愛唱歌：「遥かな友へ」

　年を重ねると、どう言うわけか眠りが浅くなる。何かで夜中に一度目が醒めると、眠れないままに１－２時間は本などを読み散らすこともある。夏であれば、虫の音に誘われて庭に出る。浮き雲の漂う真夜中の空に、星がきらきらと輝き、目立つのは北斗七星やカシオペアなど。蟋蟀（こおろぎ）、鈴虫の激しく集（すだ）く様子、辺りは虫の国そのもの。

　柔らかにそよぐ夜風の中、庭椅子に座って、タバコに火を点ける。喜怒哀楽を越えて、ただ忘我のひととき。顔を上げて星空を見ていると、色々な人達の顔が浮かび、また消えて行く。

　脊髄手術のために、寝たきりになった同級生のＡＫ、奥さんが２４時間、３６５日自宅で付き切りだけれど、夏は益々大変だろうな。現役を引いて、癌を抱えながらも元気に彼方此方の集まりに参加して議論を続けるＴＭさん。７０歳までは現役だと言って、大学教育に打ち込むＫＨ。彼は、今頃伊豆の別荘に引篭もって論文書きか。印象深い付き合いをした若い人達は、今何をしているのだろう・・・

　そして、亡き父母の懐かしい姿。「そろそろこっちへ来たら」と声をかけてくれるみたいだ。私よりも若くしてこの世を去った忘れ得ぬ人達の顔。彼らとの別れは、本当に悲しかった。もう一度、是非会いたいなと今も思う。辛い思い出は、７年前に死んだ愛犬のこと。あれは、９歳だっただろうか。

　遠い昔に恋をした女性達も、昔の姿で若々しく現われる。だが、彼女達、もう婆さんになっただろうな。多分、孫が何人もいるはずだ・・・

　ふと昔の歌を思い起こし、柔らかな旋律が脳裏を過ぎて行く・・・

遥かな友へ １９５２

【作詞・作曲】磯部　俶（とし）　
【歌】　ボニー・ジャックス

１．静かな夜更けに　いつもいつも
　　思い出すのは　お前のこと
　　お休み　安らかに　たどれ　夢路
　　お休み　楽しく　今宵もまた

２．明るい星の夜は　遥かな空に
　　思い出すのは　お前のこと
　　お休み　安らかに　たどれ　夢路
　　お休み　楽しく　今宵もまた

３．寂しい雪の夜は　囲炉裏の端で
　　思い出すのは　お前のこと
　　お休み　安らかに　たどれ　夢路
　　お休み　楽しく　今宵もまた




　動画をｕｐしてくださった doyodoyodoyodoyodoyo さんにお礼を申します。

http://www.youtube.com/watch?v=1NWIRR7KraA

　この歌は、夜半に友人を思い出し懐かしむ様を述べているようだが、年老いた親が離れて住む子供達のことを愛惜（あいせき）する情景でも構わない。作者の磯部氏は、恋人を思って作詞したのではと想像するけれども、あからさまな形を控え、何となく題を「遥かな友へ」と言い換えたのかも知れぬ。溢れるばかりの情感は、適（かな）わぬ恋人への優しい思いが籠められているように感じさせるが、邪推だろうか（笑）。

　恋人へのお休みの挨拶と言えば、次の歌が頭に浮かんだ。これも古い歌。

グッド・ナイト・ベイビー
Good Night Baby　（１９６８）

【作詞】ひろ　まなみ
【作曲】むつ　ひろし
【歌】　キング・トーンズ

きっといつかは　君のパパも
わかってくれる　ふたりの愛を
うしろを向いた　ふるえる肩を
抱いてあげよう　だから

グンナイ・グンナイ・ベイビー
涙こらえて　今夜はこのまま
おやすみ　グンナイ
グンナイ・グンナイ・ベイビー
涙こらえて　楽しいあしたを
夢見て　グンナイ

やっとみつけた　この幸せは
誰にもあげない　ふたりのものさ
涙にぬれた　つめたいほほを
ふいてあげよう　だから

グンナイ・グンナイ・ベイビー
涙こらえて　今夜はこのまま
おやすみ　グンナイ
グンナイ・グンナイ・ベイビー
涙こらえて　楽しいあしたを
夢見て　グンナイ
グンナイ・グンナイ



nubi1006 さん提供の動画。

http://www.youtube.com/watch?v=9RgPwNC1qYs

　あの頃は、若い男女共にシャイだった。だから遅くなって男が女を送って行っても、「涙こらえて　今夜はこのまま」お別れをしたのだ。今の若い人達は、そうじゃないだろうな・・・

　眠くなってきたので、もう寝床へ戻ろう。