陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ホロコーストを再現するイスラエル

2009-01-15 15:39:41 | 中東問題
 ロマン・ポランスキー監督の「戦場のピアニスト」(2002)と言う映画がある。ユダヤ人ピアニストのウワディスワフ・シュピルマンが、ナチス・ドイツの支配下にあるポーランドの首都ワルシャワに留まり、逃避行を繰り返しながら1945年に解放されるストーリーだ。

 当時、ワルシャワ(=ワルソー)の一角に、ナチスはレンガ塀で囲ったユダヤ人のゲットー(強制居留区域)を設けて、ワルシャワに住む40万人にも及ぶユダヤ人をそこへ閉じ込めた。財産を持つユダヤ人も、殆ど全てを剥奪され、着の身着のままでゲットーに放り込まれる。そこで彼らは非人間的取り扱いを受け、人間の尊厳をないがしろにされる。

 そして、ナチス・ドイツはゲットーに住むユダヤ人を少しずつ家畜用列車へ放り込み、「トレブリンカ強制収容所」へ搬送した。彼らを殺戮した上で、ゴミのように焼却するためだ。ユダヤ人であるポランスキーは、映画「戦場のピアニスト」でこれでもかと言う位にゲットー内の悲惨なユダヤ人たちの生活を映し出す。ワルシャワの街とゲットーを遮断するレンガの巨大な壁は、人間性を押しつぶしたのだ。

 人間としての尊厳維持と民主主義体制を求めるユダヤ人たちは、ナチス・ドイツに対し、ゲットー蜂起を実行するが、たちまち鎮圧される。だが、その精神はポーランド人による「ワルシャワ蜂起」(ポーランド解放運動)を促した。

 私は、当時のユダヤ人に深く同情するし、潰されてはしまったが、「ワルソー・ゲットー蜂起」を支持する。人種を越えて、人間の尊厳維持を求めるための止むにやまれぬ行動だったと思うのだ。

 それから約60年を経て、ユダヤ民族は「ガザ・ゲットー」を作り、コンクリート塀と地雷原でパレスチナ人140万人を囲い込んでいる。そして、ガザ市近郊には40万人もの人間が犇(ひし)めき、食料不足と劣悪な衛生状況下に空爆を怯えている。国際協定違反の白リン弾も、イスラエル軍により用いられていると言う。ナチス・ドイツではなく、ユダヤ人によるホロコーストの再現である。

 今日、パレスチナ側の死者は1050人を越え、負傷者も4000人を超したという。女・子供が半数以上だろう。ハマスのロケット発射を根絶しようとするイスラエルの作戦は、激しい国際的な批判と反感を買いつつある。
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