夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

平安古筆の名品

2016-11-24 23:33:42 | 日記
現在、五島美術館で開催中の特別展「平安古筆の名品 飯島春敬の観た珠玉の作品から」を観に行った。(12月4日まで開催)
敷地内の庭園も散策してきたが、先月来たときより紅葉が進んできれいだった。


書家であり古筆研究家でもあった飯島春敬のコレクションを中心に、仮名古筆の名品が100点近く展示され、非常に見応えがあった。
展示は、平安前期(900年頃)から鎌倉時代(1200年頃)までの約300年間を4期に分け、仮名の変遷が理解しやすいように配慮されていた。

君なくてあれたる宿の板間より月のもるにも袖はぬれけり
(太田切 伝藤原公任筆)

こひすればわが身ぞ影となりにけるさりとて人にそはぬものゆゑ
(古今集切・伝藤原行成筆)

わがごとく物思ふ人はいにしへも今行く末もあらじとぞ思ふ
(拾遺抄唐紙色紙・伝源俊頼筆)

のような名歌も、流麗で格調高い筆致と美しい料紙と共に味わうと、より深く心に響いてくる。
今私は、勤務校の文学の授業で学生に『百人一首』を教えているのだが、彼らに和歌がこのようにしても享受・鑑賞されてきたことを、ぜひ伝えてやりたいという気持ちになった。