陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

台湾総統選がスタート

2008-02-23 20:08:31 | 台湾関係
 2月23日に台湾総統選挙が公示された。民進党(与党)の謝長廷氏(61、内省人)と国民党(野党)の馬英九氏(57、外省人)の一騎打ちである。その背景については、産経新聞によると

逃げる馬氏、追う謝氏 台湾総統選が公示
2月22日18時54分配信 産経新聞

 【台北=長谷川周人】台湾の中央選挙委員会は22日、3月22日に投開票される次期総統選の候補者名簿を公示した。23日に正式スタートする選挙戦は、政権死守を目指す与党・民主進歩党(民進党)の謝長廷・元行政院長(首相=61)と、8年ぶりの政権奪還を目指す最大野党・中国国民党の馬英九・前主席(57)の一騎打ち。1月の立法院(国会)選挙の圧勝で勢いに乗る馬氏に対し、謝氏がどう追い上げていくかが焦点だ。

 馬氏は立法院選以降、米国留学中に取得したとされる「グリーンカード(永住権資格証明書)」問題や実姉の製薬会社との癒着疑惑などで、謝陣営からの攻撃を受けてきた。だが、国民党は呉伯雄主席ら執行部が“盾”となり、20人に迫る史上最大の「スポークスマン軍団」を結成。与党側の攻勢から馬氏を「鉄壁の守り」で支える構え。さらに馬氏自身は、対中融和による振興策で高度経済成長を再現する「完璧(かんぺき)な君子」(関係者)というイメージを維持する戦術をとる。

 これに対し民進党は、陳総統の党主席退任後、主導権を握った謝氏が挙党態勢の構築を進めてきた。民進党の張俊雄行政院長(首相)は20日、所得税減税案を閣議で承認した。陳総統も対中投資規制の緩和など中台に絡む新たな方針を選挙前に発表するとされ、政策面から謝氏を側面支援する姿勢だ。

 ただ、選挙戦の争点は中台関係と経済問題が軸で、対中関係で穏健路線を掲げる謝氏と馬氏に総論では大きな差異はない。このため謝氏の対中姿勢は「台湾人意識を弱体化する」として、独立急進派の失望を招いており、他方で域内活性で経済再建を目指す「幸福経済」論も具体性に欠け、経済界や一般有権者を引きつける力には、なっていない。

 両氏の支持率は、国民党に近い聯合報の世論調査によれば「馬氏56%、謝氏18%」と30ポイント以上開いている。一方で民進党寄りの自由時報は、同党が行った調査結果として「支持率の差は10ポイントまで縮まった」と伝えている。蘋果日報は「馬氏36%、謝氏19%」として、双方の差は徐々に縮まっているとしている。

 選挙戦は24日から謝、馬氏による直接討論が始まるが、謝陣営幹部は、「3月14日は中国が台湾独立を阻止する武力行使を合法化した反国家分裂法の採択から3周年記念日。浮動票獲得に向けた最後の決戦は、選挙直前に仕掛けることになる」と話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080222-00000940-san-int


 世論調査では圧倒的に有利な馬英九氏であるが、意思表示していない層が30%程度あるわけで、これから1ヶ月間の選挙運動によっては伯仲した状況が生まれるかも知れぬ。

 1月の立法院選挙では、圧倒的に有利な得票結果を得た国民党であるが、今回の総統選挙には台湾人のアイデンティティーを明確にする意味も籠められている。経済施策を中心にして大陸との融和を図る馬英九氏を選ぶか、温和な形だが台湾独立を指向する謝長廷氏を選択するか、日本にとっても深い関心を持たざるを得ない。

 内省人は、台湾総人口2290万人の85%を占め、国民党の中核をなす外省人(戦後蒋介石軍と共に大陸から渡って来た人達)は僅かに13%程度である。蒋介石軍と国民党は、2・28事件(1947)で内省人28000名以上を殺戮し、日本統治の残置資産を全て占有した。その額は当時の金額で110億円と言われ、現在の価格にすれば30兆円にはなるだろう。

 その後は、38年間にわたって戒厳令を敷き、「白色テロ」を行って内省人のインテリ層を壊滅させた。こうした経緯があっても、内省人の多くが国民党を支持するのは何故なのだろうか。単に、経済問題だけで無いように感じるのであるが。

 国民党は、日本の残置資産確保とその後の経済活動独占により、世界で最も豊かな政党(?)と言われている。陳水扁総統(民進党)は、国民党の資産を公開して台湾政府のものとするため、1月の国民投票で可否を問うたが、結果は否定であった。戒厳令が解除され、民主化が行われて20年、また台湾の歴史教育が自由になって10年を経過し*)、ファシズム的な国民党の姿が浮き彫りにされた。それでも、台湾人は過去の忌まわしい戒厳令下の歴史を心の奥底に沈めてしまったのだろうか。

*) 1997年から、国民中学教科書「認識台湾(歴史篇)」が用いられるようになった。これは、初めて台湾の先史時代から現代に至るまでの歴史を記した内容である。日本の統治も客観的に紹介され、「2・28事件」にも触れている。日本語訳は「台湾を知る」(雄山閣、2000)として出版され、全143頁、価格1500円。現在も入手可能。
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