プレスラーの至芸

2014-04-14 13:04:38 | Weblog
庄司さやか、プレスラーのデュオリサイタルに行く。2日連続の松本行きは迷うところだったが、90歳の名匠プレスラーが弾くブラームスの「雨の歌」が聴きたくて、ママに小言を言われながらも出掛けた。庄司さんも当然のことながら上手だったが、プレスラーのピアノには、心底、打たれるものがあった。氏のピアノは、弾くという動作を超えて、人の心にまろやかに語りかけてくるものだ。そのやわらかくて心地のよいこと。いつまでもその響きに浸っていたい感じがした。「雨の歌」がこんなに達観して、喜びに満ち満ちている演奏を私は他に知らない。終わりの静寂が来るまで、至福の時を過ごした。さらに圧巻だったのは、アンコールで弾かれたソロでのショパン。遺作のノクターンとマズルカ。柔らかい響きの中にも、気高い一本の線が通っている感じ。これは私が若い頃から聴いてきた世界的ピアニストの中でも最高レベルの音に属する。90年かけて磨き上げたこの音は、人類の宝といっても言い過ぎではないだろう。今までのピアノのイメージを根底から覆す大きな出来事となった。