが、何かセクシーなようでもあり、それでいて縄は京子の柔らかい肌に食い込んで、はずれない。Tバックを履いた感覚にも近いが、はずす事は出来ない。自分で、締めたのだから、とる事は出来るが、もし他人に後ろ手に縛られて、このように取りつけられたら、どんな気持ちだろうと京子は思った。京子は鏡の前に座って、立て膝で足を大きく開いてみた。裸だったら、アソコが開いて丸見えになるはずだが、女の割れ目に食い込んでいる二本の縦縄が、そこを隠していた。そして、まさに、そこだけが隠されていた。女の毛も剃られて、女の恥ずかしい部分は全部、丸見えも同然だった。今度は京子は、鏡に尻を向けて、膝を大きく開いて、尻を高く上げてみた。そして鏡を見てみた。立った時には、尻はムッチリ閉じ合わされて、縄はその中に埋もれてしまって見えなかったが、四つん這いで膝を大きく開いて尻を高く持ち上げると、尻の割れ目がパックリ開いてしまっている。もし裸だったら尻の穴が丸見えだが、尻の割れ目に二本の縄が、しっかり食い込んでいて、尻の穴は縄に隠されて見えない。京子はそれ以外にも色々なポーズをとってみた。カッチリと取りつけられた腰の縄は、はずれることなく、京子の柔肌に食い込んで、ついてまわる。少しでも動く度に、しっかり取りつけられた縄が、微かに動いて京子の敏感な所を刺激した。京子はだんだん興奮して息が荒くなってきた。まるで縄が意地悪く京子を責めているように感じられた。ハアハアと息が荒くなった。疲れてきたので、京子は股縄を外した。やっと意地悪な縄から開放されて京子はほっとした。京子はパンティーを履き、ブラジャーをつけた。そしてパジャマをきた。そしてキッチンに行ってカレーライスをレンジで温めて食べた。もう夜の11時を過ぎていた。食べおわると京子は風呂に入って、丁寧に体を洗い、ゆったりと湯船に浸かった。風呂から出ると、京子はパンティーを履いて、スケスケのネグリジェを着て、ベッドに潜り込んだ。部屋の明かりを消したが、サイドテーブルの明かりを点けて、写真集をじっくり見た。後ろ手に縛られて、その縄尻を天井の梁に吊り上げられ爪先立ちしてる姿、足首を縛られて逆さ吊りにさせられている姿、縛られて蝋燭を垂らされている姿、片足を高々と吊り上げられて、アソコがパックリと丸見えになっている姿、机の上に仰向けに縛られて、乳首やアソコに選択バサミを取りつけられている姿。など無数のバリエーションがあった。さらに着物も、すべて全裸ではなく、上はブラウスは着ているのに、下半身は丸裸だったり、パンティーも中途半端に降ろされていたり、片足に引っかかっていたり、全裸なのに、足袋だけ履いていたりした。それは、ことさらに女を辱めていた。女は羞恥心から、たとえどんな姿にされようとも、必死で足を閉じ合わせて必死でソコだけは隠そうとしていた。京子は激しく興奮した。写真を見ながら、胸を揉んでみたり、パンティーに手を入れてアソコを擦ってみたりした。
「ああ。私もこんな風に、色々な格好に縛られたい」
京子の被虐願望は、もう抑えられなくなっていた。一時間以上も京子は写真を見ていたが、0時を過ぎ、2時頃になると、眠気が起こってきた。京子は写真集をサイドテーブルに置いてサイドランプのスイッチを消した。いつしか、京子は深い眠りに入っていった。

   ☆   ☆   ☆

翌日。10時頃、京子は目を覚ました。ぐっすり寝たので疲れは完全にとれていた。今は夏季休暇で大学の授業はない。京子は裕福な家庭なので学費や生活費の仕送りも親が十分してくれるので、アルバイトはしていない。それより京子は真面目な性格だったので、大学の勉強にうち込んでいた。皆は、授業に出ず、アルバイトをして、試験は、過去問の一夜漬けで単位を取っていたが、それでは、意味も分からず、卒業したら、大学で学んだ知識はパーと忘れてしまう。そんな事は実に勿体ないと京子は思っていた。京子は、貪婪な知識欲から授業は全部出て、分からない事は大学の図書館で調べ、手当たり次第に文学書や哲学書や社会問題の本を読んでいた。そのため学校の成績は主席だった。皆がやっている合コンなどには出なかった。誘われた事もあるが、断わった。男と酒を飲んでカラオケを歌って、お喋りしたり、遊んだりしてダラダラと付き合うのは時間の無駄だと思っていた。そんな真面目一筋の京子だったが、昨日から、気持ちが一変してしまった。真面目で自分をよく律する人間ほど、一度、心の枷が外れると、一挙に雪崩れくずれてしまうものである。男は年中、発情しているが、女の性欲は受動的である。しかし女が一度、性欲に目覚めてしまうと、それを求める激情は自分では、もう抑えが利かなくなってしまうのである。京子は、昨日、まさに性に目覚めてしまったのである。しかし京子は、目覚めてしまった性欲を、そのまま発散させる事には、まだ抵抗を感じていた。性欲を受け入れて、それに、はまってしまって、本当に大切な学問を疎かにしてしまうことを恐れた。京子はまだ性欲と勉強のバランスのとり方がわからなかった。それで、京子は、キッチンに行って、朝食と昼食を兼ねた、トーストとサラダとチーズを食べた。食べおわると、卓上にあった、「ヘーゲル 弁証法による歴史解釈」という読みかけの本の続きを読み出した。これは大学で歴史を教えている教授が書いた本で、観念的で難しかった。だが難しいゆえに、あえて読みこなそうと挑戦したのである。しかし、だんだん話が難しくなっていき、分からなくなってきた。すると、官能の悩みが京子を襲い出した。京子は緊縛された女の写真が見たくて見たくてたまらなくなった。だんだん息も荒くなり出した。
「もうダメ」
京子は立ち上がるとフラフラと寝室に行き、ベッドに身を投げ出して、SM写真集を開いた。京子は写真の惨めな格好の女に感情移入して、自分が惨めになることを想像した。ハアハアと息が荒くなり出した。京子は、胸を揉んでみたり、パンティーの中に手を入れてアソコを揉んだりした。だが、それだけではとても我慢できなかった。京子はフラフラと立ち上がると、財布を持って、家を出た。そして駐車場に泊めてある車に乗ると、エンジンをかけて車を出した。京子はもう何も分からなくなっていた。ともかく、老人の家に行こう。そして、昨日のように惨めな格好にしてもらおう。そうしなければ、自分はおかしくなってしまう。そう京子は思いながら、老人の家に向かって車を運転した。運転している時もハアハアと呼吸は荒かった。交差点で赤信号で停止すると、早く青にならないかと待ち遠しくて仕方がなかった。

   ☆   ☆   ☆

ようやく老人の家に着いた。京子は車から降りると、チャイムを鳴らした。ピンポーン。チャイムが家の中に響く音が聞えた。直ぐに玄関の戸が開いて、老人が出た。

老人は京子を見るとニヤリと笑った。
「よう来たの」
「こんにちは。おじいさん」
京子は高鳴る興奮を抑えて、落ち着いた口調で挨拶した。
「さあ。上がりんしゃい」
老人に言われて京子は、家に入った。老人は京子を昨日の居間に案内した。京子はペタンと畳の上に座り込んだ。
「今日は何の用かの」
老人は落ち着いた口調で聞いた。だが京子は返事をしなで顔を赤くしている。それで老人がさらに言った。
「昨日、あんたが帰った後、わしは、あんたの事を思い出して、眠れんかったわ。あんたがまた来てくれてわしは、すごく嬉しいんじゃ」
老人はニコニコ笑いながら言った。
「ふふ。家に帰ってから、アソコの毛を剃ってみたかね」
「あげた縄で自分を縛ってみたかね」
老人はニコニコ笑いながら言った。京子はうつむいて顔を真っ赤にしている。老人は、押し入れの戸を開けて、SM写真集を取り出して、京子に見せるように開いた。裸で縛られている女の写真が次々とあらわれた。京子は真っ赤になった。
「お、おじいさん」
京子は震える声で言った。
「なんじゃね」
「私を裸にして。そして縛って。私をみじめの極地にして」
京子は吐き出すように言って、老人に身を投げ出した。
「よっしゃ。よっしゃ」
老人は嬉しそうに言って、京子の華奢な肩をつかんだ。老人はホクホクした顔で京子のブラウスのボタンを外していき、ブラウスを脱がせた。京子の豊満な乳房を収めて、大きく膨らんでいる、白いブラジャーが顕わになった。上半身はブラジャーだけになった。老人はさらにスカートのジッパーもはずして、スカートも抜きとった。ムッチリした大きな尻と女の恥肉を収めているパンティーが顕わになった。これで京子はもう、ブラジャーとパンティーだけ、という下着姿になった。老人は、ホクホクした顔つきで、京子のブラジャーの肩紐を降ろし、フロントホックを外した。豊満な京子の乳房を締めつけていたブラジャーがプチンと外れて、二つの大きな乳房が締め付けから開放されてプルンとはじけ出た。さらに老人は京子のパンティーのゴムを掴むと、スルスルと降ろしていった。
「ふふ。毛をきれいに剃ったんじゃな。気持ちよかったじゃろ」
老人は京子の毛がきれいに剃られているのを見つけると、そんな揶揄をした。だが京子は黙ったまま顔を火照らせて老人に身を任せている。老人は京子の背中に廻って、両手をグイと捻り上げた。
「ああっ」
思わず京子は声を洩らした。老人は京子の引き締まった手首を重ね合わせると、麻縄でカッチリと手首を縛り上げた。そして、その縄尻を胸の前に持っていき、乳房を挟むように、上下に二巻きずつ廻して胸を縛ってから、手首の所に結びつけた。正面の鏡には、一糸纏わぬ丸裸で後ろ手に縛られ、大きな乳房を挟まれるように縛られている自分の姿があった。縛りの基本の形である。昨日は、股を縄で縛ったが、手首や胸は自分では縛れない。二の腕に縄が食い込んで、へこむほどきつく縛られているため、乳房は上下の縄の間から苦しげに、搾り出されているかのようである。胸の下の方の二本の縄は、大きな乳房の下垂によって隠されてしまっている。もう、こう縛られてしまっては、自分では、どうすることも出来ない。老人に何をされようとも。老人は京子の前にSM写真集を開いて、パラパラとページをめくった。様々な格好に縛られた裸の女の写真が次々と出てきた。
「ふふ。どんな風に縛られたいかの」
老人は、さも京子を捕獲したかのように縄尻を持ちながら、京子に聞いた。
「も、もう、好きにして」
京子の頭は激しい興奮と、蕩けるような官能で真空になっていた。

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