陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ライス長官、次の一手は?

2006-08-02 09:10:48 | 中東問題
  天翔る ライスの心は 空蝉か
    西日射したり シオンの丘に

 コンドリーザ・ライス米国務長官(51)が、同盟国イスラエルの為に八面六臂で活躍中した。7月12日から始まったイスラエルのレバノン侵攻以来、レバノン首相、アナン事務総長、ブレア英首相らを始め、安保理、ローマ外相会議、ASEAN会議などが口を揃えて即時停戦を提案しても、尽く米国の反対で潰れる。その反対行動の9割は、ライスの機動外交による。残りは、強硬派のジョン・R・ボルトン米国連大使(58)の貢献。

 サンクトペテルブルグのG8サミット後、ライスは中東入りをし、イスラエル首相やエジプト主脳と軽く会談して一旦帰国。7月24日から再度中東訪問開始、イスラエル及びレバノン主脳と話し合いをして、パレスチナ自治府のアッバース議長とも精力的に会った。25日に、国連レバノン暫定軍への空爆で国連要員4名が殺された。

 7月26日にはローマへ飛び、イタリアと共同議長で関係国外相会議へ参加、イスラエル寄りの発言で議長の取りまとめを抑制表現した。継いで7月28日にはクアラ・ルンプールへ移動、昨年義理を欠いたASEAN関連会議に出席し、イスラエル寄りの発言を行う。

 ところで、米国務長官専用機は、ボーイング757-300辺りを使っているのだろうか。それなら航続距離もあるし、小回りも効いて燃費も安い。超高級ホテルのスイート並みに内装を整え、高度のIT化。至宝(IQ200)ライスの為に、ブッシュ大統領はアップライトピアノなど積み込ませているかも知れぬ。

 ASEAN会議の終わりの余興では、ライスは得意のピアノ演奏でブラームスのソナタなどを披露し、再び中東へ戻った。彼女はピアノ演奏の技量がプロ並みのようで、ヨー・ヨー・マ(国際的なチェリスト)と共演した経験もある。15才でデンバー大学へ入った時は、音楽学科希望だと言う。

 時差ぼけにも負けず、テル・アビブへ戻った彼女は、潮時と考えたのかイスラエルとレバノン両者へ期限付き即時停戦案を提案しようとしたが、待ち構えていたように7月30日朝に起きたのが「カナの悲劇」。子供27人を含むレバノン人57人がイスラエルの誤爆一撃で虐殺された。これを知った国際世論は激高、怒ったシオニラ首相(レバノン)はライスに肘鉄を喰らわせ、会談予定はたちまち取り消し。

 絶句したライスは、ワシントンへ戻る。多分、影の仕掛人ディック・チェイニー副大統領(64)(ネオコン・シンパ)と外交戦略建て直しを図るのだろう。ドナルド・H・ラムズフェルト国防長官(74)は、ライスの思惑とは別に、もっと兵器をイスラエルへ!などと言って、ライスを困らせているかも知れない。イスラエルは、取りあえず誤爆釈明と謝罪を行い、7月31日から48時間の空爆停止に入った。

 ライス国務長官のレバノン侵攻に対する基本的考えは

(1) イスラエルの空爆、レバノン越境は、自衛の為である。
(2) それ故、戦闘の即時停止は困難、持続的かつ包括的停戦になる。
(3) 双方の武力抗争停止の為には、条件が必要。<ヒズボラ>が国境線から20km撤退する事。最終的には、<ヒズボラ>の武装解除を要求。
(4) 国際武装中立軍(国連軍を含む)の二段階派遣を提案。第一段階は、トルコ+エジプトによる1万人規模の派兵。第二段階は、ヨーロッパ諸国から2万人の派兵(米国派兵は?)。
(5)その後、持続的な平和維持を関係各国で討議。
 
だが、これらは全く各国の賛同を得ていない。

 先週米国からの大量武器空輸もあって、充電完了したイスラエルは、8月2日より空爆を再開する。16000人の予備役召集を終えて、地上攻撃戦略の建て直しも出来た。どうやら今度は、シリア国境を睨みつつあるようだ。イスラエルが占拠中のゴラン高原、ここには国連平和維持活動(PKO)と国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)で、陸上自衛隊第2師団から43人が派遣されていることを私達は忘れてはならない

 さあ、ライス長官、次はどのような戦略を持って中東へ戻るのか。

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2 コメント

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ライス長官、打つ手なし (悠遊子)
2006-08-03 23:03:38
コメントが後先しましたが、この問題もクルーシャルです。シオニズムのオリジンはモーセの出エジプト記の時代に逆かのぼります。約束の地から追放されて2000年。イスラムが空白を埋めてから1000年以上。それを第2次大戦後60年余で回復すると言うのだから大変・・・お互いに相手を皆殺しするまで止む気配がありません。近頃、相手をテロリスト呼ばわりさえすれば何でもありの時代。加えて、しばしば紛争を引き起こして武器・弾薬の在庫を一掃しないと成り立たない経済体制。何処を見ても救いが無い・・・ Quo vadis Domino!
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イスラエルは四面楚歌 (茶絽主)
2006-08-10 00:25:54
悠遊子様

 コメントを有難うございます。

 冷戦終了で中東におけるイスラエルの存在価値が激変しましたね。米国としては、中東民主化の拠点にしたかったのでしょうが、自爆戦争を始めてしまいました。

 米国は、困っていると思います。今の所、ライス(共和党)もヒラリー(民主党)もイスラエル応援ですが、イスラエルがこれ以上やり過ぎると手を抜くと想像します。そうなれば、イスラエルはアラブ諸国に滅ぼされてしまうでしょう。第二次ディアスポラが待っているのでしょうか。

 
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