ライス米国務長官は、二国間交渉を避けて重要テーマごとに国際会議を主催し、懸案を討論するのが好きなようだ。米国によるイラク治安が上手く行かないので、今年春には周辺国や関連する国々を集めてイラク治安のための国際会議を開いたが、成果は殆ど無かった。私は、六者協議もライス長官のアイディアでないかと思っているが、どの会議も中々米国の思うように事は進まない。
今度は、ライス国務長官、米国の主催でパレスチナ問題に関してイスラエル・アラブ諸国間の溝を埋めようと「中東和平会議」招請を考えた。
日経新聞9月24日付けの報道では、
米、中東和平でシリアも国際会議に招待
【ニューヨーク23日共同】中東和平に取り組む米国、ロシア、国連、欧州連合(EU)の四者は23日、ニューヨークの国連本部で閣僚級会合を開き、ライス米国務長官は11月ごろに米国が主催する国際会議に、イスラエルと対立関係にあるシリアを含むアラブ諸国も招く考えを明らかにした。
会合後の会見でライス長官は、国際会議は「真剣で本質的なものになる」と強調。「会議へ参加することには責任が伴う。暴力を放棄し、平和的解決に向けて努力するということだ」と述べ、イスラム原理主義組織ハマスへの支援を続けるシリアをけん制した。
国務省高官によると、会議には四者とイスラエル、パレスチナが参加予定で、サウジアラビアも招待されるアラブ諸国の一つ。ライス長官は「パレスチナとイスラエルの両者が紛争を終わらせようとする努力を、支えようという機運が出てきている」と述べ、「この機会を逃すべきではない」と和平に向けた強い意欲を示した。
この日の四者会合後、潘基文国連事務総長は、年内にパレスチナ自治政府への財政支援実施などを呼び掛ける声明を発表した。(10:32)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070924STXKB002524092007.html
ところが昨年夏のレバノン事変で、ライス長官はイスラエル側に立って強硬な意見を述べていたから、アラブ諸国は彼女を信用しない。
中東和平会議、アラブ側の出席留保相次ぐ
【カイロ=安部健太郎】11月に米国で開かれる中東和平国際会議を前に、アラブ諸国から出席留保の表明が相次いでいる。イスラエルが会議の共同宣言をパレスチナ国家との共存など一般原則の確認にとどめる方針であることに反発、イスラエルに全占領地からの撤退を求めたアラブ側和平案への言及を出席の条件としているためだ。米国は来週にライス国務長官が中東各国を訪問し仲介を進めるが、着地点はまだ見えず、両者の駆け引きが本格化している。
シリアのアサド大統領は今月初め、英BBC放送に対し、同国がイスラエルに占領されているゴラン高原についての討議がなければ和平会議に出席しないと表明した。サウジアラビアのサウド外相も9月下旬、「イスラエルが入植地建設凍結などの策を講じなければアラブ諸国は会議に出席しない」と述べ、態度を硬化させた。(17:15)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071009AT2M0900Q09102007.html
そこで、ライス長官は10月中旬に面子に掛けてアラブ諸国へ説得に出かけた。
米国務長官、イスラエル入り・中東和平会議で準備
【エルサレム14日共同】ライス米国務長官は14日、米国で11月にも開かれる予定の中東和平国際会議準備のため、イスラエルを訪問した。中東地域に数日間滞在し、イスラエル、パレスチナ、エジプトなどの首脳と会談する。
ライス長官は、イスラエルとパレスチナが国際会議の土台となる共同文書で合意し、サウジアラビアなどイスラエルと国交がないアラブ諸国の多くが会議参加を表明することを期待している。しかし、ロイター通信によると、ライス長官は同行記者団に、今回の中東訪問中に打開を図るのは難しいとの見方を示した。(21:09)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071014STXKA023614102007.html
歴訪の結果、エルサレムでリブニ外相と共同記者会見したライス長官の発言を聞いてみる。
準備協議の難航認める 中東和平会議で米国務長官
(10/18 10:15)
【エルサレム18日共同】ライス米国務長官は17日、4日間の中東歴訪をほぼ終えてエルサレムで記者会見し「(和平への)好機にあるが、前途には大変な仕事がある」と述べ、11月にも開催予定の中東和平国際会議に向けたイスラエルとパレスチナの準備協議が難航していることを認めた。
長官は同日、パレスチナ自治政府のアッバス議長、イスラエルのオルメルト首相らと会談。アッバス議長は記者団に、和平会議の土台となる共同文書に国境、聖地、難民などの核心問題解決の枠組みを盛り込むようあらためて主張。「どんな犠牲を払ってでも会議に出席するわけではない」と欠席の可能性をちらつかせ、譲歩に否定的なイスラエルをけん制した。
一方、ライス長官と共同記者会見したイスラエルのリブニ外相は「与えられた時間の中で、できるだけ広範な合意を目指す」と、共同文書は大ざっぱな内容にとどめるべきだとの立場を示し、期待を高めすぎれば「挫折や暴力を招く」と警告した。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/55627.html
この「中東和平会議」は、ワシントン近郊のアナポリス(海軍兵学校のある場所)で11月下旬開催との触れ込みだが、果たしてアラブ諸国が揃って参加するのか、あるいはボイコットするのか予断を許さない。
アラブ諸国は、イスラエルが現在占領している地域から撤兵し、非占領地域をパレスチナへ返還することを前提としているから、それが話し合われない限り会議出席をしないだろう。シリアは、ゴラン高原を返せと声高に言い続け、それを議題にすることを求めている。
中東問題に詳しい佐々木良昭氏は、「中東和平会議」準備段階でイスラム国家のアラブ諸国が乗り気でない理由の一つとして、エルサレムの神殿問題を彼のブログで指摘している。以下、佐々木氏のエントリーNO・736パレスチナ・イスラエル関係で最も重要な話から部分引用すると、
パレスチナの元エルサレムのムフテイであるイクリム・サブリ氏、エルサレムにある嘆きの壁について、以下のようなコメントをエルサレム・ポストにしているのだ。
曰く、嘆きの壁はアクサ・モスクの一部であって、ソロモンの神殿あるいはその後に再建されたユダヤの神殿の一部ではない。神殿は別のところにあったのであり、アクサ・モスクの下にあったのではない。したがって、ユダヤ人がアクサ・モスクの下が神殿だと主張して、アクサ・モスクの中で礼拝する権利はない、という内容なのだ。
彼の説明によれば、したがってアクサ・モスクがある場所は、テンプル・マウント(ソロモンの神殿のあった場所)ではないということになる。
アラファト議長も同様の主張をしていたということだが、そうなるとユダヤ人たちはどこを、ソロモンの神殿跡として巡礼するのであろうか。ユダヤ人がこの元エルサレムのムフテイの話を信じるか否かは別にして、この話はユダヤ人にとってとんでもない話なのだ。
注:嘆きの壁はソロモン王が建立した神殿の一部だとし、世界中のユダヤ人たちは、この壁に巡礼し祈りをささげている。そして、ユダヤ人で結成された委員会があり、ソロモンの神殿を再建しようとしている。そのためにはアクサ・モスクを破壊しなければならない、ということになっている。
領土問題以外に、このような根源的な内容があれば、何度国際会議を開こうと解決するものではない。イスラエルがアラブ諸国と調和して生きていくためには、宗教問題も含めて相当な譲歩が必要と考えるが、米国はそれを説得しかねている現状だ。
元外交官の原田武夫氏が「中東和平会議」に絡めて、小ブッシュ大統領が辞任するのではないかとの噂を披露している。この会議にシリアを招いていることが、ネオコンの逆鱗に触れ、小ブッシュ大統領に圧力を掛けると言うのだ。そのような噂が飛び交う位、この「中東和平会議」は問題を孕んでいる。
米国が中近東から手を引き、イスラエル支援をしなくなれば、<ドラゴンの歯>イスラエルは間違いなく短期間の内に滅びるであろう。その前に、イスラエルは核兵器を用いる可能性が大きい故、それを切っ掛けに中東大戦争が起きて、世界は滅亡するかも知れぬ。
今度は、ライス国務長官、米国の主催でパレスチナ問題に関してイスラエル・アラブ諸国間の溝を埋めようと「中東和平会議」招請を考えた。
日経新聞9月24日付けの報道では、
米、中東和平でシリアも国際会議に招待
【ニューヨーク23日共同】中東和平に取り組む米国、ロシア、国連、欧州連合(EU)の四者は23日、ニューヨークの国連本部で閣僚級会合を開き、ライス米国務長官は11月ごろに米国が主催する国際会議に、イスラエルと対立関係にあるシリアを含むアラブ諸国も招く考えを明らかにした。
会合後の会見でライス長官は、国際会議は「真剣で本質的なものになる」と強調。「会議へ参加することには責任が伴う。暴力を放棄し、平和的解決に向けて努力するということだ」と述べ、イスラム原理主義組織ハマスへの支援を続けるシリアをけん制した。
国務省高官によると、会議には四者とイスラエル、パレスチナが参加予定で、サウジアラビアも招待されるアラブ諸国の一つ。ライス長官は「パレスチナとイスラエルの両者が紛争を終わらせようとする努力を、支えようという機運が出てきている」と述べ、「この機会を逃すべきではない」と和平に向けた強い意欲を示した。
この日の四者会合後、潘基文国連事務総長は、年内にパレスチナ自治政府への財政支援実施などを呼び掛ける声明を発表した。(10:32)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070924STXKB002524092007.html
ところが昨年夏のレバノン事変で、ライス長官はイスラエル側に立って強硬な意見を述べていたから、アラブ諸国は彼女を信用しない。
中東和平会議、アラブ側の出席留保相次ぐ
【カイロ=安部健太郎】11月に米国で開かれる中東和平国際会議を前に、アラブ諸国から出席留保の表明が相次いでいる。イスラエルが会議の共同宣言をパレスチナ国家との共存など一般原則の確認にとどめる方針であることに反発、イスラエルに全占領地からの撤退を求めたアラブ側和平案への言及を出席の条件としているためだ。米国は来週にライス国務長官が中東各国を訪問し仲介を進めるが、着地点はまだ見えず、両者の駆け引きが本格化している。
シリアのアサド大統領は今月初め、英BBC放送に対し、同国がイスラエルに占領されているゴラン高原についての討議がなければ和平会議に出席しないと表明した。サウジアラビアのサウド外相も9月下旬、「イスラエルが入植地建設凍結などの策を講じなければアラブ諸国は会議に出席しない」と述べ、態度を硬化させた。(17:15)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071009AT2M0900Q09102007.html
そこで、ライス長官は10月中旬に面子に掛けてアラブ諸国へ説得に出かけた。
米国務長官、イスラエル入り・中東和平会議で準備
【エルサレム14日共同】ライス米国務長官は14日、米国で11月にも開かれる予定の中東和平国際会議準備のため、イスラエルを訪問した。中東地域に数日間滞在し、イスラエル、パレスチナ、エジプトなどの首脳と会談する。
ライス長官は、イスラエルとパレスチナが国際会議の土台となる共同文書で合意し、サウジアラビアなどイスラエルと国交がないアラブ諸国の多くが会議参加を表明することを期待している。しかし、ロイター通信によると、ライス長官は同行記者団に、今回の中東訪問中に打開を図るのは難しいとの見方を示した。(21:09)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071014STXKA023614102007.html
歴訪の結果、エルサレムでリブニ外相と共同記者会見したライス長官の発言を聞いてみる。
準備協議の難航認める 中東和平会議で米国務長官
(10/18 10:15)
【エルサレム18日共同】ライス米国務長官は17日、4日間の中東歴訪をほぼ終えてエルサレムで記者会見し「(和平への)好機にあるが、前途には大変な仕事がある」と述べ、11月にも開催予定の中東和平国際会議に向けたイスラエルとパレスチナの準備協議が難航していることを認めた。
長官は同日、パレスチナ自治政府のアッバス議長、イスラエルのオルメルト首相らと会談。アッバス議長は記者団に、和平会議の土台となる共同文書に国境、聖地、難民などの核心問題解決の枠組みを盛り込むようあらためて主張。「どんな犠牲を払ってでも会議に出席するわけではない」と欠席の可能性をちらつかせ、譲歩に否定的なイスラエルをけん制した。
一方、ライス長官と共同記者会見したイスラエルのリブニ外相は「与えられた時間の中で、できるだけ広範な合意を目指す」と、共同文書は大ざっぱな内容にとどめるべきだとの立場を示し、期待を高めすぎれば「挫折や暴力を招く」と警告した。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/55627.html
この「中東和平会議」は、ワシントン近郊のアナポリス(海軍兵学校のある場所)で11月下旬開催との触れ込みだが、果たしてアラブ諸国が揃って参加するのか、あるいはボイコットするのか予断を許さない。
アラブ諸国は、イスラエルが現在占領している地域から撤兵し、非占領地域をパレスチナへ返還することを前提としているから、それが話し合われない限り会議出席をしないだろう。シリアは、ゴラン高原を返せと声高に言い続け、それを議題にすることを求めている。
中東問題に詳しい佐々木良昭氏は、「中東和平会議」準備段階でイスラム国家のアラブ諸国が乗り気でない理由の一つとして、エルサレムの神殿問題を彼のブログで指摘している。以下、佐々木氏のエントリーNO・736パレスチナ・イスラエル関係で最も重要な話から部分引用すると、
パレスチナの元エルサレムのムフテイであるイクリム・サブリ氏、エルサレムにある嘆きの壁について、以下のようなコメントをエルサレム・ポストにしているのだ。
曰く、嘆きの壁はアクサ・モスクの一部であって、ソロモンの神殿あるいはその後に再建されたユダヤの神殿の一部ではない。神殿は別のところにあったのであり、アクサ・モスクの下にあったのではない。したがって、ユダヤ人がアクサ・モスクの下が神殿だと主張して、アクサ・モスクの中で礼拝する権利はない、という内容なのだ。
彼の説明によれば、したがってアクサ・モスクがある場所は、テンプル・マウント(ソロモンの神殿のあった場所)ではないということになる。
アラファト議長も同様の主張をしていたということだが、そうなるとユダヤ人たちはどこを、ソロモンの神殿跡として巡礼するのであろうか。ユダヤ人がこの元エルサレムのムフテイの話を信じるか否かは別にして、この話はユダヤ人にとってとんでもない話なのだ。
注:嘆きの壁はソロモン王が建立した神殿の一部だとし、世界中のユダヤ人たちは、この壁に巡礼し祈りをささげている。そして、ユダヤ人で結成された委員会があり、ソロモンの神殿を再建しようとしている。そのためにはアクサ・モスクを破壊しなければならない、ということになっている。
領土問題以外に、このような根源的な内容があれば、何度国際会議を開こうと解決するものではない。イスラエルがアラブ諸国と調和して生きていくためには、宗教問題も含めて相当な譲歩が必要と考えるが、米国はそれを説得しかねている現状だ。
元外交官の原田武夫氏が「中東和平会議」に絡めて、小ブッシュ大統領が辞任するのではないかとの噂を披露している。この会議にシリアを招いていることが、ネオコンの逆鱗に触れ、小ブッシュ大統領に圧力を掛けると言うのだ。そのような噂が飛び交う位、この「中東和平会議」は問題を孕んでいる。
米国が中近東から手を引き、イスラエル支援をしなくなれば、<ドラゴンの歯>イスラエルは間違いなく短期間の内に滅びるであろう。その前に、イスラエルは核兵器を用いる可能性が大きい故、それを切っ掛けに中東大戦争が起きて、世界は滅亡するかも知れぬ。
両者共存するにはそれしかないと思うのですが。