陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

台湾の総統選挙が3ヵ月後に迫る:台湾有事に発展するのだろうか?

2007-12-23 00:49:21 | 台湾関係
 2008年8月には、北京五輪が予定されている。その直前に、周辺有事が起きたり、大陸内での大規模暴動が発生すれば、北京五輪は中止に追い込まれるかもしれない。パンデミック・フルー(新型インフルエンザ)発生や、サブプライム問題によるドル信用収縮も、中共政府としては大きな心配の種であろう。

 そのような偶然性は別として、確実に行われるのが3月の台湾総統選挙である。台湾国内は、民進党(内省人主体)と国民党(外省人主体)の二大勢力が総統の座を狙って激しく動いている。これに台湾の国連加盟運動が色を添える。国連加盟の賛否を問う住民投票をどの時期に設定するか、これは大きな問題だ。

 台湾を庇護する米国は、今のところ事を荒立てるのを好まない。ライス国務長官は、住民投票に対し明瞭に批判的な発言をしている。小ブッシュ政権も残す任期があと1年、余程のことが無い限り、アフガンとイラン以外は最早大規模に米軍を動かす気は無いはずだ。中共政府も北京五輪に加え、外資導入の立場から台湾海峡の緊張は避けたい所だろう。

 以前から言われているように、こうした背景を逆用して台湾が思い切った政策に出るのではとの憶測がある。現在、国民党に比べると不利な状況にある民進党が大陸との緊張を適度に作り出して、台湾独立を目指そうと言うものだ。産経新聞の現状分析では、

米中を振り回す陳水扁戦術 台湾
2007.12.22 18:20

 来年1月の台湾立法委員(国会議員)選と3月の総統選を控え、米中両国が陳水扁総統の言動に神経をとがらせている。選挙はともに独立派与党、民主進歩党不利の情勢だが、「選挙の天才」陳総統が一発大逆転の「奥の手」を使い、合わせて台湾独立への歩みを加速するのではないか、と戦々恐々なためだ。

 選挙とその後の台湾政治が混乱すれば、台湾有事を誘発する恐れもあるだけに、危機回避に向けた関係国間の連携を強める必要も高まってきた。

 台湾の将来を左右する2大選挙を前に、ブッシュ政権は今月上旬、米国在台協会(AIT)のバッガード理事長を台北に派遣した。同理事長は陳総統や民進党総統候補の謝長廷・元行政院長、野党・国民党候補の馬英九・前主席らと会談した。

 陳総統が米中の反対を押し切り総統選と同時に「台湾名義での国連加盟」の是非を問う住民投票を強行する真意や、両党候補の政治思想、政策などを見極めようとの狙いからとみられた。

 ところがバッガード理事長の帰国間もなく意外な事実が暴露され、大騒ぎとなった。同理事長は国民党の副総統候補、蕭万長氏との8日の会談で、「陳総統が台湾海峡の中間線付近で中国の戦闘機や漁船を攻撃して中台危機を起こすのでは」との懸念を表明した。

 陳総統が危機を理由に選挙の中止や、台湾本省人(日本の植民地時代から台湾に居住する漢族とその子弟)の反中感情を刺激して民進党支持票の獲得を狙うことを警戒したわけだ。同理事長の懸念は先に訪米した中国政府幹部がブッシュ政権に持ち込んだともされる。

 これに対し蕭氏は「(陳総統が仲の悪い)謝候補を銃撃させて国民党に罪を着せ、代わりに副総統候補の蘇貞昌・前行政院長を擁立するとのうわさがある」と応じた。

 米中両大国と選挙戦優勢の国民党の3者がこぞって陳総統の「奥の手」をめぐり大まじめの密談をかわす光景は、滑稽(こつけい)とばかりも言い切れない。

 4年前の総統選では投票日前日の陳総統暗殺未遂事件によって、劣勢だった同総統が国民党の連戦候補に僅(きん)差(さ)で逆転勝利した。その4年前には独走していた宋楚瑜候補の金銭疑惑が暴露され、支持率3位だった陳総統の大逆転が起きている。

 前者については陳総統の「自作自演」説、後者をめぐっては宋氏を激しく非難していた李登輝総統(当時)周辺の関与説もあったが、いずれも真相はわからないままだ。

 中国生まれの連戦氏や宋楚瑜氏は将来の中台統一を唱えて、中国の覚えもめでたかった。馬英九氏も戦後、中国大陸から台湾に渡った外省人で統一派だ。現在は世論調査で謝氏を20%前後リードしているが、土壇場で陳総統に2度も“煮え湯”を飲まされた中国の警戒心は尋常ではない。

 とりわけ中国は陳総統が進める「台湾名義での国連加盟」の是非を問う住民投票を、「法理台独(法的手段を使った台湾独立の試み)」と激しく反発している。

 住民投票の成立を受けて、陳総統が「台湾独立」宣言を行うような事態を極度に警戒しているからだ。「われわれは国家分裂を防ぐために必要な断固たる措置をとる」(陳雲林・中国共産党台湾弁公室主任)と、武力行使も辞さない決意を繰り返し表明している。

 台湾名義の国連加盟を台湾住民が支持したことだけを根拠に、もし陳総統が独立宣言をすれば選挙民を欺くことになる。陳総統自らその意図がないと明言し、総統選の両候補も陳総統の急進独立路線を継承しないことを公約している。

 にもかかわらず中国の陳総統に対する疑心暗鬼がやまないところに問題の深刻さがある。次期総統が就任する来年5月20日までの危機管理が重要だ。日米中台を中心に台湾海峡の平和を維持するために、お互いが紛争回避に向けた連携と自制を強める必要がある。(編集委員 山本勲)  
http://sankei.jp.msn.com/world/china/071222/chn0712221820005-n1.htm


 台湾は民主化が進み、軍事政権でもない独立した国家と思う。中共は、台湾を領有したことは一度も無いのに、まるで自分の領土のように考える。だから「反分裂国家法」の制定をやった。太平洋へ進出するには、台湾が障害になるから、早く自国領土にしたいのだろう。だから、言い掛かり的に台湾情勢に悉く口を出す。

 台湾も負けていないで、独自の迎撃ミサイル開発、米国からは9億4000万ドル(約1020億円)相当の改良型パトリオット地対空ミサイルの導入、それに今年は10月10日の建国記念日(双十節)に16年ぶりの軍事パレードを行い、意気軒昂な側面をアピールした。そして、南シナ海では台湾空軍の軍事的拠点拡充を図っている。

南沙、滑走路完成まで秒読み
2007.11.9 19:56

 【台北=長谷川周人】台湾が実効支配する南シナ海のスプラトリー(中国語名・南沙)諸島最大の島、「太平島」(約48万平方メートル)で建設中の軍用空港の完成まで秒読み段階に入った。空軍部隊の常駐も視野に入れた空港建設は、領有権を主張する中国などへの軍事プレゼンスとなり、今後、南沙をめぐる中台の緊張が高まる可能性がでてきた。年内にも陳水扁総統が現地を視察する、との情報もある。

 台湾の国防当局は2005年秋、島を管理する海岸巡防署(海保)の常駐職員への物資補給などを理由に、陸軍兵力を投入して空港建設に非公開で着手。計画では12月中に滑走路が先行完成し、C130輸送機を使った物資の補給拠点となる。さらに航空燃料補給基地など付帯施設を整備すれば、空軍が保有するミラージュ戦闘機や早期警戒機「E-2T」などの配備にも道を開く。

 台湾の李天羽国防部長(国防相)は今月4日、国防部長としては陳政権発足後初めて、建設が最終段階に入った軍用空港の滑走路を視察。海軍のフリゲート艦で現地入りした李部長の訪問名目は、陸軍工兵部隊の表彰や慰問などだが、演説を通じて南沙における実効支配力をアピール、急速な軍備増強を図る中国を牽制(けんせい)した。

 李部長は、台北帰着後に行った立法院(国会)国防委員会での答弁でも、将来的には空軍部隊の常駐を視野に入れる考えを表明。台湾メディアに「今やらなければ、将来必ず後悔する」と述べ、空港建設の戦略的な位置付けを常駐職員に対する「人道措置」から「主権確立」に格上げする方針を強調した。

 大小の環礁から成る南沙は、将来的な海底油田の開発や漁業権問題も絡み、中台のほかベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイも領有権を主張。フィリピンがすでに軍用空港を完成させるなど緊張が続く。

 ただ、台湾の最大野党、中国国民党は、中国への刺激を避ける立場から、軍事プレゼンスの強化には反対する。台湾は来年3月に総統選を控えており、陳政権に近い国防関係筋によると「政権は12月にも総統の現地視察を含む南沙をめぐる政治判断を下すだろう」という。
http://sankei.jp.msn.com/world/china/071109/chn0711091956002-n1.htm


 南沙諸島は、台湾・高雄から1500kmも離れている故、有事の際は補給が大変と思う。近くのベトナムやフィリピンから支援を受けなければ維持は難しい。それでも、台湾は国威をかけて、軍事プレゼンスを示したいのだろう。

 私は台湾を立派な国家と考えるし、日本と縁浅からぬ歴史があるから友好国として連携を続けるべきと思う。大陸や朝鮮半島とは民族の違いが歴然としていて、その民度は高いと見ている。

 総統選や住民投票が切掛けになって、両岸有事となった場合、米国はどの程度関与するのであろうか。前回の台湾危機のように、中共が台湾近傍で大演習をやって恫喝すれば、米国は空母戦隊を二隻相当派遣する位は行うであろう。沖縄基地には、ステルス戦闘機F22ラプターの1航空戦隊を留めていると思う。11月21日の<キティーホーク>香港寄港拒絶で、国防総省は融和的姿勢を転換したのではないか。

 中共・軍人の一部は、米国が台湾紛争に関与すれば、米本土への核攻撃も辞さないなどと言っているが、それはブラフに過ぎぬ。だが、台中局地海戦はあるかも知れず、その場合は間違いなく日本も巻き込まれる。一朝有事の場合は、福田首相も「のほほん」としてはいられないだろう。
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